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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第八話:崩壊の叫び

「ふ……ふざけるな……」


「まだ生きてやがる……」


「終わった……俺たちは死ぬんだ……全員死ぬんだ!」


聖騎士と冒険者の中には、完全に情緒が崩壊する者、顔色を青ざめて為す術なく立ち尽くす者、僅かな者だけが強がって平静を装う者もいた。


戦場で唯一法則を駆使できる強者は魔力を完全に枯渇させ、昏睡に落ちていた。


今や誰一人として抗う力は残されておらず、彼らを待つのは全滅の結末だけだった、エノートの意志強い顔には無念が満ちていた。


指を握りしめて白くなるほどに、心の中ではただ一つの問いが繰り返し響いていた。


己が守ってきたこの街は、こうして滅びるしかないのか……


パタリと、長剣が瓦礫の山の上に落ちて音を立てた、聖騎士の隊伍の中から、一人の男が耐えきれずに飛び出した、彼の顔には刀傷があり、今やその表情は鬼気迫るものだった、一瞬の躊躇もなく、狂ったように戦場の外へと逃げ出した……


その動作は無様で、一切を顧みず大声で叫びながら。


「俺は……ただ金を稼いで生きていきたかっただけだ! 死にたくない! 死にたくないんだあああ!」


「家には妹がいるんだ……こんな街、誰が守ろうが勝手にしろ!」


「そうだ! 今逃げなきゃ、待ってるのは死だけだ!」


群衆の中から再び恐怖に駆られた者が逃げ出そうとする、その声は怯えており、先に走り去った聖騎士の後に続いて駆け出した、他の者たちの心も揺らぎ始める。


続いて数十人が次々と逃げ去っていった、彼らは目の前の状況をよく理解していた、黒竜の傷は絶えず自己修復されており、奴が態勢を立て直せば、全員が確実に死ぬ。


「諸君、我々の負けだ、今のうちに離脱しよう、どうか……あの法則の強者も連れて行ってくれ。」


風がエノートの額を撫で、その長髪を揺らす、彼は無念そうに首を振り、残る聖騎士と冒険者たちを見渡した、この戦いは、明らかに彼の完敗だった。


「振り返るな……ずっと走れ……」


エノートは遠ざかる背中を見つめ、諦めの口調で呟いた、彼には、他人に無条件で街を守れと強いることはできなかった、誰もがそれぞれの理由で戦っているのだから。


しかしその時、他の者の声が彼の沈思を打ち破った。


「何言ってるんですか、隊長! 俺は行きません! 俺も残ります!」


「俺もです! 聖騎士に入ったのは、あなたに憧れたからです!」


かつてエノートに救われたことのある青髪の冒険者は、口元に笑みを浮かべた、指は刀の柄に置かれていたが、それでも震えは止まらなかった。


「あの時、あなたに助けられなければ、俺はとっくに死んでいたでしょう、借りはまだ返し終わっていません、逃げられるわけがない。」


もう一人のやつれた冒険者がエノートの肩を叩き、口調は穏やかだった。


「冒険者なんて元々こんな暮らしだ、どうせこれも必然の結末ってやつさ……」


「どこに逃げたって死ぬのは同じだ、俺には他に行く場所もないしな、相棒。」


聖騎士と冒険者の残り三十数人は、皆エノートに同行するつもりだった、彼らはエノートの前に集まり、その目には固い決意が宿っており、黒竜の反撃の脅威を微塵も恐れていなかった。


大多数の冒険者と聖騎士は急いで撤退を選んだ、彼らからすれば、できることはすべてやった。命を落とす必要はない。


エノートははっきりと自覚していた、自分は街を守れなかった、全員を無駄死にさせるくらいなら、彼らの離脱を黙認する方がましだと。


しかしこの街の最高指揮官として、彼は既に決意を固めていた、心の中では街と共に死ぬことだけを考えていた、他人から見れば愚行に映ろうとも、それが彼の信念だった。


不意に風が再び吹き始めた、蕭瑟とした空気と濃厚な血腥さを運びながら。


風は逃げ惑う人々を掠め、一人ひとりを掠め、自己修復を続ける黒竜を掠め、最後に街の高い城壁の上で翻る、一黒一白の長袍を揺らした。


少年の瞳には一片の動揺もなく、ただほとんど無関心とも言える平静だけがあった、彼は隣の少女を見た。


「ジャスミン、俺を黒竜の近くに連れて行け、後のことは任せる。」


ジャスミンは耳元の髪をそっと撫で上げ、一瞬の躊躇もなく頷いた。


「かしこまりました、レオン様。」


刹那、二人の足元に二つの空間跳躍魔法陣が浮かび上がり、その姿は一瞬で消え、元の場所から消え去った。


風に揺れる若草の芽は、踊る者のように動き、空気には清々しさと自由が満ちていた、しかしその雰囲気の中に、一陣の濃厚な鉄錆の匂いが混じっていた。


黒竜の生命力はますます漲り、再びその身を起こし、街に向かって猛然と突進した、その縦瞳に宿る怒りは、すべてを凍りつかせんばかりだった。


しかし突然、その動きが止まった、竜の首を上げ、澄み切った青空を見つめた。


次の瞬間、一つの小さな影が天から降り立った、ジャスミンの長袍が空中で風に鳴り、銀白の秀髪が風に舞う、そしてついに、黒竜の視線と同じ高さで静止した。


彼女の顔に迷いは一切なく、体内の法則魔力が絶えず流転する、半空でゆっくりと足首を上げた、その足首には重力魔法と金魔法が纏わりつき、山岳のような重圧が周囲の空気をブンブンと唸らせた。


足を上げた瞬間、張り詰めた気流が突然裂け、鈍い空気爆発が炸裂した、ジャスミンは容赦なく黒竜の頭部に向かって一蹴りを喰らわせた。


ドン! 薄膜が砕け、黒竜の口から涎と血が周囲に飛び散る、頭部は草原に激しく叩きつけられ、轟音が響いた。


満口の牙が少女の一蹴りで数本砕け散った、次の瞬間、口から血が噴き出し、脳内は一瞬空白になった。


巨大な竜躯が地面に激しい震動を引き起こし、口腔からの血が下顎を伝って絶えず滴り落ちる。


短い眩暈の後、黒竜の縦瞳が急に収縮した、激痛が滔々たる怒りを伴って全身を襲う。


それは重い頭を振り回し、唯一残った翼を地面に激しく叩きつけた、碎石と泥土が四方に飛び散る。


血を滴らせる下顎を開き、氷魔法を駆動する、極限の冷気がその口から僅かに漏れただけで、地面の若草は凍って氷の破片となり砕け散った。


フウッ! 吹雪が上空のジャスミンに向かって噴き上げられる、少女は身を軽やかに横に反らし、風魔法を足先に纏わせて空中で軽く踏み締める、周身を流れる微風が淡緑の盾となり、冷たい吹雪をしっかりと防いだ。


彼女は間を置かず、気流に乗って急降下する、片手を空に軽く握ると、数本の雷魔法が黒竜の周囲に現れた。


それらは紫色の鎖となって空を裂き、素早く黒竜の四肢に絡みつく、狂暴な雷電が黒竜の筋肉を引き裂き、苦痛の咆哮を上げさせた。


レオンは遠くの草地に立ち、平静な目で戦い合う両者を見渡していた、指先で特製魔導長剣の柄をそっと撫でながら、その瞳には了然とした色が浮かんでいた。


「やはり……ただの獣か……」


一方、エノートと仲間たちは驚愕と茫然を顔に浮かべていた、果てしない原野の上で、あの白い影は目映い白昼のように、彼らの目を刺すように痛めつけた。


「あ……あの少女は……まさか? 法則の強者?」


冒険者の中の一人が疑念を込めた口調で言った、彼はこの街の情報収集者であり、冒険者ギルドのギルドマスターでもあったが、この神秘的な少女については一度も聞いたことがなかった。


逃げ出した冒険者と聖騎士たちも、視線を草原の方へと向けた、彼らははっきりと半空の少女を目にし、その動作は次第に遅くなり、ついには足を止めた、顔には驚愕の色が満ちていた。


エノートは強く結んでいた眉をようやく緩めた、しかし彼の視線はジャスミンではなく、草原に立つ、大人の腰ほどの背丈しかない小さな存在に向けられていた。


「あの子は?」


ジャスミンは安定して地面に着地した、指先を白袍の中の刀鞘に差し入れ、一振りの漆黒の短剣をしっかりと握りしめた、その短剣は全身から不安な躁動感を放っていた。


黒竜は鎖を振りほどいたが、全身の傷はさらに深刻になっていた、巨大な体躯は絶えず揺れ、元々蔑みを宿していた縦瞳には疲労が満ちている、唯一残った翼で辛うじてバランスを保っていた。


しかしジャスミンはそれに抵抗する隙を与えなかった、その姿は一瞬で消え、次の瞬間、少女は黒竜の唯一残った翼の関節部分に現れた。


一筋の黒紅の弧光が走る、翼はドスンという音とともに草原に落ち、轟音を響かせた、黒竜は一声嘶き、僅かに残っていた魔力を振り絞って傷口を凍らせる……


体勢を崩した黒竜は、その全身を草原に打ち付けた、重い衝突音が響き渡る、ジャスミンは短剣についた血を軽く振り払い、草地には暗赤色の跡が一筋残された。


しかし倒れていた黒竜が猛然と反撃に出た、無数の棘が生えた尾が、ジャスミンに向かって激しく襲いかかる。


ドン! 草原の泥土が巨大な溝となって抉られた。黒竜は最後の力を失い、完全に屠られるがままの家畜と化した。


ジャスミンは静かに黒竜の背中に立っていた、彼女は再び法則魔力を駆り、身の周りの風の法則が絶えず具現化する、四方の狂風が絶え間なく唸り、天と地を繋ぐ竜巻が微かに現れた。


彼女の意思の動きに従い、精密な歯車のような風の刃が少女の手の中で急速に回転し始める、ジャスミンはゆっくりと手を掲げた、風の刃は空間魔法によって増幅され、ますます大きくなっていく。


風が強すぎる、ジャスミンの長袍を吹き上げ、銀白の秀髪を絶え間なく舞い上げる、彼女はそれを半空に投げ放つ、すると風刃は黒竜の尾に向かって激しく切り込んだ、まるで剣で空気を切るように容易く、尾部は完全に黒竜の体躯から分離され、草原に落ちた。


しかし黒竜は呻き声を上げる以外、何の抵抗もできなかった、誰もが目の前の光景を見て、背筋が凍る思いだった。


それまで彼らは、あの力がどれほど恐ろしく、どれほど強大であるかを身に染みて知っていた、しかし今となっては、これは全くもって釣り合わない戦いだった、いや、むしろ少女が一方的に壊れた人形の部品を解体しているようだった。


一瞬のうちに、ジャスミンはレオンの前に現れた、身に纏う白袍は依然として一点の汚れもなく、彼女は短剣を鞘に収め、レオンに向かって問いかけた。


「レオン様、奴は既に反抗能力を失っています、殺しますか、それとも見逃しますか?」


「まずは確認する。」


レオンは反抗能力を完全に失った黒竜を見つめ、その目は平然としていた、彼は黒竜に向かって歩き出した。


ジャスミンはその後ろにぴったりと付き、少年の安全を守る、彼女は決してレオンにいかなる脅威も及ぼさせはしなかった。


細長い氷藍色の縦瞳にレオンの姿が映る、黒竜は無意識に下顎を開き、目の前の蟻を噛み殺そうとした。


「どうやらもう必要はなさそうだ、殺せ。」


レオンの声が淡々と響く、ジャスミンは手を上げ、金魔法で凝縮された銀色の長剣が空中に浮かんだ。


しかしジャスミンがまさに手を下そうとしたその時、一人の少女の声がこの殺伐とした空気を打ち破った。


「ま……待ってください!」


彼女の顔色は青白く、両手で白い聖騎士の長袍をぎゅっと握りしめていた、清らかな衣には金色の縞模様が刻印されており、非常に精巧に見える、今、彼女は回復したばかりの僅かな魔力を全て使い、素早くレオンの前に転送して叫んだ。


その声は大きくはなく、むしろ震えていた、しかしそれでも彼女は少年の前に立ちはだかった、メイア、聖騎士隊伍に所属する牧師だった。


ジャスミンが凝縮した銀色の長剣は半空に停止した、彼女は微かに視線をレオンに向け、内心では理解しがたく思ったが、他の反応は示さなかった。


レオンはメイアを見ようともせず、まぶたさえも上げなかった、ただ剣の柄を撫でていた指が、ゆっくりと止まった。


三人は互いに見つめ合う、メイアはあの巨大で、翼と尾を失った黒竜を見つめ、涙が溢れ出た、彼女の心には言葉にできない感情が満ちていた。


「お願いです……殺さないでください……あなたにはその苦しみが感じられないのですか? その罪は分かっています、でも、もう攻撃はできません。」


その声はか細かったが、静まり返った平原に明確に響き渡った、全体の雰囲気が冷え切っていく。


「こ……こいつはもう反抗能力を失っています……私たちはもう……もう命を奪うことはできません……殺戮を止めてください。」


エノートははっと我に返り、少女に向かって大声で叫んだ。


「メイア! 戻れ! 自分が何をしているか分かっているのか!」


しかしメイアは聞こえないふりをしていた、彼女はレオンの小さな身体を見つめ、生まれてこのかた最大の勇気を振り絞った、その表情は迷いに満ちていたが、一歩も譲らなかった。


レオンたちからはまだ距離があったが、メイアの言葉は豊富な戦闘経験を持つベテランたちの耳を逃れることはなかった、その場にいた冒険者たちと聖騎士たちは怒りの表情を浮かべた。


友人の死、仲間の犠牲、平民の逝去——すべてはあの黒竜が引き起こしたものだ、それに彼らは耐えられなくなった、まるで静かな湖面に巨石が投げ込まれ、大きな水しぶきが上がったかのようだった。


「ふざけるな! もし死んだのがお前の両親だったら、そいつの苦しみが分かるっていうのか!」


「あいつはお前の仲間や俺の友人を殺したんだ!あの平民たちは死んで当然だと思っているのか!」


「お前は本当に人間なのか? 牧師だろう? お前の憐れみは苦しむ者に与えるべきじゃないのか? なぜ黒竜を憐れむんだ!」


「死んでいった者たちをどうやって安らかに眠らせるつもりだ! ふざけるな!」


「お前はバカか! 頭の中は何でできてるんだ! お前みたいな奴は地獄に堕ちるべきだ!」


メイアは確信を持ってレオンを見つめ、ゆっくりと両腕を広げた、彼女はすべての者の言葉を無視した、牧師として、彼女はただ生命の哀願を聞いただけだった。


彼女は負傷者を救い、被害者を助けることを選んだ、それは彼女の最も本心からの選択だった。今も同じだ。


彼女はあらゆる苦痛を理解していた、黒竜の悲鳴を感じ取っていた、そして逝去した人々の悲しみも知っていた、しかしそれで十分だと思った、もう命を奪う必要はない。


レオンは足を踏み出した、彼はメイアの行動を無視し、脇に回り込もうとした、相手の涙に濡れた瞳には悲しみが満ちており、再びレオンを阻んだ、その口調には拒絶の色があった。


「もう十分だ! あなたには感情がないのか? もしそれを殺したいなら、まずは私を踏み越えていきなさい!」


ジャスミンは少女の言葉を聞いて眉をひそめた、彼女は少女の無礼を止めようとした、これは完全に同情心を勝手に撒き散らすだけの人間だった。


レオンは冷淡に戦場を見渡した、彼らに向けられた怒り、苦痛、歪んだ表情、そして無数の廃墟の中の、切断された手足や遺体の破片を。


次の瞬間、彼は無表情で魔導長剣を抜き放ち、軽く跳躍した、陽光が照らす二人の影の下で、一振りの長剣の影が彼女の影の肩の上を走った。


パタリと、丸みを帯びた物体が地面に落ち、鈍い音を立てた、メイアの全身はそのまま地面に倒れ、もはや息はなかった、レオンは長剣を鞘に収め、その口調は平然としており、一片の感情も含まれていなかった。


「独りよがりの憐れみを施すくらいなら、まず己を省みて、自分が何かを思い知ることだ。」


エノートはその場に立ち尽くし、ただ黙って長剣を地面に突き刺した、その顔には複雑な表情が浮かんでいた。

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