学院編:第五十話:容疑者?
嘀嗒……嘀嗒……
雨粒はまだ絶え間なく地面に落ち、既に潤んだ土地に小さな窪みを幾つも穿っていた、空気には雨がもたらした清々しさと、湿った土の匂いが満ちている、深く息を吸い込むと、ひんやりとした冷たさも感じられる。
レオンは一本の木の下に立っていた、ジャスミンは静かに彼の隣に寄り添っている、頭上で暖かな光を放つ透明な光膜が雨を遮り、雨水は光膜の縁に沿って脇へ流れ落ちていく。
「ジャスミン、これから使い捨て媒介型転送法陣を使う、魔力の引動が必要になったら、お前がすぐに補充してくれ。」
レオンは腰を屈め、濡れた地面に手を這らわせている、少年の声は穏やかだった、彼の手には一本の枝があり、転送法陣の陣紋を絶えず描いている。
時折、手を上げて波打つ空間の中に差し入れ、転送法陣の材料を取り出し、ケイトロニとセシリアの助言に従ってそれを配置していく。
「問題ありません、レオン様。」
ジャスミンは微かにうなずく、彼女の目には、忙しく働き続けるレオンの姿が映っていた、レオンは自分の手のひらが泥に塗れることを少しも気にせず、眉をひそめて材料の配置位置を考え込んでいる。
ただレオンが忙しくしている間、彼女はその場でしばし思案し、最終的に隅っこの木の傍らに転送魔力の印を残しておくことにした。
雨音が次第に小さくなるまで、レオンはようやくゆっくりと体を起こした、少し張り詰めた腕を軽く振り、枝を脇へ投げ捨てる。
彼は深く息を吸い込み、隣でじっと瞬きもせずに自分を見つめる少女を見て、安心したような浅い笑みを浮かべた。
「さあ、後はお前に任せる。」
「はい、お任せください。」
そう言って、ジャスミンは手を上げて媒介型転送法陣に魔力を注ぎ込んだ、しかし何の変化も起きない、ちょうどジャスミンが言葉を発しようとしたその時、澄んだ鈴の音のような声がチリンと響いた。
続いて二度、三度……一つ一つ配置された材料がゆっくりと光を放ち始める、その光はまるで活力に満ちた一匹の魚のように、レオンが枝で描いた法陣の陣紋へと泳いでいく。
この三メートルほどの法陣は絶えず明るさを増していき、最終的に鈍い雷鳴と共に、法陣全体が周囲へとまばゆい光を溢れ出させた。
地面の陣紋が宙へ浮かび上がり、三層の次第に大きくなる円形の陣紋となった、それらは規則正しく上下に往復し、光は一層強くなっていく。
「行こう。」
レオンは顔を横に向けてジャスミンを見て、真っ先に法陣の中へ一歩踏み入れる、次の瞬間、白光が走り、少年の姿は忽ち法陣の中から消え去った、ジャスミンも慌ててレオンの後に続く。
魔力の支えを失った転送法陣は徐々に崩壊し始める、光は明滅を繰り返し、最終的にすべての材料は灰燼と化し、地面に残された法陣の痕跡だけが残った。
視界は一面にかすみ、レオンの目は微かに細められていた、しばらくして、ようやく視界がはっきりとする、彼の視線は街の中で絶えず見回され、軽くため息をついた。
「初めての使用だが、ケイトロニの言葉と同じ、曖昧な目印さえあれば転送できる、ただ……一度使っただけで三百枚以上の金貨を消費した……まさに底なし沼だ。」
背後から物音がして、レオンが振り返ると、ジャスミンが彼の後ろに現れていた、ジャスミンはレオンを見てそっと微笑んだ。
「どうやら、レオン様の転送法陣は成功したようですね。」
「うむ、効果はなかなか良い、ただ今の俺の力量では、この程度の距離の転送法陣を構築するのが精一杯だ、まだ学ぶべきことが多い。」
「行こう、今夜はまず調査だ、何か手掛かりがないか確かめる。」
レオンは片手を胸の前に組み、もう一方の手で顎を支え、指先でそっと下顎を撫でる、彼の顔に大きな表情はない、やがて雨合羽のフードを頭の上まで引き上げ、立ち上がって街へと向かって歩き出した……
カタリ貴族魔法学院の外の林の中、セシリアとハンナが急速に王都の市街地へと向かっていた。
少女の足取りは軽快で、体にはハンナが雨除けのために施した魔力障壁が纏わりついている。
二人の速度は極めて速く、足元で不意に水たまりを踏んでも、飛び散った水が地面に落ちる間もなく、既に十メートル先へと駆け抜けていた、ハンナの速度は極めて速いが、わざとセシリアの後ろに付いてきていた。
ハンナは素早く走りながら、前方のセシリアに視線を向けて尋ねた。
「セシリア様、まさかレオンが先に問題を解決してしまうことをお気遣いですか?」
「いいえ、ただ早く問題を解決したいだけです。」
セシリアは振り返りもせず、無表情のまま走り続けた、ただ足元の歩調だけが更に速くなる、ある場所に差し掛かると、セシリアは慌てて体を横に傾けて立ち止まった。
それでも、泥の地面には非常に長い擦り跡が残り、泥水が周囲の木々へと飛び散り、木目に沿ってゆっくりと流れ落ちていった。
「これは……」
セシリアは地面に残された転送法陣の陣紋を目にし、その眉を微かにひそめるが、すぐにまたほどけ、滅多に見せない軽い笑みを顔に浮かべた。
「転送法陣か……覚えるのが本当に速い。」
「これはレオンの残したものですか?」
ハンナはセシリアのそばに歩み寄り、地面の複雑な紋様に目を通し、セシリアに尋ねた。
「ええ、行きましょう。」
そう言って、セシリアは向きを変えて王都の市街地へと歩き出す、ハンナは口をへの字に曲げながらも、すぐにセシリアの足取りに追い付き、二人は再び林の中を駆け抜けていった……
雨は止んだ、どんよりとした雲は溶けきらない墨のようだ、風が吹くと、雲は幾重にも剥がされ、白く澄んだ月光が清らかな輝きを放ち出す。
レオンはとある路地の入り口に辿り着き、漆黒の内部をじっと見渡している、ちょうど足を踏み出そうとしたその時、後方のどこかの隅で、微かな物音が夜の中に炸裂した。
彼とジャスミンは物音のした方を見る、ジャスミンは動こうとしたが、レオンに制された、彼は振り返ることもなく、一角に向かって歩き出しながら言った。
「ジャスミン、お前は動くな、俺が処理する。」
ジャスミンは動きを止め、そっとうなずき、その目線はレオンの背中に注がれる、月光が少年の影を限りなく長く引き延ばし、漆黒の路地の奥まで伸びていた。
(レオン様……本当に一刻も休むことがない……)
レオンの歩調は次第に速くなるが、一切の物音は立てない、彼は軽く跳躍すると、一軒の商店の屋根の上に飛び乗った、足元では雨に濡れた赤い瓦が月光に照らされて輝いている。
レオンの目線は、とある路地に注がれていた、そこには一つの影がこそこそと何かを探るように動いている、彼の手には灰色の麻袋が背負われ、左右に顔を出しながら周囲の様子を窺っている。
遠くから騒がしい音が聞こえてくる、数人の皮甲を身にまとった巡回兵だ、彼らの手には燃え盛る松明が掲げられ、松明は燃える油を絶えず滴らせ、水の上に落ちてジュッという音を立てている。
先頭の巡回隊長が松明を掲げて周囲を照らし、それから振り返って後ろの仲間たちを見た。
「おかしいな? さっき確かにあの男がこの辺りにいたんだが……」
「いずれにせよ、二人一組で何度も捜索するぞ! 絶対にあの男を逃がすな!」
「そうだ! あれだけの物を盗んだんだ、捕まえたら絶対に甘く見逃すわけにはいかない、これでどんな代償を払うことになるか、思い知らせてやらねばならん!」
そう言って、巡回兵たちはまた他の様々な方向へと歩き出した、元々騒がしかった区域は再び静けさを取り戻す。
空気に残る油の臭いが、路地に隠れていた盗賊に不快感をもたらし、震える両手で口と鼻を覆い、何とか吐き気をこらえていた。
「ふう……くそったれ、あのしつこい連中がようやく消えてくれた……」
盗賊は手を上げて眼前の空気を払う、体は緊張が解けてぐったりと弛緩し、壁に寄りかかりながら、苦しそうに一息吐き出した。
ちょうど盗賊が油断したその時、澄んだ足音が遠くから彼に向かって近づいてくる、彼は顔を上げて音の出どころを見た、月明かりは冷たく寂しげで、水たまりには月光と、雨合羽を着た一人の少年が映っている。
少年はゆっくりと頭の上の雨合羽を払いのけ、白くも平穏な顔を露わにした、その眸は蔚色の深い色をしていたが、足音はまるで盗賊の心に重く打ち据えられる槌のようだった。
「お前は何者だ?」
盗賊は眉をひそめ、レオンを見て、片手を背中に回し、冷たい光を放つ短剣を抜き出した。
レオンは何も言わず、ただ足取りが一層速くなり、次の瞬間、レオンはその場から忽ち消え去った、盗賊の瞳孔が激しく震え、足取りがふらつきながら数メートル後退した。
ドン!
レオンは先ほど盗賊がいた場所に現れていた、そしてそこにあった石板は既にレオンに踏み砕かれ、石版全体が蛛網のように砕け散り、飛び散る泥水と交じって路地の壁に降り注いだ。
「くそっ! お前は一体何者なんだ!」
目の前の少年を見て、盗賊の口調は一層苛立っていた、彼は短剣を振り回してレオンに突き刺す、レオンは身をかわして相手の短剣を避け、右足が風切り音を伴って相手の膝へと蹴り込んだ。
幸い盗賊は慌てて体を後退させ、何とかレオンの蹴りをかわす、彼は手を上げて力量増幅魔法を自身に付与し、淡紅色の薄膜が彼の全身を覆い、非常に強い力が全身に満ち溢れた。
この力の加護を得て、彼は足を踏み出し、レオンに向かって突っ込んだ、この力は極めて強く、彼の足元の石板までもが踏み砕かれる、彼は体の向きを変え、右足を振るって鞭のような一撃を放った。
レオンは回避を選ばず、両手を身前に構え、金魔力と重力魔法を腕に纏わせた、ドン! 鈍い衝突音が響き渡る。
レオンは相手の攻撃を受け止め、彼の腕は相手の右足を押さえ込んでいたが、足下の石板は既に寸寸に砕け散っていた。
相手の目に浮かぶ驚きを捉え、レオンは両腕に力を込めてぐっと持ち上げる、盗賊は体勢を崩し、瞬時に数歩よろめいた、彼が体勢を立て直す間もなく、レオンは既に彼の眼前へと迫っていた。
レオンは右手の五本の指を固く揃え、五指を揃えて盗賊の腹を突いた、盗賊がその刺し貫かれるような痛みを感じるより先に、少年は指を拳に変え、右手をもう一度震わせ、同じ箇所にもう一度盗賊の腹に拳を叩き込んだ。
ドン!
盗賊の体全体が瞬時に後方へ吹き飛び、勢いよく壁に叩きつけられ、壁に人型の輪郭が刻み込まれる。
がらがらと、砕けた石が人型の輪郭に沿って地面に落ちる、盗賊の両腕は辛うじて壁から抜け出し、体全体が絶えず揺れ、口からは絶えず血の水が溢れ出していた。
「げほっ……お前……」
盗賊が言い終わるより早く、レオンの歩調は止まらず、再び盗賊の眼前へと迫り、相手の一メートル手前まで迫り、跳躍した。
彼は体の向きを反転させる、レオンの回し蹴りは轟く風切り音を伴い、盗賊の顔に重く炸裂した、盗賊の瞳孔が開き、即座に持てるすべての力を使ってこの蹴りをかわした。
ドーン! 路地の壁に巨大な欠口が蹴り破られ、砕けた石が四方八方に飛び散る、盗賊は湿った地面に座り込み、口で必死に荒い息を吐きながら、その目に恐怖を宿していた。
「あ……殺さないでくれ!」
レオンは相手の無残な様子を見て、その眉が一度きゅっと寄せられ、口調からは感情がほとんど読み取れなかった。
「ならば、自首しろ。」
「分かった……分かった……」
盗賊は苦しそうに唾を飲み込み、震える腕で体を支えながら立ち上がる、体の奥から引き裂かれるような痛みが走り、彼は息を呑んだ。
目の前の少年の背中を見つめながら、彼の目は畏怖に満ちていたが、心中には不条理な悔しさが渦巻いていた。
(こんなに自首するのか? 牢獄で残りの人生を終えたくない、どうすればいい、あいつには勝てない……)
彼の目はレオンの背中をじっと見つめたまま、指は微かに丸まり、何度か動こうとしたが、どうしても手が上がらない。
あの少年の足音、石版を踏み砕く光景、壁に叩きつけられた激しい痛み、そのすべてが彼の脳裏に浮かび上がり、自分にはまったく隙などないと悟る。
彼は奥歯を噛み締め、歯が連続して鳴るほど強く噛みしめた、最終的に彼はただうつむき、足を引きずりながらゆっくりとレオンの後に従った。
レオンが路地を出たところで、ジャスミンが外の通りに立っており、穏やかな笑みを顔に浮かべていた。
「レオン様、巡回兵がこちらへ向かっています、先ほどの戦闘で物音が大きすぎましたので、また、戦闘の跡は私が修復しておきます、彼女たちのことについては……」
「うむ、それでいい、彼女たちは構わなくて良い。」
レオンは笑い、眸を淡々と遠くへ向け、それから後ろの盗賊に視線を落とした、盗賊は目の前で少年に微笑む少女を見る、少女の笑みはとても温かい。
ただ、彼女が何気なく自分に向けて放つ微かな魔力、その気配に、彼の瞳孔は絶えず収縮し、呼吸までもが荒くなり、心臓は誰かに力強く掴み締められているかのようだった。
(は……法則の強者……もし自分が抵抗すれば……)
彼は喉仏を動かし、口の中の生臭い血の味を飲み込み、己の判断に一息ついた、知る由もないが、彼の背中は既に冷や汗でぐっしょりと濡れていた。
遠くの鐘楼の上で、セシリアとハンナが最上部に立っていた、ハンナは隣の少女を見て、眸に淡い笑みを宿し、唇を微かに上げて、八重歯を覗かせた。
「セシリア様、どうやら、私たちは遅すぎたようですね。」
セシリアはレオンがいた方角から視線を戻し、深く息を吸い込むと、淡々とハンナを見た。
「そういうことなら、もう帰りましょう、ここに留まる必要もありません。」
言葉が終わると、彼女は向きを変えて鐘楼の階段へと歩いていく、ハンナは苦笑いしながら首を振り、慌ててセシリアの足取りに続いた。
一方レオンはというと、彼は目の前に集まってきた巡回兵たちを見て、盗賊に彼らの方へ行くよう合図した。
盗賊は何か言おうとしたが、巡回兵たちの怒りに満ちた様子を見て、結局どうしようもなく首を振り、体に禁魔石を嵌められるまで、ようやく完全にうなだれた。
巡回兵の中から一人の中年の男が進み出る、無精髭だらけの顔に感謝の笑みを浮かべ、節くれだった手のひらを差し出し、腰を屈めてレオンに差し伸べた、声は少しかすれていた。
「本当に感謝します、この数日の捜索で何度もあの男に逃げられていたんです、今こうして犯人が捕まって、我々も上層へ報告することができます。」
レオンは笑って首を振り、手を上げて男と握手した、路地からちょうど出てきたジャスミンを一瞥し、再び視線を男に戻した。
「礼には及びません、私も人に頼まれただけですので、それでは、ここでお別れしましょう。」
男はうなずき、レオンに微かに頭を下げ、その口調には敬意と喜びが満ちていた。
「では、確かに時刻も遅いですし、これ以上お邪魔しないことにします、私の名はオーヴェと言います、今後何か必要なことがあれば、巡回団に私を訪ねてください。」
「承知した、機会があれば必ず伺おう。」
レオンはオーヴェとしばらく言葉を交わし、相手が盗賊を連れて夜の闇へ消えていくのを見届けた後、レオンは顔を横に向けてジャスミンを見た。
「ジャスミン、戻ろう、どうやらこの件は解決したようだ、大きな問題にはならないだろう。」
「はい、レオン様、では、時間も差し迫っておりますので、私のわがままを少しお許しください。」
そう言って、ジャスミンは手を上げて前方に差し出す、透明な円形の穴がその場でゆっくりと開いていく、穴からは冷たい空気が絶えず溢れ出し、二人の髪を吹き上げた。
レオンは笑い、穴の先に媒介型転送法陣のある位置が映っているのを見て、片方の眉をそっと上げた。
「どうやら、お前は準備万全だったようだ。」




