↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵紀行  作者: 梓UU
42/54

学院編:第四十二話:神々が創造した公平な世界

ケトロニはチョークを講台の机の上にそっと置き、軽やかなカチッという音を立てた。


彼の体は微かに前傾し、両手のひらで褐色の講台の縁を支える、背後に垂れた尾がゆっくりと左右に小幅に揺れている。


視線は階段状の座席に座る一人ひとりの若い顔を、最下段の前列から、ゆっくりと最上段の後列まで、一人も漏らさずに掃く、その後、穏やかな口調で言った。


「ネソットム——これが我々の生きる大陸だ、それは数万年前に神々によって創造された、神々は創世の初めに、世の中のすべての生きとし生けるものに、世界を覆すに足る一つの権限を開放した。」


何人かの学生の目が瞬時に輝き、多くの者が微かに背筋を伸ばした。


一人の男の学生が手を挙げる、ケトロニは発言を促す、男生徒は立ち上がり、興奮した口調で言った。


「知っています、教授、その権限とは——『公平』です!」


答え終えると、男の学生は素早く座り、周囲の学生たちを見渡し、顔に得意げで誇らしげな表情を浮かべる。


ケトロニは微かにうなずき、再びチョークを手に取り、黒板に「公平」の二文字を書く、そして円を描いてそれを囲み、再び学生たちに向き直る。


「そう、公平だ、私はかつて、遠い古代に残された多くの典籍や、二柱の神々が遺した壁画——すなわち【創世神と破壊神】——を紐解いたことがある、聞くところによると、世界の外の異界では、そこに住む人々は生まれながらにして枠にはめられているという。」


「魔力は彼らにとって贅沢な存在であり、生まれながらに火を起こすことしかできない者、生まれながらに水を操ることしかできない者、あるいは魔力を全く持たない普通の人間がいる、彼らは一生を単一の体系の中に閉じ込められ、二度と半歩も越えることができない……」


台下から学生たちが顔をうつむかせるざわめきが起こる、数人の学生が驚いた目を交わし合う、ジャスミンは微かに眉をひそめ、この言葉を真剣に消化する。


レオンは本を置き、指先で机を軽く叩く、神色に大きな変化はなく、静かにケトロニの話を聞いている。


隣の少女は一瞬レオンを見ただけで、すぐに視線を戻し、再びケトロニに注ぐ。


そう言いながら、ケトロニは髭を撫でる、灼熱のような目々を見渡し、頭上の耳を震わせてから、さらに笑いながら続ける。


「しかし、この大地には、そのような考え方は決して存在しない、天地の間の魔力はもともと同じ源から出ており、世の中の隅々にまで満ちている、あらゆる種族は生まれながらに魔力を宿す基盤を備えており、例外は一つもない。」


「世の中のすべての魔法と元素——炎、氷、風、雷、生命、死、空間……誰でも学び、磨くことができる、魔獣でさえ使用できる、かつて何の障壁も存在したことはない。」


そう言って、ケトロニは自らの魔力を用い、手の中に血のような赤い炎を燃え上がらせる、炎の上方には一つの水球が浮かび、炎は激しく燃え続け、空気中には熱波が漂う。


炎が絶えず滾るにつれ、水球は沸騰し、ついにパチンとはじけ飛ぶ、しかし、その熱湯がケトロニの体に触れようとした瞬間、瞬時に消え去った、彼は続けて言う。


「通常の状況であれば、炎は燃えている状態で水球を沸騰させることができる、しかし、我々の世界では、元素を自由に組み合わせることができ、決して抑制や排斥の現象は起こらない。」


次の瞬間、巨大な水球がケトロニのそばに浮かび上がる、ただ、水球の中心では、滾る炎が燃えており、水によって消される気配は全くない。


続いて、水球は即座に氷へと変わる、一瞬にして冷気が教室全体を満たす、そして、氷の中の炎は依然として滾っており、全く影響を受けていない。


カッと、氷に突然ひび割れが走り、地面に落ちてガチャガチャと鈍い音を立てる、炎が溢れ出し、続いて炎は紫色の雷光へと変化する。


雷光がケトロニの手の中で絡みつき、パチパチと爆ぜる音を立てる、電花が飛び散るが、一つとして学生たちに落ちることはない、彼は微かに笑い、手を上げて指を鳴らす。


紫色の雷光が滾りながら再構成され、一頭の毛皮が全面紫紺の猛虎となる、虎の瞳の中から細かな電光が迸り、低く重厚な咆哮が教室全体を震わせ、机や椅子を微かに唸らせる。


猛虎が雷光一閃、その形態が忽ち再構築され、二メートルの雷の人形となる、半空で拳や脚を舞わせ、拳を繰り出し蹴りを放ち、次々と鋭い戦闘態勢を繰り出す。


瞬く間に人形は再び溶け、一振りの巨大な雷の大剣となり、教室の上空に浮かんで絶えず旋回する。


大剣が猛然と外へ散り、無数の細かな雷槍や雷矢など、様々な武器の形に崩れ去る、すべての学生の座席の周囲をゆっくりと漂い、電光がきらめく。


その後、無数の雷の破片が炸裂し、まるで一匹一匹が舞う水晶の蝶のようになり、それぞれの机の上と絨毯の上に落ちて消えていった。


「魔力は様々な元素に変換できる、同時に、元素は自由に組み合わせ、融合させ、あるいは変換することができる、また、どんな形にも作り変えることができる、それは君の想像力に由来する、だから、逆に、水で火を煮ることも可能なんだ。」


「ケトロニ教授のお話は本当に分かりやすいですね、私はずっと、なぜ私たちが自由に元素を組み合わせられるのかと考えていました……」


一人の学生が手を上げて拍手を送り、顔には得心したような表情を浮かべる、他の学生たちもそれを見て、慌てて拍手を送る、ただ、机を軽く叩いていた指だけが、微かに止まった。


ケトロニはうなずき、髭を撫でながら、ゆっくりとした口調で続ける。


「おそらく、人の出生が階級を決めることはあっても……しかし、魔力の基礎を変えることはできない、この世界には、典籍に記されているような才能、血統、種族特権、そして、いわゆる神々の恩恵など存在しない。」


彼は再びチョークを手に取り、黒板に「種族」の二文字を書き、円を描いてそれを囲み、指で軽く叩く。


「つまり、この世界の全種族は統一された魔力の基礎を持つ、元素を掌握したいのであれば、基礎から始めなければならない、近道は一切ない、例外なくだ。」


「同時に、世界の本源の関係で、全種族の寿命は統一されており、およそ五百年程度だ、魔力は元素に変換して戦闘に用いることができる、元素を掌握した後は、魔法を学ぶことができる。」


「教授、なぜ私たちの世界は彼らと違うのですか?」


レオンの隣の少女が疑問を感じ、その声は清らかだが、とてもはっきりと響く。


ケトロニは満足げにうなずき、皺だらけの顔に笑みを浮かべる、彼は指先で軽く揉みしだきながら、穏やかな口調で言う。


「非常に良い質問だ、なぜこうなのか、その理由自体は実は簡単なんだ、ただし、これはあくまで伝承であり、確かな答えを出せる者はいない。」


「伝説によれば、二柱の神々が世界を創造した時、彼らの姿に倣って人族を創り出した、その後、竜族、エルフ、ドワーフ、妖精、魔族、獣人などを形作った……しかし、その原因はすべて人族にあると言われている。」


「人族? なぜですか、教授?」


「そうです、私には分かりません、それが人族と何の関係があるのですか?」


「そうですね、なぜ人族なのですか?」


学生たちの声が教室に響き渡る、空間全体が疑問と疑念に満ちている、ケトロニは手を半空に上げ、その口調は相変わらず穏やかで、少しの不満もない。


「ここで、非常に面白い点が出てくる、ある意味、幼稚と言えるかもしれないが、しかし、それはあくまで伝説だ……」


「人族は竜族に比べて巨大な体躯を持たず、エルフに比べて長い寿命を持たず、妖精に比べて魔力への親和性を持たない……」


「つまり、人族はこの世界において、ほとんど足場を持つことができない、しかし、まさに人族が彼らの姿に倣って形作られたため、神々はこのような弱い人族を決して許さなかった。」


「そこで、彼らは世界全体を書き換えた、真に公平な世界において、人族が一体どこまで到達できるのかを見たかった、それだけのことだ。」


「何ですって? そんな理由で?」


「神々の理由があまりにも牽強すぎる!」


「私は初めて聞きましたよ……」


学生たちの声が再び教室に響き渡る、疑問と好奇心が入り混じった雑音となり、ほとんど教室の屋根を吹き飛ばさんばかりだ。


ケトロニは急いで場を鎮めようとはせず、ただそこに立って、尾を軽く揺らしながら、声が自然に収まるのを待つ。


教室が再び静かになるのを待って、彼はゆっくりと口を開く、その口調には浅い笑みが含まれている。


「君たちが何を考えているか分かっている、『そんな理由で? あまりにも児戯に等しい、神々がそんな理由で世界全体を書き換えるはずがない』と。」


彼は笑い、髭を撫で、頭上の耳を軽く震わせてから、続けて言う。


「同時に、この世界の魔力は三段階に分けることができる、第一は最も基礎的な——【魔法段階】だ、これは、すべての人が世界を知るための入門と言える、それらは一律に【魔法階級】と呼ばれる。」


「つまり、一つの魔法を掌握していれば、その中に包含される、君は全元素と魔法を自由に使用でき、魔力を利用して元素に変換して攻撃したり、あるいは魔法と組み合わせて使用したりできる。」


「第二は、この世界の中核を成す——【法則段階】だ、魔力が新たな次元に達すると、魔力は法則へと質的に変化する、法則とは、天候を操り、規則を書き換えるなど、より強力な力のことだ、同時に、自身の力は魔法段階の百倍以上となる。」


「そして第三については……」


ケトロニは言葉を止め、教室の中の一人ひとりの、亢奮に満ちた表情を見渡す、彼は口元を上げ、目には慈愛の光が宿り、手を上げて学生たちに自由に発言するよう促す。


台下から即座に、数人の学生たちが我先にと声を上げる、少年たち特有の熱烈な憧れが込められている。


「知っています!【トップの強者】です!」


「世界のすべての基礎本源の元素、魔法と法則を直接操ることができます。」


「それは大陸の最頂点の存在です!法則の強者では全く敵いません!」


「その段階に達すれば、もはや通常の戦力で測ることはできません、世界の規則を手にしているも同然です!」


学生たちが満眼の憧憬と熱狂的な議論に浸る様子を見て、ケトロニは満足げにうなずく、彼の顔には質朴な笑みが浮かび、嘲笑や侮蔑はなく、ただ一人の教授としての温和さがある。


“はい,頂点の強者はこの世界の規則制定者です,同時に,彼らは本源技能を創造し,あるいは本源武器を創造できます。”


“しかしこれは特権ではなく,彼らが一歩一歩磨き上げ選択してきた結果であり,頂点の強者へと至った者は,誰にでもこの権利がある。”


レオンは微かにうなずき、ジャスミンもうつむいて考え込む、しかし、これらは誰の気にも留められない、学生たちは皆、至高の境地への幻想と憧れに浸っている。


ケトロニは学生たちの目が自分に向くのを待ってから、喉を鳴らし、さらに笑いながら続ける。


「世界は公平だ、結果は運命ではなく、君の選択だ。」


「安定した生活を望むなら、複雑な魔法を学ぶのを完全に放棄し、平凡に一生を過ごすこともできる、強者になりたいのなら、技術を磨き、魔力を鍛え、熟練度を高めていくことだ……」


ケトロニは机を叩き、その声は久しぶりに厳しくなる。


「しかし、突き詰めれば、努力すれば報われる、普通の人でも魔法を使うことができ、強者は法則を操り、頂点の強者は世界の基礎本源を用いる、最終的には、君個人の成長、そして魔力の運用、そして——選択にかかっている。」


「この世界では……努力すれば報われるのだ。」


ケトロニの言葉を聞いて、学生たちの熱意は次第に冷めていく、残ったのは、一対一対の、決意に満ちた目だけだった。


レオンは指先で本の角を撫でながら、時折窓の外に視線をやる、ジャスミンはあまり表情を変えず、ただ静かに老人の言葉を聞いている、何を考えているのかは分からない。


中には、どうでもいいと感じる者もいて、窓の外を見たり、手元のペンを弄ったりしている者もいるが、大多数の学生はこの言葉を非常に認めている。


「そうです、ケトロニ教授のおっしゃる通りです、私もいつか頂点の強者になります。」


「努力すれば……報われるのか……」


「なるほど、ここが肝心な点だったんですね、ケトロニ教授……」


その時、一人の学生がゆっくりと手を挙げる、ケトロニは発言を促す、学生の背は高くなく、目はとても澄んでいる、彼は疑問そうに尋ねる。


「教授、それでは、カタリ貴族魔法学院と普通の学院には、どのような違いがあるのですか?」


ケトロニは微かにうなずく、その目は光を宿し、髭を撫でながら言う。


「カタリと普通の学院に、実際には大した違いはない、魔法は公開されている、学院が特別なのは身分だ、言い換えれば、ここにはいくつかの地下城が追加されている、同時に、貴族が人脈を築くための社交の場でもある。」


「なるほど、そういうことでしたか……」


学生はうなずき、ゆっくりと座り、うつむいて机の上を見つめながら考え込む、顔を上げることはない、その時、鐘の音が響き渡る、ケトロニは両手を叩き、軽やかな音を立てる。


「諸君、授業終了の時間だ、本日の授業はこれまでとする、以降は、自由行動としてよい。」


ドーン!鐘の音が一打ち響く、階段教室の学生たちは次々と立ち上がる、それまで沈んでいた空間が、瞬時に喧騒を取り戻す。


全員が続々と机の上の本や筆記用具を片付け、二、三人ずつ集まって、今日の授業内容について低声で話し合う。


先ほど授業で聞いた世界の真実が、依然として一人ひとりの心に澱のように残っている、人々は神々の創世の荒唐無稽な理由を語り合い、大陸の絶対的な公平という根底の規則に驚嘆し、将来の修行の道を思い描かずにはいられない。


多くの学生が依然として三つの境地への衝撃に浸り、魔法、法則、本源掌握者の差を繰り返し口にする。


かつては漠然としていた修行の概念が、ケトロニの解説を通じて、完全に明確になり透き通った、全員が初めて、自分たちと大陸の頂点の強者との間に、生まれながらにして何の差もないことを、真に認識した。


隣の席の学生たちは互いに冗談を言い合い、拳をこすって帰って倍増の努力で魔力を磨こうとする者もいれば、心は穏やかで、平凡に一生を過ごせればそれでいいとだけ考える者もいる。


異なる心境、異なる選択が、ひっそりと授業中にケトロニが語った道理を裏付けている。


レオンはゆっくりと手にした本を閉じ、動作は静かだ、彼は顔を上げ、散っていく人波を見渡す、神色は平淡だ。


隣の少女は教科書を閉じ、余計な動作や表情はない、彼女は人波に従って立ち上がり、急がずゆっくりと席を離れ、行き交う学生たちの中に溶け込んでいく。


教室の中の学生は次第に空になり、騒がしい人声はゆっくりと消えていく、ケトロニは講台の前に立ち、ゆっくりとチョークや教案を片付けている、尾が軽く揺れている。


窓の外の日差しが石柱の隙間を通して差し込み、誰もいない机や椅子の上に落ちる、優しく穏やかだ、世界の本質についての一つの授業が、完全に幕を閉じた。


誰も規則の正しさを疑わず、誰も伝説の真偽を深く追求しない、すべての学生は、最も単純で最も重みのある道理を心に刻んだ。


【世界は生まれながらに公平であり、人生のすべての結末は、結局のところ、自分自身が歩んできた取捨選択と堅持にかかっている。】


レオンは立ち上がり、ケトロニの下へ歩いていく、ジャスミンも立ち上がり、その後ろに従う、レオンは忙しくしている老人を見て、声は落ち着いている。


「ケトロニ教授、一つお伺いしたいことがあります。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。