学院編:第三十九話:忘れられぬ少女
プーヤは手を上げて口元を覆い、漆黒の瞳に細かな光を揺らめかせ、眼底に幾分かの好奇心を浮かべて、穏やかで耳障りの良い声で言った。
「え? ジャスミンの誕生日なの?」
「ああ、明日はジャスミンの誕生日だ。」
レオンは微かにうなずき、体を本棚に軽く預ける、口元にはほのかな笑みが浮かび、神色は穏やかで淡々としている。
プーヤは指先で古びた本の表紙をそっと撫でながら、目の前の少年に視線を落とし、穏やかな口調で尋ねる。
「私にどんな手伝いが必要なの?」
レオンは微かにうなずき、眸の底に一瞬の淡い苦笑を浮かべて、ゆっくりと口を開く。
「実はこういうことなんだ、本来は一人で王都の市場に行こうと思っていたんだが……」
彼は一瞬言葉を止め、窓辺の銀髪の少女に視線を走らせ、再びプーヤに視線を戻して、低声で続ける。
「しかし、ジャスミンがどうしても同意しなくてな……だから、君に頼みたいんだ、アリットを同行させてもらえないか? もし都合が悪ければ、彼女を連れて行くしかない。」
レオンの言葉が終わると、プーヤは微かに呆け、レオンと顔を見合わせる、広大な図書館は非常に静かで、残っているのは書頁がめくられるサラサラという軽い音だけだ。
陽光がガラスを透して図書館内に差し込み、浮遊する微細な塵が光の束の中でゆっくりと漂う、周囲の雰囲気は静まり返り、ほとんど凝り固まったかのようだ、レオンは静かにプーヤが口を開くのを待つ。
しばらくして、プーヤの眼底の疑惑はようやく消え、浅い笑みが広がる、彼女は横を向き、非常に軽い視線を遠くない窓辺に向ける。
ジャスミンは木製の机の前に端座し、背筋をピンと伸ばし、柔らかな銀色の長い髪が肩に垂れている、彼女はまぶたを伏せ、長い睫毛が微かに震えている。
少女の視線は黄ばんだ書籍の紙面に集中しており、顔には何の波もない、まるで周囲のすべての動きが、彼女とは全く関係ないかのようだ。
プーヤは視線を戻し、ゆっくりと声を潜め、得心したようにうなずく。
「そういうことか……ジャスミンはあなたが一人で王都に行くのを、未知の危険に遭うのを心配しているのね。」
「彼女はいつもそうだ。」
レオンはうなずく、その口調は非常に平淡だが、その言葉の中には、かすかに気づきにくい苦笑が含まれている。
プーヤは彼の柔らかな眉目を見つめ、口元の笑みをますます柔らかくする、少女は両手で本を背中に軽く当て、体を微かにかがめて、笑いながらレオンを見る。
「この件、喜んで手伝うわ。」
レオンは再び窓辺に静かに座るジャスミンに視線を走らせる、しかし少女はすでに本を置き、遠くの窓の外の景色を眺めてぼんやりしている、レオンはそれから悠然と視線を戻す。
「ありがとう、ただ彼女に誕生日の贈り物を送りたいだけなんだ、それだけだ。」
プーヤは目を細め、澄んだ眼底は優しさで満ちている、少女は軽くうなずき、少し思索してから、筋道を立てて低声で言う。
「明日の計画を万全にするために、私が学院に残ってジャスミンを引き留めておくわ、絶対にあなたの予定を乱したりしない。」
言葉を終えると、彼女はわざとらしく軽く咳を一つし、改めて真剣な保証を付け加えた。
「それに……私、絶対に秘密は守るから、事前にジャスミンに知られたりしないようにするわ。」
二人の話し声は極めて低く抑えられ、細かな会話の音は図書館の静寂の中に薄まり、窓辺に座る銀髪の少女の耳元には全く届かない……
しばらくして、ジャスミンのページをめくる指先が突然止まり、長い睫毛がごく軽く震えた。
彼女は顔を上げず、横を向きもせず、ただうつむいて本を読む姿勢を保ち、指先がその一ページに数秒間留まり、それから再びゆっくりとページをめくった。
ジャスミンは感じ取っていた、レオンとプーヤの視線が何度も彼女に落ち、その後すぐに逸らされるのを、しかし、少女はページをめくる指をほんの少し強く握っただけで、他の動作はしなかった。
しばらくして、レオンは手元の本を手に取り、ゆっくりとジャスミンの向かいに歩いて腰かける、本を机の上に軽く置き、微かに身をかがめて、声を潜めて口を開く。
「ジャスミン、話があるんだ。」
ジャスミンはゆっくりと本を閉じ、顔を上げる、赤い瞳には浅い諦めの色が揺れ、その様子は愛らしい。
「レオン様……どうぞお聞かせください。」
レオンは少女の様子を見て笑い、眼底に幾分かの遊び心を浮かべる。
「どうした? 機嫌が悪いのか? もう少し笑ったほうが君らしいよ。」
「レオン様の答えはお顔に書いてありますから、もちろん分かります、あなたとプーヤの話し合いは、成功したのでしょうね。」
ジャスミンは口をへの字に曲げ、視線を横に向ける。
「そうか……でも、一つ忘れていることはないか?」
レオンは本を手に取り、指で背表紙を撫でながら、まぶたを上げてジャスミンを見る、その眼底にはまだ穏やかな笑みが浮かんでいる。
ジャスミンは微かに眉をひそめ、じっとレオンを見つめる、少年の表情はとても穏やかだが、彼女には一点の隙も見つけられない、思わず続けて尋ねる。
「何を忘れているんですか?」
「それは秘密だ、時期が来たら分かる。」
レオンは笑い、本を再び平らに机の上に広げ、手を上げて最初のページを開いて読み始める、その後、ジャスミンが何度尋ねても、レオンは淡い笑みを浮かべたままだったため、ジャスミンには本を読む気が全く起きなかった。
時間はすぐに昼になり、二人は食事をとり、一時間ほど休憩した後、レオンとジャスミンは学院の魔獣を育成する御獣園へ向かい、様々な奇妙な魔獣を見た:
一匹の猟犬のような魔獣が鉄の檻の中に丸まって横たわり、鼻腔から時折暗赤色の火花を噴き出している、案内板にはこう書かれていた:焔歯獣——成熟個体が吐く炎の温度は千度に達し、精鋼をも溶かし貫く。
一匹の二メートルほどの青い甲虫が巨岩のそばに張り付いている、次の瞬間、あの万斤もの巨石が容易に頭上高く持ち上げられた、甲虫の背中の十字紋様が陽光の下で冷たい青い光を放ち、両目には闘志が満ちている。
そして檻の最も奥には、体つきの小さな黄金色の魔獣が丸まっている、その両頬にはそれぞれ一本ずつの赤い電紋があり、尾は稲妻そのもののようだ。
案内板にはこう紹介されている:感情が高ぶると強力な高圧電流を放出し、魔法級の魔獣を一瞬で感電死させることができる。
ジャスミンがそれを二度見ると、その魔獣は首を傾げ、丸くて黒い目で彼女を見返し、細く柔らかなチューチューという鳴き声を発した、見た目には少し可愛らしい。
その後、二人は他の建物も見学し、最後に学院で最も高い観星主塔に立った、塔の頂上は風が強く、レオンの服の裾とジャスミンの銀髪を揺らす。
ここから見下ろすと、学院全体の輪郭が一目で見渡せる——教学楼、訓練場、御獣園、図書館、そして遠くに連なる城壁などの建物。
ジャスミンは欄干に手をかけ、ゆっくりと全ての方向に視線を巡らせる、彼女の視線は東側の城壁に二秒間留まり、それから逸らされた、この古典的な建築と美しい落日を見て、その口調は感嘆に満ちている。
「本当に美しいわね。」
レオンは彼女の視線の先を追い、落日に金紅色に染められた広大な建築群と美しい夕日を見る、レオンはジャスミンの後ろに立ち、目の前の少女を見つめながら、穏やかな口調で言う。
「そうだな。」
少女は振り返らず、ただ静かにそこに立ち、夕風が彼女の髪を乱し、半空で絶えず揺れ動くままに任せている。
落日はゆっくりと地平線に沈み、空全体を次第に変化する色の層——橙紅色から、緋紫色、そして深い藍色へと染め上げる、学院の灯りがゆっくりと灯り始め、高い場所から見ると、まるで地面に生えた星々のようだ。
「行こう、戻る時間だ。」
レオンは振り返り、その声は非常に平静だ、ジャスミンは名残惜しそうにあの落日を一瞥し、それから視線を戻し、しっかりと少年の歩みに従う……
時間は決して止まらない川のように、一秒一秒が流れ去り、瞬く間に一片の静寂の深夜となった。
そして、露天の魔法訓練場では、レオンが体をかがめて絶えず息を切らしていた、戦闘はすでに一時間続いている。
滴り落ちる……
汗が頬を伝って絶えず地面に滴り落ちる、少年の服はとっくに汗でびっしょりと濡れている、レオンは眼光鋭くジャスミンを睨みつけるが、少女は相変わらずそこに立っているだけで、何の変化もない。
レオンは無理に体を真っ直ぐに伸ばし、そっと息を吐き出す、次の瞬間、全身で素早くジャスミンに向かって突進し、一拳また一拳と繰り出す、その拳の一つ一つが極めて巧妙だ。
右手の拳がジャスミンの顔面に向かって襲いかかる、ジャスミンは手を上げてガードするが、それがレオンのフェイントであることに気づいていない。
左手がジャスミンの腕を回り込み、彼女の腹部に向かって打ち込まれる、もしレオンと同レベルの相手であれば、反応できる者はほとんどいないだろう、しかしジャスミンの目には、それもただのスローモーションに過ぎない。
「レオン様、その技は通用しませんよ。」
ジャスミンは再び体を回転させ、容易にかわす、しかしこれもまたレオンのフェイントであり、本当の狙いは下半身に隠されていた、二つの技はすべて、素早い払い蹴りのための布石だった。
ヒューッ!
空気を裂く音とともに、レオンの払い蹴りがジャスミンの両脚に向かって放たれる、しかし残念ながら、靴底がジャスミンのローブの裾をかすめただけで、ジャスミンに脅威を与えることはできなかった。
ジャスミンは体を後退させ、続いて前方に急降下し、レオンの肩を一押しする、レオンはそのまま地面を数回転がり、身に着けていた白いシャツはとっくに血痕と埃で覆われている。
レオンは地面に横たわったまま空を見上げ、その声は平淡だ、体の多くの場所からまだ血が滲み出ており、痛みが絶えず血肉をかじる蟻のように少年の体を微かに震わせているが、彼は依然として何の表情も浮かべない。
「今日は、ここまでにしよう……」
レオンは動かず、そのまま地面に横たわって夜空を見つめる、ジャスミンは彼のそばに歩み寄り、手を上げてレオンの傷を治療する、その口調は思いやりに満ちている。
「レオン様、少しはお楽になりましたか?」
ジャスミンの治療は非常に速く、瞬く間に終わらせる、レオンの体に擦り傷の痕跡はすべて消え去り、何も残っていない、少年はジャスミンが差し出した手を見て、微笑みを浮かべて言う。
「ありがとう。」
ジャスミンはレオンを地面から引き起こし、目の前の少年を見て、今日のパフォーマンスについて総括する。
「レオン様、本日の出来栄えは普段の合格基準を満たしています、唯一の欠点はスピードが遅すぎることです、身体の力はかろうじて優秀と言えるまでに鍛えられていますが、スピードが力に追いついていなければ、頭でっかちになるだけです。」
「そうか……」
レオンはジャスミンを見て苦笑いする、彼は両手を腰に当て、軽くため息をつき、夜空を見つめて長い間考え込む、ジャスミンは静かにレオンのそばに寄り添っている。
しばらくして、レオンは視線を戻す、彼は適当に付いていない埃をはたき、ジャスミンに向かって笑顔を見せる。
「分かった、次は気をつけるよ、戻ろう。」
「はい、問題ありません、レオン様。」
ジャスミンは脇に歩き、レオンが長椅子に置いていた学生の長袍を手に取り、その後、自分を待っている少年の前に歩み寄る、少年はうなずき、二人は一緒に宿舎区へと歩いていく、訓練場には時折虫の鳴き声が残されるのみである……
翌日、陽光は相変わらず明るく、地面に金色の光を敷き広げる、空を飛鳥が掠め、互いに追いかけ合い歌っている、学生たちの話し声と笑い声が窓を通して部屋の中に流れ込む。
トントン——
ノックの音が響く、ジャスミンは玄関に向かい、鍵を開ける、目に入ったのは、プーヤとアリットが静かに扉の外に立っている姿だ、陽光が彼女たちの上に降り注ぎ、髪の毛が風に軽く吹かれている。
目の前の少女は白いワンピースを着て、柔らかな黒い長い髪をポニーテールに束ねている、黒い小さな革靴はきれいに磨かれ、白い顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。
アリットはオレンジがかった赤の短い開襟の上衣に、黒い長ズボンを合わせている、顔には相変わらずあの淡々とした表情が浮かんでいる。
「おはよう、ジャスミン。」
プーヤは右手を上げてジャスミンに手を振る、左手は常に背中に隠している、アリットはジャスミンに軽くうなずく、ジャスミンは笑ってうなずき、二人が部屋に入るスペースを空ける、その時、プーヤは左手をジャスミンに差し出し、口元をわずかに上げる。
「あなたに贈り物よ、ジャスミン。」
「あ……ありがとう……プーヤ……」
ジャスミンは少し戸惑い、プーヤの手の中の白い雛菊を不思議そうに見つめる、純白の花びらが幾重にも広がり、柔らかな黄色い蕊を囲んでいる、茎は細くまっすぐで、花は大きくなく、強い香りもないが、とても美しく見える。
プーヤとアリットがスリッパに履き替えた後、プーヤは部屋の中の配置を見渡す、それは彼女の部屋と何ら変わりはない、唯一目を引くのは、机の上に大量の本が積まれていることだ。
本はすべて帝国、学院、魔法の力、経済などに関する様々な書籍であり、一冊は平らに広げられており、どうやら半分ほど読んだようだ。
「こんなにたくさんの本があるのね……」
プーヤは本を一瞥し、そっとソファに腰かける、アリットはただその中の一冊の魔法陣理論説明書を見つめ、その後、視線を部屋の中に左右に巡らせる。
「朝、何をすればいいか分からなかったので、レオン様の本を少し読んでいました。」
ジャスミンの手にはトレイが載せられており、その上にはかすかな湯気を立てる二杯の紅茶が置かれている、茶の香りが部屋のリビングに漂い、その匂いは非常に心地よく、柔らかな木の香りをまとっている。
「そうなんだ……」
プーヤはうなずき、ジャスミンから差し出された紅茶を受け取る、カップの中に浮かぶ一つの茶殻を見つめ、赤い茶湯が微かな波紋を立てるが、温度は意外にも穏やかだ。
「ありがとう……」
アリットは紅茶を受け取り、息を吹きかける、少し乾いた唇で紅茶を一口含む、口に入れた瞬間、あの木の香りが口中に広がり、蜂蜜の微かな甘みを帯びている。
アリットは目を輝かせ、それ以上は何も言わず、ただうつむいて茶を味わうことに専念する。
ジャスミンは机の上の本を片付け始め、一冊一冊をきちんと整え、脇の本棚に並べる、プーヤはジャスミンを見ながら尋ねる。
「そういえば、レオンは?」
ジャスミンは一冊の本を整え終え、振り返ってプーヤを見る、その口調は穏やかだ。
「レオン様は着替え中です、もうすぐ終わるはずです。」
その言葉が終わった直後、カチッと扉の音とともに、レオンが部屋の扉を開けて部屋の入り口に立つ、三人の視線が一斉に少年に向けられる。
レオンは中に素白の長袖を着て、その上に濃い灰色のゆったりとした短いアウターを羽織り、濃い褐色の裾を絞った長ズボンを合わせている、スタイルは簡素で控えめだ、彼は三人を見て、眉を軽く上げる。
「おはよう、まさかこんなに早く来るとは思わなかったよ。」
プーヤはレオンの服装を見て、うなずきながら、からかうような口調で言う。
「その服、よく似合ってるわね、まさかこんなにセンスがいいなんて思わなかったわ。」
隣のアリットもレオンにうなずき、手にはまだ紅茶を携えている、ジャスミンもプーヤの言葉に続き、その顔には認める表情が浮かんでいる。
「そうですね、そのお召し物はあなたによくお似合いです、レオン様。」
レオンは扉枠に寄りかかり、軽く笑いながらプーヤを見て言う。
「褒めすぎだよ、ただ普通に合わせただけさ、でも、時間が迫っている、プーヤ、俺とアリットはそろそろ出発しなければならない。」




