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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第三十四話:アンドリュート魔石

酒場の中は相変わらず喧騒に満ちていた、半刻(約一時間)の賑わいが静かに過ぎ去り、食卓の上の料理はすべて食べ終えられていた、ジャスミンは手にしたジュースを小さく口に含みながら、静かで優しい動作を続けている。


プーヤはそっと腹部を揉み、顔には満足げな表情が浮かび、身体全体がリラックスしていた。


「ああ~お腹いっぱい! 満足した! さあ、出発しましょう。」


レオンは手にしていたジュースを置く、杯の底が机に触れて軽い音を立てる、彼はナプキンを手に取り、口元を拭う、その動作は非常に落ち着いている、少年がゆっくりと立ち上がると、それに合わせて残りの三人も順に立ち上がる。


「レオン様、少々お待ちください、私がお会計を済ませて参ります。」


ジャスミンはレオンの前に歩み寄る、その顔には少女らしい変わらぬ温和さが浮かび、眉も目も柔らかい、アリットは隣のプーヤを一瞥し、彼も慌てて同調する。


「プーヤ様、私もお会計をして参ります。」


そう言って、二人は並んでカウンターへと向かう、レオンとプーヤは目を合わせ、その視線が軽く触れ合い、思わず軽く笑みをこぼす。


酒場の中は相変わらず騒がしく、賑やかな光景が広がっている、ある者は爛酔して、席に座ったまま頭を揺らし、肘を無造作に机の上に置いている、ある者は食べ物をじっくりと噛みしめ、顔には満足感が満ちている。


カウンターの前では、旅人が仲間と低い声で言い争っている。


「おい、聞けよ! 俺はこのくらいの金、惜しくないんだ! 俺が払う!」


黒いローブを着た男性の旅人が、隣の竜族の冒険者を引き止める、酒気が上って顔は赤く染まり、足取りはふらついて安定せず、情緒は非常に高ぶっている、まるで踊っているかのような様子で、その姿は滑稽でありながらも生き生きとしている。


その様子を見て、ヴィナと隣の受付係は慌ててうつむき、こっそりと手で口を覆って笑いをこらえる、肩がかすかに震えている。


「デム、今日は私に払わせてください、いつもお世話になっていますから。」


隣の竜族の冒険者も負けてはいない、彼女の細かな鱗に覆われた白い顔は薄らと赤く染まり、酒後の熱で身体からはかすかに湯気が立ち上っている、その目つきは頑固でありながらも誠実さに満ちている。


「私に払わせて! 私に!」


彼女は手を上げて衣嚢の中を素早く探り、金貨を取り出すと、手のひらを広げてヴィナに渡そうとする、しかし隣の旅人が、その金貨を掴んで彼女のポケットに押し戻す。


二人が押し問答を続けている様子を見ると、どうやら短時間では終わりそうにない。


ヴィナともう一人の受付係は笑いを必死に抑え、無理に冷静を装う、ジャスミンとアリットが歩いてくるのを見ると、すぐに態度を引き締め、職業的な標準の笑顔に切り替える。


「お客様、ご用餐はお済みでいらっしゃいますか?」


「はい、お会計をお願いします。」


ジャスミンの表情は平淡で、その瞳の光には沈着さが宿っている、少女は腕を微かに歪んで揺らぐ空間の中に差し入れて探る。


ヴィナはうつむいて素早く費用を計算する、数秒後、少女は顔を上げてジャスミンを見る。


「お客様、合計で五枚の銀貨になります。」


ジャスミンの手のひらがゆっくりと開かれる、五枚の新品の銀貨が静かに掌の上に載っている、店内の照明に照らされて、きらめく光を反射している、彼女は銀貨をヴィナに差し出す。


「ご確認ください。」


ヴィナは金額に間違いがないことを確認すると、両手を整えて身前に重ね、ジャスミンに向かって微かに身をかがめる、その口調は軽やかで活力に満ちている。


「問題ございません、またのご来店をお待ちしております、ありがとうございました!」


隣のアリットも会計を終え、彼は相変わらず言い争いを続ける旅人と竜族の冒険者を避けるようにして体を横にずらし、仕方なさそうにため息をつく。


「まったく、面倒だな……」


ジャスミンは彼の小さな呟きを聞いて、口元がほんのりと弧を描く、その眼底にはかすかな笑みが走る、彼女は顔を上げて、ゆっくりと歩いてくるレオンとプーヤを見る、その声は柔らかく優しい。


「レオン様、すべて完了しました、錬金工房と魔導具店へ出発しましょう。」


レオンは何も言わず、ただ少女に向かって軽くうなずく、その表情は穏やかで何の波もない、その後、彼は足を上げて木の扉の方へと歩き出す。


ジャスミンとアリットは先に二歩進み出て、手を伸ばして厚い木の扉を押し開く、両側に立ち、しっかりと通路を確保する。


ギィ……! 古びた木の扉が鈍い軋み音を立てる。


プーヤとレオンが次々に酒場を踏み出す、太陽は相変わらず高く空に懸かり、温かな陽光が街路一面に降り注いでいる。


背後からは酒場の酒の匂いや食物の香りが徐々に薄れ、代わりに街路を流れる清新な空気が広がる、四人は深く息を吸い込み、頭までもがより鮮明になるのを感じる。


レオンの足が入り口で微かに止まる、彼の視線は横に向き、扉の傍ら、遠くない陰影の部分に落ちる。


エイドリが懶そうに壁に寄りかかっている、指先には巻かれた煙草が挟まれており、細かな煙が空気の中にゆっくりと立ち上り、漂っている。


彼女はまぶたを上げてレオンとプーヤの四人を見る、口元に煙草をくわえたまま、懶そうな口調でぼんやりと尋ねる。


「お食事はお済みか?」


「はい、ご馳走様でした。」


レオンは軽くうなずく、その態度は礼儀正しく、落ち着いている。


エイドリは深く煙を吸い込み、その目は静かに四人を見送る、しばらくして、ゆっくりと煙の輪を吐き出す、その眼底の色は穏やかで、リラックスしている。


「ふう~ そうか、またお越しください、お客様。」


彼女はゆっくりと視線を戻す、四人は特に何も言わず、ただ互いに簡単に挨拶を交わす、その後、彼らはためらうことなく足を上げ、街路の奥へとゆっくりと歩き出した。


エイドリは指先で軽く白くなった灰を弾き落とす、背後では酒場が相変わらず騒がしく、旅人と竜族の冒険者が会計を争う騒ぐ声、店内の客たちの話し声が、彼女の耳元で渦巻き、漂っている……


カツカツ! レオンは先頭を歩く、プーヤとジャスミンは歩きながら会話を交わし、二人の女性からは時折、低く抑えた笑い声が聞こえてくる、アリットは隊列の最後尾に従い、顔には表情がなく、ただ時折横目で通り過ぎる冒険者や傭兵をちらりと見るだけだ。


途中、多くの店や錬金工房を通り過ぎるが、レオンはそれらを見ていないかのように、ひたすら前に進み続ける、三人が一体いくつの店を通り過ぎたのか数え切れなくなった頃、ようやくレオンの足が止まる。


四人は錬金工房の門前に立ち止まる、レオンは店全体を見渡す、店は濃い色の硬木で構築されており、ガラスは薬剤の蒸気で黄ばんでいる、門の上には錆びた銅板が掲げられ、その上には古風な錬金陣の紋様が彫られている。


扉の隙間からは絶えず薬草の苦味や硫黄の刺激臭が溢れ出し、彼らの後ろを通り過ぎる商人や冒険者は思わず眉をひそめ、鼻を押さえて足を速める。


黄ばんだ窓越しに、店内に人影が錯綜しているのが見える、冒険者や錬金術師たちが棚の前に立ち止まって原料を選び、カウンターの前には疎らな短い列ができている。


カウンターの錬金術師はうつむいて価格を計算している、ある者は時折低声で会話を交わすが、皆、店内の静寂を乱さないように自覚している。


街路の両側には、装飾が鮮やかで客を大声で呼び込む商店が立ち並んでいるが、この老舗だけは決して派手さを誇らず、歳月の痕跡がすべて建物に刻まれている。


レオンの視線は一時的に銅板の錬金紋様に留まる、彼は軽く息を吐き出す、その匂いは少し異様だ、少年は扉に向かって歩き出し、手を上げて厚い木の扉に触れようとしたその時。


カツカツ。


ジャスミンが彼の前に歩み寄り、優先的に彼のために扉を押し開ける、鈍い軋み音が少し耳障りだ、木の扉が内側に開かれると、さらに異様な匂いが正面から押し寄せる。


ジャスミン、プーヤ、アリットは眉を深くひそめる、彼女たちは皆、無意識に面前の空気を扇いで、その匂いを追い払おうとする、ただレオンだけが無表情で店内を見つめている。


内部は非常に広々としており、地面には深い浅い入り混じった焼け跡と、洗っても落ちない薬の跡が一面に広がっている、カウンターの後ろには収納箱が積み重ねられ、黄ばんだ錬金設計図がカウンターの端に広げられている、空気中には微細な魔力の微粒子が浮遊している。


両側の高い木製の棚は壁に沿って幾重にも広がり、密封されたガラスの薬瓶、束ねられた乾燥薬草、様々な色の薬剤が整然と並べられている、隅には大小さまざまな坩堝が置かれている。


紫色の液体が坩堝の中でぐつぐつと泡を立てている、一人の錬金術師のローブを着た猫耳の少女が木の棒を持ち、今まさに苦労して液体を攪拌している。


「これを加えて、これも加えて!」


彼女は横の書物をちらりと見ながら独り言を言い、次々と材料を手に取って紫色の液体の中に投げ込み、素早く攪拌する。


ボンという音とともに、坩堝の上から青色の煙が立ち上り、悪臭が広がり始める、彼女は慌てて浄化魔法を使って処理し、どうにか匂いを食い止めた。


「しまった! しまった! また失敗だ! 早く対処して良かった、さもないとお客さんがみんな逃げちゃうところだった。」


猫耳の少女が苛立っていると、横目でレオンたちに気づく、彼女は慌てて衣袍を整え、白い童顔に微笑みを浮かべる、二本の尖った牙が微かに覗き、袍の下に隠れた尾が軽く揺れている。


「あっ! お客様、いらっしゃいませ! ケイルの錬金店へようこそ! どうぞご自由にお選びください!」


レオンは猫耳の少女ケイルに向かって手を上げて挨拶し、その後ジャスミンに軽くうなずく。


「ありがとう。」


ジャスミンは微かに微笑みを返す、レオンが店内に足を踏み入れるのを待ってから、ジャスミンはプーヤを見る、彼女は手で示す、プーヤも慌てて店内に入り、ジャスミンに白い歯を見せて笑う、アリットはジャスミンを一目見て、その声はとても軽い。


「ありがとう、ジャスミン。」


プーヤ、ジャスミン、アリットの視線は、この隅々まで古さが滲み出る錬金工房を見渡す、レオンは横を向いてプーヤを一目見て、その口調は穏やかだ。


「これから、それぞれ必要な材料を選んでくれ、もし買い終わったら、先に近くの魔導具店を見て回ってもいい、その際はこの店の前で集合しよう。」


「わかりました、行きましょう、アリット。」


プーヤは隣で宝石に見入っているアリットの袖を引っ張る、アリットは我に返り、軽くうなずいて、少女に従って別の隅へと向かう。


レオンは一つの棚の前に向かう、そこには多くの材料が並べられている、その様相は奇妙極まりない、あるものは風乾された魔獣の組織であり、あるものは石の山に捨てられればすぐに消えてしまいそうな石であり、また様々な昆虫の死体もある。


ジャスミンはレオンの傍らに近づき、彼女はそっと全身が節足で覆われたムカデを手に取る、ムカデの全身は発光する金色の鎧で覆われており、一双の青い目が店内の照明の下で冷たい光を放っている。


異様な匂いが漂い出し、ジャスミンは嫌そうにムカデを材料の山に戻す、レオンが選別しているのを見て、彼女はレオンのそばに寄り、尋ねる。


「レオン様、何をお探しですか?」


レオンはジャスミンを一目見て、手近にあった乾燥した爪を手に取り、目の前に掲げて観察する、爪の緑色の鱗甲には多くの傷跡がある、彼は首を振ってそれを置く。


「媒介型魔法陣の補修に使える材料を探している、何せ、指を鳴らせば発動できる便利な即時型魔法陣よりも、媒介型の方がより実用的だと感じているからな。」


「なるほど。」


ジャスミンは何かを考えるようにうなずく、彼女は歩みを進めて一角へ向かい、隅に置かれた人体の骨格標本を見つめる、彼女は片手を顎の下に当て、考え込むような様子を見せる。


レオンは、ジャスミンに気づいている冒険者や傭兵たちがいるのを認識する、彼らの中には時折こっそりと盗み見る者もいれば、指を握り締めて話しかけたそうな様子の傭兵もいる、彼らの様子を見て、レオンは再び体を回して材料を選び続ける。


レオンは長い間選び続け、ほとんどすべての材料を一通り見た、ジャスミンは遠くに立ってそれを見つめている、少女は長い間見つめていた、錬金工房の客は来ては去り、去っては来る……


その間に、プーヤはジャスミンに一声かけた後、アリットを連れて錬金工房を後にし、魔導具店へと向かう、彼女は自分がレオンの邪魔をしていないかと心配し、ずっと心配そうに見守っていた。


ついに、パチッという軽い音とともに、レオンは一本の風乾された蜥蜴を材料の山に投げ捨てる、その眉はますます深く寄せられ、話す口調にも疲れが滲む。


「やはり……ないか……」


「レオン様……」


ジャスミンの両手は握り締められ、その唇は微かに引き結ばれる、少女の顔には複雑な表情が浮かんでいる、たとえ彼女が今や法則の実力を有していても、レオンに少しでも助力できることは何一つない。


レオンは頭を垂れて思いに耽っていた、その時、甘い花の香りがレオンの周りを漂った、レオンは顔を上げると、白い肌の美少女が腰を曲げ、彼を見つめていた。


その碧い縦瞳は疑問に満ちている、彼女の口元の尖った牙が微かに覗き、白い顔には浅い笑みが浮かんでいる。


「どうかしましたか? お探しの材料は見つからなかったのですか?」


「媒介型魔法陣に適した材料を探しています、ただ、この種の魔法陣は現在ほとんど使われていないため、店には確かに見当たりませんでした。」


レオンは少し考え、猫耳の少女ケイルを無表情で見つめ、その目は材料たちに落ちる。


「媒介型魔法陣ですか……確かに最近はほとんど使われていませんね、ただ、私の祖父が以前、確かにいくつかの材料を秘蔵していました、ただですね……」


レオンは視線を戻して猫耳の少女ケイルを見る、その口調は平淡だ。


「ただ、値段が少々高いと。」


「え……あはは……お客様、本当にお見事です。」


ケイルは軽く笑い、手を上げてそっと口元を覆う、その目には狡猾さが光っている、彼女は足を上げてカウンターへと歩きながら、さらに言葉を続ける。


「でも、値引きは受け付けませんよ、でもご安心ください、値段を吊り上げたりはしません、ついて来てください。」


レオンはケイルを見つめ、少し考えてから言う。


「わかりました。」


続いて、レオンは遠くに立つジャスミンを見る、ジャスミンの顔にはまだ複雑な表情が浮かんでいる、レオンとケイルが何か言葉を交わした後、彼の表情はだいぶ和らいでいる、少年はジャスミンに手を振る。


「ジャスミン、ちょっと来てくれ。」


ジャスミンはうなずき、立ち上がってレオンの後ろに従う、ケイルについてカウンターまで来ると、ケイルは体をかがめてしばらく探し回り、ついに一つの黒い箱を取り出す。


箱には埃が一面に積もり、塗装もかなり剥がれ落ちている、ケイルが箱を開けると、中には丸い青色の宝石が静かに眠っている。


「これは……アンドルート魔石ですか?」


レオンは青色の宝石を見つめる、その放つ濃厚な魔力に、彼の顔には何の表情も浮かんでいない、それは書物にすでに記載されていたものだが、媒介型魔法陣の衰退とともに、大衆の視線からも次第に消えていったものだ。


「お客様、本当にお目が高い、これは確かにアンドルート魔石です、媒介型魔法陣に対して強力な補修と駆動能力を持っています。」


ケイルはうなずき、箱を持ってレオンの前に歩み寄り、そっとしゃがみ込む、魔石は青色の光を透かし、内部は果てしない星空のようで、まるで宇宙そのものがその内部を流れているかのようだ。


彼は隣で材料を選んでいる竜族の冒険者を一目見て、少し考え、ジャスミンを見る、少女はその意図を理解し、手を上げて波打つ空間から空間魔法の財布を取り出す、レオンの口調は平淡だ。


「いくらだ? それを買おう。」

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