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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第三十二話:ヴァノダである

長い待ち時間を経て、レオンとジャスミンはついに聖騎士が守る入城口に辿り着いた、列の後方の喧騒に比べ、入り口に近づくほど空気は凍りついていく。


一人の聖騎士が重い足取りで列から歩み出る、鎧が一歩ごとに低い金属の軋む音を立てる。


彼は二人の前に立ち止まり、高い体躯を微かに垂れて、竜の頭の兜越しに目の前の少年を見下ろす。


レオンはその視線を受け止める、表情は平静で、眼底には一片の動揺もない。


「ジャスミン、十枚の金貨を出してくれ。」


その言葉と同時に、ジャスミンの脇の空間に微かなさざ波が立つ、彼女は手を空間の奥に差し入れ、腕を引き戻すと、十枚の金貨が静かに掌の上に乗っていた、縁には冷たい金色の光沢が輝いている。


聖騎士の視線はまずレオンの顔に一瞬留まり、それから十枚の金貨へと落ちる。


彼は手を上げてそれを受け取り、指の腹で硬貨の表面をそっと撫で、紋様の深さと材質に間違いがないことを確かめてから、金貨を腰の布袋に納めた。


「問題ありません、お入りください。」


彼は入り口を塞いでいた体を横にずらし、手を上げて通行を許可する合図をする、鎧の関節が動作に合わせて擦れ、耳障りな金属の擦過音を立てる、静まり返った列の中では、その音がひときわはっきりと響いた。


ジャスミンは傘を畳み、レオンに従ってトンネルの中へと足を踏み入れる、足を踏み入れた瞬間、二人ははっきりと、体が一枚の目に見えない膜を通り抜けるのを感じた。


空気中に混ざっていた海風の生臭さや様々な雑味がすべて消え去り、空気は浄化されたかのようだ、息をするたびに心身がますます透き通っていく。


視界の果てには白い光の門が立っている、光は内側に向かって傾斜し、目を開けていられないほど眩しい、門の向こうの光景はぼんやりとして判別しがたく、ただ波の打つ音と鳥の鳴き声だけが絶えず聞こえてくる。


カツカツ。


足音がトンネルの中で反響する、通路の奥には涼やかな冷気が漂っているが、意外にも心地よい。


ジャスミンは壁の松明を見ながら、ゆっくりとレオンの後ろに従う、松明は白い炎を燃やし、トンネルに流れ込む微風に合わせて、絶えず揺れている。


終点が近づくにつれ、二人の歩幅も速くなる、ジャッという軽い音とともに、ジャスミンとレオンの目の前が明るくなる、二人は無意識に手を上げて視界を遮る。


視界が次第に回復すると、あの銀白色の大橋が目の前に横たわっている、海面はきらめき、陽光の下で輝いている、大橋の様子は城外で見た時と何ら変わらない。


レオンは立ち止まることなく、まっすぐに歩き出す、足元の灰色の敷石は非常に独特で、一枚一枚に龍と花の模様が彫られている。


両側にはそれぞれ二人の聖騎士が立っている、体は真っ直ぐに伸び、軽く横を向いて二人を一目見た後、また相手に視線を戻す、まるで石化したかのようだ。


道は非常に広いが、もはやここに留まっている人はほとんどいない、ただ一つの肥えた体躯だけははっきりと見える。


黒いローブの旅人が、灰色の皮膚の地竜に騎乗している、体の両側には大きな革の布包が括り付けられており、布包は膨らみ、今にも破裂しそうだ、その背中には巨大な亀の甲羅が載せられており、一面に苔が生えている。


肥えた四肢が体を支え、歩く速度は非常に遅い、大きな尻の後ろには短く太い尾が繋がっており、一歩ごとに尾と尻がくねくねと動く、見ていて非常に滑稽だ。


カーカー。


二声の啼き声がレオンとジャスミンの注意を引く、二人はほとんど同時に声のした方へ顔を向ける、二羽のカモメが銀白の大橋の手すりのそばに止まり、そっと自分の羽を啄んでから、首をかしげてレオンとジャスミンを見る。


レオンは軽く笑い、ジャスミンを一目見てから、ゆっくりとした口調で言う。


「行こう、もうかなり時間を浪費してしまった、昼食の時間でもある。」


「かしこまりました、レオン様!」


ジャスミンはうなずく、ご機嫌な様子で、柔らかな銀白色の髪が歩調を速めるにつれて左右に揺れる。


二人は大橋に沿ってさらに進み、すぐにあの亀の甲羅を背負った地竜を追い越す、旅人が見守る中、白いローブの少女と黒いローブの少年は、自分との距離をどんどん広げていく。


彼女は怒って地竜の頭を叩き、その口調は怒りに満ちている。


「もう少し速く歩けないの! 後から来た奴らに追い越されちゃったじゃない!」


地竜はただ不思議そうに口を開けて「おう」と一声鳴く、二つの淡黄色の縦瞳には涙が浮かんでおり、非常に不憫そうだ、まるで保護者に魔法の成績を問い詰められた子どものようだ。


約十分ほど歩いたところで、二人は橋を渡り終えた、橋の終点には高さ百メートルにも及ぶアーチ状の石門が立っている、両側の壁面は厚みのある透かし彫りになっており、壁に沿って内側に収束している。


石門は魔法の鎖で封鎖されている、まるで生きているかのように、絶えずゆっくりと流動しており、カチカチという音も聞こえてくる。


門の前の両側には、二人の聖騎士が長槍を手に立っている、彼らの長槍は両側に立てかけられ、風が彼らの長袍と槍旗を吹き上げる。


ジャスミンとレオンを見て、二人は何も言わず、ただ一目見ただけで魔法の鍵を解除し、二人が門をくぐるのを許した、レオンとジャスミンが門を通り抜けた瞬間、喧騒が潮のように押し寄せてきた。


眼前こそが王都——ヴァノダである。


見渡す限りの市街地、街道は足元に広がり、馬車が六台並んで通れるほどの幅がある。


青石板の路面は年月と足跡で磨き上げられ、大橋と同じ龍と花の模様もいくらか掠れている、青石板は一路遠方へと延び、幾重にも重なる建築群の中に消えていく。


両側の建物は高低入り混じっている、近くには三~四階建ての赤瓦白壁の楼房が立ち、一階部分には商店が軒を連ねている、鍛冶屋の炉の赤い光が暖簾を通して街路に映っている。


魔導具店のショーウィンドウには、冷たい光を放つ様々な武器や、多くの道具や素材が陳列されており、多くの冒険者が店内で品定めをしている。


パン屋の麦の香りと香辛料店の辛い匂いが絡み合い、人波と共に漂ってくる、嗅ぐだけで、思わず唾液が溢れ出しそうになる。


最も特徴的なのは、各種のユニークな酒場だ、それらは独立した小さな区域を形成しており、もし通りかかれば、空気中の酒の香りで酔ってしまいそうになる。


多くの冒険者が酒場から出てきたかと思うと、体は踊っているかのように絶えず揺れ、その後パッと地面に倒れ込む。


しかし彼らは痛みを感じていないかのように、静かに地面に寝転がって鼾をかいている、それを見た多くの通行人が彼らに批評を加え、顔には軽蔑の表情を浮かべている。


遠くでは、民居の屋根が幾重にも重なって地平線まで広がっている、赤瓦と灰瓦が交互に敷き詰められ、起伏する波のようだ、さらに遠くには、内城の城壁がかすかに見える。


宮殿群の尖塔が空を突き刺し、あの純白の主城が最も中心にどっしりと座り、都市全体を見下ろしている。


空では、数頭の巨竜が翼をはためかせて飛び交い、鱗が陽光の下で様々な色彩——青、赤、漆黒——を屈折させている、彼らの背中の騎士は統一された制式の鎧を身にまとい、腰の旗が風に揺れている。


グリフィンの群れはより低い高度を旋回し、時には急降下し、時には上昇する、背中の使者や冒険者はしっかりと手綱を握っている。


さらに遠くでは、数隻の小型飛行船がゆっくりと移動している、船体下部の魔法符文が淡い青色の光を放っている。


街路には人波が絶えない、学院の学生たちは制服を着て、その後ろには従者が従っている、その表情は厳しく、目は絶えず左右の通行人を観察しており、まるで感情のない人形のようだ、学生たちは三三五五集まって歩き、顔には笑顔と活力が溢れている。


冒険者たちは全身装備を身にまとい、足取りは忙しなく、眉はほとんど寄せ合わされている、商隊は荷物を満載した地竜を駆ってゆっくりと通り抜け、地面は鈍い重音を発する。


魔族、エルフ、ドワーフ、妖精、獣人、竜族——様々な種族の顔が人混みの中に次々と現れては消えていく、互いに交わされる話し声、馬蹄が石板を打つカッカッという音、遠くの鐘楼の時を告げる音が、王都だけの交響曲を織り成している。


レオンの視線は空から戻り、街路の両側の建築配置を一瞥する、その眼底には何の波もなく、ただ静かに一枚一枚の光景を記憶に収めていく。


「まずは食事をするところを探そう。」


彼は歩みを進めて人波の中に溶け込み、街路のある酒場へと向かう、ジャスミンもそれに続き、好奇心に満ちた目でこの千里の王都の景色を眺める。


ブーツが石段を踏むカツカツという音が響く、レオンは地面にうつ伏せになっている冒険者を避ける、彼の体からは濃厚な酒の匂いが漂っており、その匂いは少し鼻を刺激する。


同時に彼の鼾もはっきりと聞こえる、ジャスミンも無意識に眉をひそめ、白いブーツを上げて慎重に端を伝って避ける。


ジャスミンは先にレオンの前に歩み寄り、その手のひらでそっと店の扉を押し開ける、木製の扉の上の銅鈴が澄んだ音を立てる、少女はスペースを空け、レオンが先に入れるようにする。


「ありがとう、ジャスミン。」


「私が為すべきことですから。」


ジャスミンは笑い、白い顔に温和さを満たして、レオンが酒場に入るのを見届けてから、ゆっくりと彼の後に従う。


酒場の中は非常に広々としており、白い光を放つ魔導石が店内の空間を照らしている、壁面には様々な酒樽とガラス瓶が並べられており、白光に照らされて艶を放っている。


カウンターの前には数人の冒険者が座っており、目の前には数十杯の空になったグラスが置かれている、彼らは頭を腕の中に埋め、軽い鼾を立てている者もいれば、酔っ払って寝言を言っている者もいる。


「も、もう飲めない……明日は任務が……」


「飲め! お、俺は……もう飲めないんだ……」


別の場所では、頭に鋭い角を生やした魔族の冒険者が、机の前にうつ伏せになっている、顔色は非常に赤く、相当酔っているようだ。


今まさにカウンターの少女にナンパをしている、その表情は軽薄で、彼に絡まれている少女は非常に困っている。


「何だっていいじゃないか、デートに連れて行ってやろうか?」


「い、いいえ……結構です……お客様、どうやら酔いすぎていらっしゃいますよ……」


少女の顔には冷や汗が一筋流れ、顔色はいくらか青ざめており、言葉さえも吃っている。


他のテーブルには客が満席だ、学生、商人、冒険者、他の種族の客がいる、接客をする少女たちは足早に動き回り、顔には疲れが溢れているが、手元の動作は意外にも機敏だ。


空気中には食べ物と酒の香りが満ち、人々の話し声が絶え間なく聞こえてくる、それぞれが出会った出来事について話しており、誰一人としてレオンとジャスミンに気づいていない。


「おお! いらっしゃいませ、お客様! ご案内いたします!」


その時、短い髪の紫色の髪の少女が慌てて駆け寄ってくる、その声はとても心地よい。


しかし最も目を引くのは、少女の白いシャツの後ろにある一対の透明な翼だ、彼女が走るのに合わせて、下半身の淡い茶色のロングスカートが絶えず揺れる。


「すみませんが、空いている席はありますか?」


レオンの声はゆっくりとしており、その目はすべてのテーブルを見渡す、しかし残念ながら、どの席も客で埋まっており、体格が大きいために一人で二席使っている者もいる。


「あの……お客様……私どもは……」


妖精の少女の言葉はいくらかためらいがちだ、彼女もレオンに従ってもう一度席を見渡す、ジャスミンはレオンの動作に気づき、腰をかがめてレオンの耳元に近づき、非常に小さな声で言う。


「レオン様、よろしければ……別のお店にしましょうか?」


レオンはジャスミンの言葉を聞いて軽く笑う、目の前の妖精の少女と、隅っこに隠れている長い髪の女性を見て、仕方なさそうに両手を広げる。


「分かった、手間をかけるが、別の店を探そう。」


レオンと立ち上がったジャスミンを見て、彼女はある隅っこに目をやる、そこにはまだ空席があるようだ。


ただそこにはまだ二人が座っている、しかし彼らもカタリの制服を着ており、レオンやジャスミンと何ら変わるところはない。


彼女は歯を食いしばり、目を左右に泳がせた後、袖口の下の拳をそっと握り締め、その口調は決心したかのようだ。


「お客様、お待ちください、もしよろしければ、相席をお受けいただけますか?」


少女の言葉を聞いて、レオンは振り返り、その目で少女をじっと観察する。


「構わないが、二割引にしてくれるか?」


「に、二割引……?」


妖精の少女は驚愕の表情を浮かべ、レオンの言葉を全く信じられない様子だ、少女は客が値引きを要求するのを見たことがなく、どう答えてよいか一瞬分からなかった。


呆然と立ち尽くす少女を見て、レオンは仕方なさそうにため息をつき、そのまま再び店の外へ向かおうとする、その時、低くて魅惑的な女性の声が聞こえてきた。


「お待ちください、二割引、承ります。」


レオンは笑い、ジャスミンの袖口を引っ張る、しかしジャスミンは顔を上げてレオンを見ようとせず、頭を下げて服を整えるふりをしている、顔全体は落ちてきた髪の毛で覆われ、体は小刻みに震えている、どうやら笑いをこらえているようだ。


「うちの従業員はとても純粋なんです、どうかお客様、からかって遊ばないでください。」


長い髪の女性が隅っこからレオンの前に歩み寄る、妖精の少女と同じ服装をしているが、その身にまとう雰囲気は非常に落ち着いており、顔にはかすかな笑みが浮かんでいる。


「もちろんです、では、相席の件をお願いします。」


レオンはうなずき、顔の笑みを引っ込めて女性を見る、女性は軽く眉を上げ、その口調は非常に丁寧だ。


「もちろん問題ございません、少々お待ちください。」


そう言って、彼女は振り返って隅っこの席へと向かう、妖精の少女の横を通り過ぎる時、そっと彼女の肩を叩く。


妖精の少女は肩を落とし、複雑な表情でカウンターへと向かい、レオンとジャスミンに浅黄色の蕎麦茶を二杯注ぐ。


「少々お待ちください……」


レオンとジャスミンは手を上げてそれを受け取る、木の杯からは微かに焦げたような麦の香りが漂い、その香りはとても良い、杯の底には蕎麦の粒が混ざっており、温度は温かい、ジャスミンは一口飲むと、口の中にあの香りが広がり、全身がシャキッとする。


別の隅っこでは、黒いローブの少女が両手で頬を支えている、黒い髪は編み込まれて三つ編みになり、左の胸の前に静かに置かれている、その黒くて丸い瞳は窓の外の景色を眺めている。


少女の口元からは八重歯がのぞき、その顔立ちはとても大人しく可愛らしい、彼女は手に取ったジュースを一口飲み、ゆっくりと息を吐き出す。


「はあ~ この味、最高! そう思わない? アリット。」


白いローブの少年は片手で頬を支えている、淡いピンクの中くらいの長さの髪が左目を隠し、何を考えているのか分からない。


アリットは静かに机の前に積まれた五枚の空の皿を見つめる、皿の上にはクリームの跡がたくさん残っている、彼の口元は思わず引きつる。


「プーヤ様……本当にまだお召し上がりになるおつもりですか?」


「もう一品だけ食べるのよ!」


プーヤは口をへの字に曲げる、その顔にはかすかな朱が浮かんでいる、彼女はもちろん相手が何を考えているか分かっている、しかし家の父親は決して彼女に甘いものを許さなかったのだ、今、こんなに甘美な味に出会ってしまい、つい我慢できなかったのだ。


「お客様、こちらで少しお願いしたいことがあるのですが、お時間よろしいでしょうか?」


その時、一道の魅惑的な女性の声が響く、二人の視線が彼女に向けられ、顔には疑問の色が浮かんでいる。

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