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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第三十話:目的地に到着

時間というものは、人の気づかぬうちに過ぎ去っていくものだ、船団はゆっくりと停泊し、船体が軽く揺れる、甲板の上では、学生たちの笑顔に感染され、張りつめていた肩や表情もほぐれていく。


彼らの顔にはかすかな笑みが浮かんでいる、この旅路は短かったが、この数日の経験は何よりも確かで、リアルなものだった。


食堂区では、レオンとジャスミンが静かに席に着いていた、二人はちょうど食事を終えたところで、それぞれの手元にはジュースと紅茶が置かれている。


ジュースはあと少しだけ残っており、紅茶はとっくに少女が飲み干してしまい、白い花模様のカップの底と、底に残ったわずかな茶葉だけが残っている。


彼らは荒れる海面を眺め、耳元には軽快な交響楽が流れ、心はとてもリラックスしていた、レオンとジャスミンが話し込んでいると、食堂区にチュープの声が響き、二人の注意を遮った。


「皆様、お待たせいたしました、本航路の終点に到着いたしました、船団はまもなく接岸いたします、お手回り品をご確認の上、順序よくお並びいただき、押し合わずに順次下船くださいますようお願いいたします。」


「レオン様、先に休憩区へ行って荷物をまとめて参ります、こちらで少々お待ちください。」


ジャスミンはゆっくりと席を立ち、指先で袖口をぎゅっと握る、昨夜、彼女はレオンが心配で、少年に付き合って甲板で一晩中景色を眺めていたため、荷物や雑貨を片付ける時間がなかったのだ。


レオンが彼女に自由に行動してよいと言っていたとはいえ、深夜にレオンを一人にするのはあまりにも危険で、ジャスミンには許せなかった。


「構わないよ、急ぐことはない、何しろ昨日は私が君の時間を奪ってしまったからね。」


レオンはうなずき、手のひらを上げてジャスミンにご自由にと示すと、足早に去っていく少女の背中を見送り、また何気なくあのジュースのグラスを手に取り、軽く一口含んだ。


休憩区、ジャスミンは袖口を肘のあたりまでまくり上げ、白く滑らかな前腕を露わにする、彼女はティロから贈られた生命果と、ノエロアから贈られた特産の干し肉をすべて空間魔法のポケットにしまい込み、窓辺に掛けてあった衣類も空間魔法で片付ける。


少女の目は船上で購入した本やアクセサリー、そして一号船の模型に向けられる、それらはすべて静かに机の上に置かれており、ジャスミンは一つ一つを空間魔法のポケットに収めていく、最後に、少女は片付けられた部屋を見渡し、そっと息を吐いた。


その時、少女の注意は床に落ちている白いヘアピンに引き寄せられる、彼女はそっと身をかがめ、そのヘアピンを手に取る、ヘアピンは非常に精巧で高級感があり、白いヘアピンにあしらわれた花の装飾はとても貴重に見える。


「これは……」


ジャスミンは指先でヘアピンを撫でる、心の中にはいくらかの疑問が浮かぶが、とりあえず後でレオンに渡そうと思う。


自分で買ったものではないが、レオンの持ち物である可能性も否定できない、彼女はもう一度部屋の中の調度品を見渡し、最後に満足そうにうなずく、ジャスミンは軽く微笑み、その口調はとても柔らかい。


「できた、それじゃあ……レオン様と出発しましょう。」


カチャリと音を立てて扉が閉められる、ジャスミンはもう迷うことなく休憩区へと歩いていく、部屋の中はすべてきれいに掃除され、陽光が木製ベッドの縁に降り注いでいた。


休憩区では、レオンが椅子に寄りかかり、指先でリズミカルに机を叩いている、少年は横向きに海面を眺めていたが、少女の視線に気づいたように、ゆっくりと振り返る。


「全部終わったか?」


「はい、レオン様。」


ジャスミンの口調はとても穏やかだ、彼女の瞳にはレオンの顔が映っている、そこまで言って、少女は一呼吸置き、その後、手のひらをレオンの前に差し出して広げる。


「レオン様、こちらは部屋を片付けているときに見つけたものですが、あなた様のものですか?」


ジャスミンの手の中にある白いヘアピンを見て、レオンは机を叩いていた指の動きを止める、彼はゆっくりと立ち上がり、少女の前に歩み寄る。


「ああ、先日ある商人から買ったものだ、本来は君に贈ろうと思っていたんだが、どこに落としてしまったのか分からなくなっていた。」


「私に、ですか?」


ジャスミンは少し恐れ多い気持ちになる、少女は手の中のヘアピンを見つめ、またレオンに視線を向ける。


「そうだ、受け取ってくれ、俺に遠慮する必要はない。」


レオンの口元が微かに上がる、その後、展望区の方へ二歩歩いたが、ジャスミンが付いてきていないことに気づき、少年は足を止める、彼は微かに首を傾げ、まだ呆けている少女を見る。


「ジャスミン、ぼんやりしてないで行こう、そろそろ街に入る時間だ。」


「はい! レオン様!」


ジャスミンは慌ててレオンの後に従う、その眼底は喜びで満ちている、彼女はヘアピンを左の前髪のあたりに着ける、高いポニーテールは少女の青春の活力に満ち溢れ、あの白いヘアピンがジャスミンをより一層静かで上品に見せている。


展望区には、幅広い舷梯がすでに船の手すりのそばに架けられていた、甲板にはもうあまり人は残っておらず、数人の水夫が甲板の掃除をしているだけだ。


隅の方では数人の商人が話し込んでおり、時折聞こえてくる笑い声に、近くでモップをかけていた水夫が不思議そうな顔をする。


レオンはジャスミンを見て、少女の髪に留められたあのヘアピンに気づく、その様式は彼女の雰囲気に非常によく合っている。


「よく似合っているよ。」


言葉を残し、レオンは歩みを進めて舷梯に足を掛ける、かすかな生臭さを帯びた海風が彼の短い髪を巻き上げる、カタリ学院の制服のローブが風に揺れ、ブーツの底が階段を踏むたびに、カツカツという乾いた音が響く。


少年は片手で舷梯の手すりを支え、目は埠頭の中央大通りに向けられる、大勢の人々が他の船から次々と降りてきており、中央の道路も絶え間なく人や荷車が行き交っている。


大通りの脇では、冒険者がグリフィンにまたがっている、男はグリフィンの背に座って左右を見渡し、無意識に眉をひそめながら、何かを待っているようだ。


獣人族の少年少女たちは追いかけっこをして走り回り、後ろの尻尾を左右に振り、頭の上の耳をピクピクと動かしている、彼らの顔には笑顔が浮かび、無邪気な歓声が人混みの中に響いている。


ある商隊の頭領の周りには多くの隊員が集まっており、隊員の中には乾いたパンを齧りながら、そのパサつきに困った顔をしている者もいれば、顔を寄せて小声で話し込んでいる者もいる、また、商品を整理して、馬車を入城口の大橋へと向かわせようとしている者もいる。


そんな中、レオンははっきりとある方向の光景を目にする、二人の冒険者が割り込みを巡って衝突していた。


竜族の冒険者の縦瞳が、ぼろぼろのマントを羽織り、頭に二本の鋭い角を生やした魔族の少女をじっと見つめている、二人は互いににらみ合い、どちらも譲歩するつもりはないようだ。


彼らが巡回中の聖騎士たちが自分たちの方へ歩いてくるのを見ると、魔族の少女は怒りに任せて地面を一脚蹴り、竜族の冒険者を一睨みしてから振り返って立ち去る、その口からはまだ罵詈雑言が漏れている。


白髪のエルフが古びた革のトランクを引きずっている、灰色のコートは足首までだらりと垂れ、その尖った細い耳にはたくさんのアクセサリーが下がっている、彼女の目はレオンの方を見て、何かを考えているようだ。


岸壁には大勢の水夫が立ち、固まっている、数人の水夫はしゃがみ込み、見知らぬ煙草をふかしている、白い煙が彼らの頭上に立ち込め、男たちの顔は満足げだ。


その隣にいた隻眼の水夫が煙に噎せて咳き込み、脇へと避ける、また、水夫の中には、行き交う貴族の少女や他の種族の女性を時折眺めては、悪戯っぽい笑みと品定めするような目を向ける者もいる。


貴族の学生たちはとっくに馬車に乗り、特別な入り口に列を作っている、時折、窓から顔を覗かせては、再びカーテンを閉める。


隅には数十人のドワーフがおり、彼らは屋台の前に集まって、麦酒のジョッキを掲げている、空気中には海の生臭さと麦酒の香りが混ざり合い、彼らはそれを大口で飲み干し、その顔は豪快さに満ちている。


露天商は手の中の銅貨を数え、得意げで興奮した表情を浮かべている、この埠頭だけでも、集まっている人間や他の種族の来訪者は、控えめに見積もっても十万近くに達している。


最終的に、レオンは注意を戻す、彼の目は、ある目立たない船に引き寄せられる、その隣にはちょうどティロの商隊があり、彼らはそこで何かを待っているようだ。


彼らの周りでは、大量の荷物が初めて会った時と同じように黒い布で覆われており、中の品物は知る由もない、ポントは隊員たちの間に立って話し込んでおり、人混みの中には憂いを帯びた顔の者もいれば、仲間の肩を叩いて励ます者もいる。


ティロは珍しく淡い金色の長い巻き髪を束ねている、上半身は体にフィットした白いシャツ、下半身は薄茶色の亜麻布の収縮した乗馬パンツ、茶色の皮ブーツは磨き上げられて光沢があり、きびきびとした成熟した女性の魅力にあふれている。


彼女は袖をまくり上げ、小麦色の肌が日光の下で温かみのある艶を放っている、琥珀色の瞳は静かに、海辺で釣りをしているノエロアを見つめている。


少女の服装も彼女とまったく同じだ、柔らかな深紫色の髪が肩に広がっている、今、少女は釣り針の動きに注目している。


「もう半時間もそこに立ってるよ、本当に魚は釣れるのかい?」


ティロは両手を胸の前で組み、かすかな笑みを浮かべている。


「もちろんさ、僕には十分な自信がある!」


ノエロアは振り返ってティロを見る、その口調は自信に満ちている、何しろ料理人として、料理の腕前から狩猟に至るまで、彼女の手に負えないものはない、ましてや魚一匹くらい? 少女は釣りの楽しさと過程を味わっているのだ。


ノエロアにとって、釣りとは単に魚を捕まえること以上のものだ、他人はとかく水辺に長く座っているのは時間の無駄だと思い、多くの人はたいてい手ぶらで帰ることになるだろうと考える、しかし彼女は、この釣りの全過程にこそ愛着を持っているのだ。


釣りは忍耐力を鍛え、海風が顔を撫でるリラックス感を味わい、きらめく海面の景色を楽しみ、水中の魚群との力の引き合いを感じる、これらすべてが欠かせない要素なのだ。


毎回の引き合いの駆け引きがもたらすときめき、静かに待つ間に垣間見える風景のひとつひとつが、彼女だけの情熱なのである。


「姐さん、レオンとジャスミンお姉さんが来たよ。」


ノエロアがそう言っていると、遠くから歩いてくるレオンとジャスミンに気づいた。


ティロは視線をレオンの方に向ける、黒いローブを着た少年と、白いローブの少女を見て、彼女は軽く眉をひそめる。


「君から連絡がなかったから、先に出発したのかと思ってたよ。」


「ただ荷物をまとめていただけだ、君たちはこれは?」


レオンは視線をポントと商隊の隊員たちに向け、次に釣りをしている少女に移し、最後にティロに落とした。


「君を待っていたんだよ、まだお別れをしていなかったからね。」


ノエロアの声が脇から聞こえてくる、レオンは少女の愛らしい顔を見て、軽く笑う。


「そういうことか。」


レオンは何かを考えているようなふりをする、そう言っている間に、少女はレオンの後ろに静かに立っているジャスミンに手を振る、ジャスミンの口元がわずかに上がり、少女の顔に穏やかな笑みが浮かび、ノエロアに向かってうなずく。


その時、ポントもティロのそばにやって来る、彼は軽くため息をつき、その後、突然大きく息を吸い込む、まるで勇気を振り絞るかのように、彼は口を歪め、笑顔は相変わらずの明るさだ。


「レオン、この間は本当に助かったよ、船賃の件については、もう知っている、心から感謝している。」


そう言って、ポントの後ろにいた商隊の隊員たちも慌てて腰をかがめる、彼らは何も言わず、ただ静かに体を折り曲げている、レオンは一人ひとりの顔を見る、彼らの顔には、心からの誠実さしか浮かんでいない。


隊員の中には、お辞儀の姿勢が非常に標準的な者もいれば、口元を引き結び、目に固い決意を宿している者もいる、また、口を開いて感謝の言葉を述べる者もいる。


「本当にありがとうございました、あなた様のご助力がなければ、私たちは元手さえも残せなかったかもしれません。」


「皆さん、私にそんなことをする必要はありません、私はティロと友人です、皆さんのことは、私たち自身のことです、友人である以上、そんなに区別する必要はありません。」


レオンは彼らの前に歩み寄り、隊員の中の一人の短髪の青年をゆっくりと起こす、レオンの口調は非常に穏やかで、傲慢さや疎遠さは微塵もない。


彼らがさらに言葉を続ける前に、少女の叫び声が脇から聞こえてくる、皆はノエロアの方に視線を向ける。


今、ノエロアの手にある白金の釣り竿が激しく引き曲がっている、竿全体が絶えずギシギシと音を立て、いつ折れてもおかしくない。


「重い!」


ノエロアの体と腕はピンと張りつめ、少女の指は白くなるほどに締め付けられ、血色がまったくない、彼女の体は絶えず震え、必死に体を後ろに反らしている、とても苦しそうな様子で、美しい眉まで互いに寄せ合っている。


「手伝うよ。」


ティロはノエロアを見て、足早に二歩三歩と少女のそばに駆け寄る、ティロの助けを得て、ノエロアはずいぶん楽になったようだ。


釣り竿は絶えず引き合い、時には素早く引き戻され、時にはその力によって海面の方向へ引っ張られる、魚の姿が次第に現れ、大きな水しぶきが上がる。


「魔法を使ったらどうだ? ……それとも俺も手伝おうか?」


ポントは彼女たちの苦しそうな様子を見て、提案をし、手伝おうと動き出す、しかし残念ながら、ノエロアとティロに阻止される。


「ダメだよ、魔法を使ったら、釣りの楽しみがどこにあるの?」


ジャスミンはレオンの後ろに立ち、その美しい瞳でポントを見る、ポントは仕方なさそうに両手を広げ、ジャスミンに向かって無理やり作った引きつった笑顔を浮かべる。


レオンは静かに二人の忙しそうな様子を見守る、時間はあっという間に過ぎ、二人の顔と額には汗がにじみ、両側の前髪も頬に張り付いている。


「これが最後だ!」


「うん!」


ティロの声が再び大きくなり、ノエロアも慌ててもう一度力を込める、ジャッという澄んだ音とともに、水しぶきが絶えず降り注ぐ。


三メートルほどの大きな魚が海面から引き上げられ、全身が空中にさらされる、大きな魚の全身の銀色の鱗が陽光の下で輝き、体を絶えず左右に振っている。


「やるな、ノエロア!」


「姐さん、これは何ていう魚だ?」


「さすがは俺たちの専属料理人だ、できないことなんてないみたいだな!」


隊員たちは互いに目を合わせる、重苦しかった雰囲気がかき回され、先ほどの悪い感情はこの大きな魚によって消し飛び、一人ひとりの顔には賞賛の言葉が浮かんでいる、大きな魚が彼らの前に引き寄せられると、その中の一人の隊員が大きな魚の前に歩み寄り、手を上げて少しぬるつく魚の鱗を撫でる。


パシッ! 彼が褒め言葉を口にする前に、大きな魚が尾びれを一振りして彼を地面に叩きつける、彼の顔はぬめりで覆われ、体は生臭さに満ちている。


彼はゆっくりと地面から起き上がり、隣の仲間に近づこうとするが、相手に嫌がられて避けられる。


「こ、こっちに来るな!」


この光景を見て、隣にいたポントやティロたちは思わず声を上げて大笑いする、ジャスミンまでもが思わず手で口を覆って笑う。


レオンはあの大きな魚を見て、ゆっくりと首を振る、そして、ちょうどその時のノエロアと同時にため息をつく、互いにレオンの行動に気づき、少女も思わず笑い声を漏らす。


「なによ、レオン、君にも頭を悩ませることがあるんだね。」

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