↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深淵紀行  作者: 梓UU
27/54

学院編:第二十七話:ネソトムの伝説

その羽根には奇妙な紋様が浮かんでおり、歪んだ人間の顔のように見える、月明かりの下で虹色の反射を放ち、風に乗って舞い落ち、やがてあの泡の上に着き、最後には海底へと沈んでいった。


それらの羽根を見て、二人は慌てて空を見上げる、皓月の明るさはまぶしいほどだ、そしてその月光の下で、一羽の半人ほどの大きさの黒い大鳥が空を旋回している、カーカーと二声鳴く、その声は清冽で空霊で、まるで亡霊の叫びのようだ。


「あれは……霊鳥(レイチョウ)か?」


ベランドはその黒い大鳥を見つめ、心中に確信が持てない。


「ああ、あれは霊鳥だ、俺の実家でも一羽飼っていたことがある、これは良い知らせだぞ! 彼らが俺たちの想いを受け取った証拠だ!」


テミスはうなずき、ベランドの肩を叩く、その言葉は興奮に満ちている、ベランドは彼の確認を聞き、二人の心中に一つの伝説が思い浮かぶ、それは誰もが知る伝説だった……


―――――


伝説によれば、ネソテムの誕生は、二柱の至高の神々によって創造された。


神々は創世の初め、世の中の全ての生きとし生けるものに、あの伝説的な門を開いた、それは世界を覆すに足る権限であった。


この世界には、死という概念は存在しなかった、どんな生命がどれほど深刻な傷を負っても、すぐに自己修復し、永遠に老いることはなかった。


しかし、世界の人口が増え続けるにつれ、全世界といえども耐えきれなくなっていく、そこで、この崩壊しそうな世界は、自らの意志を誕生させ、二柱の神々と戦おうとした。


この目に見えない戦争は数万年にわたって続いた、神々は権能を使い果たし、世界は砕け散り崩壊した、全てが破滅に陥ろうとしたその時、事態の深刻さを知った全種族が団結し、共に神々を防ぎ、世界の意志を助けた。


最終的に、世界の意志は二柱の神々を追放し、自ら進化させた世界の本源を生み出した、人々はそれを——死の本源と呼んだ。


全ての種族も全世界の状況を深く理解し、自ら進んで世界の意志と契約を交わし、世界の意志の選択を黙認した、世界で最初の人間が本当に死んでから、人々は一つのことに興味を持つようになった。


それは、死んだ者たちは、一体どこへ行くのか? まだ生きている人々は、彼らの魂に会うことができるのか? 誰も知らない、これは数万年にわたる謎だった。


しかし、一羽の鳥が現れるまで、人々はそれを生と死の間を行き来する使者だと考えた、誰かが死ぬたびに、その鳥が現場に現れることがあり、誰かが故人を悼むと、その羽根を落とすという。


いつしか、それは霊鳥と呼ばれるようになった、伝説によれば、それは霊地(レイチ)と呼ばれる死者の集まる場所から飛び立ち、死者は羽根となってその身に生え、最後に嘆く者の前に落ちて、自分の想いを受け取ったこと、そして今は安らかであることを知らせるのだという。


―――――


ベランドとテミスは遠ざかる霊鳥を見つめる、多くの人々もそれに気づき、一斉にその黒い影に視線を向ける、月光がその身に虹色の弧光を描き出している。


「あれって、霊鳥じゃないか?」


「そうだな、珍しいな……」


「思い出したぞ、竜鰐の群れとの戦いで、誰かが俺たちのために戦って死んだんだ、忘れちゃいけない!」


「そうだ、そうだ! 早く、早く! みんなで彼らを弔おう!」


そう言って、思い出した冒険者や商人たちは急いで麦酒を一杯受け取りに行く、しばらくして、彼らの顔には複雑さ、感謝、そして惜しむ気持ちが浮かび、黙って麦酒を海に注ぎ入れた、


酒を注がない者もいたが、一輪の花を選んでそっと海面に投げ入れる者もいた、学生たちも海面を見つめ、誰も言葉を発したり行動したりはしなかったが、心の中には敬意が満ちていた、誰も軽蔑したり不屑に思ったりはしない、彼ら全員が一つの共通の道理を理解していた。


「ある人々は、必ず危機の際に立ち上がる、その意志は全てを燃やす燃料となり、彼らこそ真の英雄なのだ。」


「何しろ……ある人々が捧げた意志は薪火となって、次の者へと絶え間なく受け継がれていくのだから。」


休憩区、ヴェロシアはしばらくベッドの前に座っていた、その間、彼女は心の中で戦死した勇士たちのために祈りを捧げていた、彼女は故人たちが安らかに眠れることを願っていた。


祈りを終え、彼女は軽くため息をつく、薄紫色の瞳には疲れが満ちている、まぶたを上げて窓の外を見ると、そこに一つの贈り物の箱が目に入る、彼女はゆっくりとベッドから立ち上がり、手を上げて椅子を引き、その上に座った。


贈り物の箱の包装は非常に精巧だ、表面には何か分からない薄い水のような跡がついている、しかし彼女は深く考えず、手を上げてそっと箱を開ける、箱が開かれると、ヴェロシアとヴィオラの名前が刻まれたネックレスが彼女の前に現れた。


装飾は非常に簡素で、彼女たちの名前が刻まれた花の形のペンダント以外は、ネックレスは銀で作られており、非常に普通に見える、まるで街角の露店で買える安物のようだ。


しかし彼女の目には、それは最も貴重な宝物のように映る、たとえ王都で数万金貨の価値があるネックレスでも、それと比べることなど絶対にできない、それは単なるネックレスではなく、最も親しい人が、最も大切に思う人が自らの手で作ったものだからだ。


なぜなら、その上の手作りの痕跡があまりにも明らかだからだ、彼女は何かを思い出したように、全身が微かに止まる、急いで箱を手に取り、手を上げてその上の水のような跡を撫でる、その心は苦さで満たされる。


あの水のような跡は、雨でも他の液体ではなかった、あの時、彼女が箱を受け取った時、指先に感じた微かな湿り気、しかし彼女は気にしなかった、今になって思い出すと、彼女は無意識に箱を胸に当て、美しい瞳に透き通った涙の粒が浮かぶ。


「これは……あなたの涙だったのね……ヴィオラ……ありがとう……」


出発の時のヴィオラの動作、船に乗ってから開けるようにという彼女の言葉を思い出す、彼女が扉の前に立った時には、少女は既に贈り物を準備していたのだ、おそらく包装している時に、涙が既にその上に滴り落ちていたのだろう、慌てて拭いたものの、完全に乾いてから、彼女は扉を開けたのだ。


彼女は視線を上げて空の月を見る、そして彼女が月を見ている時、統領署の雰囲気も静寂に満ちていた。


窓は両側に開かれ、月光は両側の赤いガラスを通り抜け、絨毯の上に二本の赤い光の跡を落としている、そして中央の開かれた窓の穴からは、銀白色の月光が遮られることなく流れ込んでいる。


銀の輝きは豪華な木製のベッドの前に広がり、ベッドの上の少女に淡い銀色の紗衣をまとわせる、朦朧とした夢幻的な感覚が、彼女を極めて非現実的に見せる。


ヴィオラはぬいぐるみを抱きしめ、その視線は月を見つめている、口調には微かな微笑みが浮かんでいる。


「ヴェロシアお姉様は、この贈り物を気に入ってくれるかしら? きっと……気に入ってくれると思うわ……」


ヴェロシアはネックレスをそっと首に着ける、片方の手の指先で、ゆっくりと二人の名前を撫でる、その心は暖かさで満たされている。


「ありがとう……ヴィオラ、とても気に入ったわ!」


―――――


時はゆっくりと流れ、瞬く間に深夜になった、荒れ狂っていた海面は、まるで目に見えない手のひらが船団全体を優しく揺らすかのようだ、月光に照らされた淡い紅色の海面で、穏やかに揺れ、全てを夢の中へと揺り動かそうとしている。


ザアザアと、波の音が船窓を通して部屋の中に伝わってくる、遠くで誰かが古い子守唄を優しく歌っているかのようだ、船体は波濤に合わせてゆっくりと揺れ、船で眠る人々を乗せて、夜の深みへと航海を続ける。


休憩区の部屋の中では、魔力灯は既に消えている、部屋の中は真っ暗で、かすかな月光がベッドの端に落ちているだけだ、非常に静かである。


ジャスミンは羊毛の毛布に包まれてベッドに横たわっている、体には私服に着替え、銀色の髪は少し乱れている、今は目を閉じて眠りに落ちており、長い睫毛が微かに震えている、まるで精巧な人形のようだ。


休憩区の廊下から、極めて軽い足音が聞こえてくる、注意して聞かなければ、ほとんど気づくことはできないだろう、レオンの目は深く、表情には全く動揺がない、空間魔法を使ってトレイを宙に浮かせている、彼はゆっくりと手を上げて部屋の扉をノックする。


コンコンと、扉の外から二つの軽い音が聞こえる、ジャスミンはそれを聞いて、ゆっくりと赤い瞳を開ける、目尻にはまだ水気が浮かんでおり、声には起きたばかりの甘えたような響きがある。


「お入りください……」


ギィと音を立てて扉が開かれる、一人の影がかすかな笑みを浮かべて部屋の扉の外に立っている、ウィーンという軽い音とともに、ジャスミンが魔力灯を呼び起こし、暖かな黄色い光を放つ、少女の視線は目の前の少年に注がれる。


彼の手にはトレイが持たれており、その上には一碗の粥、一碗の竜鰐の肉の煮込みスープ、そして小さなフルーツサラダが置かれている。


二つの碗の料理はどちらも湯気を立てている、粥は米の香りと肉の香りが交じり合い、肉のスープは乳白色の光沢を放ち、細かく刻んだネギがスープの表面に浮かんでいる、見ただけで食欲をそそる。


塩味の効いた粥の香りが空気中に広がる、濃厚な粥の表面には、細かく均等に切られた肉の細切りが散らばり、ネギの切れ端が淡い金色の粥の表面に緑の彩りを添えている。


ジャスミンはレオンを見て、慌ててベッドから体を起こす、靴を履く暇もなく、既に冷えた床の上に足を下ろしている、彼女は手を伸ばしてトレイを受け取り、その目は感謝で満ちている。


「レオン様……どうしてあなたが直接来られたのですか? そんなお手間をかけさせてしまって……甲板でお伝えしたように、お呼びいただければそれでよかったのに……」


「これは大したことじゃない、私たちは家族だ、こんなことでいちいち区別する必要はない、それに、君は魔力を酷使した、私はただ為すべきことをしただけだ。」


レオンは笑い、手を上げて彼女の言葉を遮る、口元にはかすかな優しい笑みが浮かんでいる、その目は少し冷えた床をかすめ、さらに言葉を続ける。


「床が少し冷たい、先にスリッパを履きなさい。」


ジャスミンの心臓は暖かさで満たされる、彼女は少年を見て何かを言おうとするが、レオンが首を振るのを見て口を閉じる、彼女はスリッパを履き、隅のテーブルの前に座る、その視線はまだレオンに注がれており、その目は優しさで満ちている。


「ゆっくりお召し上がりください、でも、熱いので気をつけて。」


レオンはベッドの端に座り、手に持ってきた本をぱらぱらとめくる、ジャスミンの視線に気づき、顔には相変わらずかすかな笑みが浮かんでいる。


少女はスプーンを手に取り、香り豊かな粥を見つめ、そっと一すくいすくい上げ、唇のそばで軽く吹く。


粥が口の中に運ばれる、鮮やかな香りが瞬時に口腔に広がる、濃厚な米の香りに肉の旨味が混ざり、肉の細切りは絶妙な噛み応えと塩味があり、ネギの香りが広がる、一口で満足感に満たされる。


「美味しい!」


ジャスミンは満足そうに目を細める、温かさが喉を通って胃に滑り落ち、最後に全身に流れていくのを感じる、彼女は元々食欲がなかったが、この一口の美味しい粥が口の中に広がり、少女の味蕾は完全に目覚めた。


展望区の甲板には、今二人の男が立っている、月光が彼らの顔に降り注ぐ、一人は穏やかな目で海面を見つめ、きちんとした執事服を着て、背筋を伸ばして立っている、そこに立つだけで冷たい寒気を放っている。


もう一人の顔にはいくらかの緊張が浮かび、体には水夫の雨合羽を羽織っている、海風が袍の袖をそっと揺らす、彼は眉をひそめ、執事服の男を見る。


「あの……ロー執事長、現在の状況はどうなのでしょうか?」


ローは手を下ろし、振り返って丘普を見る、その口調には一切の感情がなく、もともと寒い深夜にさらに冷たさを加えている。


「私は既に大規模な探査魔法を用いた、結果は非常に楽観視できない、多くの黒紋血鮫が我々の前方数十里に潜んでいる。」


彼の言葉には全く温もりがなく、その目は淡々と丘普をまっすぐに見つめる、丘普はため息をつき、手のひらをそっと握りしめる。


「では、これからどうするのですか?」


「問題ない、これが海の下の現在の状況だ。」


そう言って、ローは二人の間に空間法則を展開する、空気がさざ波立ち、絶えず自己凝縮を始めて形態を成す、すぐに彼が探査した範囲を完全に再現する、五十数隻の船が整然と並び、まるで訓練された聖騎士の隊列のようだ。


海底には数隻の荒廃した船が眠っている、いつの時代のものかはもはや分からない、魔獣の巨大な骨格が各所に散らばり、高低不同の海底の岩礁には鋭い棘がびっしりと生えている、一度衝突すれば、おそらく船体を引き裂かれるだろう。


最も遠くでは、黒紋血鮫が絶えず泳ぎ回っている、まるで静かに潜む狩人のように、最適な出撃の時機を待っている、一つ一つの細部が実景のようにリアルだ。


「これから、私が指定したポイントに沿って迂回すれば、これらの問題は避けられる。」


ローの指が各所の方位を指し示す、手配は簡単明瞭で、初心者の水夫でも容易に判別できる、丘普はうなずき、その目は尊敬で満ちている。


「ロー執事長、これからのことは私にお任せください、あなたはゆっくりお休みください。」


「いや、私はここに終始待機する、何か問題があれば、私は第一时间に対応する、我が家の小姐に、万が一のことがあってはならない。」


ローは空間投影を撤去し、その目は再び遠くの海面を見つめる、親指と人差し指をそっと擦り合わせる、彼の後ろに立つ丘普には、彼が何を考えているのか分からない。


その時、一人の水夫が湯気の立つコーヒーを二杯持って歩いてくる、空気中には濃厚な醇香が広がる、丘普はローを見る、その水夫はうなずき、ローの前に歩み寄る。


「あの……ロー執事長、お疲れ様です、どうぞ、我々のリリン船主が王都から買ってきたグラニーコーヒーをお召し上がりください。」


コーヒーの名前を聞き、あの見慣れた香りを嗅いで、ローは振り返る、その目は細められ、いつもの冷たい表情さえもいくらか和らいだ。


「グラニーコーヒーか……久しく飲んでいなかったな、ありがとう。」


ローは手を伸ばして受け取り、鼻のそばで香りを嗅ぎ、そっと一口味わう、醇厚な香りが彼の表情をほぐす、彼はもう数ヶ月、この味を味わっていなかった。


普通のコーヒーの苦味はない、グラニーコーヒーは何の添加物も必要とせず、それ自体が独特の風味を持っている、口に入れると濃厚なコーヒーの香りが広がり、挽きたてのナッツの風味が混ざり、かすかなミルクの香りも漂う。


水夫はもう一杯を丘普に渡し、二人にうなずいてから振り返って立ち去る、ただ二人だけが残され、コーヒーを味わいながら、静かに波打つ海面を眺めている。


翌日、海面のさざ波は徐々に静まり、鏡のように滑らかになる、五十数隻の船の影を映し出し、陽光が七色の光の弧を屈折させ、遠くに一幅の幅広い虹を織り成す。


時折、海魚が海面に飛び出し、半空で尾を振り、しぶきを上げてから、再び海に頭を突っ込んで消えていく。


甲板には二つの影が立っている、少年は海面を見つめ、海風が彼の黒いローブを巻き上げ、短い髪を絶えず揺らす、彼の隣には、スタイルの良い黄色いスカートの女が立っている、淡い金色の長い巻き毛が風に吹かれて視界を遮り、彼女は麦色の肌の腕を上げて、髪を耳の後ろにまとめる。


ティロは空間魔法から一つの黒い布袋を取り出す、布袋はパンパンに膨らんでおり、かなり重そうに見える、たくさんの物が入っているようだ、彼女の口調は誠実だ。


「レオン、これはあの日、黒竜の皮を売った金貨だ、成約価格は二百枚、百五十枚の船賃を差し引いて、残りは全部で五十枚だ。」


「分かった、手間をかけたな。」


レオンは振り返る、その表情は平淡だが、口調には温和さが含まれている、彼はためらわずに手を上げて布袋を受け取り、空間魔法の中に収める。


ティロは笑い、手すりの上で首をかしげて彼らを眺めるカモメを見つめ、そっとため息をつく。


「これくらいは何でもない、正直に言うと、私のああいう手口があなたの前では通用しないことは分かっている、でも、あなたに言っておきたいんだ、手を貸してくれてありがとう、と。」


レオンは一瞬止まり、ティロを見て微かに微笑む、その目は穏やかな海面のように清冽だが、その穏やかな表面の下には、言葉にできない疎遠さが隠れている。


「礼を言われる筋合いはない、私は元々、借りを作るのが好きじゃない、最初に竜鰐のことを知った時から、もう後のことまで考えていたんだ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。