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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第二十五話:風の魂

聞き覚えのある声がベランドの耳元から響く、彼は驚いてテミスの方を見やり、苦笑いを浮かべて仕方なさそうに首を振った。


「この野郎!」


ドン! 巨船が岩石の竜鰐の体に激突する、その岩石の表皮を突き破り、体躯をその場で真っ二つに切断する、しかし、氷の船も完全に破壊された。


寒冰で凝縮された聖騎士たちはテミスに従って氷船から飛び降り、ゆっくりと地面に降り立つ、テミスは雷電の檻を見やる、その微弱な力はまさに消え去ろうとしていた。


彼は自身の半分の魔力を雷電の長槍に注ぎ込み、もう一小半を兵士たちの操縦に充てる、雷霆の力が再びパチパチと炸裂音を立てる。


ドン!雷電の檻がジジッという電弧の音を発する、檻の中の竜鰐たちは深刻な雷電麻痺を受けており、動きは鈍く、体は傷つきぼろぼろだ。


寒冰の聖騎士たちは一斉に腰の弓、魔杖、そして盾を凝縮し、それらの竜鰐に向かって突撃する、新たな戦いが再び始まる!


盾の聖騎士は竜鰐の物理攻撃を阻み、法杖の聖騎士は魔法を練って竜鰐を攻撃し、弓兵は絶えず魔法の矢を放って竜鰐の目や体を狙う、再び激しく組み合い始めるが、テミスはそれを気にしない、今は人を救うことが優先だ。


その場にいる魔力消耗の激しい他の者たちを見ると、体中にいくつもの傷を負い、絶えず血が滲み出て灰色のローブを黒く染めている者、貴族の学生たちは顔中埃まみれで、その従者たちも重傷を負っている者もいる。


「諸君、ご苦労だった! ここは私に任せて、君たちは先に船に戻ってしっかり休んでくれ!」


テミスの言葉を聞いて、青いマントを羽織り、銀色の鎧に無数の傷跡がついたドワーフが、黒赤い血迹で汚れた巨槌を氷面に置く、その目には関心の色が浮かび、濃い髭が絶えず震えている。


「しかし、今の状況で本当に大丈夫なのか?」


「そうだよ! 俺たちが離れたら、残っている竜鰐はどうするんだ?」


一人の貴族の学生がテミスを見て、納得いかない口調で言う、隣の紫髪の従者は何かを考えているようで、手を貴族の少年の肩に軽く置き、微かに首を振る。


テミスはただ微笑み、その口調は自信に満ちていた。


「大丈夫だ、ここの戦線は長くは続かない、ローの旦那のところもすぐに終わる!」


ようやく、テミスの説得の末に、多くの者が重い気持ちでうなずき、一号船の甲板へと走っていった。


テミスは急いでベランドのそばに駆け寄る、自身の魔力も僅かしか残っていないが、それでも治療魔法を使ってベランドの脚を治療する、彼はベランドを見て、心配そうな口調で言う。


「お前、正気かよ、血魔法を連続で二回も使うなんて、俺がいなかったら、今日お前は聖騎士の墓に横たわってたぞ!」


——————


その頃、竜鰐の首領と七十合以上戦っているローの方は、戦況は依然として膠着状態が続いていた。


ローの体は空中に飛び上がり、再び四体の竜鰐の首領の攻撃をかわす、彼の体には法則魔力が溢れ、手の中の火の剣は絶えず燃え盛っている。


彼は長剣を前に立て、自身を三道の分身に分化させる、それぞれの手には火の剣が握られ、表情には全く動きがない。


三体の竜鰐の体には法則魔力が溢れ出る、一頭の竜鰐の首領が牙の生えた巨口を開き、雷電法則を駆動する、その口の中には稲妻のエネルギー球が凝縮され、気流が絶えず体の周りに集まり、龐大な法則の力が戦場を覆う。


一頭の竜鰐の首領が四肢を舞わせ、なんと本当にゆっくりと飛び上がる、風之法則が狂暴な竜巻を凝縮し、戦場全体の碎氷と竜鰐の断肢を巻き上げ、竜巻の中へと絶えず取り込む、狂風が雲を撥ね退け、眩しい陽光が露わになる。


一頭の竜鰐の首領の体躯が再び数倍に膨れ上がる、その一掌を氷面に叩きつける、カカカ! この戦場の氷面は無数の蜘蛛の巣のような亀裂に砕け、体躯は半空のローに向かって突撃する。


ローは半空に浮遊し、額の端から絶えず汗が滴り落ちる、彼は動作を止めず、分身魔法を使用して体を三道の分身に分化させる、分身たちは同時に動き出す。


一体の分身が手のひらを上げる、暗之法則がその掌中に一つの回転する漆黒の渦を凝縮する、渦は絶えず音もなく拡大し、光は飲み込まれ、風の音は吸収され、空気中の魔力までもがその中に引き込まれる。


あの狂暴な竜巻が渦に衝突した時、爆発も轟音もなかった、風の柱は見えない巨口に飲み込まれたかのように、ゆっくりと暗黒の中に消え、完全に消滅するまで続いた。


一体の分身の指先から一滴の鮮血が滲み出る、血珠が氷面に落ちると急速に無数の細かな血の線となって広がり、生き物のようにあの体躯を膨張させた竜鰐の首領に這い寄る、血の線が鱗に触れた瞬間、直接浸透し、血管に沿って全身に流れていく。


竜鰐の首領の動作が鈍り始め、筋肉が制御不能に痙攣する、血之法則が強引にその神経系統に接続し、体の制御権を奪取する、氷面に叩きつけようとした巨爪は半空で止まり、二度と落ちることはない。


最後の一体の分身が片手で竜鰐に向かって押し下げる、金之法則が稲妻のエネルギー球を凝縮している竜鰐の首領の頭頂に、一つの金属の巨掌を凝縮する、金の巨掌はゆっくりと沈下する、叩きつけるのではなく、絶対的な威圧である。


雷電のエネルギー球は金の巨掌の圧迫の下で絶えず縮小する、電弧は球体の表面に押し付けられ、耳障りな圧搾音を発する、竜鰐の首領の四足は氷層にめり込み、脊柱は軋み音を立てる、金之法則の威圧の力により、首を上げる余地すらもない。


天を震わす巨音が響き渡る、雷電のエネルギー球と金の巨掌が衝突し、血の線が巨大な竜鰐をその場に縫い止め、暗の渦が竜巻を完全に飲み込む。


三種の法則の衝突が同時に爆発する、眩い光芒が戦場全体を席巻し、衝撃波は全てを破壊しそうになるが、ジャスミンによって防がれる、それでも、戦場の全ての者は無意識に目を閉じる。


その光芒は目を閉じていても眼球が痛むほどだった、光が晴れると、ローと竜鰐の首領は互いに見つめ合っていた、竜鰐の首領の魔力はほぼ尽きている。


ローはやはり老舗の強者であり、体内にはまだ小半の法則魔力が残っている、たとえ極めて強い竜鰐の首領であっても抗うことはできない、その縦瞳は疲れ果て、鼻孔からは絶えず熱気が噴き出ている。


ローの体内にはまだ小半の魔力が残っており、眼前の竜鰐の首領を相手にするには全く問題がない、彼ははっきりと理解していた、法則級の戦いは往々にして自身の研鑽と技術の駆使に依存するものだと。


竜鰐は元来ただの野獣だ、どうして人間の法則級の強者に勝てるというのか? 戦いの中で、自身を頼りに最後まで耐え抜くことができれば、往々にして最終的な勝者となる。


彼は片手を波動する空間に差し入れる、一振りの弓が取り出される、弓身は氷晶で作られ、全身透き通り、淡い青色の光沢を放つ、一本の半透明の弓弦が両端に張り詰められ、極めて奇妙に見える。


彼は弓を空に向け、体の魔力を駆動する、風之法則が一本の浅い緑色の矢先を凝縮する、一陣の微風が戦場の全ての者の顔を撫でる、まるで風の女神が頬を撫でているかのようだ。


シュッ! 一道の清冽な空気を裂く音が響く、その矢は空に向かって放たれ、その後竜鰐の首領に向かって落下していく、矢の速度はますます速くなり、一本の矢が十本に、十本が百本に……


数千万もの矢の雨が流星のように降り注ぎ、最も美しい緑色の群星となって絶えず光芒を煌めかせる、それらの矢の雨は竜鰐の首領の背に突き刺さるが、与えるダメージは極めて限定的で、その鱗を撃ち抜くことさえできない。


しかしローはただ手を上げて微かに指すだけだ、全ての矢の雨は命令を受けた兵士のように、竜鰐の首領の背中の一箇所に向かって、絶えず集中して衝突する!


最初はそれらの堅い鱗には全く損傷がなかったが、回数を重ねるごとに、竜鰐の首領の背中の鱗に小さな裂け目が現れ始める、裂け目は傷跡となり、傷跡は引き裂かれ、紅い血肉が露わになり、最後には力ずくで竜鰐の首領の心臓を貫通する。


背中のその傷口からは絶えず血水が溢れ出し、戦場全体を真っ赤に染める、竜鰐の首領の全身はハリネズミのように数百万もの魔箭が突き刺さっている。


ガアアアア!!!


しかし竜鰐の首領は死の間際、空に向かって憤怒の一声を咆哮する、体内の全ての法則魔力を駆動し、その周囲にローほどの大きさの竜鰐の幻影が数条浮かび上がる。


それらの竜鰐は恐ろしく歪み、竜鰐の幻影は全て戦死した竜鰐たちの怨恨で凝縮されている、身の毛もよだつ気配を放ち、絶えずローに向かって襲いかかる。


ローは再び障壁を張って防ぐが、竜鰐の首領の一切を惜しまない瀕死の反撃に直面し、障壁に轟撃する、ローの護盾でさえも絶えず蜘蛛の巣のような亀裂が広がり、カチカチと破壊音を発する。


そのうちの一道の竜鰐の幻影がローの足元から突き出し、その場でローの体を直撃する、彼は思わず口から一口の鮮血を吐き出し、体が微かに震える、しかしローの表情には依然として何の変化もなく、手の中の炎の剣はさらに激しく燃え盛る。


この状況を見て、竜鰐の首領は退くに退けず、その場で自爆を選ぶ、体が瞬時に炸裂し、鋭い鱗の破片が戦場全体に飛び散り、全ての人に向かって飛んでいく、ローは慌てて手の中の炎の剣を捨て、手を上げて障壁魔法を放ち、自分自身と全ての船団を守る。


ジャスミンもそれに続き、再び護盾を使用する、しかし鱗の破片はあまりに密集しており、一枚がジャスミンとローの護盾を撃ち抜き、ヴェロシアとレオンの方へと飛んでいく。


そしてヴェロシアはちょうどレオンの前に立っていた、ジャスミンは止めようとするが、彼女の消耗は大きく、持続的に大規模な障壁と護盾魔法を放ち続けたことで、反応が鈍っていた。


ヴェロシアは目の前の鱗の破片を見つめるが、まだ反応できない、ローでさえも手を出す暇がない!


速く! 速く!! 速く!!!


障壁によって力の大半は殺がれていたものの、飛来する速度は依然として常人には目で追えないほど速い、鱗の破片がまさにヴェロシアに当たろうとしたその時、意外なことが起こった!


一振りの魔導長剣が、身に強力な金魔力と空間魔法の加持を放ち、半空で絶えず拡大する、その空間の中でさざ波が立つ。


長剣は回転しながら巨大な鱗の破片に斬りかかる、鱗の破片は真っ直ぐに切り裂かれる、まるで鋏が羊皮紙の巻物を切り裂くかのように、一切の抵抗もない。


そしてそのまま前方に回転しながら飛び続ける、プスリ! 歯が浮くような骨の砕ける音が響く、長剣はなおも必死に生きようともがく一条の竜鰐の頭部を貫くまで続く。


頭部から氷面まで突き刺さり、しっかりと固定される、その力は直接その脳と頭蓋骨を震え砕く、相手の四肢は無茶苦茶にもがき、氷面に幾筋もの跡を残し、その後完全に意識を失って死ぬ。


切り裂かれた鱗の破片は船の両側に飛び散る、彼女の顔色は少し青ざめている、彼女が反応して後ろを振り返ると、白く美しい顔には驚きの色が浮かんでいた、あの黒いローブの少年だ。


レオンはまだ剣を投げた姿勢を保っており、体の魔法の力は絶えず湧き上がっている、もう一方の手にはまだ剣の鞘を握っている。


ヴェロシアははっきりと感知できた、その力は自分よりも強いと、彼女は聞こえなかった、相手が一体いつ剣を抜いたのか、感知できなかった、相手が一体いつ魔力を駆動したのか。


自分が防御する暇もない時、相手は既に手を打って鱗の破片を切り裂いていた、眼前のこの小さな少年はこんなに幼いのに、体の魔力は無比に厚い、きっと日頃から絶えず研鑽を積んできた結果だろう。


ヴェロシアはそっと一息をつき、微かに身をかがめて、感謝の気持ちを込めた口調で言う。


「お助けいただき、感謝いたします。」


「どういたしまして、これは私が為すべきことです。」


レオンは手を上げる、あの魔導長剣が竜鰐の頭蓋骨の中で二度揺れ、空気を素早く一斬りして剣身の血水を振り払う、すると元の大きさに戻り、再び半空を飛び、高速でレオンの方へ飛んでくる。


カチッ、魔導長剣は回転しながら自動的に鞘に収まる、レオンの口調は非常に平淡で、表情にも全く動揺はない、しかし他人には見えない袖の下で、彼の片手の拳が少し震えていた。


その一剣で彼の少なからぬ力が抜かれ、残った魔力は半分だけとなった。


ローはヴェロシアの前に飛び降り、片膝をついて恭しい口調で言う、彼ははっきりと自覚していた、もし自分が見守る少女に何かあれば、自分は皇帝の託宣に背くことになり、皇帝に対して説明する面目などないと。


「申し訳ございません、ヴィロ様、私の手落ちであなたを危機に陥れました……」


「大丈夫です、私は今無事ですから、どうかご自分を責めないでください。」


ヴェロシアはローを起こし、傷だらけの彼の体を見て、少し心痛む、彼女は手を上げてローに治療魔法を使う、魔法段階の治療では法則級の強者にはほとんど効果がないが、少女のその行動はローに安心感を与えた。


残り僅か数十条の竜鰐の群れは、首領を失った後、それぞれ狂ったように血の海に向かって必死に逃げていく、プトン、プトン! 彼らは海に飛び込み、音を立てる、無数の波しぶきが上がり、その後海に潜って消えていった。


一号船の甲板で、腰に長剣を佩いた冒険者が逃げていく竜鰐の群れを見て、慌てた様子でローを見やり、焦った口調で問う。


「お尋ねしますが、あの逃げた竜鰐の群れはどうするおつもりですか? 全て討伐すべきでは?」


ヴェロシアは少し迷ってローを見る、ローはうなずき、彼女に自信を与え、彼女が説明するよう促す、少女は視線をその冒険者に向ける。


「彼らを行かせてあげましょう、我々には追い詰めて殺し尽くす必要はありません、戦場に残された竜鰐の死骸だけで、あなたたちは素材を集め、大量の金貨を得ることができます。」


人々の間には様々な複雑な感情が広がる、頭を下げて考える者、拳を握り締める者、何かを言いかけて止める者もいる、彼らの心には共通の疑問が浮かんでいた、そう言うのは確かに間違ってはいないが、あのまま逃がしてしまえば、次に襲われるのはまた誰なのか?


ヴェロシアは彼らの躊躇を見抜いた、彼女は少しも威圧する態度を取らず、口調は依然として穏やかだ。


「皆様のご懸念は、私もよく理解しております、しかし、どうか説明をお聞き入れください。」


彼女は一呼吸置き、振り返って泡と鮮やかな血色に染まった海面を見つめる、最後に動ける竜鰐が海に潜っていくのを見送り、ゆっくりと振り返る、その目つきは確かなものになり、少女は皆に向かって説明する。


「竜鰐の群れが船団を襲撃したのは、確かに実際に起こったことです、しかしそれには前提があります、その前提とは、竜鰐の繁殖期です、繁殖期が過ぎれば、彼らには守るべき幼獣がいなくなり、自然と航路を避けるようになります。」


その中の一人のエルフの剣士がうなずく、彼は少女の言葉を非常に認めている、彼は少女を見る。


「そうですね、このお嬢さんの言う通りです。」


ヴェロシアは微笑み、彼に向かって微かに身をかがめる、彼女は一呼吸置いて、さらに話し続ける。


「しかし……この海の中には、いつでも船団を襲撃する魔獣が一種類います、それが黒紋血鮫(ブラックストライプ・ブラッドシャーク)です、彼らは竜鰐よりも危険で、より血に飢え、極めて恐ろしい攻撃力を持っています。」


「我々が竜鰐の群れを見逃すのは、この海域の食物連鎖において、竜鰐こそが黒紋血鮫を捕食対象としているからです、もし彼らを追い詰めて殺し尽くせば、この海域の生態バランスは完全に崩れてしまいます。」


ここまで聞いて、冒険者たちと貴族の少年少女たちは皆うなずいた、彼らはようやくその道理を理解した、もし竜鰐が存在しなくなれば、黒紋血鮫は天敵を失い、完全に氾濫して災いとなる、その時には、海全体が彼らの狩り場と化すだろう。


そうなれば襲撃される船団はさらに増えるだけだ、そのような状況で、一体誰がそれを補うことができるというのか?


そんなことは誰にもできない、このような状況下で、何頭の危険な魔獣の首領が生まれ、どれだけの冒険者が海底に葬られるか、誰にも分からない、これこそが本当の潜在的リスクなのだ。


あの腰に剣を佩いた冒険者の表情は和らぐ、彼はヴェロシアを見て、誠実な謝罪の意を込めた口調で言う。


「私の視野が狭すぎました、目の前のことしか見えず、より長期的な未来を考慮していませんでした、私の無知をお詫びし、失礼いたしました。」


そう言って、彼は微かに腰をかがめる、ヴェロシアは慌てて彼を起こし、口調は荘厳だが、少女の温和さは失われていない。


「そのような必要はございません、あなたは一時の熱意に目を曇らされていただけです、今、あなたはより遠い道を見通せています。」

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