学院編:第二十二話:紛争が始まる
キュウプの視線は観察口に釘付けになっていた、額には冷や汗が浮かび、それが頬を伝って襟元に滴り落ちる、彼の背後にいる水夫たちは手を止め、その場に立ち尽くしていた、口を開けたまま、声を出せない者もいる。
展望区の手すりのそばで、ジャスミンはレオンの隣に立ち、海面を見つめていた、指は静かに傘の柄を握り、雨が傘を打つサラサラという音が聞こえる。
レオンは何も言わず、ただ遠くを見つめていた、そこには無数の黒い点が浮かび上がり、彼らの方へと漂ってきていた。
もう一方では、ヴェロシアがローの表情の変化に気づき、前に近づこうとしたが、ローが手を上げて彼女を背後に遮った。
ローの視線は既に海面に固定されていた、テミスとベランドは即座に警戒態勢に入り、同時にローを見て彼の指示を待つ。
多くの人が食堂から飛び出し、細かい雨の降る甲板に立った、彼らが遠くの無数の黒い影を目にした時、足が猛然と止まり、その場に石化したように動かなくなる、次に二人目、三人目と続く……
五十隻を超える船の甲板には、数百人が立っていた、一人ひとりの表情は異なり、貴族の中には顔色を青くする者、少年少女の中には恐慌を露わにする者もいた。
しかし、ほとんどの冒険者の目には戦意が燃えていた、彼らの指は剣の柄をしっかりと握りしめ、雨が横顔を伝って甲板に滴り、細かな水しぶきを上げても、全く気にしない。
ローはテミスとベランドを見て、厳しい口調で言った。
「今すぐ全員を船内に入れろ、戦う意志のある冒険者やその他の者がいれば、残らせておけ。」
「我々はヴェロシア殿下の安全を最優先に守ることに加え、可能な限り他の者の安全も確保しなければならない!」
ベランドとテミスはうなずき、余計な質問はせず、足元に二枚の半透明の翼を出現させる、二人は軽く跳躍して高空へ舞い上がり、それぞれ両側の船へと飛んでいく。
「まずい……あれは竜鰐の群れか?」
「俺たちは今日、皆ここで死ぬんだ……」
「やはり、最も安全な航路を選んでも避けられないのか……」
人々の間で小さな囁きが起こる、恐怖を感じる者、無力感に苛まれる者もいる、甲板の人々が騒然とし始めたその時、ベランドが空から彼らの中央に降り立った。
彼はしっかりと立ち、視線を全ての人々に巡らせる、恐怖、驚愕、動揺——一人ひとりの表情を彼は見逃さなかった、その口調は厳しい。
「諸君、慌てるな、速やかに船内へ避難しろ、力に覚えのある勇士は、助力してほしい、共に竜鰐の群れを討伐する。」
ベランドの言葉を聞いて、疑う者、信じようとする者、躊躇する者がいる、人々の間で囁きが交わされる、信じるべきかどうか——しかし、ベランドを認識する者もいた。
「彼は聖騎士隊長のベランドだ、俺は知っている。」
「本当か? もし偽物だったらどうする?」
「どうあれ……まずは彼を助けるべきだ、事態が収まってから考えよう。」
「なぜ彼の言うことを聞かなきゃならないんだ……もし指揮が下手だったら……」
彼らの疑問に対し、ベランドは静かに手を上げ、空間の波紋から聖騎士の徽章を取り出す、血のように深い赤色の地は落ち着いており、中央には恐ろしい黒い竜の頭の印が刻まれている。
徽章の竜の頭は牙をむき出しにし、竜の瞳は血のように赤く輝く、徽章の縁は金色の縞模様で縁取られ、雨粒がその上に落ちると、淡い赤い光を放つ。
「それは? 薪火城統領署の徽章だ!」
「彼は本当にファムヤ様配下の聖騎士隊長なんだ!」
雰囲気が一変し、全員の最後の疑念が完全に消え去った、その徽章が意味するのは「紅竜」ファムヤの勢力だ、セムール帝国全土において、これを偽造する者はいない、なぜなら、名高い法則級の強者を敵に回す代償を、誰も負えないからだ。
身分が確認されると、人々は秩序正しく船内へと入っていく、慌てる者はいない、甲板には数人の冒険者、貴族の少年少女だけが残された、彼らの目は決意に満ちており、それはベランドとファムヤに対する絶対的な信頼の表れだった。
ベランドは彼らを見てうなずき、感謝の意を込めた口調で言った。
「助力に感謝する、では、一号船に集合してくれ、」
一方テミスの方では、彼が直面した状況はベランドとほぼ同じだった、しかし、彼が徽章を掲げた時、全ての疑問は泡となって消え去り、一つ一つが砕け散った。
数回の往復を経て、各船の人々は二人の身分を認識した、雰囲気は一時的に落ち着きを取り戻す、二人は約六十名の、戦う意志のある勇士を集めた。
雨と狂風の唸りはますます大きくなり、まるで狂ったように咆哮する獣のようだ、しかし、一号船の面々の目は固く決意に満ちていた。
レオンは人々の中にノエロア、ポント、そしてティロの姿を認める、彼の瞳は伏せられ、何を考えているのか分からない、甲板の面々は深く悟っていた——まさに討伐戦が迫っていることを。
テミスはゆっくりと息を吐き、遠くのベランドと目を合わせ、一号船へと飛んでいく、彼らはちょうどローと合流し、指示された事項を報告しようとした、しかし、その時、危険は既に音もなく訪れていた。
広大な海面に、五十隻余りの船が静かに停泊している、風雨に吹かれて船体が揺れる、そして船底の下方で、一つの黒い影がますます大きくなり、全ての船をその中に飲み込もうとしていた。
ローが下を見ると、その影は消えていた、レオンは迫り来る竜鰐の群れを淡々と見つめ、ジャスミンの袖を軽く引っ張り、落ち着いた口調で言う。
「ジャスミン、南側に注意しろ。」
全員が息を呑んで見守る中、どこからともなく一羽のカモメが飛来し、南側の手すりに止まった、首を巡らせて人々の方を見ると、カーカーと二声鳴く、全員の視線がそのカモメに引き寄せられる。
雨の中で羽を整えるカモメ、その羽毛は少し濡れているが、飛行には全く影響しない、しばらく人々をじっと見つめた後、羽をパタパタと数回羽ばたかせ、南側の海面に向かって悠然と飛び去った。
ドン!!!
山をも凌ぐ竜の首が水面を破る、金色に輝く縦長の瞳は野性に満ち、一号船に向かって襲いかかる。
無数の牙が生え揃った血のように赤い巨大な口は、まるで暗い深淵のように、全てを飲み込まんとしている、海水がその顎と上半身を伝い、海面に落ちると耳障りな大音響を立てる。
青灰色の背甲には、捻じれた暗黄色の骨格が生えている、それには無数の逆棘と鱗がびっしりと付いている、最も目を引くのは、その口元の両側から伸びる細長い竜の髭だ、長さは数十メートルにも及び、半空で絶えず靡き流れ、まるでいつ襲いかかってもおかしくない毒蛇のようである。
その四肢は通常の鰐とは全く異なり、先端は太く頑丈な鉤爪である、そして四肢と胴体の間には、四枚の幅広い半透明の膜が張っており、腹部と尾の両側にぴったりと貼り付いている、まるで蝙蝠の翼のようだ。
胴体の大半は海面下に沈み、周囲は無数の細かい泡で覆われている、人々とその巨大な口との距離は、わずか数メートル、この瞬間、彼らは叫ばず、慌てず、動作すらせず、呼吸さえも忘れていた。
脳裏に浮かぶのはただ一つの共通認識——眼前の巨獣は、この七十メートル級の巨大な船を容易に飲み込むことができる、と。
その龐大な巨体が彼らを飲み込まんとしたその瞬間、一隻の巨大な氷の拳が海面から轟音とともに突き出した。
ドン! 氷の拳が竜鰐の顎を打ち据え、鈍い爆音を響かせる、それにより竜鰐の体は後方へ大きく仰け反り、激しく海面へと叩きつけられた、倒れる際、その体躯は天を覆うほどの大波を巻き起こし、全ての浮かぶ船に襲いかかる。
続けて、巨大な氷の壁が海面から凝り固まり、五十隻余りの船をその後ろに保護する、襲い来る全ての波を完全に遮断した。
しばらくして、氷壁の冷気を感じ取り、人々はようやく我に返った、口からは荒い息が漏れ、一人ひとりの瞳孔は急激に収縮する、ローの声が背後から聞こえてきた。
「迷っている暇はない、これより、この竜鰐は私が相手をする、残りの竜鰐の群れはお前たちに任せる、ベランド、テミス、そして船団の安全は……」
ローはジャスミンを見て、やや穏やかな口調で言う。
「頼んだ。」
ジャスミンはローの意図を理解し、レオンを見る、レオンはただ微かに微笑み、軽くうなずいた。
するとジャスミンは手を上げる、巨大な乳白色の障壁が数十里にもわたって広がり、全ての船と竜鰐の群れをその中に包み込む、漫天の雪が舞い散り、まっすぐに障壁を通過し、それぞれの人の上に自由に降り積もる。
竜鰐の群れは法則級からの圧迫感を感じ取り、もがきながら障壁に這い寄ろうとするが、阻まれる、彼らがどのように攻撃しようとも、障壁に一片のさざ波すら起こせない。
遠くから見れば、まるで巨大な真珠が海面に浮かんでいるかのようだ、レオンはジャスミンを見る、少女の表情は平然としており、このレベルの障壁でも、彼女の魔力の三分の一程度しか消費していない。
言い終えると、ローは片手で手すりを越え、船から飛び降りる、人々の視線はローから離れ、ベランドとテミスに注がれ、彼らの指揮を待つ、ベランドとテミスは目を合わせ、ベランドが前に出た。
ローは海面に向かって落下し、髪の毛一本分の距離で空中に停止する、彼は海面に立ち、右足を上げて海面を軽く踏みしめる、足元の海水は急速に凍り始め、全ての方向へと広がっていく。
カチカチカチ——氷結の音がこの数十里の海面に響き渡る、全ての船底が一時的に凍り付き、その地域全体の天候も、激しい大雨から白く美しい小雪へと変わり、空からゆっくりと舞い降りる。
船団に近づこうとしていた竜鰐の群れは、ローの氷の法則の影響で、無理やり海水から押し出され、滑らかな氷の表面に曝されることとなった。
彼らは絶えず這い回り、鱗と逆棘に覆われた体躯を氷層の上でもがかせると、鉤爪と逆棘が氷層に恐ろしい傷跡を刻み込む。
テミスは少し呆けたようなヴェロシアを見て、穏やかな口調で言う。
「ヴェロシア殿下、もし船室に入らずに観戦をご希望でしたら、あの銀髪の少女の近くにお寄りください、私は戦いに行きますので。」
ヴェロシアはうなずき、レオンに視線を向ける、レオンは少女に自分のそばへ来るよう合図する、彼女は足を踏み出し、レオンの方へ歩いていく。
ベランドは空間魔法から全身血のように赤い長剣を抜き放つ、彼の視線は人々に向けられる、貴族の学生、学生たちの従者、冒険者たち——臨時に組まれた隊伍に対して、あまりに複雑な戦術は制御困難になるだけだ、彼は考えた後、厳しい口調で言う。
「これより、我々は優先的に竜鰐の群れを討伐する、私とテミスがそれぞれ半数を率いる、私が正面で注意を引き付け、テミスが迂回して背後を突く。」
「今回の目標は二つだけだ、自身の安全を確保すること、そして、竜鰐の群れを撃退すること!」
「了解!」
人々の声は力強く、自ら二手に分かれる、一隊はベランドに従って船から飛び降り、竜鰐の群れへの正面攻撃を開始する、テミスは一隊を率いて竜鰐の群れの後方へ飛ぶ、目的は明確で、一人ひとりの表情は厳粛である。
レオンの瞳の奥は平静に満ちている、彼はゆっくりと手を上げる、一片の雪が空から彼の手のひらに舞い降りる、一陣の微風とともに、その雪片は再び舞い上がり、最後にローの足元に落ちた。
カチカチカチ! ローは遠くの氷層がゆっくりと蜘蛛の巣のような亀裂を生じさせるのを見つめる、その目は冷淡そのものだ。
ドン! 氷層が破られる、巨体の竜鰐の首領が氷の上に躍り出る、その衝撃で会場全体が震え、体表の法則魔力が周囲に流れ出す。
氷面の震動の余波がまだ収まらぬうちに、竜鰐の首領は既にローの位置を捕捉していた、間を置かず、咆哮もなく、着地した瞬間に再び飛びかかる、鉤爪が氷面に四本の深い傷跡を刻み、その龐大な体躯は全てを粉砕する勢いで真っ直ぐに突進してくる。
ローは慌てない、右足を半歩後ろに滑らせ、体を軽く沈める、体内の法則魔力が流動し、右手を前に構えて虚空を掴むような姿勢をとる。
周囲の空間は凍りついて亀裂が入る、これは氷の法則による影響だ、空中に舞い散る無数の白雪が、彼の体の周りを旋回しながら集まる、まるで雪の竜巻のようだ。
ローの口から白い吐息が漏れる、すると、彼の体を包む雪の竜巻が自動的に彼の右手に凝縮され、一振りの透明な氷の剣が形作られる、刺すような寒気を放つ。
彼は竜鰐の首領の正面突撃を受け止めようとはせず、竜鰐の首領が彼に衝突する寸前、横に身をかわしながら氷面を強く踏みしめる、氷面が亀裂し、彼の全身は竜鰐の首領の攻撃をかわす。
ローは氷の剣を掲げて空に跳躍し、その勢いで竜鰐の首領の首筋に着地する。
氷の剣が首筋の鱗を貫くが、一滴の血も流れない、しかし、これも全てローの計算の内だ、これほど巨大な魔獣の防御が、そう易々と破られるはずがない。
ローは竜鰐の首領の首筋に突き立てた氷の剣をしっかりと握り、剣を皮膚の下で延長させる、さらに力を込めて押し込み、氷の剣を握ったまま竜鰐の首領の尾に向かって一気に斬り下ろす。
首から尾にかけての鱗が弾け飛び、極めて淡い血の線が滲み出る、竜鰐の首領は一声嘶き、全身を氷上で激しく反転させ、ローを数十メートル先へ投げ飛ばす、そして即座に生命法則を駆使して傷を治療し始める。
しかし、空中のローは動作を止めない、体内の火の法則が駆動し、一団の烈焰が竜の姿に凝り固まる、巨大な龍の形をした体躯が彼の背後に浮かび上がり、爆発的な熱波で満ち溢れる。
炎で凝り固まった竜が口を開け、炎を噴き出してローの左手に集める、ローは左手を外側に振り払い、一振りの火の剣をその手に現す、灼熱の熱波を放つ。
炎の竜は半空で翼を震わせ、竜鰐の首領に襲いかかる、しかし、相手の口から噴射された水柱に貫かれ、炎の竜は一声嘶いて魔力の霧となって消散する。
ローと竜鰐の首領は絶えず探り合いを続ける、ローの火の剣が放つ剣気が次々と竜鰐の首領の体躯に斬り込んで燃え上がる、しかし、それもローの法則魔力をいくらか消耗させる。
竜鰐の首領は一声嘶き、全身が雷電法則に包まれる、ブンブン! 雷電の流動音が響き、電弧が氷面を走り抜け、人の頭ほどの大きさの氷穴を直接炸裂させる。
続けて暗之法則が漆黒の濃霧となって竜鰐の首領の全身を覆い、雷電法則と互いに絡み合う、すると、シュッという音とともに、その龐大な体躯はその場から消え去った。
ローの視線は戦場の全ての者を走査する、貴族の学生とその従者たち、冒険者たち、そして商人たち——彼らは互いに連携し、身を顧みずに戦い続けている。
長い時間が過ぎたが、竜鰐の首領の姿は依然として現れない、その時、耳元に髪の毛一本が切れるような微かな音が聞こえてきた、そして、その音は彼の感知魔法と空間法則によって拡大され、捕捉される。
ローの表情が一瞬微かに硬直する、しかし、それは一瞬のことだった、即座に火の剣を頭上に向けて、全力で一振りの炎の剣気を放つ。
剣気は空間魔法によって強化され、微かな火の粉から次第に空と氷面を焼き尽くす炎の大波へと変貌する。
そしてその中には、光之法則の神聖な気配も混ざっている、その灼熱の血色の炎は半空で次第に、白く輝く淡い金色へと変わっていく。




