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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第十八話:港への道のり

「リリン船主のお値段、誠意は感じます……ただ……」


ティロはうなずき、リリンの表情を見ながら、ふと口調を曖昧にした。


「ただ?」


リリンは麻袋の上の黒竜の皮を見つめ、褐色の瞳に疑惑が浮かぶ、手にしたコーヒーカップが宙で止まり、ティロには彼女が何を考えているのか読めなかった。


ティロは照明の光を受けて輝く黒竜の皮の表面を見つめ、しばし考え込んだ、やがて顔を上げ、少し気恥ずかしそうな笑みを浮かべる。


「正直に申し上げますと、百九十金貨では、私の予想より少し低いんです、この皮は私が自ら法則級の黒竜から剥いだものです、ご覧の通りの完全な状態で、傷一つありません、この質感の法則級竜皮は、市場に出回ることは滅多にありません。」


彼女は一拍置き、さらに語気を柔らかくし、笑みを深めて交渉の口調で続ける。


「実はこちらに伺う前に、何軒かの商会で値段を聞いてみたんです、どこも二百二十金貨で買うと言ってくれました、でも……私はどうしても手放す気になれず、あえてリリン船主のところに持ってきたんです……」


リリンは即答しなかった、ソファに寄りかかり、指でカップの縁を軽く二度叩きながら、黒竜の皮に視線を落とす、まるでその価値を再評価しているかのようだった、彼女には、たとえティロが二百五十金貨と吹っかけても、誰かがそれを買うだろうと分かっていた。


ティロの目を見る、その琥珀色の瞳は美しく、自信に満ちた輝きを宿している、リリンは両脚を軽く組み替え、思考に沈んだ、しばらくして、彼女は軽く笑った。


「上手く立ち回るわね、まず私の誠意を褒めて、次に事実を突きつけ、最後に誰かが二百二十金貨で買うと言ったと持ち出す、あたかも自分が譲歩したかのように聞こえるけど、実際には私の退路を塞いでいるのよ。」


ティロは否定せず、ただ笑みを浮かべてリリンの表情を見つめ、結果を待った、リリンの目が、頬を膨らませたノエロアに向く、彼女は菓子を手に取り、口に入れて味わっている、まるで怒ったフグのようだった。


リリンはコーヒーを一口含み、カップを置くと、仕方なさそうに口調を緩めた、何しろ黒竜の皮は本当に気に入っていた、だが、もう一度だけ値引きを試みることにした。


「二百金貨でどうかしら? 一等船室を用意できるわ、サービスもより充実したものを提供する。」


「あの皮は確かにいい品よ、でも、加工処理が必要だし、なめしや裁断、商品化には別途職人を雇わなきゃならない、それだけで二十数金貨はかかるわ。」


ティロはリリンの言葉を聞き、しばし考え込んだ、コーヒーをゆっくりと一口含み、そしてうなずいた。


「成立です。」


彼女は手を差し出す、リリンも手を伸ばし、二つの手が空中で軽く握られた、これで取引は成立した、リリンは手を引き、再びソファに寄りかかり、少しだるそうな口調で——しかし内心ではこの取引に十分満足していた。


「商会専用の船券はキュウプに持たせるわ、残りの差額も、一括でお支払いする。」


「それはもう、リリン船主、ありがとうございます、はは。」


ティロは立ち上がり、振り返ってノエロアを呼ぶ、少女は慌ててコーヒーカップを置き、ティロの後に続いて立ち去ろうとするが、振り返り際にリリンに軽く一礼し、小さな声で言った。


「ご馳走様でした。」


リリンは微笑み、うなずいた、二人が扉に差し掛かった時、リリンの声が背後から届く、かすかに含み笑いを帯びていた。


「そうだ、またこんな品質の品があったら、次は直接私のところに持ってきなさい、気持ちのいい相手との取引は好きよ。」


ティロは振り返って笑みを返したが、それ以上は何も言わず、扉を押し開けて外へ出た。


キュウプの案内で、ティロとノエロアはフロントに向かい、自らの商隊の積荷、人員リスト、そしてレオンとジャスミンの名前を記入した後、商会専用の船券と五十金貨を受け取って商会を後にした。


馬車は彼女たちの酒場へと向かう、夜風は冷たく、ノエロアは思わず震えた、ティロは片手で馬の手綱を操り、もう一方の手でノエロアを自分の隣に引き寄せる、ノエロアは黙ってティロの体温を感じ、身体が少し温かくなるのを覚えた。


「悪かったな、すぐに終わると思ってたのに、まさか深夜になるとは思わなかった。」


ティロの言葉には謝罪の色が滲んでいた、ノエロアはティロの体温を感じながら、普段の拗ねたような表情は消え、少女らしい微笑みを浮かべていた、その瞳に一筋の光が走り、いたずらっぽい口調で言う。


「もう……そんな気恥ずかしいこと言わないでよ……」


パルティ酒場、ジャスミンは代金を支払い、立ち上がって階段を上り三階へ向かう、彼女は静かに八号室の扉を開けた、レオンは既に自分のベッドに腰掛け、本を読んでいた、ジャスミンを見ると、本を枕元に置き、ほのかな笑みを浮かべる。


「全部済んだのか?」


ジャスミンはうなずき、自分のベッドにそっと腰掛ける。


「はい、レオン様、これで全ての問題は解決しました、明日は通常通り出発できます。」


「もう遅い、休もう、おやすみ。」


レオンは窓の外の月明かりを一瞥する、街灯花がまだ夜道を照らしていた、彼は布団をかけ直し、振り返ってジャスミンを見る。


「おやすみなさい、レオン様。」


ジャスミンは部屋の灯りを消し、黒い革靴を脱ぎ、白いショートソックスを履いた足を上げて、ベッドに横たわる、柔らかな銀色の髪が枕元に乱れて広がる、部屋の中はとても静かで、レオンの呼吸と自分の鼓動だけが聞こえる。


彼女は横向きに、既に目を閉じたレオンを見つめ、次に微かに灯る灯芯に視線を移す、今日一日の出来事を思い返すと、とても充実した一日だったと感じる、眠気が徐々に訪れ、彼女の睫毛が微かに震え、ゆっくりと夢の中へ落ちていった……


ガオオオオォォォ!


朝、轟く龍の咆哮が薪火(シンホー)の街全体に響き渡る、それは薪火の街特有の生物目覚まし時計であり、新しい一日の始まりを告げていた。


陽光が窓を通してジャスミンとレオンに降り注ぐ、ジャスミンはゆっくりと目を開け、身体を起こし、無意識にレオンの方を向く、レオンはまだ眠っていた、彼は妨害されることなく、いつの間にか耳元に防音魔法が施されていた。


彼女は軽く腰と腕を伸ばし、白いショートソックスを履いた足で床を踏む、足音は小さいが、それでもレオンの休息を妨げないか心配になり、彼に重ねて静音魔法を施してから、洗面所へ向かった。


しばらくして洗面所の扉が開かれる、ジャスミンは既にカタリ学院の白いローブと白いブーツに着替え、銀色の髪も整えられていた。


彼女は特に片側だけの三つ編みを編み込み、それを他の髪と一緒にポニーテールに束ねていた、鬢の毛や前髪は整然としており、窓から差し込む陽射しが金色のボタンに当たり、輝く金色の光を放っていた。


彼女は自分のベッドの前に来て、革靴を空間魔法に収め、振り返ってレオンを一瞥すると、扉を開けて階下へ向かう、酒場には客はおらず、既に拭かれたテーブルと掃除された床だけが残り、空気中には食べ物とアルコールの匂いが微かに残っていた。


フロントのミアがジャスミンを見つけ、少し疲れた表情ながらも、礼儀正しく挨拶する。


「おはようございます、ジャスミンさん、今日も良い一日ですね。」


ジャスミンはうなずき、ミアに小声で言う。


「おはようございます、温かいミルクを二杯と、朝食を二つお願いします。」


「かしこまりました、問題ありません。」


ミアは厨房へ向かい、しばらくして二つの朝食と温かいミルクを静かなテーブルに並べた、ジャスミンは代金を支払い、再び二階へ上がり、扉を開ける。


レオンはまだ眠っていた、ジャスミンはレオンの黒いローブを清潔魔法で浄化し、レオンのベッドの足元に整えて置く、そして静音魔法を解除し、レオンの前に立って、彼の腕を軽く叩く。


レオンはゆっくりと目を開け、防音魔法を解除し、ジャスミンを見て子供のような甘えた口調で言う。


「おはよう、ジャスミン。」


「おはようございます、レオン様、朝食は既に手配済みです、衣服も清潔にしておきました、お手洗いを済ませられましたら、階下でお召し上がりください。」


ジャスミンの声はとても優しく、一陣の清風のようだった、彼女は部屋の窓を開ける、微風が窓から流れ込み、部屋中を吹き抜け、最後にレオンの顔を撫でる。


「分かった、先に朝食を食べていてくれ、すぐに起きる。」


レオンはうなずき、ベッドの上で身体を起こす、ジャスミンは部屋を出て、静かに扉を閉める、彼女は階段を踏みしめながら一階へ降りていった。


パルティ酒場一階、ジャスミンはミアが既に交代し、他の接客係の少女たちが彼女の仕事を引き継いでいることに気づいた。


酒場のテーブルには既に数人の冒険者と酒飲みが来ていた、冒険者たちは鎧や武器がひどく損傷し、身体には血痕や魔獣の血腥い匂いが残っていた。


一人の接客係の少女が彼らの前に歩み寄る、声は少し震えていたが、それでも無理に笑顔を作っていた。


「お客様、ご注文はお決まりですか?」


そのうちの一人、黒いローブを着たエルフの女が振り返って彼女を見る、青い瞳には何の感情も宿っていなかったが、口調は穏やかだった。


「すまない、驚かせてしまったな、麦酒を何杯かと、肉料理をいくつか、それと野菜サラダを何皿か頼む。」


「そうそう、怖がらないでくれ、美しいお嬢さん、俺たちは皆いい奴らだ。」


虎頭の獣人が笑みを浮かべる、その鎧には無数の恐ろしい傷跡があり、背中の大剣は激しく損傷し、今にも折れそうだった。


彼の纏う気配は非常に凶悪で、一目見ただけで恐怖を感じさせる、虎の耳はピンと立ち、背後の虎の尾は床を這うように動き、彼が話すたびに髭が絶えず震えていた。


「ああ、俺たちはちょうどダンジョンからの帰りで、一杯やりたくて来たんだ。」


「すまないね、お嬢ちゃん、俺たちに悪意はないんだ……」


他の仲間たちも同様に酷い有様で、包帯を巻いている者もいれば、乾いた血痕が残っている者もいた、しかし意外にも彼らは気さくで、疲れているにもかかわらず、少女を慰めていた。


ジャスミンは視線を戻し、席に座る、彼女はパンを小さくちぎり、肉のスープに軽く浸す、味は美味しく、香ばしいパンに肉スープの程よい塩気が絡み、なかなかの味わいだった。


一方、隅に隠れた酒飲みたちは、早々に一番安い麦酒を手に取り、こっそりと少女たちやジャスミンを眺め、顔に笑みを浮かべていた、一人の酒飲みが麦酒を一口含み、小声で呟く。


「やっぱり、美人は最高だな!」


しばらくして、レオンもゆっくりと階下に降りてくる、彼はジャスミンの向かいに座り、温かいミルクを一口含み、ジャスミンと同じようにパンを肉スープに浸してゆっくりと味わった……


統領署内、ヴェロシアは既に朝食を済ませ、私服に着替えていた、今、彼女はヴィオラの部屋の前に立っていた、朝食の時、ヴィオラは自分に贈り物があると告げていたのだ。


カチリと扉が開かれる、ヴィオラは精巧な小箱をヴェロシアの手に差し出した、少女は微笑みを浮かべる。


「ヴェロシアお姉様! これは私が用意した特別な贈り物です、船に乗ってから開けてくださいね。」


「ええ、ありがとう、ヴィオラ、分かったわ。」


彼女は手を上げて少女の輝く金髪を撫でる、その目には寵愛の色が溢れていた、ヴィオラは気持ちよさそうに目を細め、ヴェロシアの撫でる感触を味わう。


ただ、彼女が箱を触る指に、少し湿り気を感じた、しかし、少女は気にしなかった。


「ヴェロシア殿下、そろそろ出発の時刻です。」


ローの声が背後から聞こえる、彼女は振り返り、執事服を着たローを見て、穏やかな口調で言う。


「はい、ローおじ様。」


ヴィオラは彼女の後ろにつき、広い廊下を渡り、曲がりくねった階段を迂回し、聖騎士が押し開けた赤い扉をくぐり、ついに統領署の門前に立った。


ファムヤとベランド、そしてテミスが入口で話し込んでいた、兄弟も私服を着ている、ファムヤは振り返ってローを見る、二人は互いにうなずき合い、それが挨拶代わりとなった。


「まさか時間が経つのはこんなに早いとはな……どうやら……今回の別れが、次にいつ会えるか分からんな。」


ファムヤがヴェロシアを見る、ヴィオラはまだ彼女の手を握っていた、ヴェロシアの視線は、ヴィオラ、ロー、赤い柱のそばに立つ聖騎士たち、ベランドとテミス、そして最後に複雑な表情を浮かべるファムヤの顔を順に捉え、荘厳な口調で言った。


「別れは一時のものよ、ヴィオラ。」


「ファムヤおじ様、また機会を見つけて戻ってきます、最後に……皆様のご厚情に心より感謝申し上げます……」


聖騎士たちは笑みを浮かべる者、照れ臭そうにする者、軽く微笑み返す者もいた、ただローだけは相変わらず無表情だった、ヴィオラはヴェロシアの袖口を引っ張り、名残惜しそうな表情を浮かべる。


「ヴェロシアお姉様……嘘つかないよね……本当に戻ってきてくれる?」


「ええ、もちろんよ。」


ヴィオラは繋いだ手を離す、彼女は最後に少女の小さな頬を軽く摘まみ、そして背を向けた、薄紫色の瞳には優しさが溢れ、白い小さな顔にも名残惜しさが滲んでいた、しかし、その口調は固く、王室の気品がここで完全に放たれていた。


彼女は一歩、また一歩と階段を踏みしめる、一歩ごとに澄んだ音が響き、皆の耳に残る、その目は遠くの埠頭を見据え、最後に馬車のそばに立つローに注がれ、そして全ての人に向かって軽くお辞儀をした。


「行って参ります、ファムヤおじ様、ヴィオラ。」


彼女は馬車の中に乗り込む、ローが馬車の扉を静かに閉め、振り返って御者台に座り、鞭を振るう、ベランドとテミスも馬に飛び乗り、手綱を軽く引く、二頭の黒馬が体を躍らせ、前蹄を空中で数回蹴り、一声嘶いた。


馬車はゆっくりと動き出す、ヴィオラは数歩前に走り出し、やがてゆっくりと立ち止まる、それでも彼女は目の涙を必死にこらえていた。


それでも彼女はヴェロシアに向かって手を振り続け、悲しみを帯びた声で叫ぶ、ついに、瞳に溜まった大きな涙が地面に滴り落ち、花のような形を描いた。


「ヴェロシアお姉様……ううっ……必ず私に会いに来てね!」


ヴェロシアは上半身を窓の外に乗り出し、ヴィオラとファムヤに手を振る、その顔にも名残惜しさが満ちていた、彼女はついに感情を抑えきれず、上半身を馬車の中に戻し、ハンカチで目を覆い、かすかな悲しみを帯びた息遣いを漏らす。


ファムヤは遠ざかる少女を見つめ、心中は複雑だった、彼にとって、ヴェロシアもまた、実の娘のように大切な存在だった、何しろ彼が幼い頃から見守ってきた子なのだ。


彼女はたった一日滞在しただけだったが、彼にとっては何かを失ったかのような気持ちだった、彼は何も言わなかった、自分が別れを告げるのが得意でないことを知っていたからだ。


ファムヤの心中は沈黙に満ち、表情は複雑に歪んでいた、聖騎士たちの視線も、静かに遠ざかる馬車を見送っていた……

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