学院編:第十七話:取引の始まり
パルティ酒場、料理も大方食べ終えた頃、レオンはティロを見据え、手に持った温かいミルクを彼女の前に差し出しながら、淡々と言った。
「さて……竜鰐の件について話そう。」
ジャスミンは焼き肉のプレートを味わっていたが、レオンの言葉に手を止め、困惑した表情で彼を見つめた。
ノエロアは手に持った七面鳥の足——表面はパリッと焼けている——を小さくかじりながら、ただ美味しいと感じているだけで、特に何も考えていない様子だった。
ティロもまた、麦酒のジョッキを掲げてレオンと乾杯した、迷うことは何もない、残り少なくなった麦酒を一気に飲み干し、グラスを机に置く。
「ああ、問題ない、そろそろ本題に入ろうか。」
「竜鰐の件は酒場で聞いたよ、確かに危険だな、特に発情期の群れは縄張りに侵入する船団を襲う、だが、一つ疑問がある。」
レオンは湯気の立つ温かいミルクを見つめ、次にノエロアが半分ほど食べた七面鳥の足に視線を移し、最後にティロの顔に目を留めた。
「何だ?」
ティロはレオンを見つめ、ミアに手を振って呼び寄せる、ジャスミンはレオンの言葉の意味が掴めず、ただ事が簡単ではないと感じていた。
ミアがやって来て、空になったジョッキを満たし、再びカウンターへ戻っていく、レオンは熱いミルクを軽く吹き、目にほのかな笑みを浮かべた。
「竜鰐の発情期というのは間違いじゃない、しかしタイムラグがある、今はまだ初春だ、本来なら発情まで一ヶ月以上あるはず、いったい何が、奴らを早まって集め、発情させたんだ?」
彼は一口ミルクを飲み、その問いをティロに投げかけた。
ティロは考え込んだ、そして、はっと気づく。
バン!
彼女は机を叩いた、皿が跳ね上がるほど強くだ、勢いよく立ち上がる。
その騒ぎに周囲の冒険者や商人たちが注目する、彼女は咳払いを一つし、申し訳なさそうに手を上げる、彼らは再び自分の食事や会話に戻った。
ティロはゆっくりと腰を下ろし、声を潜めて——しかし信じられないといった口調で言った。
「まさか……お前は、竜鰐の群れの中に……法則級のボスが現れたと言うのか?」
「その通りだ、なぜ一つの商会だけがまだ輸送を続けているのか? 他の可能性を否定はしないが、あの航路が今のところ絶対に安全だからだとすれば?」
「絶対安全は絶対的な独占を意味する、価格は当然跳ね上がる、だからお前は俺のところに来た、このことを伝えるために。」
レオンはうなずき、カップを机に置いて、窓の外の街灯花を見やる。
ジャスミンはここまで聞いてようやく、ティロがレオンを訪ねた真の理由を理解した、危険が潜んでいることも察し、表情が引き締まる。
ティロは否定しなかった、彼女はレオンの言葉を受け入れ、憂慮を含んだ声で言った。
「その通りだ、実際、価格は狂ったように上がっている、50金貨から150金貨だ、これは私の予想を完全に超えている。」
「彼女の船は明日の昼に出発する、だから、君の意見を聞きたい、もし良い手がなければ、今回は見送ることになるかもしれない。」
レオンは軽く笑い、焦りは一切見せずにジャスミンを見た、ジャスミンはその意図を汲み、空間魔法のポーチを取り出して小さな口を開け、ティロに近づいて覗くよう促す。
ポーチの中は無限とも思える空間が広がっていた、無数のガラス玉のような泡が漂い、それぞれに様々な物資が収められている。
千枚近い金貨、大量の書籍、食料や食材、生活道具、替えの衣類や装飾品、そして数個の黒い光球——その中には三枚もの黒竜の皮と、黒竜のその他の素材が保存されていた。
「この法則級魔獣の黒竜の皮なら、200金貨の価値は十分にあると思うが、どうだ?」
レオンの声がティロの耳に響き、彼女は我に返った、ジャスミンはポーチをしまい、空間魔法の中に収める、ノエロアがティロの表情を一目見て、あまり良くなさそうだと感じた。
「どうしたんですか、姐さん?」
ティロは答えず、苦笑いを一つ漏らす、麦酒のジョッキを手に取り、立ち上がってレオンの隣に歩み寄る、目の前の少年を見下ろし、笑みを浮かべる。
レオンもジョッキを合わせ、一気に飲み干す、彼女はそっとレオンの耳元に近づき、その声はジャスミンにも聞こえないほどか細かった。
あまりにも近く、レオンには彼女の鼓動と息遣いがはっきりと聞こえ、柑橘系の香水と酒の匂いが混ざった女性の香りが漂う。
「私の負けだ……じゃあ、私はまず……あっちの用事を片付けてくる。」
彼女はレオンの傍らを離れ、酒場の外へ向かう、レオンはジャスミンの腕を軽く叩き、後を追うよう合図する、ノエロアもティロが立ち去るのを見て慌てて立ち上がり、レオンに軽く一礼する、彼女はずっと、ティロの苦境を理解していた。
「今夜は……ありがとうございました、レオン……」
レオンは何もせず、少女に二人を追うよう手で促す、ティロが酒場の木戸を押し開けると、視界が少しぼやけた、首を振る、空気には街灯花の香りが満ち、一陣の冷たい風が頬を冷たく撫でる。
ジャスミンが彼女の後ろに立ち、ナプキンを差し出す、ティロは断らず、それで口元を拭いた。ジャスミンは穏やかな口調で言う。
「では、路地に行きましょう、黒竜の皮をお渡しします。」
ティロはうなずき、ジャスミンを連れて酒場の外の路地へ向かう、ジャスミンは空間魔法のポーチから竜皮を取り出し、麻袋に詰める、丁寧に処理した後、ティロに手渡した。
「これで大丈夫です。」
「ありがとう、ジャスミンさん、レオンにもよろしく伝えてください。」
ティロは重さを確かめる——なかなかの重量だ——が、ためらわずに軽く力を込めて麻袋を肩に担ぐ、遠くから追いついてきたノエロアも彼女の隣に立ち、ジャスミンと小声で二言三言交わす。
ティロは黒竜の皮を担ぎ、ノエロアを連れて馬車へ向かう、温かな灯りの下、二人はジャスミンと街灯花に見守られながら、ティロは馬車を埠頭方面へと急がせ、すぐに闇の中へ消えていった。
埠頭の停泊区、キュウプは五十隻以上の船の前で指揮を執っていた、水夫たちは飛行魔法を使い、船の表面に透明で異様な香りのする液体を塗布している、その匂いは独特だった。
「急げ! 必ず期限内に仕上げろ、最初に終わった者には金貨三枚だ!」
キュウプの言葉に、塗る速度を速める者、いっそ刷毛を投げ捨てて素手で塗り始める者、ため息をつく者もいたが、誰も不満は言わなかった、何せこれが唯一まだ稼げる仕事なのだ。
一つの商会の前で、ティロの馬車が静かに止まる、キュウプはティロとノエロアに気づき、空間移動魔法で二人の前に現れる。
「こんな夜遅くに、どのようなご用件でしょうか?」
「あなた方の船主と商談がしたい、絶対に興味を持ってもらえるものを持ってきた。」
ティロは自信に満ちた笑みを浮かべて言う、ノエロアもうなずき、その言葉に確信を持っている。
二人の纏う雰囲気を観察し、キュウプはしばし考えた、そしてティロの手にした麻袋に気づく、どんな商品も逃さないという姿勢で、彼は承諾した。
「わかりました、では、商会の中で少々お待ちください。」
そう言って、彼はティロとノエロアを連れて商会の扉を開ける、ティロの目に飛び込んできたのは、広々としたホールだった。
商会の一階ホールは広く明るく、床には赤い羊毛の絨毯が敷かれ、頭上ではクリスタルのシャンデリアが暖かな黄色い光を落とし、館全体を柔らかな光の輪で包んでいた。
正面には長方形のカウンターがあり、濃い茶色の机の縁は銀で縁取られている、その後ろには服装の整った応接係が座っていた、右手には水晶石で作られた階段が螺旋状に二階へと伸びている。
左手には濃い革張りのソファが数組置かれ、待合用となっている、ホール全体は落ち着いた品格に満ちており、入った者は自然と足音を潜め、装飾をじっくりと眺めてしまう。
ティロは心の中で感慨に浸り、手にした麻袋をそっと握り締めた、キュウプは彼女たちをソファに案内し、応接係に紅茶を出すよう頼む。
「私はリリン様にお伝えして参ります、少々お待ちください。」
そう言って、キュウプは水晶石の階段へと向かう、彼の足音以外、ホールは静寂に包まれていた。
ノエロアはティロの隣に座り、ホールの隅々まで視線を巡らせる、頭上にはクリスタルのシャンデリア、壁際には陳列棚、足元には柔らかな絨毯、彼女は何も言わず、ただ軽くため息をついた。
ティロは紅茶を一口含み、目に一瞬の驚きが走る、この茶葉は以前飲んだことがある——王都の貴族だけが口にできるウパ紅茶だ。
彼女はノエロアの表情に気づき、笑って首を振ると、優しく彼女の頭を撫でた。
「どうした、圧倒されたか?」
「違います……」
ノエロアは視線を戻し、紅茶を一口含んで、どこか感慨を込めた声で言った。
「ただ……いつか私たちもこうなれるのかなって……いくつもの帝国を渡り歩く日々じゃなくて……」
ティロは軽く笑い、優しい口調で——しかしその目には感慨が宿っていた。
「その日は来るさ、諦めずに続ければな。」
ノエロアはそれ以上何も言わず、ソファに凭れて、もう一度豪華な調度品の数々を眺めた、何を考えているのかは分からない、そこへキュウプが二階から降りてきて、穏やかな口調で言った。
「船主がお取引をお受けになりました、こちらへどうぞ。」
ティロとノエロアは立ち上がり、キュウプの後について水晶石の階段を上る、三人が一段一段踏むたびに、澄んだ音が響く。
ティロは麻袋を片手に持ち、もう一方の手で冷たい金属の手すりを支えながら、階段の折り返しで一枚の油絵が目に留まった。
嵐の海。一隻の帆船が大波を切り裂いて進んでいる。船は今にも転覆しそうだ、しかし、海面の下には、一対の手の幻影がしっかりとそれを支えている。
ティロは一瞥しただけで視線を戻し、さらに上へ進む、やがて二階に到着した。
二階の廊下には濃い色の絨毯が敷かれ、足音はほとんど立たない、天井にはクリスタル灯がぶら下がり、柔らかな光を放っている。
キュウプは一つの扉の前で立ち止まり、振り返って静かに言った。
「少々お待ちください。」
彼は扉をノックする、中から、独特の艶を帯びた、少しだるそうな女の声が聞こえた。
「お入りなさい。」
キュウプが扉を開け、道を譲る、ティロは扉の前で一度深呼吸し、麻袋を持ち替えて足を踏み入れる、ノエロアもぴったりと後に続き、扉は再び静かに閉められた。
室内の灯りはとても柔らかく、白い光がゆったりと降り注ぎ、一人のくつろいだ服装の女を照らしていた、彼女の耳には紅瑪瑙のイヤリングが揺れ、髪はまだ少し濡れている、彼女はソファに凭れ、顔には怠惰と色香が漂い、足元に敷かれた竜鰐の皮の絨毯からは凶暴な気配が漂い、今にも生き返りそうだった。
彼女はティロとノエロアに、向かいのソファに座るよう手で示す、その目には好奇心が宿っていた、ティロは麻袋を竜鰐の絨毯の外に置き、そっと絨毯を踏み越える。
二人はゆっくりとソファに腰を下ろす、ソファは非常に柔らかく、まるで雲の上に座っているかのような安らぎを覚え、心の緊張も消え去った。
「初めまして、私はこの商会の船主、リリンです。」
「キュウプから話は聞いています、で……あなた方が取引したいものとは?」
ティロが姿勢を正し、口を開こうとしたその時、再び扉が開かれる、キュウプが夜食とコーヒーをティロとノエロアの前に置き、リリンに軽く一礼して、再び退出し、扉を静かに閉めた。
リリンは二人に手を伸ばして味わうよう促す。ノエロアが小声で「ありがとうございます」と言い、コーヒーを一口含む、濃厚な香りが口中に広がる、少女は独特の微笑みを浮かべ、部屋の隅に飾られた象牙やその他の高価な装飾品に興味を示しながらも、沈黙を守る。
ノエロアは今が質問をする時ではないと理解し、静かにティロとリリンの会話に耳を傾ける、ティロは考えをまとめて言った。
「あなたの商会で王都行きの船の切符を買いたいのです、ですが、手持ちの金貨が足りません。」
リリンは目を細め、口元にかすかな笑みを浮かべる、コーヒーを手に取り、ゆっくりと揺らしながら言った。
「では、何をお持ちだと言うのです?」
「はは、それがその麻袋です。」
ティロは笑いながら隣の麻袋を指す、リリンの視線がそこに向き、彼女は思わず軽く笑った。
「冗談でしょう?」
「もちろん、冗談ではありません。」
彼女は立ち上がって麻袋に近づき、紐を解く。折り畳まれた黒竜の皮が姿を現し、側面からリリンの足元まで滑り出る、全長は約七メートル、黒竜の皮は柔らかく滑らかで、質感は極上だが、まだ少し湿っている。
しかも、この皮からは血の匂いが漂っている、どうやら剥がされて間もないようだ、そして何よりリリンを驚かせたのは、この黒竜の皮に法則の気配が宿っていることだった。
「これは……面白いものだな。」
リリンの瞳に一瞬の驚きが走るが、彼女は動じず、コーヒーを一口含んで淡々と言った。
「で、リリン船主、これは金貨にしていくらになるとお思いですか?」
ティロは黒竜の皮を揺らす、照明の光を受けて、皮は虹色の光を反射する、リリンはその価値を当然理解していた、法則級の竜皮は極めて希少であり、普通の法則級魔獣の皮とは比べ物にならない。
披露が終わると、ティロは再び黒竜の皮を整え、麻袋を平らにしてその上に置き、再びソファに座ってコーヒーを一口含む。
リリンはうなずき、しばし考え込む表情を見せた後、自らの評価額を提示した。
「そうですね……百九十金貨、どうでしょう?」
ティロの表面は変わらなかったが、心の中ではまだ値段を上げられると思っていた。
なぜなら彼女にとって——
駆け引きは……まだ始まったばかりなのだから。




