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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第十三話:暗流うごめく

ジャスミンが馬車を操り、ゆっくりと城門の通路を通過する、視界は次第に陰り始め、数秒後には再び目を刺すような明るさに変わる、眼前のすべては一つの白い光の門に阻まれ、目を開けているのがやや難しいほどだった。


喧騒が耳に届くと、ジャスミンとレオンの視界はぱっと開けた、見渡す限り、数十里にわたって建物が一面に、また一面と広がっていた。


高くそびえるものもあれば、密集して立ち並ぶものもある、馬車の下の地面は、紋様の刻まれた灰色の石板で舗装され、幅広く平らで、両側の店舗は互いに寄り添うように並んでいた。


鍛冶屋の隣では、灼熱の炭火の熱気が荒れ狂い、一人の小柄で濃い髭を生やしたドワーフが、暑さで全身から滴る汗を拭いもせず、力強く鉄材を打っていた、打つたびに大きな火花が飛び散る。


しかし彼はまるで何も感じていないかのように、依然としてその作業に没頭していた、その打撃音と、遠くの酒場の喧騒が互いに交錯し、一層の雑踏を生み出していた。


空気には、焼きたてのパンの香り、酒精の匂い、古びた革の匂い、そして極めて淡い生臭さが混じっていた、それは埠頭の方から漂ってくるもので、海に面した街ならではの欠点だった。


行き交う人々——両刃の剣を背負った冒険者、買い物籠を提げた婦人、緑の長袍を纏ったエルフ、毛むくじゃらの外見をした獣人が、使者の装束で人混みの中を縫うように歩いていた。


ジャスミンは思わず速度を緩め、目が道端の菓子店に惹かれたが、すぐに首を振り、馬車をある酒場へと向かわせた。


レオンは手にした本を閉じた、最後の一冊も読み終え、彼は顔を上げて通りの先にある時計塔を一瞥し、再び窓の外の人波に視線を戻した。


「キュキュ、この道中ご苦労だった、ここでゆっくり休むといい、私たちが支払った金は、ここで二年間十分に休養できるだけの額だ。」


ジャスミンは馬車を酒場の裏手の駐車場に停め、手を上げてキュキュの頭を撫でた、キュキュはその言葉を理解したかのように、目を細め、嬉しそうに口を開けて白い歯をのぞかせ、ふんふんと鼻を鳴らした。


「お客様、ご安心ください、当店はカタリの学员の馬を何度もお預かりしております、必ずや問題が起きないようお約束いたします。」


ジャスミンがキュキュの手綱を差し出すと、人間の外見を持ちながら猫の耳を生やした少女が、しっかりと手を伸ばして手綱を握った。


少女の顔には笑みが浮かび、そっとキュキュの鼻を叩いた、彼女がキュキュを連れて一歩歩くたびに、背後では尾が絶えず揺れていた、その縦瞳と歩調には、自信に満ちた光が宿っていた。


彼女は酒場の裏手で、片側を三つ編みにした少女に低声で何かを伝えると、少女は頷いて酒場の中へと入っていった。


レオンは遠くに立ち、二人の会話を見つめていた、彼はただ静かにジャスミンが猫耳の少女に用事を済ませるのを見届けると、何も言わず、ただ次々と到着する他の貴族の少年少女たちを観察し、そして何の躊躇もなく、ジャスミンを連れて酒場の木製の扉を押し開けた。


チリンチリンと、酒場の扉の前にある銀の鈴が鳴る、暖かな黄色い灯りが室内を照らし、数人の接客を担当する少女たちが、きちんとした服装で忙しそうに動き回っていた。空気には酒精と食物の匂いが満ちていた。


客の注文を聞く者、酒や食物を運ぶ者、カウンターの前に静かに立つ者、カウンターの少女たちの背後には、様々な酒瓶や酒樽が並べられていた、中にはかなりの年月を経たように見えるものもあり、また暖かな灯りの弧光を反射しているものもあった。


幾つもの酒卓は既に満席で、酒を飲む冒険者、弓を拭くエルフ、金貨を数えるドワーフ、俯いて食事をする商人、短剣で爪を研ぐ獣人などがいた。


そして、ただ単に少女たちを見たり話を聞いたりするのが好きな酒飲みたちもいた、少女たちはとっくに彼らの存在に慣れており、酒飲みたちは一番安い麦芽酒を一杯注文し、隅っこを見つけて一日中そこにいるのが常だった。


一群の人々が酒場の入り口の方に視線を向ける、その目には、値踏み、好奇心、観察の色が満ちていた、なぜなら、彼らの気質は明らかにこの街のものではなかったからだ。


しかし、目の前の黒い長袍の少年と白い長袍の少女の服装を見て、彼らはすぐに理解した、またしてもカタリへ向かう学生の一組か、と。そして再び頭を戻し、自分たちの話を続けた。


彼らは貴族の坊ちゃんとその女中には、どうしても興味が湧かなかった3たとえあの銀髪の少女がこれほど美しくても、彼らは気にしなかった。


レオンとジャスミンはサービスカウンターに歩み寄る、そこへ、片側を三つ編みにした少女が彼らのもとへと歩いてきて、その口調は敬意に満ちていた。


「いらっしゃいませ、お客様、パルティ酒場へようこそ、お客様のご要件は、ミアを通じて承っております。」


「その他のことはこちらで手配いたします、お部屋は三階の八番、すでに手続きは完了しております。ご利用期間は一日となります。」


ジャスミンは振り返ってレオンを見た、ここ数日張りつめていた神経がようやく緩むことができ、彼女の口調は穏やかだった。


「レオン様、よろしければ、先に浴室をお借りしてもよろしいでしょうか、清潔魔法をずっと使っていると、どうもすっきりしなくて。」


レオンは頷き、ジャスミンの願いを許可した、その後、彼は誰もいない席に歩いていき腰を下ろし、手を挙げてフロントの給仕を呼び、温かいミルクを一杯注文すると、周りの人々の雑談に耳を傾け始めた。


その中の一人、顔中に鱗があり、背中には二枚の短い翼をたたみ、太く短い尾を絶えず揺らしながら、手にラム酒の杯を握っている竜族の青年が、緑の縦瞳で向かいの淡い金色の短髪のエルフの男を見つめていた。


「ところでさ、最近の薪火の街の魔獣討伐任務は……どんどん増えてるんだよな、特にあのクソゴブリンどもが、本当に手強いんだ!」


短髪のエルフの男は麦芽酒を一口飲み、細長い耳の先が微かに赤くなり、口元にからかうような笑みを浮かべた。


「ははは、ファム、そんな任務はさっさと諦めろよ、竜族がゴブリンに勝てないなんて、笑いものになるだけだ。」


「でも、聞いたところによると、最近冒険者協会にゴブリン退治専門の狂人が現れたらしい、そういう奴に任せておけ。」


彼は言葉を一旦区切り、再び酒杯を掲げてファムと乾杯し、大きく一口を飲み干してから続けた。


「それに、お前の化形魔法はまだ安定してないんだろ、まずはそれを何とかしろよ。」


「ハンタ、正直に言うと、いつになったら……尻尾と翼も隠せるようになるのか、全然わからないんだ、化形魔法は本当に難しすぎる。」


ファムは片手で頬を支え、すっかり落ち込んだ様子で酒杯を掲げてハンタと乾杯した、ハンタは首を振り、仕方なさそうに酒杯を掲げて、再び麦芽酒を一口飲んだ。


一方、別の酒卓では、商人らしい装いの青年が同行の仲間を見て、不満を込めた口調で言った。


「ルナ、今日の午前中に埠頭に行ったんだが、大きな事件が起きてたのを知ってるか?」


ルナと呼ばれた少女は、まつ毛の下の茶色い目を微かに上げ、フォークで小さなケーキを刺して口に運び、頬を膨らませながら商人の青年を見た。


「うーん……何があったの?」


「ここ数日、王都行きの輸送船が、次々と事故に遭ってるんだ、聞いた話だと、龍鰐の群れの繁殖期が原因らしい……」


「薪火の街の聖騎士統領がもう調査を始めてるらしいけど、範囲が広すぎて、短期間では解決できないそうだ。」


ルナはケーキを飲み込み、ナプキンで口元を拭き、軽くため息をついた。


「それは厄介ね、そうなると、私たちの商品もまた長い間売りに出せないわ、まったくの赤字ね……」


その頃、ティーロの商隊は主要道路に沿って進んでいた、彼女たちは入城後に気を緩めることなく、優先して薪火の街の埠頭へと向かった。


途中、密集した商店街、住宅地、広大な倉庫街を通過する、空気中の生臭さもますます強くなり、何度も訪れたことのあるノエロアや他の者たちでさえも依然として不快感を覚えたが、薪火の街の人々はとっくにこの匂いに慣れていた。


ティーロたちの視界の先に、ゆっくりと広い水面が現れた、彼女たちの目的地に到着したのだ。


ここは薪火の街から王都へ通じる最後の関門であり、薪火の街全体で最も軍力が集中している場所でもあった、関門の区域内には数軒の渡船商会があり、湿った石畳の隙間には淡い緑の苔が生え、人が踏むたびに水泡のゴボゴボという音がした。


さらに遠くの海岸には、数隻の古びた漁船が岸に寄せられ、時折波に合わせて軽く揺れていた、道端の木製の架台には半乾きの漁網が干され、数人の漁師が岸辺にしゃがみ込んで船板を修理し、時折顔を上げて通り過ぎる商人や聖騎士たちを一瞥し、またすぐに自分の作業に戻った。


潮風は塩気を含んで湿っており、魚の生臭さや湿った木材の匂いが混じっていた、遠くでは海鳥の啼き声が聞こえ、潮の満ち引きが石堤を打つ音が混ざり合い、この区域で最も長く続く背景音となっていた。


渡船商会の門前では、多くの水夫たちが地面にしゃがみ込み、その目は行き交う商人や冒険者、様々な理由で訪れる人々を値踏みしていた、顔の表情は複雑だった、ここ数日の龍鰐の群れの襲撃で、稼ぎはますます減り、生活は困難を極めていた。


数度の問い合わせを経て、ティーロは他の商人たちと同様に、暫くは出航できないという理由を聞かされた、龍鰐の群れの不安定な要素のためだ、何せ船会社も船舶と人員の安全に責任を持たねばならない、しかし、彼女たちが埠頭に入ったその時、一つの影が暗がりからこっそりと尾行していた。


ティーロは両手をゆっくりと腰に当て、その目は複雑な色を帯びて、軽くため息をついた。


「ああ~本当に面倒だ、この荷物をこのまま待っているわけにはいかない、なぜよりによってこんな時に……」


商隊の仲間たちの目には難色が満ちていた。ある者は俯いて話し合い、ある者はティーロを見つめ、またある者は俯いて考え込んでいた。


ポントは沈んだ雰囲気の皆を見て、手を上げてノエロアの頭を撫でた、少女は唇を尖らせたが、彼の手を頭の上からどかした。ポントが言った。


「頭領、俺が他の商会と話をしている時に、ある渡船商会の水夫に会ったんだ、その商会は……どうやら今もなお王都への航行を続けている唯一の船隊らしい。」


「唯一運行してる? 変だな、こんな状況で、他家がまだ安定して輸送を続けられるのか?」


「間違いなく、値段はべらぼうに高いんだろうな。」


ティーロは頷き、長い間考え込んでから、疑問を込めた口調で言った。


「そうだ。彼らの値段は市場価格の三倍だ。」


ポントは頷き、目の前のティーロを見つめながら、彼女を怒らせると分かっていながらも、その言葉を口にした。


「三倍! 彼らは強盗でもするつもりか? 通常時で金貨五十枚が必要なところを、彼らは口を開けて百五十枚だと?」


「ははは、笑わせてくれるよ、国難に乗じて儲ける機会ってのは、俺たち商人よりもえげつないな……」


ティーロは考え込んだ、心の中にふと一つの考えが浮かんだが、それは彼女にとっても複雑なものだった、レオンたちに対して良くないことだと分かっていたが、口には出せなかった、何せ、それは決して名誉なことではなかった、ティーロはため息をついた。


「まあいい、まずはレオンとジャスミンさんを探しに行こう、彼らがどう思うか見てみよう。」


しかし、ティーロの商隊の動きは、すべてどこかの目にしっかりと監視されていた、その男は水夫の服装をしており、暗がりの中で口元を歪めていた。まるで全ての出来事を予見していたかのようだった。


「ははは、そうだ、その調子だ、だが、結局お前たちも俺たちを選ぶことになる、他の商人たちと同じようにな……」


「しかし、まさか船主がこの一手で、こんな短期間にほぼ四万枚もの金貨を稼ぐとは思わなかった……」


彼女たちが去っていくのを見届けると、彼は服の埃を叩き、振り返って一軒の商会へと向かった。


彼の目の前にある商会の名前は「有一家商会」、商会の扉は贅沢なパリモーム材で作られ、扉の縁は銀皮で包まれていた、入り口には多くの迷っている商人や、商会の水夫たちが静かに両側に立っていた。


彼は脇の扉から入り、水晶石で作られた階段を上がって商会の二階に到着し、一つの部屋の前に立った、隣の使用人と目を合わせると、相手はそっと扉を開け、彼が入室した後、再び静かに閉めた。


部屋の奥には、血のように赤い長裙を着た女が、高価なソファに座っていた、まるで一輪の妖艶な花のようで、指先でそっと帳簿を繰っていた、窓からの陽光が彼女の全身を照らし、耳に下げた紅瑪瑙の宝石が赤い光暈を放ち、漆黒の長い髪はだらりと肩に散らばっていた。


水夫は足音を非常にゆっくりとさせ、女の思考を妨げることを恐れていた、彼は龍鰐の皮で編まれた絨毯をそっと踏みしめた、すると次の瞬間、女の色気を含んだ顔が彼の方に向けられた。


「どうした? 新しい商隊が来たのか?」


「は……はい、リリン様……その商隊はまだ取引に同意してはいませんが、それでも我々のところに来るでしょう……」


「私は彼らに明確に伝えました、我々の埠頭の船隊は明日の正午に出発すると、百五十金貨はもう十分安いのです……」


「もし遅れれば、彼らは薪火の街を離れて他の街へ行くか、二ヶ月以上の時間をかけるしかありません、それでは何を売るというのでしょう。」


「ですから、その時には三百金貨を要求しても、彼らは歯を食いしばって承諾するでしょう、さもなければ、赤字を覚悟するしかありませんからね。」


リリンはゆっくりと立ち上がり、長裙が龍鰐の絨毯の上に滑り落ちた、彼女は帳簿を机の上に置き、慌てず騒がず水夫の前を数周回った、水夫は微動だにできなかった、たとえ女の優しい呼吸音を感じ取っても。


女の体から漂う香りは、まるで薔薇の花のようだった、そしてリリンは足を止めて彼の前に立ち、白い手のひらを上げてそっと水夫の頬を叩き、その口調は怠惰に満ちていた。


「いいわ、後でフロントに行って金貨五枚を受け取りなさい。報酬だと言っておいて。」


水夫は満足げな表情を浮かべ、慌ててリリンに腰を折ってお辞儀をし、足早に立ち去った、その後、リリンは再びソファに座り、両脚を組み合わせ、再び帳簿を手に取り、声は穏やかだった。


「この八千金貨は使う価値があったわ。」


「ふふ……まるでルクス枢機卿の有名な言葉ね~」


「狂人と愚者が謎かけをしても、彼らは決して知ることはない、傍観者が、この笑い話をどう見ているかを。」


パルティ酒場の雰囲気はとても賑やかだった、レオンの前の温かいミルクは、底の見えたグラスだけが残っていた、彼はジャスミンの気配を察知し、まぶたを上げる、目に入ったのは、階段を下りてくる、白い普段着を身にまとった少女だった。


やや湿った銀白色の秀髪が少女の肩に広がり、その赤い瞳には寛ぎの色が浮かび、顔には微かな赤みが差していた、ジャスミンはレオンを見て、声は穏やかだった。


「レオン様、お風呂をいただきました、あなた様のお召し物は、ベッドの前に用意してあります、どうぞ、あなた様もお風呂をお使いください。」

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