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深淵紀行  作者: 梓UU
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学院編:第十話:見つめる

朝の太陽がゆっくりと空に這い上がり、地面の草の上には晶莹な水滴が宿っていた、陽光は深夜の濃霧を追い散らし、すべてに生命の息吹をもたらした。


一夜の休息を経て、人々は荒れ果てた廃墟の後片付けを始めた、男たちは瓦礫を清掃し、婦人たちは食物を準備し、若い娘たちは幼い子供たちの世話をする、何せ、この小さな連中はあまりにやんちゃだからだ。


聖騎士と冒険者たちは死者の埋葬を担当し、高壁の補修計画について協議していた、もし放置すれば、魔獣の群れに襲われる可能性があった。


すべては整然と進み、忙しさの中には生き延びた者同士の暗黙の連携が滲んでいた、食物の香りが漂い、廃墟全体に広がり、遠くで働く男たちは手を止めては、焚き火の方へ涎を飲み込みながら視線を向けた。


アイリーナと婦人たちは残り少ない食材を処理していた、数口の大鍋が火にかけられ、淡黄色の油の層の下で、大量の肉と野菜が滾っていた、見ているだけで、待ちきれずに一口食べたくなる。


陽光は崩れ落ちた教会の大きな穴を通り抜け、一箇所の空き地を真っ直ぐに照らしていた、そこには風貌の平凡な冒険者が横たわっており、彼の眉はひそめられ、まるで悪夢を見ているかのようだった。


夢の中で、黒竜の縦瞳がルットを睨みつけていた、その視線に込められた純粋な悪意は凝り固まって実体を持ち、見えない枷となって彼を縛り上げていた、彼は手を上げて抵抗しようとしたが、この悪意に満ちた空間にがっちりと制限され、魔力の一片すら動かせなかった。


牙の生えた大きな口が彼に噛みつこうとした、ルットは条件反射で両手で自身を庇い、死の結末を待った、彼が千々に引き裂かれようとしたその時、無意識に猛然と目を開けた。


「あっ! びっくりした!」


彼は全身冷や汗まみれで、荒く息を喘がせていた、異変を察知し、ルットは顔を上げて隣を見ると、そこには一人の牧師の白袍を着た少女が立っていた、どうやら自分の行動が彼女を驚かせたらしい。


「すまない……わざとじゃないんだ。」


ルットは額を揉みながら、視界に映るすべてがまだ少しぼやけていた、白く清らかな手のひらに乗せられた清潔な白い布が差し出され、少女の声ががらんとした教会の中に響いた。


「分かっています、ただ、あなたに驚かされただけです、これは清潔なものですので、ご自由にお使いください。」


「ありがとう……げほっ、げほっ……」


ルットの声は乾ききっており、喉が埃で詰まったかのような強い不快感があった、少女はその様子を見て、腰の水筒を外し、ルットの前に差し出した。


「大丈夫ですか……あまりお体の調子が良くなさそうですね、水をどうぞ。」


ルットは遠慮しなかった、彼は水筒の蓋を開け、躊躇なく大きく水を飲んだ、清涼で甘い水が喉を通り、あの乾いた感じは静かに消え去った、しかし飲み方があまりに急で、激しく咳き込んだ。


少し息を整えてから、ルットはようやく落ち着いた。彼は目の前の少女に向かって尋ねた。


「すみません、ずっと私の世話をしてくれていたのはあなたですか?」


「はい、エノート隊長から特に頼まれていました、私も皆さんも、あなたのご状態をとても心配していました。」


少女はルットから返された水筒を受け取り、穏やかな口調で言った、彼女は起き上がろうとするルットを見て、そっと支えた、その動作は優しく、手はとても柔らかく細く見えたが、ルットが意外に思うほど力強かった。


ルットは体を真っ直ぐに伸ばし、顔を上げた時、目の前の彫像に気づいた、それは白い長袍を身にまとった女性で、短い髪をしていた。彼女の顔には淡い微笑みが浮かび、その瞳は優しさに満ちており、容易に親しみを感じさせた。


光影の流れが彼女の顔を照らし、その口元に描かれた弧を生き生きとさせていた、魔力を絞り尽くした反動のせいか、あるいは夢の重なりによる錯覚か、ルットはこの彫像が自分に向かってこっそりとウインクしたように感じた。


「これは……?」


「ルートヴィヒ様のことですか?」


少女はルットの視線を追い、その目には憧れが満ちていた、彼女は目の前に立つ彫像を見上げ、誇らしげに言った。


「ルートヴィヒ? 『生命の意志』と呼ばれるあのルートヴィヒ様か?!」


ルットの声は驚愕に満ち、心に波紋が広がった、あの最上位の強者さえも蘇らせることができると言われる存在が、まさかここに彫像として残されているとは。


彼の知る限り、ルートヴィヒはもう何年も姿を消しており、彼女を祀る場所の多くはとっくに消え去っていた、しかしここには完璧に保存されていた。


一片のひび割れもなく、あまりに完全で、あまりに清らかだった、どうやら常に手入れされているようだ、町のすべては破壊されたが、彼女の彫像だけは残っていた、まるで災禍が故意に彼女だけを避けたかのように。


「ええ、ルートヴィヒ様はかつてソロの町に来られたことがあります、私の祖父は戦争で片腕を失いましたが、ルートヴィヒ様に治療していただき、再び新たな命を得ました。」


「それに、祖父が言うには、ルートヴィヒ様はとても親しみやすかったそうです、ただ、彼女が人を救う時、いつも祖父が聞いたことのない異国の曲を口ずさんでいたそうです。」


「祖父を治療している時、彼女は突然祖父の髭を指さして、笑みを浮かべながら言ったそうです。」


「『その髭、編み込みにするのにぴったりね、試してみない?』」


「ルートヴィヒ様はこの町のすべての人を救ってくださいました、皆が感謝し、自発的に彼女の彫像を彫ったのです、そして私も彼女に影響を受けて、牧師になることを選びました。」


「そんな話があったのか……」


ルットは目の前の少女を見つめ、感慨を込めた口調で言った、何かを思いついたように、彼は再び尋ねた。


「すまない、まだ君の名前を聞いていなかったな。俺はルット、冒険者だ。」


「ハンナです、初めまして、ルットさん。」


ハンナは頷いた、ルットは振り返って立ち去ろうとし、少女も彼に従って教会の大扉へと向かった、ただ、あの彫像だけは、二人の去り行く姿を黙って見送っていた、何の動きもなく、依然としてそこに立ち続けていた。


しかし、教会を出た最初の瞬間、ルットは異様な感覚を覚えた、それは冷たさと、誰かに見られているような感覚だった。


ちょうど片付けられたばかりの空き地で、エノートは冒険者や聖騎士たちと資源と人員の配分について議論していた、リンガはエノートを見つめ、しばらく考え込んだ。


「私は、当面の資源は節約すべきだと思います、王国の支援が来るまで少なくとも半月はかかりますが、食料は十日分しか持ちません、どうしても足りなければ、削減するしかないでしょう。」


「私の情報網は緻密で、どこに魔獣の群れがいるか分かっています、私と他の者で討伐に向かえば、八日間は必要ですが、住民の消費を賄うことはできます。」


隣で休憩していた数人の冒険者とカイは口を開かなかったが、重く、同意を示す視線を交わし合った。


ジェロは頷き、リンガの言葉に大いに賛同した、これがおそらく最善の解決策だろう、彼は乱世において最も重要なのは常に食料、治療、そして安全だと考えていた。


「その通りだ、私は賛成だ。」


エノートも頷き、リンガの言葉に深く同意した、彼らが議論していると、エノートはルットとハンナに気づいた。すべての者の視線も一斉に彼らに向けられた。


「目が覚めたか、体調はどうだ?」


ルットは口元に微笑みを浮かべた、体は少し弱っていたが、行動に支障はなかった。


「だいぶ良くなりました、教会で寝ているよりは、ずっと良いです。」


「まだ正式な自己紹介をしていませんでしたね、エノート、聖騎士チームの隊長です。」


エノートは手を差し出し、ルットと軽く握手を交わした。二人は互いに頷いた。


「ルットです。一介の……普通の冒険者です。」


「ははは、ルット殿、謙遜なさらないでください、あなたは普通の人ではありませんよ。」


リンガの声がからかうような笑みを帯びてルットに届いた、ルットは振り返り、リンガと笑みを交わした、この法則の強者に対して、リンガは心からの敬意を抱いていた、もし自分の冒険者ギルドにこのような強者が一人でもいれば、名声はさらに高まるだろう。


「リンガです、情報収集を担当する冒険者です。」


「お会いできて嬉しいです。」


ルットは全員を見渡し、一人ひとりと挨拶を交わした、その後、再びエノートに視線を向けた、彼は何か言いたげで、自分に話したいことがあるようだったが、今の状況では適切ではないようだった、彼は少し考えてから言った。


「資源についてのお話を伺いました、もし可能なら、私も少しお手伝いできるかもしれません。」


人々はルットの言葉を聞き、ある者は光栄に思い、ある者は心の中で称賛し、またある者は安堵の息をついた、エノートは頷き、口調を和らげた。


「気にしないでください、今日は急がなくて結構です、今はまだしっかり休む必要があります、後ほど、あなたと個別に話したいと思います。」


「わかりました。」


彼は隣のハンナを見た、彼女は穏やかな笑顔を返した、その声はとても軽やかで、朝の草の葉を撫でる微風のように、人の心を癒す力が宿っていた。


「ルットさん、そうお考えいただけるなら、皆さんも大変感謝するでしょう、私があなたの世話を担当しますので、どうかお急ぎにならずに。」


ルットは微笑み返した、その言葉は、彼の心の中にあった恩を早く返さねばという焦りを、いつの間にかすっかり解きほぐし、ただ平静だけが残った。


「では、この辺りを散歩してきます、しばらく皆さんのご相談をお邪魔しません。」


彼は再びエノートたちに軽く会釈をし、振り返って片付けられた道を、忙しくも香ばしい炊事の煙が立ち上る方へとゆっくりと歩いていった。


背後からエノートの落ち着いた声が届く。


「ルット殿、忘れずに、後で食事を。」


ルットは振り返らず、ただ右手を上げて空中で軽く振った、ハンナがその後ろに続いた。


町の高壁の缺口の下で、レオンは馬車の中に座っていた、手には湯気の立つ紅茶のカップを握り、彼は立ち上る湯気を吹き消し、そっと一口含んで、遠くの景色を眺めていた。


ジャスミンが馬車の外から顔を覗かせ、少し疑問そうにレオンに尋ねた。


「レオン様、急いで出発なさらないのですか?」


レオンは意味深に視線を戻し、顔に淡い笑みを浮かべて、ジャスミンを見た。


「急ぐことはない、時間は十分にある、午後に出発する。お前は自由に過ごして構わない。」


ジャスミンは何かを考えるように頷き、空き地に歩いていって腰を下ろし、新鮮な空気を吸い込んだ、あの黒竜の死体については、ジャスミンはレオンの邪魔になることを心配し、黒竜の素材を収集した後、烈火魔法で焼き尽くして灰にした。一夜の冷たい風で薄まり、ほとんど匂いは残っていなかった。


草原を行き交う小型の魔獣たちを見つめながら、ジャスミンは頬を手に乗せた、身近な花々が風に揺れ、彼女はぼんやりとそれらがじゃれ合う様子を見ていた、その中の一匹の兎魔獣が走るのが速すぎて、別の兎魔獣に頭からぶつかり、二匹は取っ組み合いを始めた。


ジャスミンはその光景を見て、口元に微笑みを浮かべた、すべてがこんなにも安らかで、少女の姿はなんと美しく、愛らしいことか。


ルットは廃墟の中を歩いていた、男たちは彼が戦いで尽くしたことを既に知っていた、彼を見かけると、一人ひとりの目は真摯で称賛に満ちており、片手を固く握り拳にして自分の胸を軽く叩く者、思わず親指を立てる者、心からの感謝を述べる者もいた。


ルットは謙虚に頷き、その様子にハンナはそっと手で口を覆って笑った、彼は遠くの一本の木を見つけ、ゆっくりと歩いていった、大樹の枝葉は鬱蒼と茂り、風に吹かれると、まるで散らない蒲公英のようだった。


彼はそっと座り込み、木の幹に寄りかかった、何かを察知したように、彼は町の高壁の方を見た、まるで冷たい瞳に見つめられているような感覚がした。


「あれは……気のせいか?」


ルットがひとりごちると、ハンナが首をかしげた、木の葉が風に吹かれてサラサラと音を立てる中、彼女はルットを見つめ、その声には気遣いが込められていた。


「ルットさん? 大丈夫ですか?」


ルットは我に返り、微笑みを浮かべた、彼の目には少女の優しい顔が映り、とても可愛らしく見えた。


「何でもない、ちょっと面白いことを考えていただけだ。」


二人は一緒に木の下に座り、時折雑談を交わした。ルットは少し気まずさを感じていた、彼は女性との会話が得意ではなく、景色を褒めようと思ったが、目の前にはただ廃墟が広がっているだけだった……


ルットの視線は最終的に、遠くの高壁の下にある、最初は気づかなかった物体に留まった、そのぼんやりとした輪郭の物体は、馬車のように見えた。


あの見られている感覚がますますはっきりとしてきた、それは悪意でも好奇心でもなく、ほとんど無関心に近い観察だった。


「ルットさん?」


ハンナの柔らかな声が、大きくはなかったが、彼を再び現実に引き戻した。


「ああ、すまない、上の空だった。」


ルットは視線を戻し、少し気まずそうに頭をかいた、陽光が木の葉の隙間を通り、彼の顔に斑模様の光影を落としていた、彼は少し考えてから言った。


「ただ……この町があのような災厄を経験したのに、皆がこれほど心を一つに協力できるなんて、本当にすごいことだと思ってね。」


「だって、私たちはみんな、まだ生きようと頑張っていますから、私の祖父が言っていました、人間が偉大なのは、どんな困難も決して恐れないからだ、と。」


ハンナは両手を重ねて膝の上に置き、遠くを見つめた、風が彼女の短い髪を揺らし、その目は優しさに満ちていた。


「皆さん! ご飯ですよ! 食事の準備ができました!」


アイリーナの声が皆の耳に届いた、男たちは額の汗を拭い、一人ひとりの顔に張りつめていた表情がようやく緩んだ。


「よかった、やっと飯が食える!」


「ああ、疲れた、でも食った後は、みんなもうひと踏ん張り忘れんなよ。」


「では皆さん、本日の午前中の会議はこれで終了とします、明日は皆さんにお願いします。」


エノートは安堵の息をつき、顔を上げて皆を見渡した、彼はこの会議が非常に重いものであったことをよく理解していた、誰もがじっと見つめ、緊張した表情を浮かべていた。


リンガは石の机に広げていた地図魔法をしまい、全員が互いに頷き合った、重苦しい雰囲気は完全に払拭され、それぞれがアイリーナの方へと向かっていった。


聖騎士と冒険者たちは肩を組んだりしながら、気楽な話題を交わし、顔には笑みが浮かんでいた、これは貴重な休息のひとときだった、彼らはよく分かっていた、明日こそが、本当に彼らの連携が試される始まりであることを。


しかし彼らは決して心配していなかった、なぜなら、彼らはとっくに準備を整えていたからだ。

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