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第26話 策謀の影と分断の戦場(後編)

「……貴様か! ここは私が相手をする!」

 ゲイルが真っ先に馬から飛び降り、長剣を正眼に構えて立ちはだかった。

 彼は長身の男と一対一で対峙し、戦いの火蓋が切って落とされた。

 ゲイルは全身のバネを使い渾身の鋭い突きを放った 。

 長身の男はそれを鉄槌の柄で軽くいなすと、即座にカウンターの横薙ぎを繰り出した。

 ゲイルは身を沈めてかわし、男の剥き出しの脇腹を狙って切り上げる。

 しかし、男は素早く切り返し、刃を弾き返した。

ガギィィィンッ!!

 数合の激しい打ち合いが続く。

 ゲイルの流麗な剣撃に対し、男は最小限の動きでそれを防ぎ、隙を見ては鉄槌を叩きつける。

 男の振るう鉄槌の一撃は、純粋な質量の暴威となってゲイルを襲った。

「ぐっ……、はあぁっ!」

 上段からの凄まじい一撃を、ゲイルは長剣で受け流したが、衝撃を殺しきれず、数メートル後退させられた。

「……認めよう、貴様はただの賊ではないと! はあああああッ!!」

 咆哮と共に、ゲイルの長剣から禍々しくも苛烈な黒い炎が噴き出した。

 女神イリテスから授かった嫉妬を糧とする祝福の力だ。

 身体能力が爆発的に向上し、ゲイルの動きは一瞬で神速の領域へと達した。

 長身の男は、この突然の変貌――黒炎の出現と、目に見えて向上したゲイルの身体能力に、一瞬だけ驚きに目を見開いた。

 しかし、男はすぐにその異変に適応した。

 彼は力任せの攻撃をやめ、巨大な鉄槌を盾のように使い、ゲイルの攻撃を「守る」ことに徹し始めたのだ。

「……何ッ!?」

 男は、ゲイルの黒炎を纏った連撃を鉄槌の面で受け流しながら、巧みな足運びで少しずつ、確実に調査隊の馬車から遠ざかる方向へと後退していく。

(こいつ、俺を馬車から引き離すつもりか!)

 ゲイルはその意図に気づき、馬車の方へ戻ろうとした。

 だが、その瞬間、長身の男は逃がさぬと言わんばかりに攻勢に転じてきた。

 再びゲイルが攻めに転じた瞬間、守りを固め的確にゲイルを戦場に引き留める。

 ゲイルは祝福の力で攻め立てながらも、守りに徹した男を攻めあぐね、馬車から完全に分断されていった。

 その間、護衛の騎士たちが下っ端の盗賊たちの対処に追われ、ゲイルを失った馬車の前に、ゆっくりと近づく影があった。

「ガッハハハ! いい具合に分かれたじゃねえか」

 下卑た笑い声を上げ、街道の影から現れたのは、盗賊団のボスだった。彼は大太刀を肩に担ぎ、馬車の横で立ち尽くすカイを、値踏みするように睨みつけた。

「おい、そこの荷運び人。俺の財宝のために、ここで消えてもらうぜ!」

 ボスが凶悪な笑みを浮かべ、大太刀を振り上げる。

 分断された戦場の中で、武器を持たないカイの目の前に、盗賊団の首領という脅威が 迫っていた。

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