第22話 深淵の核と感情の女神(中編)
地下通路は地上とは一変し、精密に切り出された石と未知の金属が組み合わさった、工芸品のような構造をしていた。
通路の左右には微かな光を放つ紋様が走り、一行の行く先を照らしている。
エリーナは壁面に刻まれた複雑な彫刻を食い入るように見つめながら、時折立ち止まってはその魔力の流れを確認した。
「見て。ここから他の遺跡へと流れる魔力を感じるわ。ここは世界各地の封印を繋ぎ止めるための、魔力の『中継点』の一つなのね」
エリーナの言葉に、カイは背後の闇を振り返り、自らの膝をそっと叩いた。
カリウスの祝福は、この地下空間の脈動と静かに同期しているようだった。
進むにつれ、通路には長い年月による崩落の跡が目立ち始めた。
前方の床が大きく削れ、深い暗渠が行く手を阻んでいる場所へと差し掛かった。
「……崩れているわね。飛び越えるには少し距離があるけれど」
エリーナが不安げに覗き込むと、ゲイルが迷いなく彼女の前に進み出た。
「エリーナ様、ご安心を。失礼いたします」
ゲイルはエリーナを軽々と抱き上げると、女神の加護による強靭な脚力で一気に跳躍した。
背後ではカイが、ハヌとパンを視線で促しながら、いつもの軽やかな動きで闇の裂け目を飛び越えてくる。
やがて通路は、巨大なドーム状の広間へと行き着いた。
その中心には、巨大な結晶体に封じ込められた、ドクン、ドクンと不気味に蠢く漆黒の塊が鎮座していた。
魔獣の正体たる「澱み」の核だ。
その核から溢れ出す禍々しい魔力が周囲の空間を歪めている。
「……封印が弱まっているようね。封印の時間の経過による摩耗だけじゃない。地中の奥底で、敵対する神が力を取り戻しつつあるせいだわ」
エリーナの冷静な声に、広間は重苦しい緊迫感に支配された。カイもゲイルも、言葉を失い、目の前の巨大な悪意を前に静かに身構えた。




