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第22話 深淵の核と感情の女神(前編)

 大山羊の遺跡での調査が本格化する中、中央に鎮座する石碑の周囲には独特の緊張感が漂っていた。

 昨日、エリーナが語った

「遺跡は魔獣を押し留めるためのくさびである」

という推論を裏付けるように、石碑からは静かだが力強い圧力が放たれている。

 機材の調整を終えたエリーナが、石碑の基部を指差しながら二人を呼び寄せた。

「カイ、ゲイル、こっちへ来て。この石碑の下……驚くほど強力な魔力の流れが集中しているわ。恐らく、地下に『封印の心臓部』へと続く通路が隠されているはず」

 エリーナの言葉に、カイは静かに頷き、石碑の周囲を観察した。

 一方でゲイルは、昨夜から感じていた奇妙な感覚に意識を集中させていた。

 大山羊の遺跡についてから、彼の感覚は遺跡が放つ神性と共鳴するようになっていた。

「……エリーナ様、私には分かります。この石碑が、私の内に宿る力と呼応しているようです」

 ゲイルは意を決して一歩前に進み出ると、ただ静かに右手を石碑の冷たい表面へと添えた。

 女神の祝福を受けた彼が、ただ心の中で地下への路を求め、念じるだけで十分だった。

 その瞬間、ゲイルの手のひらを通じて微かな振動が走り、石碑に刻まれた文様が柔らかな光を帯び始めた。

 ゴゴゴゴゴ……。

 重量感のある音と共に、修復された石碑が静かに横へと動き出し、暗闇が支配する地下へと続く石造りの階段が姿を現した。

「……開いたな。ゲイル、お前の言う通りだな」

 カイが短く告げると、ゲイルは安堵の溜息をつき、自らの手を見つめた。

「やはり、この遺跡は女神様の領域と深く関わっているようです。エリーナ様、行きましょう。この下に、私たちが求める真実があるはずです」

 一行はハヌとパンを連れ、古代の冷気が漂う地下通路へと足を踏み入れた。

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