第21話 双璧の遺跡と魔獣の正体(後編)
「遺跡と魔獣についてはさっき説明したとおりなのだけど、さらに、守護獣たちの変化についても説明するわ」
エリーナは、今は小さくなってハヌと遊んでいるパンへと視線を向けた。
「ハヌも、パンも、強大な魔獣を倒した後に遺跡を修復し、その反動で姿を小さくなった。カイ、間違いないわよね?」
「ああ。戦いと遺跡の修復で力を使い果たして、小さくなったようだった。」
カイが答えると、エリーナは深く頷いた。
「それはシステムの『初期化』に近いものだと思うの。巨大な守護獣としての力をすべてエネルギーに変換し、遺跡の封印を再構築する。そして自身は無垢な姿へ戻ることで、次の綻びに備えて再び力を蓄える……。古代の神々が作り上げた、悲しい防衛システムね。ハヌやパンは遺跡を守るために魔獣との戦いを何度も繰り返しているようね」
そこまで話すと、エリーナは真剣な眼差しでカイとゲイルを見据えた。
「問題は、なぜ今になってこれほど事態が動き出したのかよ。……恐らく、あなたたちがそれぞれの神から祝福が引き金になっているわ」
「俺たちの力が……?」
「ええ。カイの『カリウス』の膝 、ゲイルの『女神』の黒炎。これらは失われたはずの古代の神性よ。あなたたちがその力を持って遺跡に近づき、その力を行使したことで、澱が活性化を始め、遺跡から漏れ出たと考えられるわ。禁忌の森でもカイは遺跡の近くで神の祝福を行使したんじゃない?」
「……確かに、大猿だったハヌに追いかけられて、全力で逃げていたな。そして一度だけハヌの拳に全力で膝蹴りを入れて森を抜けた。追いかけられているときも、反撃したときも膝の神の力は使っていた。」
カイは右膝にそっと触れ、当時のことを思い出していた。
「今回も、神捨ての遺構でゴーレム相手にカイが本気で神の祝福を行使したことに反応して、遺跡から魔獣が現れたようね。」
カイは、自らの力のために遺跡から魔獣が現れていること知り、このまま放っておけば、いつか災厄が世界を覆うことを知った。
依頼を受けた荷物を運び、妹の幸せを願っていた日々は終わりを告げ、神から祝福を受けた日から静かに回りだしていた歯車が、その姿を現し始めていた。
「私たちは、神々が去った後の抜け殻を調べているつもりだったけれど……実際には、再び動き出した『神々の戦い』の幕開けに立ち会っているのかもしれないわ」
エリーナの言葉を噛みしめるように、カイは静かに遺跡の奥を見つめた。
夜の静寂が降りる中、修復された石碑が、かつての神話が再び息を吹き返したことを静かに物語っているようだった。
カイは膝に走る確かな熱を感じながら、これから始まるであろうさらなる激走に向けて、無言でベルトを締め直した。




