第21話 双璧の遺跡と魔獣の正体(中編)
翌朝、遺跡の中央に設けられたテントには、重苦しい緊張感が漂っていた。
エリーナは机の上に、自身がまとめた数々の報告書と、結晶機材から抽出したデータを並べていた 。
彼女自身は「禁忌の森」へは同行していない。
また、カイとハヌが戦った多頭の蛇の魔獣を直接見たわけでもない。
だが、カイからの詳細な報告は、エリーナの頭脳の中で1つの答えを導き出しつつあった。
「いい? 二人を呼んだのは、これまでのバラバラな出来事を繋ぎ合わせた私の推論を聞いてもらうためよ」
エリーナはまず、カイとゲイルが報告した「大山羊の遺跡」の魔獣について触れた。
「あなた達が戦った、四肢を持つ蛇のような魔獣。私はそれを見ていないけれど、2人からの報告と、カイから聞いた『禁忌の森の多頭の蛇』の話……これらには、共通点があるわ」
エリーナは「神捨ての遺構」の壁画の模写と、ゴーレムの出力データを指し示した。
「『神捨ての遺構』が、対峙した相手に合わせて出力を変える『訓練用のゴーレム』を置いていた理由は、古の神々が『神の敵』との戦いに備えていたから。……そしてカイが禁忌の森で見た多頭の蛇も、ここであなた達が倒した四肢の蛇も、正体は同じと考えられる。……かつて神々が封印した『対立する神』の魔力が、長い年月を経て漏れ出した『澱』そのものなのよ」
「『澱』……か」
カイは、禁忌の森の祭壇から溢れ出ていた、あの不気味な紫黒の瘴気を思い出した。
「そう。こうした遺跡は各地に点在していて、邪悪な魔力を地中に押し留めるための『楔』としての機能を持っていたのよ。楔が弱まれば、澱が漏れ出し魔獣が現れる。今、それが各地で起きようとしている……。澱が巨大な魔獣として現れていることを考えると、封印のシステムそのものが限界を迎えた時、どんな災厄が現れるか想像もつかないわ。」
とエリーナは確信を持ってカイたちに告げた。




