第20話 再来の森と重荷の騎士(中編)
「……っ、ぐ。想像以上の重さだな……」
行軍が始まって数時間、ゲイルは肩に食い込む革紐の感触に顔を歪めていた。
ゴーレムの上半身という金属と石の塊を背負い、悪路を進むのは、女神の祝福を得た身体であっても容易ではない。
一方、その横を歩くカイは、ゲイルよりもさらに巨大な結晶機材を背負いながら、息一つ乱さずスタスタと平然と歩き続けていた。
「どうだ、ゲイル。実際に担いでみた感想は」
カイが少し呆れたような、それでいてどこか楽しげな口調で問いかけた。
「……黙れ、カイ。お前がこれ以上の重量を、平然と運んでいたことに、今更ながら驚嘆しているだけだ。だが、この重みこそがエリーナ様に信頼されている証だと思えば、悪くはない」
「そうか。無理はするなよ」
カイは不敵に笑い、何事もないかのように淡々と歩いて行く。
「くそっ!俺も女神の祝福を得ているのにこうも違うか!」
ゲイルがカイとの違いに嘆いた瞬間、
ジュッ!
と音を立てて剣から黒炎が溢れた。
同時に、ゲイルは先ほどまで感じていた重さが軽くなり、足取りも軽くなった。
「……難儀な祝福だ……」
自身の力に苦笑いしながらも、感情のコントロールの難しさに課題を感じながらゲイルは黙々と森を歩き続けた。
道中の森は、かつて山羊の守護獣が襲ってきた時のような不穏な気配はなく、驚くほど静まり返っていた 。
大気を腐食させるような黒い霧も、不気味な魔獣の唸り声も聞こえない。
調査隊は、かつての大山羊との出会いを思い返しながら、静かな木漏れ日の中を順調に進んでいった。
「本当に、同じ森とは思えないほど穏やかね……」
先頭で歩くエリーナが安堵の声を漏らした 。
その隣では、ハヌが仔山羊の上に乗り、2匹とも会話するように声を上げながら仲良く森の空気を楽しんでいる。
そして一行は、数日をかけて森を通り抜けていく。




