第13話 森の侵入者(後編)
翌朝、エリーナの指示のもと、調査隊は再び動き出した。
遺跡が何を封印しているのかという謎は残ったままであったが、今は本来の目的である『神捨ての遺構』を目指さねばならない。
それから、数日間の行軍は容易ではなかった。
森の深部へ進むにつれ、周囲の環境に適応した魔物たちとの遭遇戦が数回発生した。
しかし、何れもゲイル率いる騎士たちの迅速な迎撃、そしてロバートの的確な隊列維持により、遭遇戦はどれも速やかに収束し、人員装備に全くと言っていいほど損害は出なかった。
あの山羊は、あの夜以来一度も姿を現さなかった。
だが、カイは、あの山羊が常に森のどこかから、自分たちを見守り、監視しているのだと感じていた。
そして――森に入ってから一週間が経とうとした頃、ついにその時が訪れた。
「……おい、あれを見ろ」
前方の騎士が声を上げ、それに続くように調査隊全体からざわめきが沸き起こる。
鬱蒼と生い茂っていた巨木群が、突如として途切れた。
その開けた空間の中心に、それは鎮座していた。
周囲の自然な緑を完全に拒絶するようにそびえ立つ、巨大な人工の建造物。
時を経て風化し、黒ずんだ外壁には無数の蔦が絡みついているが、そこから放たれる圧倒的な威厳と、どこか禍々しいほどの魔力の残滓は、見る者を圧倒して息を詰まらせる。
これこそが、かつて神々に捨てられ、歴史の闇に葬られたとされる古代の遺産。
「――『神捨ての遺構』」
最前線に立つエリーナが、その壮大な光景を前に、感動と緊張の入り混じった声で呟いた。
進み出てその異形を見上げるロバートとゲイルも、言葉を失って立ち尽くしている。
最後尾から、ハヌを従えたカイが静かに歩み寄り、その巨大な遺跡を見つめた。
遺跡の前に辿り着いた瞬間、カイの両膝には、激しい「地鳴りのような脈動」が響き渡っていた。
ついに、目的地へと到達した調査隊。
しかし彼らはまだ知らなかった。この遺構の扉を開け、調査を進めることが、やがてあの孤独な守護獣が守ってきた「世界の脅威」を解き放つ引き金になるということを――。




