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第4話 故郷の灯火と小さき大食漢(後編)

「きゅぃ!」

 一瞬にして食卓を空っぽにしたハヌは、はち切れんばかりに丸く膨らんだお腹をポンと叩いた。

 これにはニナも唖然としたが、すぐに「……そんなに私の料理が美味しかった? よし、おかわりまだあるからね!」と、世話焼き精神に火がついたようで、ハヌをすっかり甘やかし始めた。

 ハヌもニナの前では従順なペットのように、嬉しそうに4本の腕をパタパタと振って懐いている。

 一方でカイは、ハヌが我が家の貴重な備蓄を凄まじい勢いで消費していくのを目の当たりにし、引きつった笑いを浮かべるしかなかった。

(……おいおい、これだけ食うのか。この先、こいつを連れて旅をしながら養うとなったら、手当たり次第に割のいい仕事を入れていかないと一瞬で破産するぞ……)

 その日は久しぶりに我が家のベッドで泥のように眠り、翌朝。

 東の空から静かに日が昇り、心地よい朝の光が部屋を照らす中、カイは出発の準備を整えていた。

 ハヌがうちの備蓄をこれだけ大食いしたことを考え、頭を抱えていた。

 ハヌのこれからの食事代と旅費を稼ぐためにも、また外の世界へ出て、運び屋としてギルドの仕事を本格的にこなさなくてはならない。

「ニナ。これからガッツリ稼ぐ分、しばらくは村に戻れないと思う」

 玄関先で、カイは妹に真っ直ぐな視線を向けた。

 ニナは少し寂しそうに眉をひそめたが、すぐに兄の右膝にそっと手を置いた。かつて流行病の夜に限界を迎え、今は膝の神カリウスの加護によって無敵のバネを宿した、兄の脚。

「分かってる。でも、絶対に無茶はしないでね。お兄ちゃんはいつも『安全第一』なんだから。荷物も自分の体も、ちゃんと無傷で。約束守って帰ってこなかったら、承知しないからね」

「ああ、約束するよ。プロだからな。ちゃんと無事に帰ってくるさ」

 ハヌもバックパックの中から「きゅぃ!」と、ニナに別れを告げるように4本の腕をパタパタと振った。

 爽やかな朝の空気の中、「行ってきます」の言葉と共に、カイは一歩を踏み出す。

 右膝の奥で、神の歯車がカチリと静かに噛み合った。

 大切な妹ニナが待つ家を守るため、そして背中の小さき大食漢を養っていくため、カイとハヌの新たな激走の旅が、今ここから再び始まるのだった。

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