第9話 格好いい師匠
喧騒の市場を離れた後、てっきりここで別れるものと思っていたクスマは、驚いたことに、ふゆこが自分と同じ宿に泊まっていることに気がついた。
この思いがけない偶然のおかげで、二人は自然と一緒に帰路につくことになった。
時は夕暮れ、長く伸びた影が地面に落ちていた。薄暗い光がふゆこの身に降り注いだが、そこに温もりは微塵も感じられない。
空気は息が詰まるほど重苦しかった。ハクヤが去り際に残していったあの悪意が、洗い流せない汚れのように、ふゆこの体にこびりついていた。
先ほどまでショーウィンドウに張り付いて、装備に憧れの眼差しを向けていたふゆこの姿はとうに消え去り、代わりに、麻痺したような死の静寂が漂っていた。
彼女は魂を失ったかのように機械的に足を進め、空虚な目で汚れた地面を見つめていた。頭のヤナギマツタケも主人の心境を感じ取ったのか、力なく垂れ下がり、彼女の重い足取りに合わせて、元気なく揺れていた。
一歩、二歩、三歩。
一歩踏み出すごとに、足底からの鈍い着地音が、脳裏に響くあの嘲笑と完璧に重なり合う。
ハクヤが去り際に彼女の耳元で囁いたあの一言が、今、冷たい毒蛇のように彼女の脳裏に執拗に絡みつき、心拍と共に無限ループしていた。
(……寄生虫。)
(……わたしは……寄生虫……)
彼女は心の中で声もなく同調していた。それを繰り返すたび、両翼がさらに内側へと縮こまり、まるで自分という存在を隠そうとしているかのようだった。
心の中の罪悪感が鉄の塊のように足に縛り付けられ、彼女の足取りはますます重くなり、いつの間にか、彼女はクスマから半歩ほど遅れをとっていた。
ふゆこはゆっくりと重い瞼を上げ、前方を歩く、夕日を浴びた黄色の背中を見つめた――
(師匠……)
彼女は無意識にくちばしを開き、助けを求めるような呼びかけを発しようとした、その時――
――【寄生虫】。
ハクヤのあの冷ややかな嘲笑が脳裏に再び響き渡り、彼女のSOSを無理やり腹の中へと押し戻した。
「養分を吸い取れるものなら……たとえこんな道端の雑草でも、お前は見逃さないんだな?」
その当てこすりのような皮肉は、無情な刃物のように、ふゆこの心の奥底にある傷跡を正確に切り裂いた。
(そう……彼の言う通りだ……)
……
……
(わたしが……彼女を死なせたんだ。)
――【寄生虫】。
瞬間、抑えきれない酸っぱさが鼻の奥に突き上げた。
(彼女は、この世界で唯一、わたしを嫌わず、いつも優しく抱きしめてくれる方だったのに……)
――【寄生虫】。
(それなのに、こんな役立たずのわたしを助けるために、彼女は……)
――【寄生虫】。
この冷たい呪いは鉄槌のように何度も何度も重く振り下ろされ、彼女の心の一番柔らかい場所を繰り返し打ち据え、息ができないほど痛めつけた。
……そうだ、わたしに反論する資格なんてない。
なぜならわたしはまだ生きていて、ここの空気を吸っている。一番生きるべきだったあの方は、わたしを助けたせいで冷たい土に埋もれてしまったのだから。
強烈な罪悪感から、ふゆこは呼吸することさえ罪だと思った。
彼女は無意識に首をすくめ、背中を丸めた。自分がもっとちっぽけな存在になれば、背負う罪が少しでも軽くなるのではないかと願うように……
─ (•ө•) ─
前を歩いていたクスマは、背後の異変に気づいた。
彼は振り返り、数歩遅れて、魂を失った木偶人形のように、死んだような足取りで歩く姿を見て、苛立たしげに後頭部を掻いた。
(チッ、あの銀色のクソ野郎、一体どんな妖術をかけやがったんだ?)
最後の耳打ちはよく聞こえなかったが、今、魂を抜かれ、呼吸すら罪だと思っているようなふゆこの様子を見れば、頭を使わなくても分かる。あれは絶対にただの嘲笑ではない。
クスマは眉をひそめ、何度も口を開き、「あいつ一体何て言ったんだ?」とか「君たちにどんな確執があるんだ?」と聞こうとした。
だが言葉が喉まで出かかって、ふゆこが自分自身を死に物狂いで影の中に閉じ込めようとしている姿を見て、彼は言葉を飲み込んだ。
この状況で他人の傷跡を暴くのは、傷を確認するために、かさぶたができたばかりの傷口を無理やり引き裂くようなものだ。残酷で余計なだけで、何の意味もない。
彼は歩みを緩め、黙って彼女に寄り添い、この道のりを歩き終えるしかなかった。
……
……
こうして、二人はずっと無言のままだった。
やがて、あの見慣れた宿屋の看板が目の前に現れた。
二人は前後に並んで扉の前まで来た。
だがクスマが宿屋の扉を開けようとした、その時――
「……あの。」
背後から、蚊の鳴くようなか細い呼び声が聞こえた。
クスマは動きを止め、振り返った。
階段の下に立つふゆこは、死に物狂いで俯いており、その小柄な体は夜風の中で制御不能に微かに震えていた。
彼女の両翼は胸元の古い布鞄の紐を固く握りしめ、力の入れすぎで翼の先の羽毛までが一緒に震えていた。
過ちを犯して立たされているような彼女の姿を見て、クスマは頬を掻き、わざと明るく尋ねた。
「どうした?腹でも減ったか?」
ふゆこは顔を上げず、体は微かに震えていた。しばらくして、泣き出しそうな、しかし必死に抑え込んだ声で言った。
「クスマさん……どうか……もう私の師匠でいるのはやめてください」
「……は?」
クスマは一瞬呆気にとられ、自分の耳がおかしくなったのかと疑い、内心で首を傾げた。
(さっきは勝手にくっついてきて師匠って呼んでたのに、なんで今更やめてくれって?)
彼が状況を把握する間もなかった。
ふゆこが猛然と顔を上げたのだ。その大きな瞳には涙が溢れていたが、そこには胸が張り裂けるような決意が宿っていた。
「あの……よく考えたんです……私みたいに弱くて、迷惑ばかりかける者は、あなたの側にいる資格なんてありません……」
彼女は支離滅裂に言い訳を探し、涙を糸の切れた真珠のようにボロボロと流し、むせび泣きながら言った。
「ハクヤの言う通りです……私は周りの者に不幸をもたらすだけ……だから、あなたを巻き込みたくないんです!」
「だから……もう私には関わらないでください!お願いします!」
(……バカか。)
クスマは彼女を見つめた。あの銀色のクソ野郎が最後になんて酷い言葉を吐いたのかは聞こえなかったが、ふゆこのこの様子を見れば、酷く辱められたことくらい容易に想像がついた。
こいつ、心が死ぬほど辛いはずなのに、出会って一日も経っていないペテン師の俺に迷惑がかかることを心配してるのか?
名状しがたい感情の混ざった、正体不明の強烈な怒りが、瞬時にクスマの脳天を突き抜けた。
「言い終わったか――?!」
彼の突然の怒声に、ふゆこは驚いてビクッと体を縮こまらせた。
ふゆこが口まで出かかっていた弱音は、瞬時に喉の奥に引っ込んだ。
彼女はおどおどと首をすくめ、涙目で見つめ、息をするのもためらわれた。
「ドンッ!」
クスマは突然、思い切り自分の頼りない胸を叩き、澄んだ鈍い音を立てた――
勢いあまってむせそうになったが、彼はその息を無理やりこらえ、天が落ちてきても俺が支えてやるという姿勢をとった。
「よく聞け!さっき俺を師匠と呼んだからには、一生――いや、少なくとも一人前になるまでは、君は俺の弟子だ!」
彼の根拠のない自信に満ちた大声が、傲慢にもふゆこの退路を全て断ち切った。
「途中で投げ出す?そんなの許さねえ!俺、クスマが弟子をとる基準はただ一つ――俺の目に適うかどうか、それだけだ!あの銀色のクソ野郎の戯言なんて、屁だと思って聞き流しとけ!」
「でも……私には本当に才能がなくて……」
「黙れ!」
クスマは言葉を遮り、ことさら胸を張った。頭のあのもやしも主人の気迫に感応したかのように、「ピーン」と直立し、元気よく空を指した。
「才能がない?だからなんだ!俺が教えるのは、伝説の『忍術』だ!それは弱者でも強者に逆襲できる、特別な技術なんだぞ!」
クスマは真剣な顔で、この理論をもっともらしく語った。
「それに安心しろ!俺の弟子になったからには、保証する。必ずあのハクヤだかセイラだかいう連中に、君を見直させてやる!そのうちあいつらがサインを求めて行列を作るようになったら、相手をしてやるかどうか悩むんだな!」
ふゆこは神采を放つ目の前のクスマを呆然と見つめ、目尻にかかる涙を拭うことさえ忘れ、頭が一瞬真っ白になった。
生まれてこの方、ふゆこは誰かが自分にこれほど肯定的で、これほど強引で、しかしこれほど温かい言葉をかけてくれたことなど一度もなかった。
「師匠」という言葉は、彼女にとってそれほどまでに馴染みがなく、そしてそれほどまでに安心感を与え、冬の火のように、彼女の周りの寒さを強引に吹き飛ばしてくれた。
理性が、クスマが描く未来はあまりに美しすぎて、荒唐無稽で非現実的だと告げていたが……
クスマの確固たる眼差しを見て、ふゆこは思った。もしかしたら……今回だけは本当に違うかもしれないと。
彼女は思い切り鼻をすすり、それらの疑念を全て彼方へ追いやった。
元々光を失っていた瞳の奥で、一度は消えかかっていた小さな炎が、この瞬間再び燃え上がった。
彼女は乱暴に顔の涙を拭い、重々しく頷いた。声にはまだ濃い鼻声が混じっていたが、その口調にはかつてない真剣さが宿っていた。
「師匠……わ、私、絶対に努力します!絶対に師匠の顔に泥は塗りません!」
─ (•ө•) ─
ふゆこが元気を取り戻したのを見て(顔はまだ涙でぐしゃぐしゃになっていたが)、クスマは満足げに頷いた。
今、彼は自分を最高に格好いいと感じていた。全身から金色の光を放ち、耳元では専用の登場BGMが鳴り響いているかのようだった。
(せっかくここまで雰囲気を盛り上げたんだ、ここで格好いい締めくくりをしなきゃ勿体ないだろ?)
この絆を確固たるものにし、さらにふゆこに一生忘れられない格好いい印象を残すため、クスマは突然ある大胆な考えを思いついた。
彼は翼を伸ばし、格好良く宿屋の三階にある自分の部屋の窓を指した。
「ふゆこ、よく見てろ!本物の忍者は、部屋に戻る時でさえ、こだわる言葉が一つある――『カッコよさ』だ!」
「カッコよさ?」
ふゆこは涙の残る目を瞬かせ、意味が分からなかった。
「その通り!階段を使うなんてのは凡人のやることだ!我々忍者は人とは違う道を行くんだ!」
言い終わると、クスマは数歩下がり、重心を低くして、自分自身が最高に格好いいと思っているスタートの姿勢をとり、眼光を鋭くした。
「くらえ――忍術・壁走りの術!」
クスマは黄色い稲妻のように飛び出した。彼は宿屋の外壁にある高い木製の花棚に狙いを定めた。あれが彼の完璧な踏み台になる。
一歩、二歩、ジャンプ!
彼は身を躍らせ、正確に花棚へと着地した。
脚本通りにいけば、あとは爪先で軽く蹴るだけで、その勢いを借りて再び空へと舞い上がり、空中に完璧な放物線を描き、格好良く三階の窓に飛び込み、最後に振り返って下で待つ弟子に「こんなのは朝飯前だ」と余裕の笑みを向けるはずだった。
しかし、現実は往々にして脚本よりもドラマチックである。
彼の爪先が花棚の先端に触れたその瞬間、奇妙で、致命的なぬるりとした感触が、足の裏から脳天へと直撃した。
(ん?この感触……?)
時間が、この瞬間止まったかのようだった――
クスマが恐怖に駆られて下を見ると、自分の足の裏が、寸分の狂いもなく、新鮮で黄色いバナナの皮をしっかりと踏みつけているのを発見した。
(どこのクソ野郎だ、こんな所にバナナの皮を捨てたのはあああ!!!)
その考えが脳裏をよぎった瞬間、世界が回転し始めた。
「おわっ――!!」
クスマの完璧な忍者のポーズは瞬時に崩壊した。彼の体は空中で制御を失い、洗濯機に放り込まれたひよこのように、極めて滑稽に回転した。
元々上へ向かっていた運動エネルギーは、瞬時に下へ向かう自由落下へと転換された。
(終わった、俺の師匠としてのイメージが……砕けた……木っ端微塵に砕け散った……)
その絶望的な考えと共に、クスマは糸の切れた凧のように、まっすぐ下へと墜落していった。
「ドサッ!」
轟音が響いた。
クスマは標準的な大の字になり、無様に空から落下し、宿屋の隣の果物屋台――ミカンが山積みになった木箱の中へと、見事に突っ込んだ。
「ガラガラガラ!」
巨大な衝撃で箱いっぱいのミカンが爆発したかのように、表層のミカンが四方八方に飛び散り、地面に転がった。
そしてクスマは重い石のように、瞬時に緩んだミカンの山の奥深くへと沈み込み、そのまま姿を消した。
体の下から何度か「グシャッ」という音がした。それは不運なミカンが数個、お尻で潰された音だった。強烈な果実の酸味が瞬時に弾け、まるで搾りたてのミカンジュースのコップに落ちたような気分にさせた。
ミカンがついに転がるのを止めた時、黄色いミカンの海面には、あのもやしだけがぽつんと外に出ていた。
それは孤独に、ぷるぷると震えており、まるで受信不良のアンテナが、空しく信号を探しているようだった……
この突然のハプニングに、ふゆこは完全に呆気にとられていた。
彼女は呆然とこの光景を見つめ、元々萎れていたヤナギマツタケも、まず不思議そうにピクリと揺れた。まるで「これが……忍術ですか?ミカン隠れの術?」とでも聞いているかのようだった。
その時。
「ブハッ。」
毛むくじゃらの黄色い頭が、地面から顔を出したばかりの筍のように、ミカンの海から必死に頭をもたげてきた。
クスマの顔にはミカンの果肉がつき、頭のもやしには滑稽にも翠色のミカンの葉が一枚引っかかっており、まるで奇妙な緑の帽子を被っているようだった。
彼は気まずそうに、こっそりとふゆこを一瞥し、目で「これはミスだ」とか、「ある種の高度な隠身術だ」と弁解しようとした……
だが思いがけず、ちょうどふゆこの視線とぶつかってしまった。
その瞬間、空気が凍りついた。
ふゆこの元々少し翳っていた表情に、まず驚きの色が閃いた。続いて、まるで突然何かのツボに入ったかのように、口角が制御不能に激しく引きつり始めた。
元々彼女を包み込んでいたあの分厚い暗雲が、ミカンの山から顔を出したこの滑稽な頭によって、無理やり風穴を開けられたかのようだった。
彼女は慌てて両翼で口を固く塞ぎ、最後の矜持を保とうとした。だが、その小さな肩が彼女を裏切り、激しく、抑えきれないほど震え始めた。
結局、我慢することはできなかった。
「ぷっ!」
澄んだ笑い声が銀の鈴のように、初めて何の気兼ねもなく二人の間に響き渡った。
「ふふ……師匠……頭が……ふふ……あとその葉っぱ……あはははは!」
その心からの笑い声は、彼女の顔にあった全ての陰鬱を瞬時に追い払い、心の底に長く積もっていた重苦しさを吹き飛ばした。
その時、夕日の名残が帆布の隙間から差し込み、ふゆこの横顔を優しく照らし、目尻に浮かんだ涙を、透明に輝く宝石のように染め上げた。
この柔らかな金色の光の中で、笑って三日月のようになった彼女の目元は、一際生き生きとして見えた。
このあまりに美しすぎる光景は、何かの魔力を持っているかのようで、周囲の喧騒をこの一瞬で遠ざけ、時間の流れすら無比に緩やかにした。
目の前の少女を見て、クスマは完全に呆然としていた――
彼は自分の気まずさも忘れ、お尻の痛みも忘れ、呼吸することさえ忘れていた。
なぜなら彼の目に映っていたのは、もはやいつも神経を張り詰め、不安を抱えたあの顔ではなく、まさしくふゆこの年齢にふさわしい、雨上がりの晴天のように、純真で眩しい笑顔だった。




