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第8話 装備の買い出し

倉庫の中は薄暗く、空気中には肉眼で見えるほどの埃が漂っていた。


窓から差し込む一筋の微かな光を頼りに、クスマはここで初めて、勝手にくっついてきたこの「押し掛け弟子」をじっくりと観察する機会を得た。


彼女は、埃っぽい灰色のひよこだった。


クスマのようなありふれた、普通の黄色い羽毛とは異なり、彼女の羽毛は目立たない灰色をしていた。


一生懸命毛繕いした跡は見られたが、生まれつき艶がないため、全体的にくすんで見え、いつでも背景に溶け込んでしまいそうな、まるで隅に隠れて見つかるのを恐れている小さなウズラのようだった。


彼女は古い布の鞄を斜め掛けしていた。角は少し擦り切れていたが、とてもきれいに洗われており、そこには不器用ながらも心のこもった可愛らしい継ぎ当てがいくつか縫い付けられていた。


そして彼女の頭頂部には、おどおどとした様子で、目立たない共生植物――柳松茸(ヤナギマツタケ)が生えていた。


それは小さく、傘は栄養不足の薄茶色をしており、主人の緊張した心情に合わせて小刻みに震え、まるでいつでも風に折れてしまいそうな小さな傘のようだった。


目の前の、風が吹けば飛びそうな、どこか萎縮したような少女を見て、クスマの目元は思わずピクリと引きつった。


(おいおいおい……こいつが本当にさっき一太刀でバナナを格好良く斬り落とした「女剣士」なのか?ギャップがありすぎだろ!戦闘モードが終わったらこんなガタガタ震える可哀想な姿に戻るのかよ?!)


しかし、そんな臆病そうに見える灰色のひよこは、今、その大きな、白黒のはっきりした瞳で、崇拝の念を込めてクスマを見上げていた。


「師匠、私たちはこれからどうすればいいですか?」


彼女は恐る恐る尋ねた。その大きな瞳には、「あなたについて行けば間違いない」という絶対的な信頼が輝いていた。


「し、師匠……」


再びその呼び名を聞き、クスマは良心を針で刺されたように感じ、思わずやましさから乾いた咳を二回した。


「ゴホン、ゴホン!」


彼はふゆこの全面的に信頼しきった真摯な姿を見ながら、脳裏にはつい先ほど彼女のお尻にもやしが刺さっていた光景が勝手に浮かび上がっていた――あのもやしは既に光となって消えたが、その「罪証」は彼の良心に深く焼き付いていた。


(冗談じゃない!俺は今、気まずすぎてその場で消える術でも披露して、このとんでもない厄介事をどうにかして振り払いたいんだよ!)


しかしその時、ふゆこは傷口に響いたのか、眉をわずかにひそめた。


彼女はあの古い粗末な布鞄から四角い痛み止めの湿布を取り出し、まるで絆創膏のように、慎重に傷ついたお尻に貼った。


クスマは特大の絆創膏にしか見えないそのガーゼを見、次にふゆこの期待に満ちた眼差しを見た。


「実はさっき君の尻に暗器を撃った『犯人』は俺で、その絆創膏こそが真の英雄なんだ」という残酷な真実を口にするなんて……


彼にはとても……言えなかった。


彼が激しく葛藤していた時――


(そうだ!)


クスマの脳裏に閃きが走り、絶妙な(と自分では思っている)逃走計画が生まれた。


(まずはふゆこを人混みの多い市場に連れて行く。あそこは玉石混交だ。彼女が色とりどりの商品に目を奪われ、気が散った隙に……へへっ、俺はこっそり逃げ出す!完璧だ!)


決意を固めると、クスマは咳払いをし、すぐに深遠を装った構えを取り、先ほどの無様な逃走劇を頭の彼方へ追い払った。


彼は翼を後ろに組み、45度の角度で倉庫の壊れかけた、蜘蛛の巣の張った天井を見上げ、わざとらしく深みのある、まるで世の真理を見通したかのような口調で言った。


「うむ!……『事を善くせんと欲すれば、必ずまずその器を利とす』という言葉がある」


彼は勢いよく振り返り、眼光鋭くふゆこを見つめ、まるで絶世の秘儀を伝授するかのように言った。


「我々が先ほどのような無様な追跡戦に陥ったのは、突き詰めれば、我々の実力が足りないからではない。それは……我々の『忍者道具』がまだ不完全だからだ!」


「に、忍者道具?」


ふゆこは首を傾げ、頭のヤナギマツタケも一緒に揺れた。その目には困惑が満ちていた。


「それは……武器や装備のことですか?」


「その通り!」


肯定されたふゆこは、何かのつかえが取れたかのように、興奮して翼を叩き、ハッとしたように言った。


「なるほど!やっぱりそうだったんですね!だから師匠はさっき、私を連れて走り回っていたんですね……」


彼女はクスマを見つめ、確信に満ちた口調で尋ねた。


「まだ適切な武器を買えていなかったから、本当の実力を発揮できなかった、ということですね?」


それを聞き、クスマは一瞬のやましさを隠すために、声を張り上げた。


「その通りだ!!」


そして彼は大袈裟な動作で深く頷いた。


「故に、我々の現在の目標は明確――装備を買い出しに行くことだ!」


ふゆこがこのデタラメを深く信じ込んでいる様子を見て、クスマは心の中で自分の「天才的」計画にほくそ笑みながらも、この純粋な少女を騙していることへの罪悪感で、良心がズキズキと痛んだ。


(すまないな、少女よ。これが大人の世界だ。嘘と欺瞞に満ちているんだ……)


クスマは思った。だが、君が勝手に俺を師匠と認定したんだから、それに乗っかってこの授業をしてやるのも、論理的には間違ってないよな? うん、間違ってない!


全然間違ってない!!


こうして、彼は良心の抗議を無理やり抑え込み、百通りの逃走方法を計算しながら、この「押し掛け弟子」を連れて倉庫を出た。


─ (•ө•) ─


二人はすぐに王都で最も賑やかな市場に到着した。


ここの空気中には鍛冶屋から響く金属の音、魔法店の水晶の唸り声、そして様々なエンチャントが施された革の奇妙な香りが混じり合っている。


この無数の喧騒と匂いは、まさに金貨と夢が織りなす狂想曲だった!


魔法の光沢を放ち、一目で高価だと分かる全身鎧から、奇妙な香りを漂わせ、魔力の回復速度を上げると言われる木製の戦杖まで、ずらりと並んだ武器や防具に、二羽の田舎者のひよこは目を奪われた。


ふゆこはほとんど一目で、ある高級店のショーウィンドウに飾られた、幽玄な冷たい光を放ち、柄が水晶のように透き通った短剣に心を奪われた。


その刀身は光に溢れ、まるで虹を鋼鉄の中に封じ込めたようだった。柄には精巧な蔦の紋様が彫られており、細部に至るまで豪華さが滲み出ていた。まさに芸術品だった!


彼女は目を輝かせ、ヤモリのようにショーウィンドウのガラスにへばりつき、息でガラスを曇らせていることにも気づかなかった。頭のヤナギマツタケも興奮して左右に揺れ、まるで踊っているようだった。


「き、綺麗……」彼女は呟き、視線は強力接着剤でくっつけられたかのように、その短剣に釘付けになっていた。


しかし、彼女の視線が何気なく横にある小さな値札を捉えた時――


彼女は、終わりのないようなゼロの羅列を見た。


「プシュゥ。」


空気が抜けるような音が聞こえた気がした。


彼女の頭のヤナギマツタケは一瞬で萎れ、三日間天日干しにされた干しキノコのように元気なく垂れ下がり、彼女の小さな顔も一緒に崩れ、「私には不相応」という文字がありありと浮かんでいた。


高価なショーウィンドウに惹かれるふゆことは対照的に、クスマはきらびやかな店には全く興味を示さず、逆に傍らの目立たない路上の露店へと向かった。


彼はこそこそといかにも怪しげな、正体不明の雑貨が並べられた露店の前で品物を物色し始めた。


店主は暗い色のフードを被り、ずる賢そうな目だけを覗かせている行商人で、「カモが来た」という貪欲な目つきでクスマを品定めしていた。


「ご主人」クスマは声を潜め、合言葉でも言うような口調で尋ねた。「あるかい……その、広範囲に煙を発生させる煙玉とか?あるいは、『シュッ』と一瞬で影に溶け込んで、隠密効果を高めるような便利な道具とか?」


それを聞くと、行商人の目は電球のようにパッと明るくなった。だが彼はすぐには品物を出さず、まずは「素人だな」という表情を浮かべ、翼の先を振った。


「チッチッチッ、煙玉ですって?あんなもの、炸裂したら自分の位置をバラすようなもんじゃないですか!派手すぎますよ!」


彼は露店の下から埃まみれのガラクタを引っ張り出し、熱心に売り込みを始めた。


「お客さん、真の隠密とは、誰にも知られずに行うものです!さあ、これを見てください!」


彼は滑稽な形の、毛むくじゃらのピンク色のスリッパを持ち上げ、「いい買い物しましたね」という顔をした。


「これぞ伝説の『静音スリッパ』!見てくださいこの分厚い毛並み、これは『足音を吸収する』ために特製された最高級の消音素材なんですよ!これを履けば、雲の上を歩くように、全く音がしません!」


そこまで言うと、行商人は突然話を変え、スリッパのふかふかの底を叩き、心を痛めているような様子を見せた。


「……世の素人連中はこれを『履くと暖かい』としか褒めませんが、全くの的外れです!暖かさなんて、これの取るに足らない副作用に過ぎないんですよ!」


クスマはその本当に暖かそうなピンクのスリッパを見て、口元を引きつらせずにはいられなかった。


「ゴホン、これは……『前衛的』すぎるな、もう少し考えさせてくれ」


クスマは乾いた笑い声を上げ、さりげなくスリッパを押し戻すと、急いで話題を変えた。


「じゃあ、その……危険を予知して、事前に隠れられるような神器はないか?」


「危険予知?もちろんありますよ!」


行商人は目を輝かせ、またもやもったいぶって、錆びた鉄のバケツのようなものを取り出し、強く叩いて「ガンガン」と鈍い音をさせた。


「これこそ当店の看板商品――『危険ヘルメット』です!周囲に危険があれば、すぐに感知します!」


「ほう?それはちょっと面白いな」


クスマは「危険感知」という機能に惹かれ、思わず翼を伸ばしてその鉄バケツを受け取った。


「本当にそんなにすごいのか?」


「試してみてください!効果がなければお代はいただきません!」行商人はそそのかした。


クスマは半信半疑でその鉄バケツを頭に被った。


「ガコッ。」


鉄バケツが頭を覆い、視界が真っ暗になった。


その時、急な足音が聞こえてきた。


数羽のやんちゃなひよこたちが市場で追いかけっこをしており、彼らはつむじ風のように露店の脇を駆け抜け、一陣の風を巻き起こした。


「ピーッ――!」


ヘルメットは直ちにこの「驚くべき」動きを捉え、鋭い警報音を発した。


(お?本当に反応した?近くに危険が?)


クスマは内心喜び、口を開いて尋ねようとした瞬間、抗いがたい強烈な睡魔が襲いかかり、まるで誰かが彼の脳の電源スイッチを直接切ったかのようだった。


「グゥ……グースカ……」


体から一瞬にして力が抜け、ふにゃりと後ろへ倒れ込んだ。


「あっ!師匠!」


水晶の短剣のショックから立ち直ったばかりのふゆこは、振り返ってこの恐ろしい光景を目にし、悲鳴を上げて慌てて駆け寄り、クスマを受け止めた。


「師匠!どうされたんですか!」


彼女は必死にクスマを揺さぶり、起き上がり小法師のように揺らした。


「……ん?」


クスマは揺り起こされ、ぼんやりとヘルメットを外し、呆然としていた。


それを聞いて、ふゆこの宙に浮いていた心はようやく落ち着いた。彼女はクスマの肩を掴んでいた翼を放し、恐怖の余韻を残しながら言った。


「師匠!ご無事でよかったです!ヘルメットを被った途端に倒れられたので、死ぬかと思いました……」


その時、横から行商人の人を食ったような声が聞こえてきた。


「おや、お客さん、お目覚めですか?」


彼は翼をこすり合わせ、悪びれもせずに付け加えた。


「言い忘れてましたが、このヘルメットには小さな副作用がありまして……眠くなるんですよ」


「……」


クスマは腕の中の『危険ヘルメット』を無言で見つめた。


彼は頭のもやしが怒りで結ばれそうになるのを感じた。なんだこのガラクタは!


─ (•ө•) ─


クスマが怒ってふゆこを連れて立ち去ろうとした、その時――


柔らかな光が、突然人々の視線を引きつけた。


向かいの高級装備店の扉に魔法陣の光が浮かび上がり、両側にスライドして開いた。


続いて、まるでスポットライトを浴びているかのような二つの影が、ゆっくりと店から歩み出てきた。


喧騒に包まれていた通りは、一瞬、不気味な静寂に包まれ――


その後、群衆は沸騰したように、畏敬と興奮に満ちた騒ぎを一斉に爆発させた。


「なんてことだ!見ろ!あの二人の天才だ!」


先頭を歩いていたのは、ハンサムな銀色のひよこだった。


こいつは一糸乱れぬよう丁寧に整えられた、絹のように滑らかで美しい銀色の羽毛を持っており、陽光の下で一際眩しく輝いていた。彼が身につけているオーダーメイドのミスリルの軽装鎧は、表面に淡いアイスブルーの光沢が流れており、舌を巻くほど精巧な作りで、一目で高価な最高級品だと分かった。


だが全身で最も目を引くのは、彼の頭頂部に生えた共生植物、「スノーロータス」だった。


それは嫉妬するほど華麗な代物だった。


厚みがあり半透明の質感を持つ苞(ほう)は、層を成して重なり合い、まるで氷の結晶で作られた王冠のように、傲慢に彼の頭上にそそり立っていた。


距離は離れていたが、まるで雪線(せっせん)の上から吹き下ろすような、乾燥した冷たい寒気がその植物から放たれているのを感じるようで、彼の頭上には肉眼で見える白い霧の輪が形成されていた。


それに比べて、クスマの頭の栄養失調で少し黄色く変色し、曲がりくねったもやしは、まるでゴミ捨て場から拾ってきた腐った野菜の葉のようだった。


そしてそのハンサムな銀色のひよこの半歩後ろには、静謐な雰囲気を纏った銀色のひよこが続いていた。


彼女も前のハンサムな銀色のひよこと同じく、銀色の羽毛を持っていた。だが、あの派手な装備とは異なり、彼女が身につけていたのは艶消しのシルバーグレーの軟甲だった。


この装備はカッティングが鋭く、彼女の華奢な体に完璧にフィットしていた。彼女は静かに後ろに従い、全身から幽玄で清冷な気配を漂わせていた。美しいが、近づきがたい雰囲気を持っていた。


彼女の頭には奇妙な「青いケシ」が生えていた。真っ直ぐに伸びた花茎が頭頂部から生え、先端には巨大な、夢のように幻想的な蒼の花が咲いていた。


絹のように薄い花弁は微風に優しく揺れ、心を酔わせるような、しかし何の温かみもない蒼を呈していた。


彼らが現れると、市場全体が彼らの背景板になったかのようだった。


しかし、そのハンサムな銀色のひよこは衆目の視線を無視した。


彼の冷ややかな視線は群衆を掃き、瞬時に標的を捉えたようで、すぐに歩き出した――


クスマのいる露店に向かって。


周囲の群衆は見えないオーラに押されるように、次々と両側に退き、道を開けた。


高価なミスリルの軽装鎧が軽やかな摩擦音を立て、彼は一歩一歩迫ってきた。


クスマの隣に立っていたふゆこは、今や完全に恐怖で固まっていた。


彼女は全身を硬直させ、どうしていいか分からずその場に立ち尽くしていた。この二つの影を見た瞬間、彼女の脳は完全にフリーズし、真っ白になり、ただ相手が近づき、最終的に自分の前で止まるのを眺めることしかできなかった。


「ほう?これは我らが一族の『栄光』じゃないか?」


彼の細長い銀の瞳からは背筋が凍るような寒気が透けており、道端の汚れた雪を見るように、目の前で縮こまっているふゆこを蛇のように執拗に見つめ、眼底には隠すことのない憎悪が満ちていた。


「どうした、ふゆこ?山で恥を晒すだけじゃ飽き足らず、今度は王都に来てまで恥を晒すのか?」


クスマは眉をひそめ、心に不快感が湧き上がった。こいつは誰だ?この口ぶり……まさかふゆこの知り合いか?


続いて、そのハンサムな銀色のひよこの視線は、ゴミを見るように、ふゆこの頭の小さなヤナギマツタケへと移った。


「やはり、ヤナギマツタケのような湿気を好む卑しいキノコは、場所を変えたところで、そのカビ臭さは変わらないな」


そう言うと、彼は唐突に身をかがめ、その冷淡な顔をふゆこに近づけた。


そして、彼は彼女の耳元で、二人だけに聞こえる声で、悪魔のように優しく囁いた。


「お前という貪欲な寄生虫と同じようにな……」


……


言い終わると、彼は体を起こし、何か汚いものでも伝染るのを恐れるかのように、嫌悪感を露わに一歩下がって距離を取った。


その後、彼の冷たい視線はついでに横のクスマへと向けられたが、口ではふゆこへの嘲笑を続けた。


「養分を吸い取れるものなら、たとえこんな道端の雑草でも、お前は見逃さないんだな?」


「道端の……雑草?」


その侮蔑に満ちた呼び名を聞き、クスマのこめかみに青筋が一本浮かび上がった。


「ピーン」と音がした!


彼の頭のもやしは主人の怒りに感応したかのように、電気が通ったように直立し、怒りのアンテナとなって、対面の銀色の影を完全にロックオンした。


(こいつ一体誰だ?なんて口の悪い奴だ!それにこの口調、ただの因縁じゃないな。まさかふゆこと何か深い確執でもあるのか?)


クスマが口を開き、言い返そうとした時、唐突に異様な死の静寂が覆いかぶさってくるのを感じた。


――隣の雰囲気が、おかしい。


彼が無意識に横を向いて見ると。


ふゆこはうつむき、魂を失った木偶人形のようだった。肉眼で見えるほどに、彼女の頭の元々はまだ元気だった小さなヤナギマツタケが、一瞬にして全ての水分を吸い取られたかのように、完全に光沢を失い、カサカサに乾いて、力なく垂れ下がってしまったのだ。


「ごめん……全部、わたしが悪い……ごめん……全部、わたしが悪い……」


ほとんど聞こえないほど細い声が、深い恐怖と自責を伴って、彼女の震えるくちばしから漏れ出し、呪文のように繰り返し囁かれていた。


……


この光景が、クスマの怒りを爆発させる導火線となった。


「おい!てめぇ――」


彼は頭に血が上り、猛然と一歩前に出て、ふゆこを背後に庇った。彼が翼を広げ、その銀色のクソ野郎に一泡吹かせてやろうと飛びかかろうとした、その時――


死に物狂いで後ろへ引く力が、服の裾から伝わり、彼を無理やり引き戻した。


「師匠……やめて!」


クスマは足を止めざるを得ず、驚いて振り返った。


見ると背後のふゆこは、彼の服の裾を掴む翼の先が、過度な力で白くなり、激しく震えさえしていた。


彼女は涙を溜めた瞳を上げ、全身の力を振り絞り、絶望的に懇願した。


「お願いします……行かないで……私のせいで師匠に迷惑をかけたくないんです……」


ふゆこのその様子を見て、あのハンサムな銀色のひよこの目には蔑みが一層増した。


彼がくちばしを開き、さらに悪意のある言葉を吐き出そうとした――


「もういいわ、ハクヤ」


ずっとハクヤの後ろに黙って立っていたあの銀色の美しい影が、ついに口を開いた。


その聞き慣れた声を聞き、ふゆこは全身を震わせた。彼女の涙を浮かべた瞳は、おずおずとハクヤの隣に立つその姿へと移った。


「……セイラ姉さん」


ふゆこは無意識にそのかつて無比に親密だった名前を呼んだ。その声には卑屈な希望が隠されていた。


その呼び名を聞き、セイラの複雑な瞳がついに一瞬、ふゆこの上に留まった。


その眼底に憎しみはなかったが、深い痛みが渦巻いていた。彼女のくちばしはわずかに開き、本能的に応えようとしたようだったが、声が出る寸前で――


ある重い記憶が心に湧き上がり、その束の間の温もりを完全に凍結させた。


セイラの体はわずかに硬直した後、苦しげに目を閉じた。まるで眼底に残る最後の一縷の迷いを無理やり断ち切るかのように。


再び目を開けた時、その瞳は死のように静まり返っていた。


彼女は心を鬼にして顔を背け、もうふゆこを見ようともせず、翼を伸ばしてハクヤを引いた。その声は氷の泉のように冷たく、一切の感情を含んでいなかった。


「行くわよ、ハクヤ。導師が待ってるわ。こんなところで時間を無駄にしないで」


それを聞き、ハクヤは眉を挑発的に上げ、突然つまらなくなったかのように、気のない様子で肩をすくめた。


「フン、そうだな」


ハクヤは最後に汚物を見るような目でふゆこを一瞥し、嫌悪感を露わにして背を向けた。まるで一秒でも長くここにいれば空気に汚染されるとでも言うように。


その後、二つの銀色の影は同時に背を向け、振り返りもせずに人波の中へと消えていった。


彼らの姿が徐々に消えていくにつれ、ふゆこは魂を抜かれたように、その場に立ち尽くしていた。


喧騒の市場の中にいながら、彼女の世界は一瞬にして音を失ったようだった。 真っ白になった脳裏には、ただハクヤのあの悪意に満ちた嘲笑だけが、一際鮮明に響き渡っていた。


『お前という貪欲な寄生虫と同じようにな……』


この言葉は、今まさに呪いのように、ふゆこの意識の深層に死に物狂いで絡みつき、いつまでも消えなかった……


自分の服の裾を掴むその翼から、今にも崩れ落ちそうなほどの震えが伝わってくるのを感じながら、クスマはゆっくりと振り返った。


ふゆこのこの魂を失ったような有様を見て、彼の心にあった「隙を見て彼女を撒く」という考えは、今や跡形もなく消え去っていた。


代わりに湧き上がってきたのは、正体不明の強烈な怒りだった。


(……チッ、本当に面倒くさいことになったな)


彼は一言も発さず、ただ両翼を固く引き締め、足の爪先で地面を激しく踏みにじった。まるで心の底のその名状しがたい怒りを、無理やり踏み砕こうとするかのように……。

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