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第14話 試練の洞窟

クスマに心の準備をする時間など全く与えず、アリの金属がガラスを引っ掻くような耳障りな甲高い咆哮と共に、この生死を賭けた試練が正式に幕を開けた。


「キシャァァァッ――!」


土と殺意が入り混じった生臭い風が顔に吹き付け、クスマの頭の中は瞬時に真っ白になった。続いて、生存本能が脳内の神秘的な青い点を激しく点滅させ、無数の「忍者」の対応策を瞬時に転送し、故障した走馬灯のように彼の脳内で狂ったように駆け巡った。


(忍法その一、弱点を突け!……だが、奴の弱点はどこだ?こいつ全身硬い殻だらけで、柔らかい肉なんてこれっぽっちも露出してないじゃないか!)


(忍法その二、煙玉!だが俺にはもやししかない!こんなもんでどうやって煙を出すんだよ!)


(忍法その三、隠れ身の術!だが奴のあの巨大な複眼はとっくに俺を完全にロックオンしてる!今更隠れても屁の役にも立たねえ!)


全ての非現実的な忍者戦術を脳内で一通り検討し、その全てを却下した後、クスマの脳裏に、ついに忍者最終、そして最重要の奥義が浮かび上がった——


(忍法最終奥義……三十六計逃げるに如かず!)


彼は一切の躊躇なく、真正面から立ち向かう気など微塵も起こさず、猛然と身を翻し、一目散に逃げ出した。


「助けてくれぇぇぇぇぇ!」


今の彼は、入学試験に参加する勇敢な受験生というよりは、森で鷹に狙われた怯える兎のようだった。そのまま複雑な洞窟の中で、彼自身の人生初となる、最も無様な大逃走劇を開始したのだった。


─ (•ө•) ─


「カツカツカツッ――!」


そのアリは背後から執拗に追いかけてくる。その六本の脚が石の地面を叩く音は、死神の足音のように、密集して急激にクスマの脆い神経を打ち付けた。背後から伝わる風圧や、あの大顎が開閉する際に巻き起こる生臭い風さえも感じられた。


「ちくしょう!追ってくるな!俺は不味いぞ!骨ばかりだし!それに足も臭いんだからなあああ!」


後頭部にまで迫る勢いの生臭い風を感じ、ただ走るだけでは絶対に追いつかれると悟り、クスマの心は絶望で満たされた。


だが、この極度の恐怖の下でこそ、生存本能が完全に爆発した。生き延びるため、彼は体内の魔力の流れる速度が、普段の数倍も速くなっていることに気づいた。元々は集中して制御する必要があった魔力が、今は呼吸するように自然になっていた。


そこで、彼はわめき散らしながら、駄目元でその意識に従い、魔力を急速に翼の先へと集中させた。


(出ろ、もやし!硬くなれ!)


念じた瞬間。


一本のもやしが中空から彼の翼の先に具現化し、次の瞬間、その柔らかかったもやしは急速に硬化し、まるで棘のように真っ直ぐで鋭いものへと変化した。


しかし、注意力を全て翼に集中させていたせいで、足元が完全にお留守になっていた——


「うわあっ!」


彼は突き出た石に勢いよく蹴躓き、体は瞬時にバランスを失い、制御不能なまま、前のめりに倒れ込んだ。


このまま顔から地面に激突するかという絶体絶命の瞬間、クスマはいっそ開き直って勢いを利用することにした。


彼はこの前傾する巨大な勢いを借りて強引に体を捻り、空中で無様ながらも流れるような回転を決めると、その勢いのまま翼の先の「もやし」を背後へと激しく振り放った。


「くらえ!もやし針!」


「ヒュンッ――!」


そのもやしは凄まじい風切り音を立て、本物の暗器のように残像と化し、寸分の狂いもなく、正確かつ冷酷にアリの顔面へと直撃した。


「カキン!」


もやしは甲殻に激しくぶつかり、弾き飛ばされたものの、顔面に直撃したその衝撃は、アリを本能的にのけぞらせ、苛立ったような鳴き声を上げさせた。


それと同時に、クスマもこの限界の投擲動作のせいで完全に重心を失い、「ドサッ」という音と共に重く地面に叩きつけられた。


しかし、この無様な転倒のおかげで、彼の視界の端に、地面すれすれにある狭い岩の裂け目が映った。


(あそこだ!)


彼は起き上がる暇もなく、地面に倒れた勢いのまま転がり、這うようにしてその石の隙間へと無理やり体をねじ込んだ。


尾羽が隙間に引っ込んだ直後、背後から激しい振動が伝わってきた。


「ガンッ!ガンッ!」


体の大きなアリは外で立ち往生し、怒りに任せて顎で入口を打ち付けることしかできず、砕石と埃を巻き落とした。


クスマは振り返って確認する勇気もなく、翼を広げることすらできない狭い通路の中で、ただ全身の綿毛をすぼめ、両足の爪で必死に地面を蹴り、狂ったように前へと這い進んだ。


通路がどんどん狭くなり、岩の隙間に完全に挟まってしまうと思ったその時、目の前に突如として微かな光が現れた——


出口だ!


彼は後ろ爪で勢いよく蹴り出し、コルクの栓を抜くように「ポン」という音と共に反対側へと飛び出した。


彼は広い石の地面に無様に倒れ込み、張り詰めていた筋肉が瞬時に弛緩し、口を大きく開けて貪欲に呼吸しようとした。


しかし、その空気が肺に入るよりも早く——


「カツカツカツッ――!」


あの死へのカウントダウンのような節足の摩擦音は、なんと別の通路を迂回して回り込んできたかのように、遠ざかるどころか、側面の分岐路からより鮮明に、より切迫して聞こえてきたのだ。


(クソッ!なんでこいつ俺の場所が分かったんだ?!)


慌てふためく中、クスマは身を守るためのものを探して、本能的に自分の体をむやみやたらにまさぐった——もう何でもいい!


その時、彼はパンパンに膨らんだ小さな布袋に触れた。


その中には、彼がおやつ用に用意していた「特製炒り大豆」が入っていた。


(もうどうにでもなれ!あるものは全部撒いてやる!くらえ、忍法・豆撒き!)


クスマは考える間もなく、カチカチの炒り豆を一掴みすると、幼い頃から他のひよこと食べ物を奪い合って鍛え上げた驚異的な早業はやわざ——翼の先を瞬時に残像と化させ、振り返りもせずに豆を四方八方に撒き散らした。


「バラバラバラッ――!」


数十粒の黄金色でカリカリの豆が、豪雨のように岩の地面に降り注ぎ、澄んだ音を立てて狭い通路をあちこちへ転がった。


アリが角を曲がって追いかけてきたその時、数本の脚が寸分の狂いもなく、その丸っこい豆を踏みつけた。


「ズルッ!」


足元が猛烈に滑り、アリは全く反応できないまま瞬時にバランスを崩し、「ドサッ」という音と共に仰向けに地面へ重く倒れ込んだ。


背後から聞こえてきたその鈍い音を聞き、クスマは振り返りもせず、この隙を突いて死に物狂いで通路の奥へと狂奔した……!


─ (•ө•) ─


どれくらい走ったか分からない。肺が火で焼かれているように熱くなる頃、クスマはようやくよろめきながら、少し開けた洞窟へと飛び込んだ。


「ゼェ……ハァ……死、死ぬほど疲れた……一生分の運動量を今日一日で使い果たした気分だ……」


彼は両足の力が抜け、ざらざらとした岩壁に沿ってへたり込み、大口を開けて荒い息を吐いた。


しかし、息を整える間もなく、金属がぶつかるような音が強引に彼の神経を引き戻した。


クスマは勢いよく顔を上げた。


洞窟の中にいるのは彼だけではないことに、そこで初めて気がついた。少し離れた場所で、彼に負けず劣らず運が悪そうな二人の受験生が、巨大なアリと無様に対峙たいじしていた。


クスマが先ほど遭遇したのが「新兵」だとするなら、目の前のこいつは、間違いなく「小隊長」だ。


その甲殻はより分厚く、色はより深く、金属のような冷たい光沢すら放っており、一目で厄介な相手だと分かる。


だが、この極めて圧迫感のあるアリを前にして、今まさに起こっているのは、極度に滑稽な戦闘——あるいは、痛くも痒くもない攻撃だった。


頭に球状のサボテンを乗せた一人の受験生が、顔を真っ赤にして勢いよく頭を下げ、首の角度を調整して、頭の丸々としたサボテンでアリを完全にロックオンした。


「くらえ!『射撃』!」


怒号と共に、彼の頭のサボテンが激しく収縮した。まるで空気を入れられて突然放たれた風船のようだった。


「ヒュッ!ヒュッ!」


数本の鋭い棘が、風を切る音と共にサボテンから弾き出され、寸分の狂いもなく標的へと直進した。


「カキン、カキン」


気まずいほどに澄んだ音が響いた。


その数本の棘は金属の光沢を放つ甲殻に激しくぶつかったが、貫通するどころか、白い痕すら残せず、そのまま硬い甲殻によって無情に弾き飛ばされてしまった。


「俺の番だ!」


もう一人の、頭に広葉植物を生やした受験生はそれを見ると、すぐに歯を食いしばり、右翼の上に巨大な緑の葉を直接具現化させた。


「倒れろ!『スイング』!」


彼は怒号を上げ、全身の魔力をその巨大な葉に全て注ぎ込み、アリの脚部に向かって激しく薙ぎ払った。


「ペチッ!」


彼が予期していた甲殻が砕ける澄んだ音はなく、濡れた雑巾を壁に叩きつけたような鈍い音だけがした。


だが、この葉はあまりにも柔らかすぎた……


甲殻に触れた瞬間、ダメージを与えるどころか、まるで雑巾のように、アリの前脚にへばりついて滑り落ちただけだった。


この気迫に満ちた渾身の薙ぎ払いは、あろうことか「体拭きサービス」へと変わり、親切にもアリの脚の埃を綺麗に拭き取ってしまったのだ。


空気が一瞬、凍りついたようだった。


アリは頭を下げ、ピカピカに磨かれた自分の甲殻を見た……


直後、その複眼に、極めて人間臭い、極度の苛立ちの色が閃いた。


その広葉植物の受験生はまだ振り下ろした姿勢を保っており、顔の驚愕が恐怖に変わる暇さえなかった——


続いて、何の前触れもなく、アリの太い前脚が瞬時に致命的な黒い残像と化した。


「ヒュン——ドゴォォン!!」


空気中に衝撃波が爆発した。


矢面に立った広葉植物の受験生は、悲鳴を上げる間もなく、まるでホームランボールのように弾き飛ばされ、遠くの岩壁に激突すると、すぐさま一筋の白い光となって転送され、脱落した。


「ヒッ!」


元々十数歩離れた場所で遠距離攻撃を行っていたサボテンの受験生はそれを見て、調子の外れた悲鳴を上げ、身を翻して逃げ出そうとした。


しかし、アリは彼にその機会すら与えなかった。


毛骨が逆立つような節足の摩擦音と共に、アリは太い六本の脚を動かして猛然と肉薄した。ひよこにとっての十数歩の距離など、あの巨大な体躯の前では、ほんの数歩の歩幅に過ぎない。


サボテンの受験生が背を向け、一歩を踏み出す間もなく、巨大な黒い影が彼を完全に覆い尽くした。


続いて、アリの無情な前脚が鉄の棒のように薙ぎ払ってきた。


「ドゴォォン!」


二度目の鈍い音と共に、彼も仲間の後を追い、空中に哀れな放物線を描くと、二筋目の白い光となって跡形もなく消え去った。


この凶悪な光景を目の当たりにし、クスマは足の裏から脳天へ冷気が突き抜けるのを感じた。


(ここにいちゃ駄目だ!死ぬ!)


彼は息を殺し、誰にも気付かれずにこっそりと抜け出そうとした。


しかし、足を踏み出したその瞬間、足元の砕石が極めて微かな「カチャ」という音を立てた。


大きな音ではなかったが、この静まり返った洞窟の中では、雷鳴のように響き渡った。


音が鳴ったのとほぼ同時に、巨大アリの触角が鋭く震え、その巨体がその場でピタリと静止した。


――ゆっくりと、奴は顔を向けた。


氷のように冷たく、感情の欠片もない一対の複眼が、真っ直ぐに彼をロックオンした!


(……冗談だろ?!神様、俺に厳しすぎないか?!)


アリはクスマの頭上の、ひょろ細くてまだブルブル震えているもやしを一瞥すると、巨大な大顎を「カチャッ」と鳴らした。まるで声なき嘲笑を送ったかのようだった。


次の瞬間、その巨大な体が猛然と動き出し、息が詰まるほどの圧迫感を伴って、クスマに向かって轟然と突進してきた!


苦労の末にようやく一匹の「新兵」を振り切ったばかりのクスマは、目の前の、先ほどより十倍も気迫の強い「小隊長」を見て、脳内にはただ一つの絶望的な考えしか残っていなかった。


(勘弁してくれよ……俺、まだチュートリアルも終わってないのに、いきなりボス戦かよ?!)


こうして、ようやく息を整えたばかりのクスマは、涙目で身を翻し、再び次の逃走の旅を強制的に始めさせられるのだった……。

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