第12話 不協和な臨時同盟
「ダッシュ鳥」事件は収束したが、ある者たちにとっては、災難はまだ始まったばかりだった。
果物屋台の前で、あの太った店主が、まるで竜巻にでも襲われたかのような、果汁が溢れ返る狼藉たる現場を指さし、唾を飛ばしながら喚き散らしていた。顔の贅肉が興奮でプルプルと震えている。
「見ろ!見やがれ!これは今朝届いたばかりの最高級品なんだぞ!一つ一つが俺の子供同然なんだ!それを全部台無しにしやがって!弁償しろ!」
この凄まじい唾の猛攻を前に、赤いひよこは不機嫌そうにそこに立っていた。彼は両翼を胸の前で組み、眉間に深い皺を寄せていた。
しかし、彼が深く息を吸い込み、爆発しようとしたその瞬間、ずっと彼を注視していた水色のひよこも同時に動いた。
彼女は赤いひよこに口を開く隙すら与えず、翼の先をすっと伸ばし、今にも爆発しそうなこの爆弾を強引に背後へと引き寄せた。
続いて、彼女は自ら前に進み出ると、不機嫌な店主に向かって、標準的な九十度の最敬礼を何度も繰り返し、極めて誠実な態度を示した。
「……大変申し訳ありません。こちらの損害は、私たちが全額賠償いたします」
水色のひよこの声は優しくも堅定で、育ちの良さを滲ませていた。クレイとは対照的なこの謙虚な態度に、カンカンに怒っていた店主も思わず呆気に取られた。
彼は目の前の、いかにもチョロそうな少女をじろじろと眺め、すぐに腹の中で計算を始めた。
(この小娘、押しに弱そうだ。こりゃあいいカモだぞ!)
そう考えると、彼は眼底に浮かんだ貪欲さを素早く押し隠し、代わりにより大袈裟で、胸を痛めているような表情を作った。
「賠償だと?何で払うつもりだ?ここには貴重な『黄金のリンゴ』もあったんだぞ!金があっても買えない代物で……」
この小娘が言い返さないのを見て、店主の態度はさらに増長した。彼はわざと大声を張り上げ、周りの野次馬にも聞こえるようにし、唾が水色のひよこの顔にかかるほどの勢いで、損失をとんでもない高額に吹っ掛けようとした。
この飛び交う唾の猛攻に、水色のひよこは怒ることもなく、ただ顔色一つ変えずに半歩下がってその不快な気配を避け、そっと溜息をついた。
「……」
彼女は反論も弁解もせず、ただ黙って青い花の刺繍が入った小さな財布を取り出し、うつむいたまま、その小さな口金から硬貨を取り出そうとした。
水色のひよこが本当に財布を開け、代わりに金を払おうとしているのを見て、横にいた赤いひよこの額の青筋がピクリと跳ね、理性の糸が完全に切れた。
彼は有無を言わさず前に飛び出し、水色のひよこをぐいと背後に引っ張ると、自分の体で店主の貪欲な視線を遮った。
彼はまず冷ややかに店主を睨みつけ、ドスの利いた声で警告した。
「おい。いい加減にしねえと、痛い目見るぞ!」
相手の言い訳など聞く耳を持たず、彼は懐からずっしりと重い金袋を取り出し、乱暴に紐を引きちぎった。
中身も見ずに、金袋を逆さにして、力任せに振った――
「ジャラララッ――!」
澄んだ金属音と共に、大量の輝く金貨が溢れ出し、カウンターの上を転がり回り、その音と光景に、威張り散らしていた店主のまぶたが痙攣した。
「うっせえよ!これだけありゃ足りるだろ?金を受け取ったら、今すぐ、即刻、口を閉じろ!」
店主はテーブルの上を転げ回る金貨に目を回した。
彼は慌てて覆いかぶさり、その肥え太った両翼を広げ、転がる硬貨を必死に守り込んだ。羽毛の間から漏れる金色の輝きに、彼は瞬時に先ほどの怒りを忘れ、顔の贅肉を驚きと喜びでくしゃくしゃにして、満面の笑みを浮かべた。
「足ります足ります!若様、お気をつけて!またのご来店……いや、盛大に店を壊しに来てくださるのをお待ちしております! 」
赤いひよこは金を払った後、先ほど矢を外した時よりもさらに顔色を悪くしていた。彼は水色のひよこの翼を掴むと、一秒でも長くここにいればこの俗っぽい空気に汚染されるとでも言うように、くるりと背を向けて歩き出した。
その場に取り残されたクスマとふゆこは顔を見合わせ、無力な苦笑いを浮かべると、急いで彼らの後を追った。
四人は無言のまま歩き続け、静かな路地裏の隅に着いてようやく足を止めた。
先ほどの騒がしい人混みがなくなったことで、四人が顔を見合わせると、空気中に漂うやり場のない気まずさが、かえって鮮明になった。
クスマは顔面蒼白の赤いひよこを一瞥し、思わず先ほどのテーブルの上を転がる金貨の山を思い出した。
(チッ、チッ、あの一撒きで、少なく見積もっても金貨数十枚はいってたな……今のあいつの表情を見るに、心の中では血の涙を流してるに違いない。まあ、俺だったら泣き叫んでるところだが)
クスマが他人の財布の痛みを想像していると、傍らの水色のひよこもこの耐え難い気まずさを察したようだった。
彼女は少し乱れた羽毛を整えると、クスマとふゆこに向かって優しく微笑んだ。その笑顔は春風のように、瞬時に緊張した空気を和らげた。
「初めまして、私はみぞれ。こちらは私の弟……いえ、仲間のクレイです」
紹介を聞き、横にいたクレイはフンと鼻を鳴らし、両翼を胸の前で組み、顔をそっぽに向け、「俺様はお前らなんかと知り合いたくもないね」と言わんばかりの傲慢な態度をとった。
この失礼な振る舞いに、みぞれは申し訳なさそうにクスマたちに困ったような笑みを向け、「ごめんなさい、この子はこういう子なんです」と目で訴えた。
その後、彼女は路地の入り口から、学院へと続く真っ直ぐな大通りを眺め、クスマたちに思案ありげな微笑みを向けて言った。
「この時間にこの通りにいるということは……あなたたちも王都アカデミーの入学試験を受けるのですね?」
「もしよろしければ、お互いの情報を交換しませんか?彼を知り己を知れば、百戦危うからず、と言いますし」
─ (•ө•) ─
この互恵的な提案に、双方はすぐに意気投合し、路地の隅で輪になり、声を潜めて迅速に情報を交換し始めた。
この短い会話の間、みぞれの顔には終始穏やかな笑みが浮かんでいたが、その鋭い眼差しは、表情を変えずに二人を観察していた。
すぐに、彼女は懸念すべき点に気づいた。
視線がふゆこに落ちた時、彼女はこの子の顔色が依然として少し青白く、額に脂汗が滲んでいることに気づいた。
先ほどの戦闘で、たった一撃放っただけで息を切らしていたことを考えると、明らかに魔力の総量が少なく、体質も弱い。
そしてクスマは……
みぞれは、未だに心痛な面持ちでわたあめのことを思い出しているこの男を一瞥した。
先ほど奇策で危機を解決したとはいえ、最初から最後まで戦闘技術らしきものは一切見せておらず、強力な魔力の波動も感じられない。明らかに正面切っての殺し合いが得意なタイプではない。
(このお二人の実力では……入学試験に参加しても、おそらく前途多難ね)
そう考えると、みぞれは思わず隣の不機嫌そうなクレイを見た。
(それに、さっきクレイは彼らのわたあめを叩き落としただけじゃなく、あんなに態度の悪いことまで言って……理はこちらにないわ)
みぞれの心に、強い申し訳なさと責任感が込み上げてきた。
(だめ、このまま放っておいて、万が一彼らに何かあったら……クレイという馬鹿の代わりのお詫びだと思って、せめて私の手の届く範囲で、見ていてあげないと)
みぞれは心の中で決意を固めると、顔を上げ、その優しく誠実な眼差しで二人を見つめ、誘いをかけた。
「お二人とも……もしよろしければ、私たち四人で臨時のチームを組みませんか?試験中も、助け合えるでしょうし」
この突然の誘いに、ふゆこは一瞬呆気にとられ、すぐに無意識にクスマに視線を向けた。その澄んだ瞳には依存の色がありありと浮かんでいた。「師匠、あなたが決めてください!あなたがどこへ行こうとついて行きます!」
弟子のシグナルを受け取り、クスマはやれやれと頭を掻き、承諾しようと口を開いた、その時――
「俺は御免だね!」
耳障りな咆哮が突然響いた。
横にいたクレイは、まるで針で激しく刺されたかのように、全身の毛を逆立て、激しく反応して飛び上がった。
彼の声は興奮で甲高くなっており、翼の先でクスマとふゆこを指差して怒鳴った。
「ひょろ細いもやし野郎と、震えてるヤナギマツタケなんかと組めるかよ!弱そうだろ!みぞれは俺が守ればそれで十分だ!こんな足手まといを連れて行ってどうする?!余計な世話が増えるだけだ!」
─ (•ө•) ─
この容赦のない咆哮が路地に響き渡り、元々気まずかった空気が一瞬で凍りつき、場は死のような静寂に包まれた。
クスマが無意識に振り返ると、ふゆこはその突然の怒声に驚き、本能的に首をすくめ、何か悪いことをした子供のように、いじらしく彼の背後に隠れようとしていた。
(こいつ、本当に口の減らない野郎だな……土に埋めて肥料にしてやりたい!)
弟子が委縮しているのを見て、クスマは目を細め、彼女に代わって反撃しようとした、その時――
横にいたみぞれが、そっと溜息をついた。
彼女は翼の先を伸ばし、クレイの翼をちょんちょんと引っ張った。
「クレイ」
彼女は小声で呼んだ。
クレイは舌打ちをし、話を遮られた不快感を露わにしながら、隣のみぞれを振り返った。
しかし、みぞれの視線と合った瞬間、出かかっていた文句が喉に詰まった。
みぞれの湖のように澄んだ瞳には、非難の色はなく、ただ淡い、しかし無視することのできない悲しみが宿っていた。
「私の体のこと……知ってるでしょう」
彼女の声はとても小さかったが、一言一言がクレイの心を叩いた。
「もし私たち二人だけだったら、心配なの……あなたの足手まといになるのが怖い。あと二人いてくれれば、私も安心できるわ」
それを聞き、クレイは口を開けて何か反論しようとしたが、彼女のその翳りのある表情を見て、言葉を無理やり飲み込んだ。
彼の視線が泳ぎ始め、元々高かった威勢が一気にしぼみ、空気が抜けたボールのようになった。
彼が動揺しているのを見て、みぞれは眼差しを和らげ、そのまま小さく一歩踏み出してそっと近づき、どこか甘えるような懇願の口調で言った。
「私が安心して入学試験を受けられるように……したくないの?」
その言葉は、堅固な鎧をも貫く矢のように、クレイが驕りで構築した全ての鎧を直接撃ち抜き、彼の顔に張り付いていた強がりの冷たい仮面を、ついに完全に崩壊させた。
心の奥底から湧き上がる、みぞれへの守護欲と罪悪感が、彼から全ての反論の言葉を奪った。
彼は顔を真っ赤にし、視線をあちこちに泳がせ、しばらくもがいた後、ようやく喉の奥から極めて不本意な唸り声を絞り出した。
「うぅ……」
その妥協の声と共に、彼は癇癪を起したように足を一度踏み鳴らし、不器用に顔をそっぽに向け、しぶしぶと呟いた。
「……お、別に、あいつらのためじゃないぞ!君が安心できるように、お、俺が……俺が『仕方なく』同意してやるだけだ!聞こえたか?『仕方なく』だぞ!喜んでると思うなよ!」
言い終わると、自分の照れ隠しをするかのように、彼は少しばつが悪そうに背を向け、逃げるように少し離れたわたあめ屋台へと早足で向かった。
しばらくして彼が戻ってきた時、その翼の先には、先ほどふゆこが落としたものよりもさらに巨大で、さらにフワフワな『七色の雲わたあめ』が握られていた。
彼はふゆこの前まで一直線に突進すると、有無を言わさず、その巨大なわたあめを彼女の目の前に強く突き出した。
「ほらよ!受け取れ!」
だが動作があまりに乱暴で、あやうくふゆこの顔に直撃させそうになり、彼女は本能的に後ろにのけぞった。
彼女はおどおどと顔を上げ、目が合うかと思ったが、相手は全く彼女を見ていなかった。
クレイは翼を硬直させ、極めて不自然な動作で頭を横に向け、空の雲を親の仇のように睨みつけながら、「俺様はただついでに買ってきただけだ」という不器用な態度を崩さなかった……
「……?」
ふゆこは目の前に突然現れた巨大なわたあめを呆然と見つめ、石化したかのように、その場で微動だにしなかった。
一秒、二秒……
なかなか反応がない沈黙に、ただでさえ恥ずかしがっていたクレイは、ますます居心地が悪くなった。
彼は逆ギレ気味に翼の先を震わせ、大声で急かした。
「何見てんだよ!早く受け取れ!翼が疲れるだろうが!」
言い終わると、ふゆこが望むと望まざるとにかかわらず、彼はその巨大なわたあめを乱暴にふゆこの胸に押し付けた。
その後、彼は感電したかのように素早く翼を引っ込め、顔の火照りを隠すために、顔を真っ赤にして、早口で一気にまくし立てた。
「……確かに、お前が道の真ん中でぼーっとしてたのが悪いんだが、ぶ、ぶつかったのは、俺様にもほんのちょっぴり……羽毛の先っぽくらいは非がある!これは、その弁償だ!勘違いするなよ!俺様は借りは作りたくねえんだ!」
……
クスマはこの極限まで不器用な光景を見て、心の中にあった不快感が、この笑うに笑えない雰囲気の中で、いつの間にか霧散していくのを感じた。
(こいつ……)
クレイのその死んでも素直になれない様子を見て、クスマは思わず口元を緩めた。
(口は悪いし、性格も捻くれてるが……思ったほど、嫌な奴じゃないかもな)




