第11話 衝突
早朝の陽光は黄金の剣のように、カーテンの隙間を突き抜け、容赦なくクスマのまぶたを刺した。
彼は眉をひそめ、何かわけのわからない寝言を漏らし、不満げに枕に顔を擦り付け、虚ろな目で天井を見つめた。
脳みそが泥の中で回転するような時間を経て、ようやく「チン」と音がして、回線が繋がった。
(待てよ……今日は確か……)
(王都アカデミーの入試日か?!)
その考えが閃いた瞬間、クスマは感電したかのようにベッドから跳ね起き、尻に火がついたような勢いで鏡の前へ突進した。
しかし、鏡の中の自分を見て、彼は息を呑んだ。
頭のあの大事なもやしが、寝相の悪さのせいで東へ西へと倒れ込み、まるで二日酔いのように退廃的な姿を晒していたのだ。
「しっかりしろ!シャキッとしろよ!」
彼は慌てて翼で必死にもやしの根元を押さえ、まるで言うことを聞かない子供の襟を直すかのように整えながら、小声で愚痴をこぼした。
「今日は入試というハレの日なんだぞ。こんな情けない姿をふゆこに見られたら、師匠の威厳が台無しじゃないか!水やりを忘れた萎びた野菜みたいになってんじゃねえ!」
ひとしきり格闘して、ようやく身なりを整え終えた。クスマは深呼吸をし、勢いよくドアを開けた。
すると、ちょうど外で待っていたふゆこと鉢合わせした。
「し、師匠、おはようございます!」
ふゆこはクスマを見るなり、目を輝かせた。彼女はすぐに背筋を伸ばし、力いっぱいお辞儀をした。その声は張りがあり、朝の活気に満ちていた。
「お、おう……おはよう」
クスマはその勢いに気圧され、挨拶しようと上げた翼を空中で固まらせ、危うく条件反射で一緒にお辞儀をしそうになった。
(……こいつ、朝っぱらからなんでこんなに元気なんだ?)
だが考え直せば、弟子にこうも恭しく扱われると、「師匠」としての優越感が瞬時に気恥ずかしさを上回った。悪くない気分だ!
その得意満面な気分のまま、クスマは朝の光を借りて、目の前のふゆこをじっくりと観察した。
一晩休んだおかげで、ふゆこの顔色は明らかによくなり、昨日のような埃っぽさは消えていた。それに伴い、彼女の頭の共生植物であるヤナギマツタケも活力を取り戻しており、彼女が頭を上げる動きに合わせて揺れ、まるでペコペコと頭を下げる子分のようだった。
簡単な挨拶を交わした後。
王都アカデミーの入試に間に合わせるため、彼らは階下で宿屋の朝食を適当に済ませ、すぐに大急ぎで門を飛び出した。
二人がアカデミーへの必通ルートに足を踏み入れた瞬間、クスマは事態の深刻さに気づいた。
目の前に広がる王都で最も賑やかな通りは、今まさに抗いがたい魅力を放っていた。空気中には焼きたてのパンの香ばしい匂いと、揚げたてのスイーツの甘く濃厚なミルクの香りが混じり合い、「誘惑」という名の巨大な網を編み上げていた。
宿屋でパンを数切れ食べただけの師弟二人にとって、これは意志力を試す拷問に等しかった。
「グゥ――」
クスマの腹が真っ先に情けない抗議の声を上げ、その音は通りがかりの者が思わず振り返るほど大きかった。
彼はすぐに気まずそうに横のふゆこを見た。弟子に笑われるのを恐れたのだ。
しかし、ふゆこの注意は全くクスマに向いていなかった。
ふゆこの大きな瞳は、街角のわたあめ屋台を直視しており、喉を無意識に上下させ、過剰に分泌される唾液を必死に飲み込んでいた。
弟子のその食いしん坊な様子を見て、いつの間にか、昨日ゼリガから受けたあの悪魔の囁きのような、魔性の「教え」が、当然のようにクスマの脳裏に浮かび上がった。
「……美味いものを、たくさん食わせてやれ!しかも――甘いものが一番だ!甘ければ甘いほどいい!」
クスマは無意識に懐にある、父から貰った小遣い袋に触れた。
(うん……師匠たるもの、弟子が万全の状態で戦えるようにするためだ、この程度の出費は必要経費だろう)
彼は自分自身に完璧な言い訳を見つけた。
─ (•ө•) ─
腹を決めると、クスマはもはや躊躇しなかった。彼は咳払いをし、両翼を背中で組み、師匠としての威厳を漂わせた。
「ゴホン。ふゆこ」
「はい!師匠!」
ふゆこはそれを聞くと、悪戯が見つかった子供のようにビクリと震え、すぐに名残惜しそうにわたあめから視線を引き剥がした。
そして、彼女は勢いよくクスマの方を向き、緊張して両足を揃えて直立し、検閲を待つ小さな兵士のようになった。
「入試のために、少し気を張りすぎているようだな」
クスマは深遠な眼差しでそのわたあめ屋台を見つめ、まるで生死に関わる難問を思考しているかのようなふりをした。
「適度なリラックスも、修行の一部だ。行こう、師匠が甘いものでも奢ってやる。景気づけだ」
言い終わると、彼は有無を言わせず、まだ困惑しているふゆこの翼を引っ張り、彼女が大股でずっと見つめていたあのわたあめ屋台の前まで連れて行った。
屋台の前に立ち、クスマは色とりどりの砂糖を指し、人生で最も気前が良く、豪快な口調で店主に叫んだ。
「ご主人!ここの一番高くて、一番豪華なわたあめを一つくれ!」
「あいよ!お客さんお目が高い、これがうちの看板商品『七色の雲わたあめ』だ!銀貨三枚になります!」
「さ、三枚……?!」
クスマの顔の笑みは瞬時に凍りつき、その豪快な表情は地面に落ちた磁器の皿のように、一瞬で粉々に砕け散った。
(ぼったくりかよ!せいぜい銅貨数十枚だと思ってたのに!このわたあめは金でできてんのか?!それとも中に宝石でも入ってんのか?!)
「し、師匠?」
ふゆこは彼が固まっているのを見て、小声で彼の服の裾を引っ張り、物分かりよく言った。
「や、やっぱりやめましょう……お腹空いてませんし……」
「……」
クスマの頬が引きつった。彼はふゆこの澄んだ、しかし渇望を含んだ瞳を見て、心の中で激しい葛藤を繰り広げた。
(だめだ!弟子の前では、金よりメンツだ!これは師匠の尊厳に関わる!)
彼は意を決し、目を閉じると、小遣い袋から銀貨を三枚掴み出し、「バン」とカウンターに叩きつけ、同時にわざと豪快に店主に翼を振って言った。
「釣りはいらねえ!」
(……実際きっかりだし、釣りなんて出るわけないけどな……ううう俺の金が……心が血を流してる……生まれて初めてだぞ、こんな高いわたあめ買ったの……)
店主はクスマの歪んだ表情に全く気づかず、ニコニコと金を受け取ると、熟練の手つきで機械を操作し、あっという間に色鮮やかで巨大なフワフワのわたあめを巻き上げ、クスマの前に差し出した。
クスマは震える翼を伸ばし、心から血が流れるような思いでそのわたあめを受け取ると、すぐに横でずっと食い入るように見つめていたふゆこに手渡した。
ふゆこは恐縮しながらそれを受け取り、空にかかる虹のように絢爛で、甘い香りを放つ巨大なわたあめを見て、その目は幸福と感動に満ちていた。
「師匠……こ、こんなに大きいの……本当にいいんですか?」
「食え」
クスマは心の痛みを必死に堪え、慈愛(?)に満ちた笑みを浮かべた。
「さあ、食え。食ったら……逝くぞ ……あ、違う違う、戦場へ行くんだったな」
ふゆこはそれを聞き、感動して力強く頷いた。
そして、彼女が小さなくちばしを開き、そのフワフワのわたあめにかじりつこうとした、その時――
「ドン!」
赤い影が猛然と横からぶつかってきた。
「あっ!」
ふゆこがわたあめを握っていた翼が滑った。
刹那、時間が止まったかのようだった。
あの一城の価値はある『七色の雲わたあめ』が翼から離れ、空中に美しくも悲しい放物線を描いた。
それが空中で回転し、落下するあらゆる微細な動きが、今この瞬間、二人の目には無限のスローモーションとして映り、彼らの砕け散る心と共に沈んでいった。
最後には――
「べチャッ。」
軽い音がした。
あの銀貨三枚の価値があるわたあめは、正面から着地し、埃と無数の足跡だらけの石畳の上で壮絶な最期を遂げ、一瞬にして薄汚い塊と化した。
ふゆこはその場で硬直し、小さなくちばしはまだ一口かじろうとした「あーん」の形のまま固まっていた。元々輝いていた瞳には、みるみるうちに涙が溜まり、今にも決壊しそうに縁で激しく揺れ動いていた。
しかし、彼女の涙が落ちるより先に、悲痛な絶叫が静寂を破った。
「いやぁぁぁぁ————!!!」
クスマは身を引き裂かれるような悲鳴を上げた!
あれは銀貨三枚なんだぞ!彼の目には、地面にあるのは砂糖ではなく、粉々に砕け散った三枚の銀貨だった!
正体不明の怒りが瞬時に脳天まで突き抜け、クスマは猛然と顔を上げ、火を噴くような目でその元凶をロックオンした。
目に飛び込んできたのは、全身が炎のように鮮やかな赤い羽毛を持ち、両翼を胸の前で組み、いかにも傲慢そうな顔をした赤いひよこだった。
こいつの頭頂部には、生意気にも共生植物――『シルバーソード』がそそり立っていた。
ただ、剣のような鋭さは微塵も見せず、むしろ間抜けな銀色のあほ毛のようにピンと立っており、彼のその尊大なポーズと滑稽な対比をなしていた。
クスマの殺人光線を浴びても、赤いひよこは謝るどころか、気まずさを隠すために、逆に先制攻撃とばかりに胸を張った。
「ふん、用もねえのに道の真ん中に突っ立ってんじゃねえよ?!目は飾りか?!」
彼は理路整然とそう言い放ち、謝罪する気などさらさらないようだった。
一方、彼の背後にいる水色のひよこは、まるで異なる佇まいを見せていた。
一輪の共生植物――『ブルースター』が、静かに彼女の額の辺りに飾られていた。
赤いひよこの頭に立つ間抜けなあほ毛とは異なり、この花は精巧な青い髪飾りのように、優雅に側面に添えられ、彼女の優しく物静かな気質を完璧に引き立てていた。
ただ、この優雅な淑女は、今、恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。
彼女はまず慌てて赤いひよこの服の裾を強く引っ張り、これ以上恥を晒すのを止めようとし、すぐにクスマとふゆこに向き直り、有無を言わさず九十度の標準的な最敬礼をした。
「大変申し訳ありません!わざとじゃないんです!本当に申し訳ありません!弁償しますから!」
水色のひよこの誠実で優しい態度に、クスマの頭に上った血は、瞬時に半分ほど引いた。
だが、あの赤いひよこの「何一つ俺は悪くない」と言わんばかりの頑迷な態度は、依然としてクスマを不愉快にさせた。
(こいつ……人にぶつかっておいてこの態度……地面のあの薄汚いわたあめを口にねじ込んでやりたい!)
─ (•ө•) ─
しかし、あの水色のひよこが必死に謝り、全額弁償すると約束してくれたこともあり、クスマは深呼吸をし、翼を振って、この生意気な赤いひよこを渋々許そうとした、その時――
耳をつんざくような悲鳴が、突然鋭い矢のように騒がしい人混みを突き抜けた!
「うわぁぁ!逃げろ!隊商の『ダッシュ鳥』が暴走したぞ!!!」
声の方を振り返ると。
巨体で、重い荷物を運ぶための『ダッシュ鳥』が、どういうわけか手綱を引きちぎり、あの強靭な二本の長い脚で、混雑した通りを無茶苦茶に疾走してくるのが見えた。
それは自ら進んで誰かを襲っているわけではなかったが、その巨大な体躯と、パニックでめちゃくちゃに振り回される長い首だけで、十分すぎるほどの混乱を引き起こしていた。
「ガシャン!バラバラ!」
果物の屋台はひっくり返され、リンゴやミカンが地面に転がった。布地屋の棚はなぎ倒され、色とりどりの布が空を舞い、風に漂って、通りをごちゃごちゃの糸玉のように絡め取った。
周りの通行人や露天商たちは悲鳴を上げて逃げ惑い、元々賑やかだった通りは一瞬にしてパニックに陥った。
『ダッシュ鳥』のその巨大な体が、道端で腰を抜かしている一羽のひよこの子供に直撃しそうになった瞬間、ふゆこの眼光が鋭くなった。
彼女は考える間もなく、脳より先に体が動いた。右翼が一閃し、共生植物――ヤナギマツタケが瞬時に具現化した。
「はぁっ――!」
気合の声と共に、彼女は猛然と翼を振り、数え切れないほど練習した「袈裟斬り」を本能的に繰り出した。
鋭利なキノコの傘が空気を切り裂き、凄まじい風圧を伴って、ダッシュ鳥の目の前の石畳に激しく叩きつけられた!
「ギャッ――!?」
ダッシュ鳥は驚いて奇妙な声を上げ、無理やり横へと進路を変え、衝突を回避した。
だが予想外なことに、その急転回のせいで、それは赤いひよこと水色のひよこに向かって一直線に突っ込んでいった!
正面から迫り来る巨獣を前に、赤いひよこは仲間を連れて逃げるどころか、小馬鹿にしたように口を曲げ、軽蔑の笑みを浮かべた。
「ふん、この程度の茶番、俺様が止めてやるよ!」
彼は猛然と一歩前に踏み出し、勢いよく水色のひよこの前に立ちはだかると、右翼を後ろに回し、背中の木の弓を鮮やかに取り出した。
すぐに矢をつがえて引き絞り、眼光鋭く目の前の狂った鳥をロックオンした。
「ヒュン――!」
矢は唸りを上げて飛び、ダッシュ鳥の横をすり抜けていった。
それは『ダッシュ鳥』には当たらず、あろうことか「ドスッ」という音と共に、ふゆこの隣にある、高く積み上げられた果物の展示棚に正確に突き刺さった!
脆いバランスが一瞬で崩れた。
「ドゴォォォン――!」
無数のリンゴ、ミカン、そしてずっしりと重い瓜や果物が、瞬時に束縛を失い、山崩れのように、その下に立つふゆこに向かって傾れ落ちてきた。
「ふゆこ!危ない!」
クスマは恐怖で叫び声を上げ、本能的に助けに行こうとした。
だが彼の動きより速かったのは、水色の残像だった。
何が起きたのかを目で追う間もなく、その影は稲妻のように掠め飛び、瞬時に数メートルの距離を超え、ふゆこの前にしっかりと立ちはだかった。
身形が定まると、その水色のひよこは右翼を震わせ、淡い青色のブルースターが、瞬時に彼女の翼の中で咲き誇った。
続いて、微かに湾曲し、寒気を放つ氷の刃が、花芯から急速に伸長した。
正面から迫る「果物の雪崩」を前に、水色のひよこは見向きもせず、右翼を流れるように動かし、氷の刃は瞬時に空中に満月のように滑らかで、完璧な寒色の弧光を描いた。
「ザシュッ――!」
無数の瓜や果物がその柔らかな弧光にぶつかったが、まるで回転する水流にぶつかったかのように、巧みな力で受け流され、刀の勢いに沿って両側へと滑り落ち、カランコロンと地面に転がっていった。
だが、後ろで腰を抜かし、全身を硬直させて動けなくなっていたふゆこには、ただの一粒も当たらなかった。
周りの野次馬たちはあっけにとられて見ており、完全にその神業のような優雅な剣術に度肝を抜かれていた。
驚嘆の声が上がる中、クスマは鋭く異変を察知した。
あの「ダッシュ鳥」は足を止めたものの、奇妙なことに、地面に転がる甘い香りの果物には目もくれなかったのだ。
その真っ直ぐな瞳孔は、ただ一点を死んだように見つめていた――
――地面に落ちた、埃まみれだが、依然として甘ったるい香りを放つ、あのわたあめを。
(こいつ……まさか狙いはこれか?)
一瞬にして、クスマは全てを理解した。
食べ物が目的なら、話は早い!
彼はすぐに飛び出し、有無を言わさず、翼であの汚れてべたべたのわたあめをひっ掴むと、勢いよく通りの脇の誰もいない壁際へ向かって放り投げた。
「食いてえんだろ?あっちで食え!」
わたあめは空中に放物線を描き、力なく「べちゃっ」と音を立てて、少し離れた壁際に落ちた。
次の瞬間、あの誰もが手をこまねいていた「ダッシュ鳥」は、本当に宝物でも見つけたかのように、きびすを返して後を追い、壁際に縮こまって、その汚いわたあめを大口で貪り食い始めた。
さっきまで悲鳴を上げて逃げ惑っていた群衆は、今や一時停止ボタンを押されたかのように、その場で固まり、どうしていいか分からなくなっていた。
彼らはまず呆然と地面の砕けた果肉を見、次に振り返って、隅で満足そうに食事をしている「ダッシュ鳥」を見た。
この時、広大な通りは死のように静まり返っていた。
ただ、あの鳥が発する、間抜けな咀嚼音だけが、一際鮮明に響いていた。
言いようのない気まずさと滑稽さが、瞬く間に通り全体を包み込んだ……




