20話 シチュー作り頑張りますっ!
どうも。最近、澪の愛が重いです。主人公ちゃんです。
前回澪によって吹き飛ばされたわけですが、現在その澪は私たちの前で平謝り中です。
なんでも、私が下着姿だったことから女の子と遊んで朝帰りをしたと勘違いしたようで、誤解が解けると真っ赤になって謝り始めたわけだ。
これは私も少しは悪いのか? どうなんだろう……?
まあいいか。とりあえず謝るのをやめさせて、話を進めなければな。
「ほら澪。あいつらも許してくれてるんだからこれ以上謝るのはやめな。向こうだって困っちゃうだろ……」
「本当にごめんなさい……」
最後にそれだけ言うと、澪は顔を上げた。
「さて、立ち話もなんだしとりあえず飯にするか」
最初の約束が水と食料だったしな。
と、そこで金髪の女の子のお腹が鳴った。可愛らしい音だった。
うん。外の世界は過酷なのかもしれないな。
三人をテーブルに座らせると、私はキッチンにやってきた。
ま、キッチンと言ったが、水道もガスも死んでいるのでカセットコンロとIHが置いてあるだけではあるがな。
ゲームやったりしてるからわかってるとは思うが、ウチには電気だけは通っている。
駐車所に設置した太陽光発電用パネルと、裏の川に設置した小水力発電機によって少しだけだが発電をしているのだ。
材料や器具を準備していると、澪が戻ってきた。
「とりあえずシチューでも作るよ。消化にいいものの方がいいだろ」
「うん。彼女たち、随分と消耗しているみたいだったからね……」
ちらりと後ろ、リビングの方を振り返って澪は言った。
「ああ、そうだ。先に風呂に入れるか。張ってある水は私が朝に汲んできたやつだから沸かすだけで大丈夫だ」
「わかったわ。沸かしてくるわね」
「あと、着替えとか石鹸とかは適当に出しといてくれ」
「洋服はコンテナからでいいのよね?」
「ん、頼んだ」
キッチンから出て行く澪にひらひらと手を振る。
「さて、風呂に入ってる間に終わらせないとな」
今回の材料はコレだ。
薫製肉
玉葱
人参
じゃがいも
バター
小麦粉
牛乳
生クリーム
コンソメ
塩
胡椒
野菜は適当な大きさに切る。
シチューは食べたことあるだろ? それを思い出して切ればいい。適当ってのはそういうことだ。
おっと、ここで鶏と卵を持ち出すような無粋な真似はしてくれるなよ?
したら鍋の中にバターを転がして野菜を炒める。
玉葱がしなってしてきたら小麦粉を入れて混ぜる。野菜から出た水にある程度混ざったらさらに水を足す。
あとは牛乳と生クリーム、そして薫製肉を入れて煮込むだけだ。割と焦げやすいから火は弱めでな。時々かき混ぜるのも忘れないように。
「んーそうだな……人参の飾り切りでもするか」
風呂から戻ってくるのにはもう少しかかりそうだからな。
ちょっとかっこつけて見栄えでもよくしようか。
もうすぐ秋になるし椛がいいかな。ねじ梅とかとは違って簡単だしな。
初めてやるときは実際に人参を切る前に紙で練習してみるといいぞ。
下が太った七角形をまず作る。で、角を生かして葉っぱの先を作る。下の角の部分は小さくな。最後に葉柄を作れば終了だ。
ん、ちまちま飾り切りをしていたら風呂から上がってきたようだ。シチューはもう少しかかるし、飲み物でも持って行くか。
何がいいかな……? 風呂上がりであっついだろうし、モスコミュールとかモヒート? あーでも風呂上がりに飲酒はいけないんだっけか……
とりあえず水を出すか。食前の頃には体も冷えてるだろうし、出すのはキールかな。ワイン冷やしておこっと。
「あら、いい匂いね」
「あ、澪。ちょうどいいところに来てくれたな。三人に水を持って行ってやってくれ」
「ライム絞るの?」
「うん。絞っといてくれ」
モスコミュールとかモヒートとかって考えてたから無意識でライム切っちゃったんだよね。もったいないから水に入れよう。
んー? フルート型シャンパングラスってどこ置いたっけ? もう普通のワイングラスでいいかな……
「よっと……」
私が頭上の棚を探していると、視界の端に白い綺麗な腕が映り込んだ。
「キール作るの? グラスはここよ」
どうやら棚の奥の方にあったらしい。背の低い私だと、そこ見えないんだよなぁ……
やはり初めて宇宙にでた犬と同じ名前の少女のように台を用意するしかないのか……?
「ありがとな。澪は先にいって場を和ませておいてくれ」
澪ならきっとできるはずだ。出会った頃の大人しい澪はどっかに行ってしまったからなぁ……
今の私はきっと遠い目をしているはず。
今回作るキールは白ワインとクレーム・ド・カシスで作るカクテルだ。
食前でしかもシチューだからな。甘さは控えめの方がいいよな? カシスとワインを一対四くらいか。
もちろん白ワインはアリゴテ。クレーム・ド・カシスの方はフィリップ・ド・ブルゴーニュを使うぞ。
このフィリップ・ド・ブルゴーニュはすごく濃厚なんだ。一度はロックで飲んでみてほしいな。ルジェとは全然違うぞ。まあ、どっちが絶対的にいいってもんでもないがな。好みだ。
両方注いでステアするだけっていう簡単さだから、語ってる間にもうできちゃったな。
「もう持ってくか」
左手のトレンチにシャンパングラスを五つ。右手にはフィリップ・ド・ブルゴーニュをロックで持った。
リビングのドアノブをグラスを持った右手で器用に開ける。
そして、そのままぐびりと一口。
「どうだ。さっぱりしたか? 腹も減っているとは思うが、飯の前に少し話をさせてくれ。飯は楽しく食べたいだろ?」
ふっ決まったな。
そうやって私が浸っていると、澪がじっとっと見ていることに気づいた。
……お願いだから澪。そんな目をしないでくれ……




