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17話 火おこし頑張りますっ!


 バケツの中には沢山の魚。私たちは晩飯の材料確保に成功した。

 美味しくできるか分からないけど、今日食べきれない分は干物にしようと思う。


 それで、釣りを終えて私たちは今、水遊びをしている。もう一度言おう。水遊びをしている!


 もちろん澪も水着に着替えている。私の水着と同じ形の黒いビキニ。私が密かに持ってきたんだ。


 こうね、ただ二人で水をかけあってるだけなんだけどすごい楽しい。もう水がかなり冷たいけどそこがいい!

 水をかけられた時にうひゃあってなるのがいいんだよな。ぬるい水をかけあっても盛り上がらん。


 と、私が澪に飛びかかろうとしてすっ転んで、頭からつま先までずぶ濡れになった時だった。

 水遊びをするために釣具や武器、魚の入ったバケツを置いた場所の目の前の茂みが揺れだした。


死人(ゾンビ)かしら……」


 少し上ずった声で澪が言った。

 それに対して私は澪の不安を煽るようなことを言ってしまう。


「さあ、どうだろうな。案外熊とかかもしれないぞ?」


 実際、死人よりも熊の方が危険なので、澪の体がこわばったのがわかる。

 うん。好きな娘をいじめたくなるってアレだよ。


 まあ、私自身も今この状況はやばいんじゃないかって思ってるんだけどな。

 ほら、なんか余りにも一話目と文体が違うし。ジャンルがSF(パニック)でいいのかって思うしな。


 怒られないよな……? 私、戦々恐々、萎縮震慄である。


 さて、閑話休題。


 ……某回文の人に影響されたから四字熟語を使ってるわけじゃないんだからねっ!


 こういうところがやばいところだよな。混沌(カオス)が過ぎるよ。だからもっと私に秩序(コスモス)をっ! まあ、メタ的な発言をする時点で秩序なんてないから、私が秩序を手に入れることは永遠に叶わないだろうねっ!


 何か忘れてる? ああ、そう言えば茂みが動いてたんだっけ。

 唸り声とかするし、やっぱ熊じゃね?

 大自然の驚異出ちゃうんじゃない?


 茂みを踏み倒すように出てきたのは黒い巨体——熊だった。


 ひぃ、と澪の口から息とも悲鳴とも取れる小さな音が漏れた。


 熊の目線はバケツに向いている。どうやら私たちが獲った魚を狙っているようだった。


 このまま魚を漁らせて、その間に後ずさりして逃げるのが一番だろう。

 熊は獲った魚を森の中に持っていて食べたりするからな。


 だが、私は退かないし、媚びないし、省みない!


 その魚は私が澪のために釣ったものだし、なにより澪が初めて釣った魚だ。

 畜生なんかに食わせるためのものじゃねぇ!


 澪は不安そうな表情で私に帰りましょうと訴えている。

 そんな澪を安心させるためによしよしをしてから私は小石を拾った。


 そして、私はそれを熊の手前に投げつけた。


 森に似つかわしくない破砕音。今まさにバケツに手を出そうとしていた熊の鼻先で石が爆ぜた。


 怪力に任せて全力で投げつけた結果だ。投げた小石も、ぶつかった石も両方が砕け散った。


 流石に獣。彼我の力の差を文字通り理解したようだ。

 一つ鼻を鳴らすと、すごすごと森の奥へと帰っていった。


「こ、怖かったわ……」


 澪は顔をまっ白くしてそんなことを言う。

 実際私も死人よりも熊の方が怖いです。

 死人なら素手でもなんとかなるけど、熊はわっかんないからなぁ……

 今回は人型としての利点を最大限に使っての勝利だしね。投擲ができるってのは強いよ。

 相手の間合いの外から一方的に攻撃できるわけだし。

 そりゃあマンモスだって狩り尽くされちゃうよね。


 そんなことを考えながら、ぎゅってしてぽんぽんとしていると澪もだいぶ落ち着いてきたようだった。


「落ち着いたか?」


「……うん」


「じゃあ帰ろう。私たちの家に」


 ◇◇◇


「よし、晩御飯の準備をしようか」


 とは言え、調理自体はまた次回だな。

 今回は火起こしまでだな。実際アレは奥が深い。

 火起こしだけで2話は語れるな!


 まあでも、今回はそんなに長くはしないさ。もうお腹減ったし。


「さて、一口に火起こしと言ったが、火起こしにはたくさんの方法があるわけだ」


 ふんふん、と首を振る澪。かわいい。


「きりもみ、ひもぎり、ゆみぎり……あっ、のこぎりなんてのもあったな。まあこのように摩擦式だけでもたくさんある」


 そこで私は地面の木を1本手に取った。


「だが、摩擦式は正直お勧めしない。ゆみぎりならなんとかなるけど、それ以外だとその柔らかいお手手が台無しになっちまうからな」


 棒を放り投げた。遠くに落ちたそれに向かってジョンが走っていく。

 ジョンのことを忘れてた奴! 絶対いるだろ!


「というわけで、私たちはより文明的なもの——火花式をやろう。光学式とか電流式とか他にも色々あるけど、それはまたおいおいな」


「個人的には電流式が気になるのだけど……」


「ん、アレは原理は簡単だぞ? 電池のプラス極とマイナス極をスチールウールで繋ぐだけだからな」


 でもコレはやらない。室内で真似するやつが現れると本当に危ないからな。もし、火事になっても私は知らないからな!


「すまないが今回は火打石で我慢してくれ」


 取り出したのは火打石——チャートっていう海の生き物の化石——と鉄片。そして消し炭だ。

 私はそれをカチカチと打ち合わせるその度に火花が散る。


「この二つを打ち合わせて火花を出して、この消し炭を赤熱させるんだ」


 散った火花の一つが消し炭を赤熱させた。


「それでコレが火口。ゼンマイの若芽の綿毛だとか、ガマの穂だとかススキの穂なんかだな。要は表面積が大きくて乾燥してるモノだ」


 私は火口で消し炭を包む。


「そしたら息を送り込んで温度を上げる……っと、こうやって白い煙が出始めたら一気に燃えるから気をつけろよ!」


 私が手を離すと火口は重力に引かれて地面に落ちた。しばらくは勢いよく燃えていたが、次第に弱まり、燃えカスを残して消えた。


「とまあ、こんな感じだ」


「……やり方はわかったわ。でも、その……消し炭はどうやって作るの?」


「……澪は鶏と卵ってどっちが先だと思う?」


「えっと……」


「そういうことだよ」


「えっ?」


 ちなみに私は卵が先だと思ってる。だって鶏の卵からは鶏しか生まれないけど、鶏は鶏じゃない卵も埋めるだろ?

 だって鶏の卵ってのは鶏が生まれるから鶏の卵なんだろ? 違うのか?


「じゃあ澪。何回か練習しててくれ。私はその間に焚き火の用意をしておくから」


 ◇◇◇


 駐車場から少し離れた場所。元は牛達を放っていた敷地だ。

 次回はここでBBQだ。


 では焚き火の準備を。

 まずは乾燥してる地面を探して掘る。これを焚き床と言う。

 で、焚き付け——枯葉や小枝を山を作るように置いて、その周りに小枝を円錐状に並べるんだ。


 そうしたら今度は小枝の周りにそれより少し太い枝を差しかけていく。あ、火口を放り込むために一箇所だけは開けておくんだぞ?


 で、あとは太い薪を用意しておけば完成だ。


 そろそろ澪も上達しただろうし……次回はようやくご飯だな!

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