16話 フライフィッシング頑張りますっ!
やあ、ぐだぐだ話数を重ねている主人公ちゃんだ。
今日こそは釣りを……っとその前に——服装お披露目タイムだ!
澪の服装はカーキのズボンにチェックの長袖シャツ。頭にはハンチングだ。
まあ、美少女だから何を着ても可愛いよな。
対して私は水着だ……そう、水着だ!
なんで2回言ったのかって? そりゃあもちろん、大事なことなので、2度言いましたよってやつだ。
ディテールは赤のビキニタイプ。私の白い肌に映えること。映えること。
それで、頭にはキャップだ。個人的に低い後ろ結びでキャップをかぶってるの凄く好きなんだよな。あ、色は金か銀な。
とまあ、服装はこんな感じだ……一応言っておくが、私の真似はするんじゃないぞ?
自然を舐めたらいけないからな? 肌を出していれば日焼けするし、虫も多い。ちょっとしたヤブをかき分けるのにも難儀するし、フライの針が刺さるかもしれないからな。
「さて、澪。やってみようか! フライロッドはリールを下にして握るんだ」
そう言って、後ろから澪の手に私の手を添えた。
「ロッドの握り方には種類が色々あるんだが、今回は親指をロッドの真上に沿わせる握り方——サム・オン・ドロップ」
この握り方だとロッドをしっかりと握れるからな。初心者でも安定したキャスティングができるんだ。
「じゃあ次はいよいよキャスティングだな。リールからラインを引き出すんだ。とりあえずロッド2本分だな。で、フライラインの先端を手に持つようにしよう。手元のフライラインを左手に持ち替えたら、ロッドを水面に向けて横方向に動かす。伸びたらさらに反対側に降る」
コツを掴むとするするとラインが出ていってこれだけでもなんか楽しいんだよな。
あ、ちなみにもう離れました。動きづらいので。今は近くの岩の上に座ってます。
「あっ、ラインが伸びていくわ! なんだか不思議ね」
「ある程度出したらラインを握って止めろよ。で、ロッドは立てる。ラインの張りを感じたら、まっすぐ前に腕をしならせるように振り下ろすんだ」
澪が私の言った通りに繰り返すとラインが弧を描いて前へと伸びていった。
「そうそう。上手い上手い。ラインが着水したらまたロッドを上げて、ラインを斜め後ろに跳ね上げる。で、ラインが後ろに伸びたら前に振る。着水の時にはロッドを下げて静かにラインを着水させよう」
「んっ、こう? かしら……ふう、なんだかこれだけでも楽しいわね」
「だろだろ! 狙ったところに投げるだけでも楽しいんだよ」
「あとは待っていればいいのかしら?」
「うん。ここはストリームだから、流してるだけでも釣れるよ」
伸ばされたラインは流れに乗って下流へと流されていく。
「フライの流れに合わせてラインは手繰れよ。たるんでるとロッドを立ててもフッキングできないからな」
「なるほど……あっ!」
「アタリが来たか⁉︎ そう、上手いぞ! 魚が食いついたら、ラインがリールから出ないように指で押さえながらロッドを立てるんだ」
「多分かかったわ! なんだか重いのがきてる!」
「よし。ならラインを焦らずゆっくりと手繰るんだ。ロッドは立てたまんまだぞ? グリップは腕に当てた方がいいな。その方が一定の角度を保ちやすい。角度がブレるとバレちゃうからな」
私が岩の上から声援を送っている間に澪は魚との距離をどんどん詰めていた。
ロッドの弾力を生かして魚を弱らせるのも上手いし、澪は天才か……?
「よし、十分寄せられたな。あとはランディングネットでもって取り込むだけだ。頑張れ。澪」
ネットで魚を迎えに行くのではなく、魚をネットに入れにいくあたり、やっぱり澪は釣りが上手いなぁ。
「……できたわ!」
網に入れた魚を掲げる澪。かわいい。
その時に魚が暴れて水が出て顔にかかって「わぶっ⁉︎」ってなっててもかわいいよ。
「うぇぇ……」
「ふふっ。澪はかわいいなぁ……よし、じゃあ私も釣るか!」
そう言って私は岩から飛び降りた。
体の側面に白い点々があるし、澪が釣ったのは岩魚だな。
大きさもなかなかのものだし、私も負けてられないぜ!
澪よりも少し上流に行き、アップクロス・キャスト——上流に向けて投げるキャストをする。投げ方は基本中の基本、ピックアップ&レイダウンだ。
どんな投げ方かは動画投稿サイトでも見てくれよな!
おっと、キャスト直後が一番大事なんだ。
ラインがたるんでいるとアワセられないからな。キャスト直後からたるみを取るんだ。
そうすれば空中で喰われてもアワセられるからな。
私の投げたフライは見事に流心——川の中で最も魚が集まりやすい勢いのある流れの部分だ。
具体的には上流から水が入ってきて波で白っぽくなっているあたりだな。
ああ、魚は別に流心にだけいるわけじゃない。
常に速い流れの中にいたら疲れちゃうだろ? だから、流心が勢いを弱めるあたり——ヒラキにもいるし、川の両側の流れが逆転している反転流って言われるところにもいる。
基本的に魚は流れに逆らうようにして泳いでいるから流れに沿って流しておけば釣れるんだ。
…………ほら来た!
素早くロッドを立て、ラインを張ることでアワセを行う。
するとすぐに伝わる魚のずしりとした重み。
うん。この瞬間だよ! なんどやっても凄い楽しい! 幸せな気分になれるよなっ!
っと……いけないいけない。釣り上げるまでは気を抜いちゃいけないからな。
言っても最近の道具の進歩は甚だしいからラインが切れるってことはそうそうないわけで、さらにスポーツではなく狩りとして釣ってるから、針にカエシもついてるし逃すことなんてほとんどないんだけどな。
「ん、綺麗ないい体じゃないか」
「わあ。本当に綺麗ね」
いつの間にか私の背後に回ってきていたらしい澪が耳元で囁いた。
……見てる場所が違いやしませんかね。澪さん? そこは私の身体ですよ?
ごほん。私が釣ったのは澪の釣ったものとは異なり、体側の青緑っぽい斑紋が美しい山女魚だ。
こいつは炭火で塩焼きにすると凄く美味いんだ!
誇張じゃないからな? 一度食べたら川魚の見方が変わるレベルだからな?
あ、岩魚も美味しいよ。うん。私は山女魚の方が好きですが。
「今日の晩御飯はこいつらだな。もう少し釣って帰ろうか」
「楽しみだわ!」
むむむ。澪がこんなに楽しみにしてくれるとは……もっと釣らないとだな!
私、釣り師目指して頑張りますっ!




