↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【読み切り3話のみ】死後すぐに輪廻転生した元英雄──妹の息子として普通に生きてたら、なんか前世超えた。  作者: 甲賀流@メディア化打診希望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/3

2話


 というわけで、おはよう世界。


 ……いや、今の場合おはよう天井ってことになんのか。


 だって今の俺は、生後一ヶ月の幼きベイビーだからね?


 そしてなぜかよく分からんが、騎士として戦死した末に妹の子として生まれ変わった、とんだ異端児だ。


 自分で言うのもなんだけど。


 ハイハイや寝返りどころか首のコントロールすら効かないんだぞ。これほど自分のことを未熟だと思ったのはマジでいつ以来だろう。


 あれはそうだな。前世、自分が騎士になる前、自分の父親であるカシウスとの手合わせで言葉通り手も足も出なかった時以来か。


 まぁしゃあないよな。相手は名誉あるローディア騎士団大隊長なんだから。


 この騎士一家フェルナー家の中でも、父カシウスは特にお堅い人だった。騎士という職に一番誇りを持っている人でもあって。


 まぁだからって自分の子供に対して、手加減の一つもしないのはおかしいんだが。


 はぁああ……。それにしてもさぁ。


 ローディア騎士団中隊長、ロアン・フェルナーとして生を全うして、あのままお陀仏かと思ったら、まさか妹の息子として輪廻転生することになるとは。


 どうせ生まれ変わるなら、次は剣とか戦いとかない世界が良かった。


 なんて考えても仕方ないか。それより今は考えなきゃいけないことが山ほどある。


 まずなんで記憶残ってんだよ。


 ちなみに前世の記憶はフルで残ってる。小さい小さいこのロアンの脳みそに。


 てかそれと。転生して一ヶ月、ずっと思ってたんだけど。


 なんでさぁ。


 ——俺の名前って、またロアンなわけ!?!?


 名前つけるのすらめんどくさかった!?


 ちょっと可哀想だって。生まれてきたこの子が。もう逆に中身俺で良かったんじゃない!?


 まぁ実際、本来生まれてくるはずだったこの子の自我がどこ行ったとか、なんで俺が死んですぐ輪廻転生したのかとか、分からないことはたくさんある。


 だがいつまでも悩んでたって仕方ない。


 目の前のことから一つ一つ解決していけばいいんだ。


 前世、そうやって騎士として強くなれたように。


 目の前のことから、一つ一つ。


 俺はそう心に決め、まだまだ未発達なこの視力で目の前の問題へと視線を向けた。


「だぁああ、可愛いロアンちゅわぁあん! 見えるかなぁ? 君のじいじでちゅよぉぉ!」


 そう。直近の問題とは。


 前世俺を散々しごいてきた、今日これまで厳格な人だと思っていたその父カシウスが目の前の俺ことロアンベイビーに、今まで見せたことのない満面の笑みでやたらとメロついていることである。


 ……いや、マジでごめんだけどさ、誰コイツ?


 本当にあのローディア騎士団、大隊長カシウスか?


 アンタいつももうちょい渋い顔して「あぁ」「分かった」くらいしか話さない感じの人だったじゃん。


 なぁにが君のじいじでちゅよぉぉ、だ!!!!


「ふふ、ほんとパパってロアンのこと大好きね。この姿お兄がみたら、ちょっと引くんじゃない?」


 もうすでにここで引いてるよ!


 引くどころか、もはや慄いてますわ。


 膝もガックガク震えてる。……いや、これはあれだ。赤ちゃん特有なのか知らないが、反射みたいなんでいつも勝手に起こるやつだが。


 そんなこんな思っていると、俺の体はカシウスの太い腕に囲われ、抱き抱えられる。


(ひぇぇええええ……)


 近い近い……。カシウスの顔近すぎるって!


「近くで見るともっと可愛いなぁぁぁ。……ちゅっ」

 

 リップ音、やめて!


 ちょ……っ、マジで臭う臭う。歳いったおっさんの臭い!


 これ、自分で逃げられないの地獄すぎだろ。


 生まれ変わってから何度かあるが、何回されても慣れるもんじゃないわ。


 これなら普通に剣で斬られた方がマシかもしれん。


 としばらく、名も無き地獄に付き合わされた。そして数分くらい経った後、ようやく俺はマイホーム(赤ちゃん用ベッド)に戻ることができた。


 あーよかった。


「それにしても本当によかったね」


 妹の声だ。イネス・フェルナー。いや、今は俺の母親でもある。


 何に対してのよかったなのか、俺が疑問を抱くと同時に父もそれを問う。


「何がだ?」


「……お兄がいなくなってからのお父さん、見てられなかったからさ」


 俺の話だった。ロアン・フェルナー。今じゃなくて前世の方のね。


 にしても見てられなかったって、この父親が俺の死を悲しんだ?


 まぁ無くは無いかもしれないが、見てられなかったほどとは到底想像もできん。


「フェルナー家は騎士の家系だ」


 唐突に父カシウスは語り始める。


「これまで、フェルナー家に産まれた男は例外なく騎士の道を歩んできた。当然、ロアンもそうだ」


 心なし、父の声は重く聞こえる。


「私は初めて、恨んだ」


「……恨んだ?」


「フェルナー家の男は騎士になるという伝統、そしてさも当然のように、息子を騎士に育て上げた自分自身をな」


「そんな……お父さんは何も悪く——」


「息子を失うくらいなら!」


 語気を強めたカシウス。


「こんな伝統、捨ててしまえば良かったのだ」


 あれだけ騎士は名誉。国を守れることに誇りを持てと散々言ってた人が、簡単に捨てると言った。


 いや、簡単ではなかったのかもしれない。


 昔から冗談を言うタイプではなかった。こんなに声を震わせるような、弱い部分を見せるような人ではなかった。


 そう。俺の知らない父が目の前にいたのだ。


 そしてそんな知らない父を作り出してしまったのは、おそらく他の誰でもない俺なんだろう。


 ——ごめんな、父さん。


 残念ながら今は話せないので伝えられないが、いつか話せるようになった時、今世のロアンとして今までの感謝を何かしらで返せたらいいな。


 俺はふとそう思った。


「お父さん……捨てるだなんて、そんな……」


「いや、もう決めたことだ」


「……決めた?」


「あぁ。じいさんとも話した。もうくだらない昔の伝統は捨てて、これからの子どもたちには好きな道を歩んでもらおうってな」


 ……マジで?

 それ、騎士団副団長だったあのじいさんまで納得したのかよ。


「だからイネス。お前は家のことなんて考えず、ロアンには好きなことをさせてやってくれ」


 なんとも言えない妹の顔。


 まぁ戸惑うのも無理はない。今までフェルナー家に一番誇りを持っていたのは、何を隠そうこの父カシウスだったからな。


 その本人が伝統をくだらないと言い、挙げ句の果てには捨てるとまで口にした。


 こりゃ相当大事だと、今ベッドで横になってる俺だって焦ってるし驚いてる。


 何を言ってるんだこの親父は……っとしまった、おしっこが。ったくいつでも出るんだから、この体は本当にたまったもんじゃない。


「では。また来る」


「あ、うん」


 そのまま扉が閉まり、場は静寂に包まれた。


 さあて、どうしたもんか。


 転生してから一ヶ月、同じフェルナー家に生まれた以上、心のどこかでは今回も騎士になるもんだと思っていた。


 イネスの旦那、エリオ。つまり俺からしたら義弟にあたる……じゃなくて今はパパか。そのエリオだって騎士だ。しかも家に婿養子としてきたため、こいつも姓はフェルナーである。


 そしてさらに言うと、俺の姓もフェルナーなわけで。つまるところ、今の俺もロアン・フェルナーなわけで。


 転生した二度目の人生も同姓同名ってどうなのよ……ってのは一度置いとくとして、俺は今まで通り騎士として育てられると思っていたのだ。


 それが今一気に覆された気分である。


 でもなんだろうな、この感覚。ちょっとした悲しみや喪失感みたいな感じはあるんだけど、そのぽっかり空いた心の穴を埋めようかのごとく、全く別の感情まで俺の中に押し寄せてきている。


 騎士以外の道。


 それは俺にとって初めて考えることであり、そして未知の世界。


 歩んだことのない……いや、歩もうとすら思ったことのない道だ。


 そんな可能性をこれから自分の意思で探していけるのだとしたら、それはもう。


 ——楽しみ以外の何物でもない。


 だめだ。父さんには悪いけど、ちょっとだけ心が弾んできた。


 街の鍛治師か、ギルドの職員か、冒険者か。


 街には色んな仕事が存在する。


 まずは自分が何をしたいのか、じっくり考えないとな。


 いや、それもそうなんだけど。その前にもっと根本の問題。この不自由な体をどうにかしたい。まぁどうにかと言ってできるなら、もうとっくにどうにかしてる。


 とりあえずできないことをウダウダ言ってても仕方ないので、今はこの体でもできることを考えるとしよう。


 まず少しでも早く動けるようになりたいわけだが、これまで騎士として身につけてきた技術で何ができることはないか……?


 と考えたところで、もはやお馴染みの眠気がやってきた。


 ほんと何これ不便な体。


 そして次の瞬間、俺の意識は完全に途切れたのだった。 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。