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【読み切り3話のみ】死後すぐに輪廻転生した元英雄──妹の息子として普通に生きてたら、なんか前世超えた。  作者: 甲賀流@メディア化打診希望


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3/3

3話


 さて、母様から栄養も受け取った。オムツも替えてもらった。


 ようやく今後のことを考えられる!


 まずは自分が今できることを整理するか。


 えー、当然今の俺は歩くことができないわけで、そもそも立つことすら難しい状態。


 じゃあハイハイはと言われると、まずうつ伏せになれないのでそれも無理。


 改めて思うけど、なんだよこの身体。首から背骨までがぐらんぐらんで、正直頑張ったらできるの域をゆうに越してるんだけど。


 いくら前世の記憶、経験があろうとも、その辺は全く関係ないらしい。


 今できるといえばせいぜい口を動かしたり、動いたものを目で追ったり、あとは息を吸ったり吐いたりするくらいのもの。


 じゃあ何もできないじゃん。


 大人しく妹の乳でも吸って寝とけ?


 おいおい、そんなこと言うなよ。今の俺にだってな、まだできることがあるってさっき言ったところだろうが。


 我ながら誰と会話してたんだって話だが、これくらいしてないと、24時間赤ちゃん生活って頭おかしくなりそうなんだよな。


 一日中寝たままで何もできず、尿意や便意を催しても、ここで出さざるを得ない状況。飯はほんのり甘いミルクだけ。手足は当然使えないし、周りの状況も全くわからない。


 ……俺さ、なんかの罪人?


 って思うくらいには普通にきつい。


 っと、気づけばすぐ話が逸れるんだよな。これも転生してから一ヶ月の虚無期間を過ごした代償かもしれん。


 とにかく。


 何が言いたいかっていうと、今の俺にだってできることがあるってことだ。


 それは一体何なのか。そう——


 ——呼吸だ。


 息を吸ったり吐いたりするあれ。


 赤ちゃんにとって、いや……普通の人にとって呼吸とは、それはただの生きる手段に過ぎない。


 しかし、こと俺のような騎士や街にいる冒険者みたいな戦うことを生業にしている人にとっては少し意味が変わってくる。


 人の身体に流れている脈という生命エネルギー。俺たちはこれを戦う力に変えていたわけだが、そこで必要になってくるのが呼吸。


 一応理屈としては、取り込んだ酸素を使って、脈の流れをコントロールするらしい。


 例えば骨格筋に流して身体を強化したり、傷ついた箇所に流して治癒力を高めたり。他には身体を通して武器に流すこともできる。


 つまり。呼吸ができるんなら、今のうちに脈を使って成長を早めようってことだ。


 まぁ本当だったらもっと早くに試みたかったもんだが、生まれてから一ヶ月近くまで目も見えにくいし頭もボーッとするしで、なかなか行動に移せなかったんだよな。


 で、ようやくそれも落ち着いて今。


 やっと試せるわけである。

 

 ま、言うのは易しっていう。物は試しだっつー言葉もあるわけだし、さっそくやってみるか。


 まずは脈の確認だ。


 今まで人には当然流れてるものって認識だったけど、そもそも赤ちゃんの時点であるのかってところ。


 俺はこの肉体で初めて脈に意識を移した。目を瞑り、息を吸ったり吐いたりしながら集中する。


 血液やリンパのような物体とは異なり、脈は全身を巡る目には見えない力。


 イメージは青色。


 多少なりとも流れてたらいいんだが。


 と思ったところで、微弱な何かを捕えた。


 薄い青でほのかに暖かくて、それでいてゆっくり全身に回っている。頭のてっぺんから足の先まで、隈なくだ。


 おお。あるじゃん、脈。これこれ。


 まぁ当然めっちゃくちゃ弱い。俺じゃなきゃ見逃しちゃうくらいほんのわずかしか流れてなかったけど。それでも、俺のこの小さな肉体に、脈はたしかに存在していた。

 

 よしよし。あとはこれを前世と同じように、体外へ放出。それを身体にまとえば無事、脈による身体強化の完成だ——


 前世の記憶を辿りながらイメージ通りに脈を流してみた、その瞬間。


「……ゴボッ!」


 ミ、ミルクが……っ!?


「ゴボゴボッ……」


 苦しい。口から溢れて……お、溺れそ……。


「ちょ、ロアン!?」


 ベッドから背中が離れ、俺は人の腕の中に包まれる。


 この声、この温もり、そしてこの前胸部の弾力、間違いない。


 今世のママ、イネスだ。


「大丈夫? ちょっとゲップ足りなかったかなぁ……?」


 イネスはガーゼで口のミルクを拭き取り、背中を優しく撫でてくれる。


 ありがとうママ。あのままだと、俺はミルクで溺死するところだったかもしれない。そして足りなかったのはゲップじゃなくて、俺の自己管理だ。本当ごめんなさい。

 

 まぁ自己管理というより俺の見通しが甘かったとも言える。


 そもそも脈を使うってことは、いわば身体を無理矢理活性化させるということ。


 しかも俺が今試そうと思ったのは王国式循環法といって、騎士が短時間で最大の出力を発揮する為に作られた、より高負荷な循環法だ。


 それを赤ん坊の体にって、もはや自殺行為だったかもしれん。あー危ない危ない。


 先ほどの行いを反省しながら、俺は優しくゴロンゴロンと無抵抗に服を着替えさせられている。


 一応王国式っていうからには従来のものもあって。一般的な循環法ならいけるかもとは思ったが、


(小さい頃から、王国式しかやったことないんだよな)


 いやー困ったもんだ。これだから騎士一家というものは。


 とはいえだ。王国式ってのは、元々ある循環法の応用版。つまり基礎はできているはず。


 その違いってのも前世散々叩き込まれた。王国式とそうじゃないもの。これらの差だ。


 まぁ王国式なんて大層な名前しているが、要は出力の違い。それだけである。


 昔はよく測ったな。測脈器体内に流れてる脈の総量。


 で、その内何割を動員、つまり体外に循環させるかで王国式かどうか決まるんだ。じゃあ何割かっつーと、これまたびっくり全体の八割。体内にある脈の八割をフル稼働できてようやく王国式と呼ばれる。


 今考えると相当イかれているよな。


 これ、体力に置き換えると分かりやすいんだけど、つまり自分の中の全力疾走。その最大速度の八割でどれだけの時間走れるかってことだ。


 そりゃ普通は数分と保たないだろう。まぁ俺たち騎士は、今までその専用の訓練を行ってきたので一時間以上は保つわけだが。


 えー、だから、つまり、出力する量を極端に減らせば、それは通常の循環法となりえる。


 しかしながら、これ意外と簡単な話でもなくて。今までずっと王国式で使ってきた人間は、その出力量で体が完全に慣れ、それ以下に出力を落とせない肉体へと変わってしまう。


 そして逆も然り。通常の循環法、つまり出力八割以下でコントロールしている人間は、それ以上を出力しそうとすると体の神経機能がストップをかけてくるらしい。

 

 うん。人間って本当に難しい生き物だ。


 まぁそれが分かってるからって?


 もちろん黙って何もしない俺じゃあない。


 ママからの激烈なキッスをもらい、再びベッドに下ろされた俺はさっそく意識を集中させる。


 全く懲りないやつだと自分でも思う。


 またミルクを吐くかもしれない。次は意識を失ったり、何かしら体に異常が起こるかもしれない。


 でも。


 それでも俺は——


 循環法を試したい。だって。


 ——暇なんだもん!


 よし。ということでさっそく、まずはこの身体で通常の循環法ができるかを試す。


 今世のロアン自身はまだどの循環法にも適応していないはず。つまり可能性は無限大。


 俺は期待とちょっとの不安を背負って、限りなく少量の脈を回し始めた。

 

 実際にやってみると、それはもう分かりやすく、ゆっくりと俺の体を循環していった。


 あれ、思ったより簡単にできたぞ?


 えっと、まぁだいたい今の感じだと稼働率10%、つまり一割程度を使用している。


 今のところこれくらいなら、赤ちゃんの身体でも支障はなさそうだな。


 まぁかといって何が変わったわけでもない。このダランダランの身体がコントロールできそうな感じもないし。


 自分でやっといてなんだけど、これ何の意味があるんでしょうかねぇ?


 戦いながらどころか、動くこともなく只々寝ながら脈を回すのにこれ何の意味が……ってダメだ、また眠くなってきた。


 なんか脈を回してると、体もポカポカしてきて余計に眠気が。


 くそぅ。体動かしたいぃいい……。


 この際、父親でもいいわ。昔みたいにビシバシ扱いてくれ。あの時の地獄の鍛錬さえも、今や愛おしく思えるくらいには心の底から動きたいと思ってる。


 そう願いながら眠りについたからか、はたまた神様が何らかの試練を俺に課したのか。


 その真意は分からない。


「構えろ、ロアン!」


 どこまでも続いているような薄灰色の空間。そしてその向かいでなぜか、実剣を構える父カシウスの姿がそこにはあった。


「……え、なにこれ。夢?」

 

本作はメディア化打診希望用に投稿したもので、長編としては現在制作途中になります。


今年中には出来上がると思いますので、もし続きが気になるよという方は、作者マイページのお気に入りを押してお待ちいただけますと幸いです!

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