元服と初陣
天文十五年(1548年)五月、六歳を迎えていた俺は、かねてより予定していた祖父、高城胤吉を烏帽子親としての元服の儀を執り行った。
多くの家臣が見守る中、俺は髷を落とし、烏帽子を被る。
新たな名は、千葉親胤。
これにより俺、民部丸は正式に千葉家を背負う第二十六代当主・親胤となった。
胤吉は感無量の面持ちで、親胤の烏帽子を直しながら囁いた。
「ご立派になられた……。これで、亡き娘も安心しておりましょう」
父、利胤の事は言わないんだよな・・・。
「おじじさま、ありがとうございます。これよりは親胤として、この下総を盤石なものといたしまする」
元服の儀が行われた夜は盛大に宴が催された。
海の幸や山の幸をふんだんに使って贅を尽くした膳がふるまわれた。
そして家中の者たちは、まだ幼いが聡明な君主の元服を祝う祝賀ムードの中、どんちゃん騒ぎで夜遅くまで飲み明かした。
翌日はしこたま酔いつぶれた家臣達を慮って、出仕を自由にして、翌々日に評定を開くこととした。
そして評定の席。
まずは、国力増強の為の生産力向上策と税制改革。
生産については酒造に加えて、塩田の整備と本格的な製塩、石鹸製造の奨励。
税制は四公六民の徹底と関、座の廃止、楽市楽座の奨励と関の廃止における収入手段切り替え完了までの間の小規模国人領主への収入つなぎ補填など。
そして軍制改革の継続。
矢継ぎ早とも言える俺の新政策に目を白黒させる家臣も数人いたが、それらは最近になってから奉公に上がってきた者で、少し前からいた者たちはもう慣れているような反応だった。
頑張ればお前たちの懐も温かくなるのだから、頑張るのだぞ!
そうして評定は終わり俺の元服を祝う空気もやっと落ち着いた。
少し休日のような時間が出来たので、家臣たちも思い思いに過ごしているようだ。
まぁ俺は性分ゆえか、先々の事をあれこれ思案を巡らせるのにはもってこいの一人時間が出来たので、専用の執務室でああでもないこうでもないと筆を走らせている。
そういえば、織田信長と斎藤道三の娘、帰蝶が婚姻を結ぶのは今年だったな。
俺がこちらに来た事でのバタフライ効果が変な作用をしていなければ、あのあたりの歴史は変わりようが無いはずだ。
今度余裕が出来たら尾張や美濃のあたりまで探らせようか。
京の都の様子も知りたいから、その道中で探らせるか。
そんなこんなで時も過ぎていく。
しかしその和やかな雰囲気はそう長くは続かなかった。
元服から七日程過ぎ、次の評定を行っている最中にそれは来た。
「申し上げます! 里見義堯、軍勢を率いて上総国境を越え、侵入! その数、およそ四千から五千!」 評定の間がざわめく。
ついに、南房総の雄・里見氏が動き出した。
里見義堯は「房総の虎」とも呼ばれる知勇兼備の名将。
幼い当主が立ち、体制が変わったばかりの千葉家から領地を削り取ろうと攻め寄せて来たのか?
中々に舐めた真似をしてくれる。
重臣たちが動揺する中、俺は静かに立ち上がり、言った「狼狽えるな。想定の範囲内だ」 。
自分でも不思議なくらい冷静に言葉が出た。
「浄三、胤貞……我らの力を、奴らに存分に見せつけてやる時が来たようだ」
「応!」
今回は、俺がこの戦国に来て初めての戦―――いわゆる初陣だ。戦国関東の勢力図を塗り替えられるかどうかの試金石となる戦いになるだろうな。
「殿、鉄砲隊の準備も整っております」 静かに歩み寄ったのは、鏑木胤永――鉄砲大隊の指揮官である。
その後ろには軍師・白井浄三が控えていた。
「五百丁の種子島。壮観だな、胤永」
「はっ。殿に伝授された『三段撃ち』、当初は耳を疑いましたが、繰り返すうちにその恐ろしさが身に沁みました。これはもはや戦にならぬかも知れませぬな」
「効率を求めた結果だ。細工は流々仕上げを御覧じろってな」
「殿、まことにうまい言い回しでござるな」
(あれ?・・・あ!これは確か江戸時代の歌舞伎の台詞だったか)
胤永はしきりに感心しているようだが、残念ながらこれは俺が考えた言い回しではない。
「ときに……浄三、里見の動きを見てどう思う?」
俺の問いに、浄三は地図を広げ、指先でなぞった。
「はっ。葉隠衆の報告によれば、里見義堯はその配下の正木大膳亮時茂、安西伊予守実元を伴い、四千余りの兵で北上を開始しました。狙いは原胤清殿配下の小弓城。
当主交代の混乱を突いたつもりでしょうが、彼らはまだ、自分たちが何に首を突っ込もうとしているのか、分かっておりませぬな」そう言いながら浄三はニヤついている。
「『房総の虎』か。その牙は我らに届くか?力比べというわけだ」俺の口角が自然と上がった。
天文十六年(1548年)五月(6歳)、早朝。
下総の冷え切った空気を、千の馬蹄と数千の足軽の足音が震わせた。 前夜の軍議で決定した通り、俺は常備軍の約半数に出撃を命じた。
実は胤清を含めた重臣達からは出陣を控えるように再三言われたが、これは今後の千葉家の吉凶を占う大事な戦であるとして、無理を押して俺自ら出陣する事にした。
副将に原胤貞、軍師に白井浄三。四千を二つの連隊に分け、円城寺虎常と椎名胤富をそれぞれの連隊長に任命。さらに、鏑木胤永率いる鉄砲二個大隊五百名が遊撃部隊として参戦する。
舞台は、小弓城を望む生実の平野。
小弓城は、三日間にわたる激戦を耐えていた。
城代・馬加清治率いる八百の城兵は、里見軍四千の猛攻を三日間、不眠不休で対応していた。
通常ならばとっくに兵糧が尽き、士気が崩壊してもおかしくない状況だ。
だが、事前に構築していた兵站網は、事前に城内に十分な食料と、山のような矢弾を蓄える事を成功させていた。
「若君……いや、殿が来る! それまで死んでも門を破らせるな!」
清治の叫びに応えるように、煤と血にまみれた城兵たちは、鬼神の如き働きで里見の精鋭を撥ね返し続けた。城壁に張り付いた里見兵が次々と突き落とされる。
そして三日目の午後。
平野の彼方、砂塵の向こう側に、整然と並ぶ無数の「月星紋」の旗印が姿を現した。
千葉の援軍、到着である。
里見義堯は、本陣の床几から立ち上がり、目を細めてその光景を見つめた。
「あれが……噂の新当主が率いる軍か」 見た瞬間、義堯の背筋に、冷たいものが走った。
「……やけに整然としておるな」
四千を超える兵数である。通常、長距離を移動して来た足軽たちの足並みは乱れ雑談や怒号、馬のいななき、武具の触れ合う音で喧騒に包まれるはずだ。
だが、目の前の軍勢からは、一切の無駄な音が聞こえてこない。
聞こえるのは、ザッ、ザッ、ザッという、完全に統制された足音の重低音のみ。
足並みは恐ろしいほどに揃い、槍の角度まで定規で測ったように統一されている。
黒色で統一された軍装の見た目と相まって、それは一つの大きな黒い波が迫ってくるような威圧感を与えていた。
「伊予守! 大膳亮! 油断するな、敵はこれまでの千葉とは違うぞ!」
義堯は本能的な危機感を抱き、大声で警告を発した。
だが、その声は血気にはやる両名には届かなかった。
特に先陣を務める安西実元は、功名心に目をぎらつかせていた。
彼は安房でも指折りの猛将であり、個人の武勇を何より尊ぶ古風な武人である。
「殿は心配性であられる! 神童と噂される六歳の童が当主と聞いて出てみれば、存外、置き物のように揃えられただけの陣形よ! 一当てすればその力量も図れよう!」 安西は采配を振り下ろした。 「者共、かかれぇい! 一番首を挙げた者には恩賞は望みのままぞ!」
「おおおおぉぉッ!」 安西軍二千が、雄叫びと共に突撃を開始した。
地響きを立てて迫る騎馬と足軽の波。それはこの戦国の戦場においては、圧倒的な勢いをもって敵陣を打ち崩す矢の如しのはずであった。
『安西め、調子に乗りおって。だが、これで奴らは恐れて後退するやも知れぬな。追撃の準備でもさせておくか』
――― 一方、千葉本陣。
迫りくる二千の敵。
俺は床几に深く腰掛けたまま、戦況を俯瞰していた。
「……落ち着け。まだだ。十分に引き付けろ」 隣に控える軍師・白井浄三が、距離を測る。
「百五十……百二十……」 「胤永、所定の距離に達したら射撃を開始せよ」
「御意」 「距離・・・・百!」
「鉄砲隊、構えッ!」 最前線に展開した鏑木胤永が、愛用の軍配を構えながら、低く、よく通る声で号令した。ガチャリ、という硬質な音が響く。
五百丁の黒光りする銃口が、一斉に安西軍の先頭に向けられた。火縄の燻る匂いが漂う。
距離、百歩……八十歩……。 騎馬武者の顔が見える距離。
安西実元が、勝利を確信して槍を振り上げた、その瞬間。
「第一列、放てッ!」
――パパパパーンッ!!
天地がひっくり返ったかのような轟音が、生実の平野を揺るがした。
百五十丁の鉄砲の筒先から同時に噴き出した白煙が、瞬く間に視界を覆い尽くす。
そして、その白煙の向こうで、凄惨な光景が繰り広げられた。
最前列を走っていた安西の騎馬武者たちが、目に見えない巨大な槌で正面から叩かれたかのように、次々と吹き飛んだのだ。
馬は嘶きと共に前につんのめり、武者は血飛沫を上げて宙を舞う。鎧の上から弾が貫通して、即死する者が続出した。
「な、なんだ!?」 後続の兵たちが動揺し、足が止まる。
一撃目で安西実元は奇跡的に無傷だった事が悲劇を呼ぶ。
彼は硝煙の中で叫んだ。 「うわさに聞く種子島か! だが、あのような筒、次を撃つまでに日が暮れるわ! ひるむな! 煙を突っ切れ! 肉薄すればこちらのものだ!」
安西の叱咤により、混乱した騎馬隊が再び前進しようとしている。
普通に行われる鉄砲の運用ならば、彼の判断は正しかったはずだ。
だが、俺の千葉軍はこの時代において「普通」ではないのだ。
発砲を終えた第一列の兵士たちは、滑らかな動作で左右に開いて最後列へと下がっていく。
その開いた隙間から、背後に控えていた第二列が、すでに火蓋を切った状態で現れる。
安西の目に、信じられないものが映った・・・・硝煙の中から、再び現れた多数の黒い銃口。
「第二列、放てぃッ!」
――パパパパーンッ!!
息つく暇もない、二度目の連射。
立ち直りかけた安西軍の前衛を、再び鉛の嵐が襲う。
悲鳴と怒号、そして弾が着弾するパシッという音が周囲にいくつも響き渡る。
「ば、馬鹿な……!」 安西の思考が追いつかない。
種子島は、一度撃てば長い装填時間が必要なはずだ。
なぜ、間断なく撃てるのか。 だが、悪夢は終わらない。 第二列が下がると同時に、装填を済ませた第三列が、死神のように姿を現した。
「第三列、放てぃッ!」
――パパパパーンッ!!
三度目の轟音。それは、安西軍の戦意を完全に粉砕する一撃だった。
「何と……! 間断のない射撃など聞いていた話とはちがっ……!?」
安西実元が驚愕に目を見開き、叫ぼうとした瞬間。 数発の弾丸が、彼の眉間、喉、そして胸板を同時に貫いた。
安西の体は馬上で大きく仰け反り、言葉にならない声を漏らしてどうと落ちた。
「伊予守様が……撃たれたぞ!」 「逃げろ!」 指揮官を失った安西軍は、パニックに陥り、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い始めた。
俺は、硝煙の晴れ間からその様子を確認すると、短く命じた。
「敵正面が混乱したな。……浄三、仕上げだ」 「はっ。長槍隊、前へ! 掃討せよ!」
軍師・白井浄三の采配が振られる。 円城寺と椎名の両連隊、四千の兵のうち二千の兵が、一斉に動き出した。
彼らが構えているのは、俺が提案して配備した「三間槍」である。
長さ五・四メートル。当時の常識的な槍の倍近い長さを誇るその槍が、無数に水平に突き出された様は、さながら巨大な針鼠、あるいは動く城壁であった。
千葉軍は走らない。 太鼓のリズムに合わせ、一歩、また一歩と、壁のように前進する。 「突け! 引け! 突け!」 笛の音が鳴るたびに、二千本の槍先が一斉に繰り出される。
混乱から立ち直り、太刀や短い手槍で応戦しようとした里見の兵たちがいた。
だが、彼らが千葉兵に剣を届かせるには、五メートルもの「死の空間」を越えねばならない。
間合いに入ろうとした瞬間、三方、四方から突き出された槍に阻まれ、鎧の隙間を貫かれる。
「うげぇああああ」串刺しにされた兵が捨てられ、千葉軍はまた一歩、前進する。
「うわあぁぁぁッ! 近づけねぇ! 近づけねぇぞ!」 勇猛な里見軍だが、個が突出しているだけのため、組織化された攻撃の前には、あまりにも無力だった。 個人の武勇など介在する余地のない戦術。
「これが……千葉軍か……」 後方で戦況を見ていた里見の副将、正木時茂は戦慄した。
これはこれまでのいくさの常識をすべて覆すような戦法だった。「おのれ千葉ァッ!」
事ここに至り、本陣の里見義堯も敗戦を悟った。
顔色は蒼白だが、判断は早かった。 「退け! 全軍、撤退せよ! これ以上、無駄に兵を失うな!」 撤退の法螺貝が吹かれる。
だが、背を見せた敵を、千葉軍は逃さない。さらに槍の壁が加速する。
「殿を逃がせ! 殿はこの儂が務める!」 正木時茂は、手勢を率いて千葉軍の前に立ちはだかった。
「我こそは里見配下、正木大膳亮時茂! 命の惜しくない者はかかって参れ!」
名乗りを上げ、槍をしごく時茂。その気迫は鬼気迫るものがあり、並の兵なら委縮しただろう。
二、三人の兵を突き倒したところで千葉の兵たちは止まらない。
彼らは時茂の挑発を無視し、無表情のまま、三、四人がかりのチームで時茂を包囲しにかかった。 「一騎打ちも受けぬか! 下郎どもめ!」 時茂は愛槍「綱切」を振るい、数本の長槍を叩き折る。だが、折っても折っても、次から次へと新しい槍が突き出される。
多勢に無勢。徐々に時茂は追い詰められていく。
「チッ! 殿が退くまでの時間さえ稼げれば……!」 時茂が奮戦していた、その時 乾いた音が響く。パーン!!
「ぐぅっ!?」 時茂の右肩が弾けた。 強烈な衝撃に槍を取り落とし、時茂は落馬寸前となる。 「大膳亮様ッ!」 家臣たちが慌てて駆け寄り、主君を支える。 「おのれ……飛び道具とは……ッ!」 激痛に顔を歪めながら、時茂は悟った。もはや個人の武勇でどうにかなる相手ではない。 「……退くぞ! 続けぇ!」 配下の必死の守りによって、正木時茂は瀕死の体で戦場を離脱した。 その背中を遠くから見送りながら、俺は、静かに采配を置いた。
「深追いは無用……勝負はついた。無駄死には出すな」
夕闇が迫る生実の平野には、無数の死体と、勝利した千葉軍の整然とした陣形だけが残されていた。 千葉勢からは鬨の声が上がる。 そして戦場には新しい時代の到来を告げる、硝煙の匂いと血の匂いが漂っていた。
戦闘は、わずか数時間で決着した。
生実の平野には、里見軍の無惨な骸が散乱していた。
夕闇の中、俺は仮本陣で、兵站方の木内兵衛尉胤倫と押田修理亮胤次が作成した「戦況報告」を受け取っていた。
「此度のいくさの戦況、まずは里見軍の損害を報告いたします」 胤倫の声が静かに響く。 「敵将安西伊代守実元を討ち取り、以下討ち取った者五百四十五名。投降した者六百三十五名。……敵戦力の三割近くを喪失せしめました」
「対する我が軍の損害は?」
「討死五十六名、負傷百四十二名にございます」
周囲の家臣たちがどよめいた。五十六。この規模の戦闘で、これほどまでに損害が少ないなど、これまでにおいて類を見ない圧倒的勝利だった。
航空戦ではないが、太平洋戦争後半の日本軍と米軍のキルレシオと同率の10対1。
「……当然の結果だ」 俺は淡々と告げた。
「適切な練度、適切な装備、適切な編成、そして適切な兵站。それらを組み合わせれば、勝ち筋を掴むは必定。胤貞、浄三。今回の軍制が『これからの戦』の基準となるだろう」
「はっ……」 “我らはまことに恐ろしいお方に仕えているのかもしれぬ。だが強き事はまごうことなき正義” 副将の胤貞は、畏怖の念を込めて深く頭を下げた。
俺は、立ち上がって、遠く安房の空を眺めた。 (里見義堯、お前は名将だ。だが、相手にしたのはただの六歳の子供ではない。近代的な兵制を取り入れた強力な『軍隊』を未来人が率いているのだ。
ずるい事この上ないが、俺も生きねばならんのでな。せいぜい足掻けよ)
その一方で、俺はこの勝利がもたらす副作用を考えた。
千葉が強くなりすぎると、西の巨竜・北条氏康を刺激するだろうな。
これまでは「従順な準臣下」として扱われていたはずの千葉家が、今や「警戒すべき不確定要素」へと格上げされる可能性が高まったのではないだろうか。
「胤貞。少々勝ちすぎたので、北条が何か仕掛けてくる可能性がある……まずは腹の探り合いになるだろうが対策を考えておかないとならないと思う」
「そうですな。北条としては千葉が大きくなりすぎるのは避けたいと考えるでしょう。して、どのような手を打ちまするか?」
「房総には口出し無用を宣言する。また、下総北部の梁田や結城領の切り取り次第もだな」
「それは・・・北条にとっては軽々には認め辛いのではありませぬか?却って恫喝されるのでは?」
「胤貞、そのように短慮ならば今はいなしておいて、いずれ飲み込んでしまえばよい。だがそうはならぬだろうな。北条氏康は傑物だぞ」
「では、婚姻ですかな?改めて臣従を求めて来るということになりましょうか?」胤清がはっとした顔で問う。
「さすがだな、胤清。俺もそう来るだろうと思うておる。拒むのは悪手であろうな。ゆえに、親族たらんとするならば、こちらの言い分を認めてもらおうとも考えておる」
「なるほど。道理でございますな」
「うむ。だが浄三、戦の準備は怠りなくせねばならぬ」
「御意。……して、殿。『肥料作り』の方は?」
「ああ、順調だ。臭いが酷いと作左衛門がぼやいていたが、この勝利を見れば納得するだろう。火薬は、これからの戦には欠かせないものだ」
俺には、勝利の余韻を味わう余裕などは微塵もなかった。
あるのは、次なる一手に備えなければならないという憂いだけだ。
これが戦国の世のならいというやつだな。
いや、ブラック企業かな?
生実野の戦い――――それは、古い戦国の世が終わり、あらたな政と新技術が導く次の世の幕開けを、轟音と共に告げるいくさであった。
お読み下さり有難うございます。
初投稿の素人ですので、稚拙な個所や至らぬ点が多々あるかと思います。
生暖かい目で見てくださると幸いでございます。




