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【第二章完結】楽園の魔法(マジック・オブ・エデン)〜魔法を破壊する闇魔法を使う少年と万能の光魔法を使う少女が出会い、世界を守る〜  作者: 中田 旬太
魔力増幅装置

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14-8 芥見が知り得ない理(前編)


「私は必ず妻と娘に………! 希美(のぞみ)優芽(ゆめ)を生き返らせて見せる………!」


 全身から魔力を迸らせ、周囲の電気ケーブルや工具や金属廃材などを生き物のように蠢かせる芥見。自身の願いを阻む三人を排除するために両腕を向ける。

 その瞬間、耀の全身を白い光が覆う。そして瞬く間に芥見の眼前まで迫り、光を纏った剣を振りかざしていた。


「なっ!?」


「せやっ!」


 現在、芥見は増幅(ブースト)装置の影響で魔力自体はAランク隊員の幸夫にも負けない量を誇っている。しかし、戦闘に関してはほとんど素人であり、耀の動きに全く対応できていない。突如として目の前にまで迫った耀に驚き固まるだけであった。


 そんな芥見に耀は容赦なく剣を振り下ろす。しかし、ガキンッと硬い何かに弾かれてしまう。その光景には剣を振り下ろした耀だけでなく、遠巻きに見ていた春と幸夫も驚きの反応を見せていた。

 耀の剣を弾いたのは透明な壁。その壁は芥見の周囲に球体型で存在しており、剣を弾いた際に光を反射してその全容を曝け出していた。


(弾かれた!? さっきまで何も無かったのに!)


 突如として出現した壁に驚く耀。今は魔力を感じるが剣を振り下ろす直前までは気配すらなかったため、意表を突かれる形となった。それでも奇襲を防がれたと分かると即座に距離を取り、春達の元まで下がる。


「すみません、防がれました」


「いや、良くやった。あのシールドを出させたのは大きい」


「なんだろう? 魔法………?」


「少なくとも芥見さんの魔法とは違うね」


「魔力で出来ているのは間違いない。だが、魔法を使った様子は無かったはずだ」


 耀の攻撃を防いだ透明な壁について考察する三人。そんな中、驚きから回復した芥見が両腕の装甲を見て小さく笑う。それを見た三人は透明な壁の発生源をなんとなくだが察した。


「あの装甲か………」


「どういう原理でしょうか」


「分からない。だが、無関係ではないだろう。他にも何か仕掛けがあるかもしれない。警戒は怠るな」


「「はい」」


 仕掛け、と言う時に幸夫は周囲を見渡しながら注意を促した。その仕草から芥見だけでなくこの部屋にもあるかもしれない、という意味が込められているのを二人は汲み取った。


「さて、これからだが―――」


「ゆっくりさせる気は無いぞ!」


 コソコソと会話を続ける三人を見て、芥見は対策を立てられまいと動き出す。両腕を三人に向けて掲げると、芥見の周囲で蠢いていたケーブルや工具などが波のように三人へ押し寄せる。


「「「っ………!」」」


 あのまましばらく固まってくれていたらと思っていたが、そう簡単には行かない。押し寄せる攻撃の波に三人とも顔を険しくさせると次の一手のために動き出す。

 春と耀はそれぞれ左右に分かれ、波を避けつつ芥見の左右へと展開。幸夫はそのままその場に残り、芥見の正面で攻撃を受け止める姿勢を見せる。


(分かれた………。こっちの意識を割いて隙を作るつもりだな。だがその程度なら………!)


 戦闘経験が浅い芥見だが、その分析力と頭の回転の早さから行動の意図を読み取る。そのうえで焦ることはなく、前方に向けていた攻撃の波を三つに分けた。


「「っ!」」


 枝分かれし、自分たちへと押し寄せるケーブルや工具や廃材を視界に捉える春と耀。三つに分散したことで波というほどではなくなったが、それでもその数は多い。二人は走る速度を落とし、迎撃の姿勢を見せる。


「はっ!」


「ふっ!」


「せやぁ!」


 幸夫は自身を中心として、魔法で作り出した無数の鎖を竜巻のように回転させて振るうことで飛来する工具や廃材などを次々に薙ぎ払う。春は拳に闇を、耀は剣に光を纏わせて撃墜を始める。その中で芥見は春の拳に纏った闇に目を見開いた。


「あれはまさか………!」


 芥見が驚愕する中、春は徒手空拳で工具と廃材を打ち砕き、叩き落していく。様々な角度から間を置かずに飛来する工具と廃材に対処していく身軽さと力強さは圧巻のものであった。

 一方、耀は剣で工具と廃材を薙ぎ払い、斬り伏せていく。だがその動きに春ほどの軽快さはなく、一部の工具や廃材が剣撃の隙間を抜けて耀へと迫る。しかし抜かりはない。剣で対処できなかったものは小さく展開された光の壁がその行く手を阻み、弾き返していた。その様もまた、春とは違った意味で目を奪われるものであった。


 しかし、両者ともに気を抜けない状況である。付け加えて、対処が難しい攻撃が一つあった。


「うおっ!」


「わっ!」


 二人とも頭上から鞭のように振り下ろされた電気ケーブルを回避する。そのケーブルが地面へと叩きつけられると、そのケーブルから僅かに漏れ出た電気が瞬いた。


(魔力でガードしているとはいえ、感電したら隙ができる)


(障壁とかで触れないように受ければ大丈夫だろうけど、剣で受け止めれば電気が伝ってくる。気を付けないと)


 剥き出しになった導線から放たれる電気。工具や廃材などの雑多な攻撃の中に混ざって繰り出されるそれに意識を割かざる負えなかった。しかし、中・遠距離戦を主体とする幸夫にはその懸念はなく、攻撃を防ぎながらもまだまだ余裕を持っていた。

 試しに二本。新たに鎖を生成するとそれを芥見に向かって放つ。しかし、耀の時と同じく見えない魔力の壁に阻まれ、その鎖が芥見に届くことはなかった。


(かなり硬いな。少なくとも小手先の魔法ではダメだ。だが、あまり派手に攻撃してあの装置を刺激したくはない。魔力の暴走を考慮すれば、春君の闇魔法以外での装置への攻撃も避けたい。そのためにはまず邪魔をしてくる芥見を倒すか、装置をどうにかするまでの一時的な無力化が必須。ならば―――)


 そこまで考えていると芥見の視線が春へと集中していることに幸夫は気づく。そして、春の頭上では先ほどまでなかった銃が天井の中から続々と姿を現し、その銃口を向けていた。


「春君!」


「っ!」


 幸夫に名前を呼ばれると同時に、春も自身で異様な気配を感じたのか頭上に目を向ける。そして、自身へと向けられた数々の銃を目にした。


「っ………!」


 その場に留まるのをやめて春は走り出す。天井から伸びる銃たちはその後を追い、銃口を春へと向け続ける。そして、その銃口が輝きを放ち始めると幸夫の鎖が次々とその銃身を貫き、破壊していった。

 そんな中、芥見は両手を春に向けて翳す。その動きを春も飛来する工具などを避けながら視界に入れる。その装甲に覆われた手のひらには一つ穴があり、まるで何かの射出口のように春には見えた。


「くっ………!」


 それに強い危機感を覚えると迎撃の姿勢を見せる。それと同時に幸夫から鎖が放たれ、攻撃態勢に入った芥見を強襲するも見えない壁がそれらを阻む。芥見の両手の穴が天井から現れた銃のように輝くと、次の瞬間には左手からのみ魔力弾が放たれた。


「んっ!」


 放たれた魔力弾を春は難なくその拳で破壊する。しかし、春へと襲い掛かっていた工具などの嵐が止んだわけではない。依然として襲い掛かるそれらにも続けて対処をする。その中で、幾重にも重なった攻撃により僅かな綻びが春に生まれてしまう。


(しまった………!)


 真っ直ぐに脇腹へと伸びる電気ケーブルを視界に捉える。しかし、今の春はそれに気づいても避けられる体勢にない。間違いなく感電すると春が覚悟した直後、ケーブルとは反対側から伸びてきた鎖が春の腹へ巻き付き、体を引くことで無理矢理その場から動かす。

 その際に春を包囲していた工具や廃材がいくつか当たるが、感電とそれによって生まれる隙と比べれば微々たるダメージであった。


「チッ!」


 望んでいない展開に舌打ちをする芥見。鎖に引っ張られる春に向けて温存していた右手の魔力弾を放つが、それも新たに伸びてきた幸夫の鎖に弾かれて終わる。そして、無数の鎖が再び芥見を襲うがまたもや見えない壁に阻まれていた。


「これも駄目か………」


(魔力弾を使っている最中でも、その直後でも壁が発動する。隙が無い。付け加えて間違いなく春君の魔法とその狙いに気付かれた。厄介だな………)


 見えない壁が発動しないタイミングを探ったが見つけられず、苦悩する。さらに露骨な春への集中攻撃。それは春の魔法の正体とその狙いに気付かれたことを意味していた。それにより作戦の難易度が上がったことを理解し、幸夫はさらに顔を顰めさせる。そんな中、危機的状況を脱した春は態勢を整えると幸夫へ感謝を伝える。


「助かりました!」


「礼はいい! 次が来るぞ!」


 幸夫の忠告通り、工具や廃材やケーブルは依然として春に向かっている。付け加えて、芥見も狙いを春へと定めている。この状況になんとも言えない息苦しさを春は覚えるのだった。





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