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【第二章完結】楽園の魔法(マジック・オブ・エデン)〜魔法を破壊する闇魔法を使う少年と万能の光魔法を使う少女が出会い、世界を守る〜  作者: 中田 旬太
魔力増幅装置

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14-7 『俺達』があなたを止めます!(後編)


 扉を壊し、その奥の通路へと侵入した春、耀、幸夫の三人。先程の整備が行き届いていない洞窟のような通路と違いそこはしっかりと金属板等で壁面や床が補強され、照明も設置されて整備が行き届いていた。それにより三人の走る音がより鮮明に響き渡るが、やがてその反響音が消えていく。代わりに工場のような機械の駆動音が三人の耳に届く。それと同時に通路の先にある広い空間とそこに立っている白衣の人物を視界に捉える。それが誰のか、三人には既に分かっていた。


 そのまま通路を抜け、広い空間に出ると足を止める。部屋の中はとても広く、プロ野球のフィールドと比べても遜色は無い。部屋の隅々には三人には到底理解が出来ない複雑そうな機会が立ち並ぶ。しかし、部屋の奥の物だけは明らかに異質であった。

 土台のように大きく床が円形に突出しており、そこへは数多くのケーブルや配管が繋がっている。円形台には七芒星の魔法陣が描かれ、七芒星の先には七本の柱が立っていた。装置というよりは何かの儀式に見える。そして何より目立つのはその柱たちの中心で空中に浮かぶ、発光する巨大な“魔力の球体”。春達が目標としていた魔力源だと察するには十分であった。


「………装置の起動からまだ四十分程度。それでここまで来るとは流石だな魔法防衛隊」


 部屋の中心に立っていた男―――『芥見蓮』は魔法防衛隊の健闘を褒め称える。しかし、その表情と声は残念そうで言葉とは合っていない。芥見は続けて春と耀の二人へと視線を向ける。


「最初に監視モニターで君達の姿を見た時は驚いたよ。あの日、墓参りで出会った君達がここまでやって来るなんて。運命などというものを信じそうになったのはこれで三度目だ」


「芥見さん………」


「………!」


 冗談を交え、儚げで苦しそうに笑う芥見。その姿に事情を知る春と耀の二人は胸の奥が締め付けられるような苦しさを覚える。そして堪らずに大声を張り上げる。


「もうやめましょうこんなこと! 今ならまだ間に合う!」


「………いいや、止めない」


「どうして!? “エデン”なんてあるかも分からないのに!」


「あるかもしれないっ! それだけで賭けるには十分なんだっ!!」


「この実験で多くの人が、いや。それ以前に増幅(ブースト)装置のせいでどれだけの人が傷ついたと思う! こんなやり方で奥さんと娘さんが生き返ったとして喜んでくれるのか!? 喜ぶような人達なのかっ!!?」


「いいや違う! 二人は優しかった! 他者を犠牲にして喜んだりなど決してしない!!」


「「だった(それな)ら―――!」」


「それでも私は会いたいっ!!!」


 一際大きな叫び声が二人の声を遮る。その切実で悲痛な願いは室内で木霊し、それを聞いていた三人の心に染みていく。そして、芥見が流す大粒の涙に春と耀は胸を痛めた。


「間違いだなんてことは初めから分かっている! だが………、なら私の中の二人への愛は! 悲しみはどうすればいい!? どうすれば消えてくれる!!? もうこれしか無いんだ止まれないんだ!!!」


「芥見さん………!」


「………………」


 何度も叩くように胸を押さえ、泣きながら必死に自分の想いを吐き出す芥見。間違いだと分かっていても止まれない。真っ直ぐな愛ゆえに突き動かされる悲しみを、残酷な現実をその目に焼き付けた耀は今にも流れ落ちてしまいそうなほど目尻に涙を浮かべる。ここまで説得を僅かに期待して静観していた幸夫も思わず目を伏せてしまう。

 そんな中、春もまた苦しそうにしながらもそれを打ち破るように口を開く。


「なら、どうしてあの日。俺達に『頑張れ』なんて言ったんですか?」


「っ!! ………どういう、意味だ?」


「あの日俺達が魔法防衛隊員だって知った時、なんで笑ったんですか? なんで、頑張れなんて言ったんですか?」


「………ただの気まぐれだ」


「いいや違う。あの日、あなたは助けてほしいって思ったんだ」


「………なに?」


「自分で言ったんだ。間違いなのは分かってる、止められないんだって。それってつまり、誰かに止めて欲しいってことなんじゃないんですか?」


 芥見の想いを聞いたうえで。否、聞いたからこそ春はまだ止められると、助けられると信じていた。芥見が吐き出したあの想いこそが、あの日の言葉と笑顔こそが芥見の本当の願いではないのかと。


「………違う」


「違わない」


「違う! 違う違う違う違う違う違う違うっ!! 断じて違うっっっ!!!!!」


 春の推察を聞くと芥見は取り乱したようにそれを否定する。まるで自分を守るかのように。

 そして、キッと鋭い目つきで三人を睨むと首の後ろに手をまわし、カチッと何かのスイッチを押す。その瞬間、芥見の魔力が爆発的に膨れ上がったのを三人は感じ取る。


「芥見さん!」


「まさか………!」


 春と耀の二人が驚きに目を見開くと芥見はそれに答えるように襟で隠れた首元を見せつける。そこにはこの数日間で何度も見て来た増幅装置が巻かれていた。

 それを目の当たりにした二人は悲しそうに目を細め、芥見のことを見つめる。しかし、そんな二人の姿を見ても芥見の心は揺らがなかった。


「私は必ず二人を生き返らせてみせる! それを邪魔するというのなら、子供といえど容赦はしない………!」


「………分かりました」


 止まらない。少なくとも自分自身では。それが分かった春は拳を構え、それを芥見へと向ける。


「自分で止まれないのなら俺が………。いや、『俺達』があなたを止めます!」


「うん!」


 春の言葉に力強く頷くと耀は鞘から剣を抜き、それを構える。

 芥見の想いを受け止め、胸を痛めた二人。だからこそ倒すためではなく、救うために立ち向かう決意を固めた。そんな真っ直ぐな姿に幸夫は胸を熱くさせ、不謹慎だと思いながらも笑みを抑えることができずにいた。しかし、春はそんなことなどつゆ知らず、芥見を見据えたまま幸夫へと謝罪の言葉を口にする。


「すみません支部長。一刻を争う事態なのに………」


「いや、私も説得の可能性に賭けたから静観していた。謝ることはない。そんなことより、あの後ろの装置を一刻も早く止めるぞ」


「「はい!」」


「出来るものならやってみろ!」


 幸夫の言葉に芥見はより一層闘志を燃やす。両手を天井に向けて伸ばすと、天井から飛んできた機械のアームグローブがその両腕に装着される。そして芥見の周りを守るように電気ケーブルや工具や廃材などが浮遊し、蠢いていた。

 その姿に三人はより警戒心を高め、体に纏う魔力を力強く迸らせる。それは芥見も同様であり、Aランク隊員の幸夫に負けないほど力強い魔力が全身から放たれていた。


「私は必ず妻と娘に………! 希美(のぞみ)優芽(ゆめ)を生き返らせて見せる………!」





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