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【第二章完結】楽園の魔法(マジック・オブ・エデン)〜魔法を破壊する闇魔法を使う少年と万能の光魔法を使う少女が出会い、世界を守る〜  作者: 中田 旬太
魔力増幅装置

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15-4 頑張って、くれ………!!!(中編)


 春と耀による闇と光の“合体魔法”。限界を超え、持てる力の全てをぶつける思いで何とか暴走する魔力を消滅させることに成功した。


「「はぁ、はぁ………」」


 大量の汗を流し、呼吸を荒くさせる二人。その目はしっかりと前を向いており、暴走した魔力とそれを蓄えていた装置の跡を捉えていた。暴走した魔力と二人の合体魔法の衝突により、その原型は全くと言っていいほど残っていない。鉄製の床が大きく削られ、何かが爆発したような焼け跡と破片が散らばるのみ。魔力の消滅に加え、装置の破壊を達成したことに間違いなかった。

 春は徐々に笑みを浮かべ、目標の達成に歓喜の声を上げる。


「やった! やった!! 耀―――」


 その喜びを分かち合おうと春は左隣を向くがそこに耀の姿は無い。そして、耀を探して後ろへと振り向くと、未だにうつ伏せで倒れている芥見に寄り添う耀の姿があった。

 表情は見えないものの、どこか焦っているような様子にとある光景が脳裏に浮かぶ。出血が止まっていたにも関わらず、回復魔法による治療を続けようとしていた。そのことに言いようのない不安感を覚えた春はたまらず耀の傍へと駆け寄る。幸夫も同様のことを思ったのか、耀と芥見の元へと駆けて行った。


「魔力が足りない………! このままじゃ………」


「耀? どうした?」


「一体何が………」


 二人が傍へと駆け寄ると耀は再び芥見へ回復魔法をかけていた。しかし、普段よりも放たれている光が弱々しく、その疲労が伺える。それでも回復魔法をかけ続けている耀の姿に二人も焦りを覚える。

 そして、耀は二人の問いに対して悔しそうに口籠らせながら答える。


「………(どく)です」


「毒って、まさか………!」


「あのナイフ、刃に毒が塗られていたんです。傷口は塞がったけど、まだ毒が………」


 転人が芥見の背中へと突き刺したナイフに毒が塗られていた。刺し殺せなくても毒で殺す算段だったらしい。その非道な行いに怒りが湧き上がる春だったが、今は芥見への心配がそれを上回った。


「耀って毒とかも治せたよな!?」


「うん。でもケガより時間も魔力も使う。時間が経って毒も回り始めてるし、何より今の私の魔力じゃ………」


「っ………!」


 耀の持つ魔力の量は依然と比べれば確実に増えた。しかし、それでも合体魔法で暴走した魔力を消滅させるのにほとんどの魔力を消費してしまった。もう、芥見の毒を消すだけの魔力が残っていなかった。

 己の無力さを呪う耀の悔しそうな表情に、春も悔しそうに握り拳を作る。すると、何かを決意した表情で両手を翳して回復魔法をかけ続ける耀の両肩に手を置く。突然肩に手を置かれたことに耀は驚き、慌てて春を見上げる。


「春!?」


「残りの俺の魔力も全部耀に渡す! 合体魔法ができる俺達なら魔力の受け渡しも可能なはず!」


「「っ!」」


 魔力の譲渡。可能かどうかで言えばできない事は無い。しかし、魔力の資質は人によって異なり、例えるならば血液型と輸血のようなものである。付け加えて魔力の譲渡は輸血よりもシビアであり、受け渡しが可能な相手が見つかることはそうそうない。だが、春の言う通り合体魔法ができる二人ならば魔力の譲渡もできる可能性は高かった。事実として、十六夜と篝は魔力の受け渡しが可能であった。


 そこに僅かではあるが希望を見出し、春は残る魔力の全てを耀に渡そうとする。そのとき、再び春達を地震のような大きな揺れが襲った。


「な、なんだ!?」


「また地震!?」


「まさか………!」


 突然の揺れに困惑する春と耀。ただ一人、幸夫だけはその揺れの正体を察し、驚きと焦りに大きく目を見開いた。







「『いやー、まさかあれだけの魔力をどうにかできるとは。予想外も予想外』」


 春達が突入したアジトのある山の麓。そこの生い茂る木々の中へと身を隠しながら山を見上げる燕転人。予想外とは言いつつも、その声は余裕に満ちていた。

 そして、その手の中にはスマートフォンのような液晶端末が握られており、画面には赤い発光とともに『爆破』という不穏な文字が映っていた。


「『まあ、これで機材やアジトはどうにかなる。あとは魔法防衛隊や芥見も生き埋めにできればいいが、さすがに高望みか』」


 そう呟いた後、転人は春達の前から消えた時のようにその場から居なくなるのだった。







「おそらくだが爆弾で壁や天井を崩してこの基地を山の中に埋めるつもりだ」


「埋めるって………!」


「まだ“フロンティア”の奴らだって残ってるのに!」


「捕まれば自爆するような連中だ。そんなことは関係ないだろう」


「っ! なんてタイミングだ!」


 この基地を山に埋めるという幸夫の考察に春と耀は驚く。仲間を平気で犠牲にするやり方にも憤りを覚えるが、ミシミシと音を立てて崩壊を始める室内に二人は焦り始めた。


「まずい! もう崩れ始めた!」


「どうしよう!?」


「落ち着け二人とも! 異界(ボイド)へなら逃げられる!」


「ああ、そっか! 春!」


「了解!」


 幸夫の助言で春は急いで異界への穴を開けるため、何もない空中に手を翳す。さすがと言うべきか、手を翳すとすぐに異界への穴は開く。それに三人は安堵の笑みを浮かべた。


「よし!」


「さすが!」


「では急いで―――っ!」


 三人が安堵する中、一際大きな音が室内に響き渡る。それがこの場所が限界を迎えたものによるものだと察するのに時間は掛からなかった。幸夫は急いで芥見に魔法で作り出した鎖を巻き付けると、二人に声を張り上げて命令する。


「飛び込め! 早く!!」


「「は、はい!」」


 有無を言わさぬ幸夫の気迫。そして幸夫への信頼から二人は急いで異界への穴へと飛び込む。その後に続くように幸夫も鎖で持ち上げた芥見を引き連れ、穴へと飛び込む。そこから間を置くことなく春達が居た実験室は崩壊し、土や岩に埋め尽くされる。そして、脱出のために異界へと飛び込んだ春と耀は穴を超えた先に広がる光景に顔を青ざめさせる。

 穴を超えた先は間違いなく異界。しかし、地面からは十五メートルほど空へ離れていた。


「やばっ!」


「高い!」


 異界と現世の地形は一致していない。現世の平坦な陸地から入っても、異界では断崖絶壁のことがある。その逆も然り、穴を通る前の安全確認は重要となる。しかし、今回は緊急事態のために安全確認が一切できなかった。なんとも酷い不幸の連続に二人は表情を険しくさせ、落下先の地面を見つめる。

 そこへ二人に続いて幸夫が穴から飛び出す。そして、即座に現状を把握し、焦ることなく自分達の真下に無数の鎖を張り巡らせた。


「うおっ、と」


「へぶっ!」


 突如として生まれた無数の鎖による足場。春は驚きながらも片足を着いてバランスを取り、耀は落下することを想定していたせいか鎖の足場にダイブするように倒れる。幸夫は自分が作り出した足場のため、何事も無いように降り立つ。

 そして、春と耀は鎖の足場を見て危機を乗り越えたことを察すると、幸夫の傍で倒れている芥見へと駆け寄った。


「「芥見さん!」」


「うぅ………」


 顔色は悪く、意識も朦朧としている。容体は毒のせいで悪化の一途を辿っていた。再び回復魔法による治療を耀が始めようとしたそのとき、周囲に異変が起こる。


「うおっ!」


「げっ!」


「たっか!?」


 春達の周囲に続々と魔法防衛隊員たちが姿を現し始める。その隊員たちは春達と共にアジトへと突入した面々であり、崩壊するアジトから脱出するために異界へと逃げ込んだ者たちであった。

 上下左右、様々なところから姿を現した隊員たち。皆、激しい戦闘のせいか負傷しており、魔力がほとんど残っていないものや意識があるか定かではない者たちも多く見受けられた。そんな隊員たちに気付いた幸夫は表情を険しくさせ、鎖による救出を始める。


「くっ………」


 その数と広い範囲に幸夫は小さく苦しそうな声を漏らすが、それでも地面へと落下しそうになる隊員たちを鎖で救出することに成功する。そして、傍にいる春と耀に告げた。


「すまないが君達を降ろす余裕がないっ。地面まで鎖で道を作るから降りられるかっ?」


「分かりました。耀、俺が芥見さんを背負う。動きながらでも回復魔法は使えるか?」


「大丈夫!」


「よし、それでいこう」


「ここは異界(ボイド)だ。十分に警戒してくれ。自力で降りられない者たちを降ろしたら私も後を追う」


「「了解!」」


 二人はそう力強く返事をすると芥見を連れ、地面へと降りて行った。





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