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【第二章完結】楽園の魔法(マジック・オブ・エデン)〜魔法を破壊する闇魔法を使う少年と万能の光魔法を使う少女が出会い、世界を守る〜  作者: 中田 旬太
魔力増幅装置

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15-3 頑張って、くれ………!!!(前編)


「『せいぜい頑張れ。それじゃあな』」


「っ! 待て! お前にはまだ―――」


 装置に溜め込まれた膨大な魔力が暴走を始める。春は逃げようとする転人を捕えようと走り出し、右手を伸ばす。しかし指先が触れる前に転人は姿を消し、伸ばした手は空を切る。春は悔しそうに何もない右手を握り拳に変え、苛立ちのままに言葉を吐き捨てる。


「クソッ!!!」


「春君! 奴のことは後回しだ!」


「っ、はい!」


 幸夫の呼びかけで我に返った春は急いで幸夫と耀の元へ戻る。幸夫は春が戻ってきたのを確認すると未だに芥見の回復を続ける耀へ声をかける。


「白銀君!」


「待ってください! まだ………!」


「いや………もういい」


 回復魔法による治療を続けようとする耀だったが、芥見がそれを止めるように言う。弱々しいその声からまだ万全でないことが分かるが、出血は止まっているため窮地は脱したように見える。それでも耀は治療を続けようと食い下がる。


「でも………!」


「装置を止めるには、君の力も………要るのだろう。なら………私のことなど、気にするな」


「芥見さん………」


「身勝手な………願いだが、頼む。あの装置を………止めて、くれ………!」


 止めてくれ。三人にそう懇願する芥見は悔しそうに歯を食いしばり、大粒の涙を流していた。

 あれだけ娘と妻を思い、決死の覚悟で立ち向かってきた芥見。そんな彼が、長い時間をかけて作り上げてきた希望の終幕を自ら懇願した。一体、そう頼むまでにどれだけの葛藤があっただろう。どれだけの絶望を味わっただろう。どれだけの覚悟を必要としただろう。

 それらは全て、多くの人を巻き込み、身勝手に傷つけた芥見の自業自得。


 それでも、春達はその願いを切り捨てることなど出来なかった。


「………………、春!」


「ああ! やるぞ耀!」


「うん!」


 耀は芥見の治療を中断し、春と共に装置の前へと駆け寄る。その後ろに幸夫も続き、何か不測の事態が起こった時のために傍に控える。


「二人とも頼んだぞ!」


「「はい!」」


 幸夫の激励に二人は力強く応える。そして、目の前で暴走を続ける装置の魔力を見据える。

 きれいな球体だった魔力は常に不規則に形を変え、今にも内側から爆ぜてしまいそうな印象を受ける。魔力の爆弾、そう言っても過言ではなかった。


「耀」


「うん」


 これを止めるための方法は既に決まっている。そして、言わなくともそれを分かってくれている。言葉にしようのない信頼と確信がそこにはあった。

 耀は右手に持つ剣の柄を鍔付近のところまで握りなおす。そして、空いた柄の後ろの部分を春が左手で握る。そして、その剣に二人は己が魔法を宿す。


「「………!」」


 闇と光が一つの剣に混在する。それは以前にも起こった現象であった。


「光と闇の“合体魔法”か………!」


 闇と光の合体魔法。かつて、Sランク喰魔(イーター)の魔法にも打ち勝った魔法。二人にとっては手繰り寄せた奇跡の産物であり、今この場に必要な力だと確信していた。しかし………………。


(ダメだ………!)


(混ざらない………!)


 二人の持つ剣には確かに闇と光が宿っている。しかし、ただそれだけ。以前のように闇と光が交互に波打つことも無ければ、迸る強大なエネルギーの力強さが無かった。


(落ち着け、落ち着くんだ)


(思い出すんだ。あの時の感覚を)


 焦る二人。だからこそ心を落ち着かせ、以前の感覚を鮮明に思い出そうとする。脳に宿る記憶としてではなく、全身に宿る感覚の全てを。


「「――――――」」


 目を閉じ、呼吸を整える。そして、自身が握る剣を感じ取る。そこに宿る自身の魔法を、そこから相手の魔法を、相手の魔力を、その全てを感じ取ろうとする。


(力むな。無理矢理混ぜるな)


(混ぜ合わせるんじゃない。溶かして一つにする)


 ゆっくりと、ゆっくりと確実に互いの魔法を重ね合わせる。それは剣に確実な変化を与えており、闇と光は交互に波打ち始める。綺麗な形をしていないが、刃としての形を作り始めていた。

 しかし、魔力の暴走は二人の合体魔法の完成を待ってはくれない。魔力の球体の形状変化はより激しさを増し、強い光も放ち始める。明らかな状態の悪化に幸夫は静かに冷や汗を流す。


(二人とも急いでくれ………!)


 言葉にはしない。この状況で二人の集中を乱さないように心に留め置く。そして、祈るように二人を見守り続けた。


((まだ………まだ………))


 タイミングを計る春と耀。恐る恐るではなく、全力を注ぎこんでも大丈夫なタイミング。魔法の核心とでも表現すればいいだろうソレを掴むため、神経を尖らせる。そして、そのタイミングは唐突に訪れた。


「「今だ!」」


 二人は同時に魔法の出力を最大限にする。すると、闇と光の刃は瞬く間に膨張し、収束するとなんとか剣の形に収まる。先ほどまでとは違い、元の剣の三倍近くに膨れ上がった闇と光の剣はそのエネルギーを力強く迸らせる。

 Sランク喰魔と対峙した時と同じ、闇と光の合体魔法が完成する。そのことに思わず笑みがこぼれそうになった瞬間、装置の魔力も限界に達する。


「「「っ!」」」


 形状変化を続けていた魔力の球体が一際小さく収束し、強い光を放つ。これまでとは全く違う変化に爆発を予期した三人はそれを阻止するための行動に移る。

 幸夫は周囲に鎖を出現させ、万が一のために備える。最悪、装置そのものを破壊することでの無力化と暴走する魔力を鎖で覆うことでの被害軽減を図ろうとする。それと同時に、春と耀が剣を振り下ろす。


「「ハアアアアアアアッッッ!!!」」


 ありったけの力を込めて剣を振り下ろし、闇と光の剣を暴走する魔力の球体へとぶつける。外部からの刺激により、暴走する魔力は爆ぜる。しかし、それを覆う闇と光が拡散しようとする魔力を消滅させることで押し留めていた。


「おお………! これなら………!」


 膨大な魔力の爆発を防げる。そう思った幸夫は思わず笑みを浮かべるも、すぐにその笑みは消え失せる。少しずつだが、闇と光が暴走する魔力に押され始めたのに気付いたからであった。


(まずい………!)


(このままじゃ………!)


「暴走する魔力が尽きるより先に、二人の魔力が持たない………!」


 押し留めるだけでは先に春と耀の魔力が尽きる。そのことに三人は気が付き、焦りを募らせてしまう。しかし、同時に春と耀は自分達が成すべきことを理解する。


(俺達の魔力が尽きる前に………!)


(暴走する魔力全てを………!)


「「消し飛ばす!!!」」


 より一層、二人は剣に力を込める。それに呼応するように合体魔法の輝きが増し、拡散しようとする魔力を抑え込んでいく。しかし、そう簡単には行かず、暴走する魔力は闇と光に抗い続けていた。


「「負けるかああああああっっっ!!!!!」」


 限界を超え、ここで全てを出し切るつもりで二人は剣へと更に力を伝える。その想いと力は魔法へと現れ、暴走していた魔力の全てを闇と光の中へ飲み込む。そして、まるで散りゆく花火のように一際強い輝きを放つと、暴走する魔力は闇と光の中で消滅するのだった。





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