11 ガーネット 南国の夢②
「キタワヨ! サウスドリーム! 私達はビューテイフルドリーマーよ!」
「いや、ガーネットテンション高すぎだから」
遂に来たわ。ここが南国の楽園、サウスドリーム。劇場にリゾート施設、レジャー施設にカジノと、同じトルクメニア国とは思えない観光都市だ。
「わぁ~、たくさん人が居ますねぇ~。何から見ましょうか~。私いま、ワクワクしています」
「パフェはあまりの興奮で離れないよう気をつけて下さいね」
見慣れない建物や、華やかな風景を目の前にして、パフェは目を輝かせている。横でハルキが心配そうに彼女を窘めていると……。
「大丈夫です、ハルキ様! 私はハルキ様へ欲情する事はあっても、ハルキ様と離れる事は決してありませんから!」
「はいはい、わかりましたパフェ」
迫る視線を冷静に回避しつつ、ハルキがガイドブックのような本を眺めている。
「中央より西へ行くと、レジャー施設が併設しているホテルリゾート。飲食街を抜けて、カジノはここから南ね。ほら、あそこに見えるドリームタワーなんか、夜には夜景も一望出来る観光名所になっているわ」
トルクメニア歴が長い私が、サウスドリーム初体験のハルキとパフェに解説する。
「さすが、ガーネットお姉さん! お詳しいですね!」
「今日はひとまずホテルにチェックインして、晩御飯を食べた後、カジノの流れでいいのかな?」
今日はその流れが一番でしょうね。レジャー施設は様々なアトラクションもあり、それだけで一日が終わってしまうため、またの機会にした方が良さそう。他にも南国フルーツや、食べ物が豊富に採れる農場や大森林も併設している東地区、カジノの向こう側には海が見えるリゾートまである訳だから、この都市は本当に盛沢山だ。
「ハルキ様、私もう、このまま此処に一生住みたいです。一緒に住みましょう!」
「さりげなく働きたくないでござる発言と同居発言を同時にしないで下さい、パフェ」
爛々とした瞳で周囲を見渡す王女様は今地味な格好に変装をしているため、傍からは王女様とは分からない。この様子なら、初めてのサウスドリームに興奮した少女に見えるでしょうね。
「あ、ガーネットさん今、私を子供扱いしたでしょう?」
「な……そんな事はないわよ?」
「私これでも十六歳で成人してますからねっ!」
「そうね、パフェは大人の女性ね」
黒髪を撫で撫でしてあげると『えへへ……♡』と笑顔になるパフェ。ふふふ、王女様は単純ね。
ホテルでチェックインをした後、レストランで食事。旅の疲れを癒すエールが骨まで染みわたるわね。リコピーナとトルクサラミ、プラチナチーズをふんだんに使ったドリームピッツァも中々の美味しさだったわね。
「さぁ、この勢いでそのままカジノへ向かうわよ!」
「お姉様ぁ~♡ どこまでもお供しますわぁ♡」
「ちょっと、ガーネット、パフェも! お酒飲んだ状態で大丈夫?」
もう、パフェを護衛しないといけないからという理由で、リゾートに来てお酒を飲まないなんて、ハルキは本当真面目ね。私がハルキの左腕、パフェが右腕に腕を絡ませた状態で、星屑を集めた星街灯に囲まれた夜の眠らない歓楽街を抜け、カジノへと辿り着く。
「夢を叶える舞台、ドリームカジノへようこそ!」
燕尾服の男性に促され、キラキラと煌めく大きな建物へと入る私達。騎士の格好をした者や、スーツ姿の貴族らしき者。ドレス姿の女性に冒険者とたくさんの利用者で賑わっている。
スレンダーな兎耳族と燕尾服のエルフまで、ディーラーやホールスタッフも選りすぐりな印象ね。ハルキが傍に居なかったらイケメンエルフを口説いていたかもしれないわね。
「皆さん、凄い格好ですね……」
「パフェには刺激が強すぎたかな?」
「こらハルキ、私が傍に居るんだから、バニーばっかり見ない!」
ハルキを肘でつついたところでラピス硬貨を夢コインへ換金。銅貨五枚で一コイン (注:地球のレートで五百円=一コイン)。いつもならば、節約するところだが……。
ふふふ、今、私にはエレメンティーナを救った際に、女王から貰った報酬があるのよ。
「さぁハルキ、思い切り遊ぶわよ!」
「ガーネット……報酬使い切らないでよ?」
もう、ハルキは真面目ね。ルーレットにポーカー、バカラ、ジャックポット。極創星世界らしい、星座が描かれたカードゲームもあったりする。でも、まずはスロットよね。
「さぁ、パフェちゃん。カジノの遊び方を教えるわよ!」
「了解致しました、お姉様! いざという時はスミスから資金をふんだくります」
「いやパフェそれ……国のお金使う発言みたいに聞こえるからやめて」
ハルキが冷静に突っ込んだところで、まずは十コインスロットで資金を増やす……。
……筈だったんだけど。
「わわわ、ハルキ様ーーこれどうすればいいんですか!」
「ぎゃあああ、パフェ射手座マークが揃ってるよ!」
どうしてこうなった訳? 私のコインがどんどん無くなっていく中、パフェの台だけ光続けているんですけど!
「ガーネットさん、楽しいですね、カジノって!」
「す、凄いなパフェ……ビギナーズラックとは言うけど、才能あるんじゃない?」
余りの凄さに周囲も驚いて彼女の様子を見ている。ハルキは途中でリタイア。私は諦めたらそこで試合終了の精神でやって来たけれど、まさかこんな展開になるとは……。
「ははは、パフェ、実はね、その台はよく出る台だから、あなたに譲ってあげたのよ」
「はぇえ!? そうだったんですか! ありがとうございますガーネットさん!」
(ちょっとハルキ、細い目で私を見ないの……酔いが醒めちゃうじゃないの!)
(いやぁ~~ガーネット、今の発言はちょっと~~)
意思伝達で会話する私とハルキ。まぁ、王女様が楽しんでくれたのなら、私は本望よ。
「そこのお嬢様、ついておりますね。その運を持って、よかったら我が自慢のディーラーが誇るルーレットへ挑戦してみませんか? ほら、ちょうど一席空いたところなんですよ」
執事姿の男性がお辞儀をしつつ、促した先には、明らかにお金持ちが集まっていそうなルーレットテーブルがあった。ちょうどお腹に脂肪を溜めた貴族が悔しそうな表情で席を立つ様子が見えた。
(もしかしたら、今のパフェなら、凄い事になるかもしれないわよ、ハルキ)
(可能性はあるかもしれないね。ちょっと行ってみようか)
「パフェ、ルーレット、やってみる?」
「はい、私。是非一度やってみたいです♡」
容器いっぱいにコインを抱え、満面の笑みを浮かべる王女様。私達はルーレットテーブルへと向かう。
「ようこそ、ドリームルーレットへ。さぁ、一攫千金を目指してショータイムです」
イケメンエルフのベットの掛け声で、プレイヤーがチップを置いていく。ルールはあちらの世界のものとほど同様だ。
「これ……どうしたらいいんですか?」
「パフェ、いや、俺もこういうの経験ないから……」
「最初は私がやるわね。1~36の特定の数字賭けが一番倍率が高いんだけど、赤と黒の色賭けや、奇数と偶数賭けなんてものもあるから、だんだんと狙っていく事をお薦めするわ」
そういうと私は赤へチップを十枚置く。やがて銀の弾は赤の18へと入る。
「やった! 当たりですよね、ガーネットさん」
「ざっとこんなものよ!」
チップ二十枚を受け取る私。次のベットが始まり、パフェが回るルーレットを見ている。
「此処です!」
「え!? パフェちょっと!」
パフェが置いた場所は黒の25へチップ百枚。
「おぉ!」
会場からどよめきが起こる中、弾は黒の25へと吸い込まれるのだった。




