Ⅳ お姉さんの遊戯 10 ガーネット 南国の夢①
「ハルキ様、ガーネット様。お帰りなさいませ! この度は私達エルフの国を救っていただきまして、ありがとうございました」
いつものワンピースとエプロン姿で私とハルキを出迎えるお隣さんのエルフ、ルルシィさん。
あの日、エルフの国であるエレメンティーナは、蠍座の加護――ルルーシュと、その守護者オパールの陰謀により、危機に瀕していた。
いち早く危機を察知したエルフの女王メーテリアは、隣国アルシューン公国へ乙女座の加護――カルア・ヘルメスを派遣。此処、トルクメニア国にはルルシィさんを通じて、私達へ依頼をして来たという訳だ。
「いえいえ、これくらいどうって事ないですよ、ハハハ」
「ちょっとハルキ、鼻の下が伸びてるわよ……!」
ハルキの脇腹を肘でつつく私。
くっ……この金髪エルフの全身から醸し出される大人の色気は何……私だって大人の芳香では負けないんだから……。てか、男は皆メロン好きな訳? 私のハルキに限ってそれはないわよね?
私の鋭い視線に気づいたのか、苦笑しつつ目を逸らすハルキ。ルルシィさんは仲のいい恋人同士の茶番と勘違いしているのか、私達のやり取りを微笑ましく眺めている。
「本当、お二人とも仲がいいですね」
「あら、ルルシィさん分かる? それほどでもあるわよーーオホホホホ」
「ガーネット……笑い方可笑しいから……てか、近いから!」
ハルキの反応をひと通り楽しんだ後、ルルシィさんへ悪意の全貌を報告する。彼女は時折頷き、表情を変えつつ、私達の話を聞いていた。
「そうでしたか。思っていたより危険なお相手だったんですね。大変な依頼をお受けいただきまして、本当にありがとうございました」
「いいのよ、ルルシィさん。それに女王様から報酬もたくさん貰ったしね」
そうそう、あの後、メーテリア女王より依頼の報酬も貰ったのよね。これで暫くは生活に困らないで済みそう。
「それはよかったです。この後、お城へ行かれるんですよね? お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「ありがとう、ルルシィさん。行って来るよ」
「今日は招待されている事だし、白銀鷲で正面突破しましょう」
普段正面から未確認飛行物体が城へ突撃した場合、城の警備をしている騎士団の兵士達に撃墜される可能性があるのだ。今日は国をひとつ救ったという事で、女王様直々の招待。エルフの女王に続いて、母国の女王様にまで呼ばれる事になるとはね。
ルルシィさんと別れ、白銀鷲で一路トルクメニア城へと向かう。だんだんとお城が見えて来ると、王宮のバルコニーからの何かに気づく私とハルキ。
「なぁ、ガーネット。どう考えてもパフェからの熱視線が熱いんだけど、どうしたらいい?」
「そんなもの適当に流しておけばいいでしょう、そもそも王女様は最初からハルキにぞっこんなんだから」
キラキラキラキラ……と効果音が出そうな輝きでバルコニーから私達を見つめ、大きく手を振る王女様。これはまるで星屑の眼差しね。王宮のバルコニーへと降り立ち、王女様と再会を果たす私達。
「ハルキ様、ガーネットさん、お帰りなさいませ! 本当に無事でよかった!」
ご主人様の帰りを待っていた子犬のように駆け寄るパフェ。
「パフェ、出迎えありがとう。元気そうで何より」
「パフェちゃんただいま。無事に還って来たわよ」
パフェちゃんは不安だったのか、ハルキの胸へと飛び込み、今にも泣きそうな表情だ。普段ならハルキに寄り着く女の子はメイちゃん以外排除したくなるところだけど、今日だけは特別ね。
「ハルキの胸を借りていいのは今日だけですからね、王女様」
「もう、ガーネットさんのいじわる♡」
この後、私とハルキは無事にトルクメニア国の女王様、エリス・トルクメニアンとの謁見を果たす。一国を救ったという今回の功績は女王様の耳にも届いたようで、ハルキに至っては、女王様から騎士団への勧誘まで受けていた。
この世界は王族や貴族などの階級制度が存在する世界だ。そんな中、あの女王から騎士団への誘いまであるとは想像もしていなかった。今後ハルキの存在が、少しずつこの国を変えるなんて事もあるかもしれないわね。
その夜、ようやく我が家へと戻って来た私とハルキ。エルフの国で貰った葡萄酒で乾杯する私達。
「ハルキ、本当にお疲れ様~~」
「ガーネットもね。今回はガーネットが居なかったら俺はあの舞台へ立つ事も出来なかったから」
どうやらハルキは、ルルーシュやオパールの異常なまでの妖気に、私の援助力が無ければ対抗出来なかったと思っているみたい。エルフィナチーズをひとかけ口に含み、私はハルキを讃える。
「何を言ってるのハルキ。ルルーシュが持つ加護を跳ね除けて、メイちゃんと彼女を倒したんでしょう? それに私の援助力は、あくまで援助よ。その人が持つ潜在能力を高める力なの。ハルキの力があってこそ発揮されるものよ?」
「俺がピンチの時、脳裏にガーネットとメイの声が聞こえたんだよ。あれがなかったら、俺はあのまま死んでいたかもしれない」
そっか。追い込まれたハルキの中で、何かが起こったのかもしれないわね。メイちゃんの声は余計だけど、たまにはハルキも良い事言うじゃない。そのままワイングラスの葡萄酒を飲み干し、私はハルキへ微笑む。
「そんな危機的状況で私を思い出してくれたなんて嬉しいわねぇ~、ハルキ」
「もう、揶揄わないでくれよ、ガーネット。でも俺はまだまだ強くならなきゃって思ったよ。でないと、あのオパールに勝つ事なんて到底無理だ」
もう、ハルキは本当真面目なんだから。でも、そんな熱いところに惹かれるんだけどね。
「ハルキ、今日は打ち上げよ? 戦いの事は一旦忘れましょう! それに数日後には、サウスドリームが待っているわよ! ハルキとの旅行、楽しみだわ~~」
「そうだね、ガーネット。旅行って言っても、結局パフェもスミスも一緒だから、賑やかになりそうだけどね」
王女様も普段は中々お城から抜けられないし、最近命を狙われたり、色んな事が起きていたので、たまには羽根を伸ばしたい気持ちも頷けるわ。
「さ、今日はいっぱい飲むわよ~~!」
「あんまし飲み過ぎると明日に響くよ、ガーネット」
こうして私とハルキは、互いの功績を労い、夜まで語り合うのだった。




