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転生前が学生の貴族は異世界に何を望むのか  作者: 朝丸
第1章 幼年期編 〜転生先は貴族の三男〜
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9 初めての街

 僕が観察スキルを身につけたあの日。


 僕を引っ張って屋敷に戻ったクヌギは、その勢いのまま父さんの仕事部屋に突撃した。

 ……怖かった。手を振りほどく事も出来ないし、何かぶつぶつ独り言つぶやいているし、声かけても返事くれないしでクヌギがとにかく怖かった。


 ノックもせずに「旦那様!!」と扉を開けたクヌギだったが、ビビりまくる父さんを見て自分の行動を省みたようでいつぞやみたいに顔を青くした。

 謝り続けるクヌギを僕と父さんで落ち着かせて、クヌギが隠蔽スキルの事を報告すると、今度は父さんが固まった。



 当然、観察スキルは屋敷中の誰もが持っていたが、最も高レベルなのが父さんと母さんのレベル3で、隠蔽されていた僕のステータス情報を誰も見抜けなかったという。


 ……「ステータス」ね。よし、覚えた。


 一般に、スキル同士が対抗する際には高レベルのスキルが優先され、場合によっては対抗スキルを完全に打ち消してしまうようだ。


「隠蔽があるという事は、今僕が見ているランのステータスも隠蔽されている、とみるべきだね」


「父さん、僕の観察スキルだとそのステータスは見えないんだ。名前と歳と性別、それに所属と人種と所持スキルだけしか表示されてないんだよ」


「何、そうなのかい。よし、じゃあ今度リーブオの街に行く時に教会に行って調べてもらおうか」


「教会? なんで?」


「ラン様、教会の神官様は託宣スキルを持っておいでです。神様の力をお借りしてラン様のステータス情報を知ることが出来るんですよ」


 おお、前世でも行ったことのない教会だ。唯一お呼ばれした親戚の結婚式もなぜか神前式だったんだよね。わがままボディのシスターさんはいるのだろうか。

 ひょっとしたらメメ様に会えるかも。教会来いみたいな事言ってたし。

 屋敷から遠出するのも初めてだ。リーブオの街ってどんなところだろう。





 ♢♦︎♢♦︎





 そしてリーブオの街へ向かう日の昼下がり。穏やかに太陽の光が射し込んでくる森の中を、僕達を乗せた馬車が走っていた。


 ネット小説でよく扱われる馬車。発明チートの代名詞であるサスペンションは付いていないようだが、馬車の揺れがどれくらい酷いのかは分からない。全く酔わないのだ。

 前世から酔わなかったからね、僕。車も船も飛行機も全部大丈夫だった。

 一緒に乗ってるクヌギも父さんも全然平気そうだった。


「リーブオの街は近くにダンジョンがあってね、比較的大きい冒険者ギルドがあるんだよ」


「冒険者って魔物を狩るのが仕事の人達だよね。やっぱり筋肉ムキムキの人しかなれないの?」


「そんな事はないさ。魔法が得意なら女の人だって魔物を倒せるし、ダンジョンの攻略は力押しじゃ絶対に出来ない。罠や敵を感知するスキルも重要だから、そういう方向で身を固める人達もいるよ」


「ふーん。じゃあクヌギも冒険者になれるって事?クヌギのあの火魔法、結構すごいんでしょ?」


「いや、クヌギはまだ9歳だからね。いくら戦力になるからって、12歳未満の子供は冒険者にしちゃいけない決まりなんだ」


 そんな事を話しているうちに馬車は森を抜けた。遠くに巨大な石の壁が立っているのが見える。

 あそこがリーブオの街だそうだ。



 道なりに進み壁の麓まで近づくと、門とその前に並ぶ人の列が見える。

 剣や斧など物騒なものを装備している筋骨隆々な男達が、5人程集まって1グループを形成し、門に向かってずらっと並んでいた。所々に女性が固まって並んでいるが、前後に並ぶ男達のむさ苦しさが強すぎて呑まれてしまっている。


 大抵の集団はその傍らに何かを乗せた台車を置いている。

 うわっ、あそこの台車に載ってるの、すごい大きいイノシシだ。確かヒュージボアとかいう名前の、危険度Cの魔物だったはず。体内の魔石こそ小さいが、その巨大な体から取れる大量の肉は、食用肉として食卓にオーク肉の次によく出る食材だ。



「がっはっは!! 今日の狩りは上手くいったな。こんだけ上物のヒュージボアなら、一週間は飲んで暮らせるぜ!」

「いやいや、折角の収入を酒なんかに使っちまうなんて勿体ない。俺は今日、あの『エルフの里』で精一杯お世話してもらうんだ!」

「な、なにぃ!? 次の日には何故か膝が震えて、狩りに出かけようもんなら魔物に返り討ちにされちまう、あの高級料亭『エルフの里』でか!? お前冒険するなあ」

「何言ってんだ、おめえ。俺達は冒険するのが仕事の、『冒険者』様だろうがよ!」

「「「「がっはっは!!」」」」



 うるさっ。だいぶ離れてんのにここまで聞こえてきたよ。

 ……これが汚い言葉遣いってやつか。屋敷の皆はあんな喋り方しないけど、平民だとこういう人達もいるわけだ。


 隣を見るとクヌギが険しい顔つきで彼らを睨んでる。


「ラン様、耳を塞いでください。ラン様の耳が穢れます」


「あはは、大丈夫だよ。今日の戦果を喜んでるだけじゃないか。あれくらい見逃してあげないと」


「ダメです! 平民の中でもあんな下賤な存在なんて、ラン様は目にしてもいけません!」


「まあまあ、そんな怒んないで。ほら怖い顔になっちゃってるよ。折角の可愛い顔が台無しだ」


「えっ!? その、えっと……」


「僕はいつものクヌギの顔の方が好きだなあ。その方が可愛いからね」


「うぅ……」


 わちゃわちゃしながら顔を真っ赤にしてうつむくクヌギ。手でしきりに髪をいじり、足を所在なさげに振っている。


 ……やだもう、この子ったら可愛い! 食べちゃいたいくらい!


 げふんげふん、落ち着け僕。

 ここは普段と違って他に人がいるんだぞ。

 ほら、父さんが心持ち白い目でこっちを見ている。


「……いつもそんな感じなのかい、ラン。3歳児の言動じゃないのには慣れてきたけど、正直将来が心配だよ。刺されないように程々にね」




 そんなこんなで、列の横を通って門へ向かう僕達。

 はて、順番待ちの列じゃないのこれ、と思ったところで馬車が正面の門へ向かう道から少し方向転換をする。


 よく見ると、一軒家並みの大きさの真正面にある門の横に、小さい、馬車が通れるくらいの控えめな門があった。

 門の近くで寄ってきた衛兵が話しかけてくる。


「こちら、貴族様専用の通行門となっております。身分を示すもののご提示をお願いします」


「うんうん、お勤めご苦労様。はいこれ。馬車はここで預かっといてもらえるかな。今日中に帰る予定なんだ」


「……はい、確認しました。シルフォード様ですね。はい、馬車は預かるようシュリネ様から指示が出ております。奥でシュリネ様の使いの方がお待ちです」


「分かった……じゃあクヌギ。ランと一緒に教会へ行ってくれ。僕も後で行くから」


「はい、旦那様……さあ行きますよ、ラン様」


 そう言って手を繋いでくるクヌギに連れられ、門を通る。


 そして僕の視界に映ったのは、中世的な雰囲気溢れる、まさにファンタジーな街並みだった。

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