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転生前が学生の貴族は異世界に何を望むのか  作者: 朝丸
第1章 幼年期編 〜転生先は貴族の三男〜
7/26

7 兄さんが学園へ行く日

 一週間ほど前、僕は2歳の誕生日を迎えた。


 朝クヌギに、

「おはようございます、ラン様。今日も一日頑張りましょうね」

 と起こされて、着替えしながら会話してたら、

「あっ、そういえば今日ラン様の誕生日ですよ」

 と軽く言われた。あまりに軽く言われたからうっかり聞き逃すところだった。



 この国で使われている王国暦は、太陽の動きを元に作られている。

 太陽と月は一つずつ存在し、一年は365日。

 一年が12ヶ月で構成されている事も、各月の日数も、7日間を一週間とまとめることも全て、地球とまんま同じ。


 僕は三月一日の生まれだそうだ。



 魔法とか魔物とかファンタジー要素あふれるこの世界だが、このように前世と似たような部分が所々にある。

 屋敷のある一室には紙でできたカレンダーが飾られているし、食堂や寝室の壁には円型の12時間時計が掛けられている。

 使われている数字こそ違うが、どちらも10進数で書かれているのだ。


 ……転生したのが学者だったら、ここから色々な考察が生み出されるのかもしれない。

 だけど僕は、前世との違いが少ないのは助かる、とそう思うだけだった。



 とはいえ、この世界と前世とで文化の差が全くないわけではない。


 例えば、一夫多妻制。

 この世界ではある例外を除いて、基本的に家長は男がなる。男の立ち位置は女よりも上、という男尊女卑思想が根底にあるようだ。

 そして、王族と貴族に関しては側室、妾を持つのが当然らしい。母さんしか妻を持たない父さんが例外と言われてる程だ。


 他にも、休日制度はこの世界には存在しない。

 農民や冒険者は毎日汗を流しているそうだし、貴族である父さんも毎日仕事部屋に篭ってる。コルン兄さんも勉強の名目で時々連れ込まれてる。

 ……ニートだなんてとんでもない。労働環境の「ろ」の字もない、立派な社畜だった。

 そして、ブラックな職場が普通のこの世界ですらブラックとされるあの図鑑の作成とは……闇が深いね、うん。


 そして、誕生日を祝う、という概念もこの世界には存在しないらしい。

 あくまで歳を重ねる日という認識があるだけで、パーティーを開くこともなければ、プレゼントを贈ることもない。

 そういう訳で、クヌギも単なる世間話として話していたようだ。



 という事で2歳になった僕だが、ちょうど良いという事でクヌギに家族の年齢を聞いてみた。


 父さんと母さんは29歳、

 コルン兄さんは10歳、

 クルミ姉さんは6歳、

 ミリド兄さんは5歳だそうだ。


 ……母さん、19歳でコルン兄さん産んでるの?やばくね?


「先代様が病気で亡くなられて、旦那様しかシルフォードの血を受け継ぐ方がいなかったという事で、当時、その……ハッスルなさったとの事です」


 おお、クヌギが顔を赤らめて恥ずかしがってる。ふむふむ、そういう知識は既に持っているのね。

 ……この話を続けるのはやめよう、うむ。それが紳士というものだ。


「そういえば、クヌギは何歳なの?」


「私ですか? 私は今年で8歳になります」


 …8歳? えっ、嘘でしょ。

 小学2年生でそんなに体大きいわけないじゃない。どう見たって小学校高学年の身長だよ。


 と思ったが、ふと気付いた。今の僕の体力も2歳児のそれじゃない。

 前世では、幼稚園や保育園に通う子供達に「お昼寝の時間」が確保されていたはずだ。子供は自分の疲れに気付きにくいから無理矢理休ませる、という名目で。

 ところがこの世界では、1歳の時の探検の時も一日中屋敷を走りまわってやっと疲れる、という感じだった。


 前世とこの世界では体の成長に違いがある、という事だろうか。

 いや、しかし兄さんや姉さんの身長は年相応のものだ。クヌギの方がコルン兄さんより背高いし。


 クヌギの先祖に背の高い人種がいたのか、と聞いてみたが、そういうわけでもないらしい。


 ……うーん、分からん。




 ♢♦︎♢♦︎




 とまあこんな感じに新しい情報を仕入れながら、いつも通り勉強して日々を過ごしていた僕だけど、今日はなんだか様子が違う。


 朝食の後、僕は他の家族と一緒に屋敷の前に集まっていた。

 玄関先には1台の馬車が止まっている。


「では母上、今日から5年間頑張って参ります」


「ぐすっ、ええ、頑張ってね。向こうで嫌な事があったら帰ってくるのよ、うう。あなた、王都までちゃんと送ってあげてね」


「分かった分かった。大丈夫だよセリーナ、そんなに心配しなくても。コルンならちゃんとやって行けるさ」


「だってえ……」


 何とコルン兄さんが向こう5年間、王都に行ってしまうのだ。

 なんでも貴族の子息は、10歳になったら王都にある王立学園に通い、寮生活を過ごしながら同世代の貴族との交流を深め、様々な教養を身につけるんだそうだ。


 王立学園はこの国唯一の教育機関で、王族や貴族のみならず、官僚や騎士、魔法学者を目指す平民なども集まる所らしい。


 王家がバックについて支援しており、資産の無い平民でも実力さえあれば入学でき、実際に優秀な人材を輩出してきた実績もあり、王家の三大善政の一つと言われているそうだ。


 クルミ姉さんやミリド兄さん、それに僕も将来そこに通うらしい。まぁ僕は貴族科じゃなく、官僚科の予定なんだけどね。




 そんなこんなで、泣きながら馬車から離れようとしない母さんを居残り組で抑え込みつつ、コルン兄さんと父さんは王都へ旅立ったのだった。

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