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転生前が学生の貴族は異世界に何を望むのか  作者: 朝丸
第2章 少年期編 〜優等生にランはなる〜
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24 異世界だけど、飯は普通に旨い

 スタックが無くなりそうなんですけど……やばい、全然筆が進まない。どころか作者のリアルが忙しくて、執筆時間が確保できなくなっている件について……


 早く来ないかな、10連休……

 

 たどり着いた村で御者さんがヒュージボア料理を振る舞い、村総出の宴に巻き込まれかけて慌てて出発した次の日。

 進んできた道の先に、シルフォード領と天領の境に立つ砦が見えてきた。


 リーブオを囲う石壁よりも高い城壁。壁の手前に掘られた深い堀。上げ下げ駆動が可能な橋の道。

 砦の左右からのびているのは、エリアス王国の最終防衛ライン……の一個前の壁だ。最終は、王都の周りをぐるっと囲んでいる。


 木の橋を渡って、衛兵の詰所に近づく。ちなみに彼らは、王家が徴兵している国軍だ。

 今日の当番は……以前と同じ人だな。


「3か月ぶりですね。その様子だと、学園へは無事入学できたようで、おめでとうございます。」


「うん、ありがとう。これが身分証で、これが学園から来た合格証明書ね。あとこれ、フェザードラゴンの持ち込みだから、記録しておいて。王都入りは東門からだよ」


「はい、確認しました。どうぞ、お通りください」


 本当は、使われてる印鑑の確認とかがあるはずなんだけど、ほんのすこし前にやったばかりだからか、ほぼ顔パスみたいなもんだった。僕がシルフォード家の貴族だって事も関係してるかも。



 砦を通過して、再び太陽の下での移動が始まる。ここから王都までは、今までよりも長い道のりなんだよね。いくら酔わないとはいっても、訓練漬けだった身としては少々退屈だ。

 クヌギと御者さんがいるから、会話に困らないだけ良いと思おう。


 今までの道中は平原や森ばかりだったが、天領に入ってからは見渡す限り麦畑……になる予定の茶色い土地だ。今は耕作の時期のようで、働いている人は鍬……ではなく両手を地面についている。

 地面を柔らかくしたり、肥料を混ぜこむのも、全て土魔法で行なっているのだ。


 働いているのは、天領に住む農民と、彼らから徴収された国軍の人たち。国軍と言いつつも、この国の戦力は侯爵家に集中しており、彼らの仕事は主にこの農作と、天領と他領の境にある砦の管理だけだ。


 王都を守るための徴兵制だが、なにぶん侯爵家が優秀だから、過去起きたどの戦いも全て国境で片付いている。

 他国に攻め込まない事を信条としているエリアス王国では、彼らが侵略戦争に投入される事もない。


 明治日本では血税なんて言われた徴兵制だが、エリアス王国では不平不満の種にはなりえない。そもそも前線で戦ってるのが貴族なんだから、一揆なんて起こそうという気にもならないのだ。


 まあ、王国成立の歴史だとか、他国が狙う王国の優位性とか、色々なものが噛み合って平和が保たれてるんだけどね。



 天領の特徴としてもう一つ、ダンジョンが全くない事もあげられる。

 どの貴族領にも少なくとも一つはあるダンジョン。それがない空白地帯を、食料の安定供給ができるようにするために壁を作って隔離し、内部にすでにいた魔物を駆逐する。

 王都にこそ巨大ダンジョンがあるが、ここでは冒険者産業は全く存在しない。住人のほぼ全員が農民なのだ。


 天領には賊なんていうのも出てこないし、畑の管理のために村や兵舎がそこらにたくさんある。

 長旅でこそあるが、外敵の警戒や眠る場所の心配はもうしなくてもよくなった。


 王都が近づいている事もあって、会話も学園の話が多い。


「貴族の新入生で気をつけなきゃいけないのは、王家から来る第一王子と第一王女、あとサインツ公爵家からくるので、合わせて3人だって」


「あの、素朴な疑問なんですけど。旦那様のお話では全員サインツの名字をお持ちだったようですが……」


「ああ、貴族科の入学条件が貴族である事に合わせて、王族も在学中は公爵家の預かりになるんだよ。まあでも、学科が違うんだから、共通の授業だけおとなしくしてれば接点持たずにやっていけるよ」


「いやいや、ラン坊っちゃんがおとなしくなんてできるわけねえっす」


「そうですよ。どうせラン様は、人助けとか言ってプライド高そうな貴族様を敵にまわすんです」


 何を言ってるのかな、この2人は。何故、僕の信用がこんなにも無いのか。


「なんでそんな辛口なのさ。僕がいったい何をしたっていうんだ」


「この前なんて、私とイノアにしつこく声をかけてきた人を、ちょっと冷たいやつで全身氷漬けにしていたじゃないですか」


「しかも、逆恨みで仲間と襲ってきたのを、足元だけ凍らせてその場に放ったらかしとか。いやー、あれは鬼畜だったっすね」


「……うーん。あれはまあ、デジャブみたいでなんか嫌だったし」


 あの犯罪者どもとは違って、田舎でイキってたアホ集団だったから、反省の意味も込めて人の目がある所で一晩立たせただけだし。

 街中の宿前で襲ってくるとか、本当に訳がわからんアホっぷりだった。それに……


「それに、僕のクヌギに手を出そうとしたんだからね。イノアが可哀想だって言うから止めてあげたけど、もう数日あれ続けてやっても良かったぐらいだよ」


「ラン様……大好きです!!」「むぎゅう」


「……坊っちゃんだけは、ぜってえ敵にしねえように気をつけるっす」


 く、苦しい……すっかり立派になった胸部の感触はとても嬉しいのだが……クヌギさん、苦しいです。息が、苦しいです。




 ♢♦︎♢♦︎




 その日の夜、今日の晩御飯を御者さんが作っている間に、リウムに餌をやる。


「リウム、今日の夜ごはんは麦が入っているんだけど、どう? 美味しい?」


「ギャアス、ギャアス」


「そう、美味しいかい。という事は、『セルラーゼ』だけじゃなく、『アミラーゼ』も持ってるのかな?」


 リウムを飼っていて気づいたのだが、フェザードラゴンは排泄物を全く出さない。

 最初の頃、薬草の花びらを餌にし、水もそこそこ飲んでいるはずなのに、トイレに用意した砂場に何も落ちていないのを見て驚いた。


 全身の絵を描いている時は気づかなかったが、排泄器官すらないのだ。そこで興味を持った僕は、リウムの餌を色々変えてみた。


 好物は薬草の花のようだが、葉の部分も食べられる。そこらに生えている雑草も、人間が消化できない木の皮や根っこも食べる事ができる。


 一方で、動物や魔物の肉は全く食べないし、小麦粉とかパンとかも食べない。しかし、小麦自体は今食べたので、外見で判断しているであろう事が分かった。


 ちなみに、先日狩ったヒュージボアには器官があったのは確認済みだ。ダンジョンに関する小話の事を考えても、魔物はその行為を行うというのが一般的な見解だろう。


 フェザードラゴンと普通の魔物との違いがどこかにあるのは間違いない。


「せるらーぜとか、あみらーぜって何ですか?」


「えーとね、前世の知識だから王都に着いたら教えてあげる」


「あっ、そうですか。分かりました」


 少し離れた所にいる御者さんを見ながら小声で話すと、クヌギは納得したようだ。



 僕が前世の記憶を持っている事、そしてアレを感じる能力がある事は、まだクヌギにしか話していない。


 前世については、人柄が分かっている今、もはや家族に隠す理由もなかったが、別に話さなきゃいけない理由もない。


 能力については、全面的に僕を信頼してくれるクヌギ以外には、話す気にはなれない。前世でもソラにしか話してないし。

 僕を嫌がる感情を微塵も持たない、と判断できる2人だからこそ話した、僕の秘密。こちらに関しては、家族に話すのもまだ怖かった。


 まあでも、学園でソラみたいな友達が出来るかもしれないしね。そういう点でも、学園という新しい環境は楽しみだ。


「よーし、できたっすよー。今日のメニューは、ヒュージボアのベーコン入りトマトソーススパゲッティっすね」


「おおっ、美味そう! 本当、なんで御者やってんだって腕前だよね。旅先で本格的な料理が食べられるとか、最高じゃん」


「……魔石コンロとか、調理用テーブルとか、普通外で使うもんじゃないんすけどね。坊っちゃんの魔法の方がおかしいんすよ」


 だって、異空間に詰め込めちゃうんだもん。時間経過もあるから異空間燻製も出来るし、空間魔法、マジ便利。

 僕の場合、馬鹿魔力のお陰で、他の人よりちょっと多めに入れられるようだ。


 ところで、中世的な異世界の料理は不味いのが定番だけど、目の前で湯気を立ててるスパゲッティは前世で食べたのと同レベルの味だ。

 人工添加物が入ってない分、こっちの料理の方が質は高いのかも。


 というわけで、僕達3人は美味しいスパゲッティをお腹いっぱい食べて、今日も平和に夜を過ごすのだった。

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