12 灼熱の魔法使い
自分の作品がどうにも読みにくかったので他の方と比べてみたところ、まず表現がやばかった事に気づきました。「……」とか「? 」とかですね。
投稿した全話を直し、ついでにセリーナとある女の子の口調を少し変えました。
僕が住むシルフォード家の屋敷は、他の所、例えばリーブオの街がある所よりも少し高いところにある。
山に挟まれた台地地帯に、3階建ての巨大な家が山を背にして建っており、その背中側の少し離れたところには山の頂上から川が流れてきている。水道関係はここから引いているらしい。
屋敷には僕達の私室や食堂などの生活部屋のみならず、使用人用の寝室や来客用の応接室、さらにパーティなどで使うというだだっ広い多目的ホールもある。貴族の家らしく、いたるところに高そうな調度品が飾られており、単語探しの探検もなかなか大変だった。
そしてここカルバス台地には、僕達以外の人も住んでいる。
屋敷の正面には木の柵で囲われた広い庭、その向こうには集合住宅みたいな建物がいくつかと、区画整理されている畑、多くの馬が飼われる厩舎などが見える。
そこに住んでいるのは、シルフォード家に所属する魔法騎士団だ。総勢100人にも満たない、この国では少数部隊の扱いになる彼らだが、ここエリアス王国の最高戦力のうちの一つとして認識されている。
剣のカブリト家が持つ神風騎士団
盾のニコラス家が持つ鉄甲騎士団
財のリンドーン家が持つリンドーン傭兵団
他の侯爵家に数で大きく劣る魔法騎士団だが、その実力は決して無視できるものではない。
王国成立前、大国の属国だった頃から少数精鋭であり続ける彼らは、過去幾度もあった他国からの侵攻を、他の侯爵家と肩を並べて全て撃退している。
そう、大陸の中でも領土的には小国のエリアス王国だが、専守防衛の姿勢を貫いて他国への侵攻は行わず、なんと全ての侵攻戦に勝利した強国なんだそうだ。大陸にエリアス王国あり、と言われるほどらしい。
どの侵攻戦でも、少数特有のフットワークの軽さを活かしながら確実に敵を倒して、まさに八面六臂の活躍を見せた魔法騎士団は、その個々人全員が強者という集団だ。
その魔法騎士団において最も強いのは、団長のグレンである。騎士団のモチーフである赤色の鎧でその巨躯を覆い、いかつい顔を覗かせ笑うその様は、騎士というより街にいる筋肉自慢のチンピラである。
平民出身の彼は、小さい頃から磨き上げた我流の剣術で王立学園の騎士科に入学し、そこで魔法についても才覚を発揮する。
体に似合わず四属性全てを自在に操り、 当時の魔法学科生よりも実力は強かった。しかし、その風貌が相応しくないとされ、魔法学の花形である王城魔術師団から声がかからなかった所を先代が声をかけたんだそうだ。
……そんな事あるんだ、可哀想に。
魔法騎士団に入団後、その豪胆な見た目に反して堅実な鍛錬によって確かな実力を身につけ、当主の代替わりの時にはすでに団長として騎士団を率いるようになっていた。
厳しすぎる剣術の指導で小さい頃のコルン兄さんをガチ泣きさせた前科を持つ、真面目すぎる努力人間である。
……何やってんだよおっさん。そりゃあ声かけてもらえないよ。
そんな魔法騎士団のナンバーワンに魔法の指導をしてもらうのかと思っていたが、どうやら違うようだ。
「流石にランも、魔法騎士団の訓練に混ざるのは早いんじゃないかな。グレンは団員の面倒も見なきゃだしね」
という事らしい。
そう、僕が魔法を教わるのはここに住むなかで二番目に魔法を極めている人物。
騎士団の修練場での模擬戦に勝手に参加して、特大の火柱を生み出し、畑の薬草に被害が出るほどの大爆発を起こす超危険人物。
真っ赤な髪と使う魔法の種類から「灼熱の魔法使い」と呼ばれ、副団長以下の騎士団員よりもなぜか強い人物。
シルフォード家当主の妻、セリーナ・シルフォードである。
♢♦︎♢♦︎
屋敷の庭で母さんと向かい合う。
「属性魔法を使う時に最も重要なのは、イメージよ。頭の中に起こそうとする現象を出来るだけ具体的に思い浮かべて、体内の魔力……オドから私たちの周りにある魔力……マナに向かって伝えるの」
母さんはそこまで言うと、人差し指で上を指しながら指先に火を灯す。
「こうやって火をつける時にも、自分自身にはその熱が伝わらないようにイメージする必要があるわ。このイメージが自由に出来るようになる程スキルレベルも上がるの」
息を吹きかけて火を消し、こっちを見てくる。
「普通はオドの感覚を掴むところから始めるんだけど、レベル6の魔力操作があるって事はもう出来てるってことよね」
「いや、オドなんて感じた事ないけど……」
「そう? じゃあ多分無意識に身体強化に使ってるのね。よし、じゃあ怪我しないように私の真似して跳んでみて」
そう言い、膝を曲げてジャンプする母さん。足とスカートに何かを走らせた感じがしたが、あれが魔力なのだろうか。
屋敷の屋根ぐらいまで跳んで、その後落ちてくる。
……おお、スカートがめくれない。そんな事も出来るのか。
取り敢えず、怪我したくないから思いっきりジャンプは無しだ。母さんと同じくらいの高さを目安に、足に適度に力をため込んで跳ぶ。
屋根よりも少し高いぐらいで最高点をむかえ、重力に従って落ちていき着地する。
……なるほど、今足に移動していったのがオドか。
母さんを見ると、何故か腰を抜かしていた。
「だ、大丈夫!? 怪我してない?」
「えっ、いや全然。なんで?」
「だってあんな高さまで跳んでいたのよ!?」
……ああ、僕3歳児だったわ。
写生のための木登りでぴょんぴょん跳んでた時は気付かなかったが、そうか、3歳児があの高さまで跳ぶのは確かにホラーだ。
いやまあ、それを言ったら母さんが跳んでるのも普通にびっくり映像だけどね。この世界ではよく見る光景だ。
慌てる母さんをなだめて、オドの感知が出来たことを報告する。
「ま、まあいいわ。ランがぶっとんでるのはよく知ってるしね。魔力値が馬鹿みたいに高いのも納得だわ」
やめて、人を化け物扱いするのはやめたげて。
「じゃあ次はマナを感じる練習ね。こう、両手を向き合わせて、右手から左手に向かって空気中を通ってオドを流す感じよ。はい、やってみて」
言われてやってみるものの、なかなか上手くいかない。
「イメージよ、イメージ。右手から風が吹いている感じでイメージしなさい」
おお、風が……おお! これがマナか!
一度わかると空気中の魔力の流れがつかめてくる。観察スキルによってレベル1の魔力感知スキル、そして風魔法スキルをゲットした事も分かった。
「そう、それが風魔法よ。今あなたが感じたマナに熱を持たせられれば火魔法に、水や土のマナを感知できれば水魔法や土魔法が出来るようになるわ。ランの適性は水だから、取り敢えず次は水魔法の練習ね」
朝から始まった魔法の特訓は、日が沈む頃まで続いた。主にその内容は、水の入った桶に手を突っ込んでマナを感じる、というものでこれまたなかなか難しい。
手を突き合わせて水の流れを作れたと思ったら、
「それは風魔法よ。水中にある空気のマナに干渉してるだけね」
と言われる。
空気のマナには触れないで水面が揺れてると思ったら、
「それはただ力んでるだけね」
と言われる。
それでも昼過ぎには何とかものにでき、スキル欄にレベル1の水魔法スキルが追加されていた。
その後は、桶の水を操って外に出したり、桶の水かさを増してみたりしていたのだが、日も暮れてきたのでその日はそれでお開きになった。
しかし、魔法が使えるってやっぱ楽しいな。
前世では存在すらしなかった魔力だが、手に取るように扱えるようになってますますその利便性が際立っている。
空中に新しい水の塊を生み出すのはまだ難しいが、存在する水についてならすでに結構な量を操ることができる。水魔法レベル1の技量じゃないらしいが、魔力操作のレベルが高いことが何か関係してるのだろうか?
今やっているように、風呂の水を動かして流れるプール状態にする事も可能だ。スピードを増すほど中心に巨大な渦が現れて僕の体を呑み込んでいく。
「なあ、親父。俺も練習すればああいう魔法使えるようになるんだよな?」
「いやいや、僕だってあんな大量の水なんて動かせないよ。いいかい、ランがやる事を普通と思っちゃいけないよ、ミリド」
うるさいぞー、そこの親父。
次話は短い閑話を土曜日の夜に投稿します。




