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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@完全無欠の悪女です2月下旬発売
中等部三年

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99.電車で行こう! 2


 駅を抜けて、大きなスクランブル交差点を渡る。私はまごまごしすぎて、綱に肩を抱かれてようやく渡り切ることができた。テレビで見たことはあったが、ここまで凄いとは知らなかった。

 交差点を抜ければ喧しい街が待っていた。急な上り坂と、機械音の喧騒。録音された音声と、車の排気音。警告を告げる音。


 私は街に圧倒されたまま、綱の手に引かれるまま坂道を登っていった。

 程なくしてお目当ての店につく。綱が名前を告げれば、テーブルに案内された。周りは大人だらけで、私たちのような子供だけのグループはいなかった。


 トロトロのチーズで人気のレストランである。女子の間では、SNS映えだとかその辺でも有名だった。チーズが大好きな私も一度は行ってみたいと思っていたのだ。

 

「どうしよう……皆おいしそうだわ」


 メニューを見て目移りする。トロットロのラクレットチーズを落としてくれるプレートメニューは王道だし、チーズの中で仕上げるカルボナーラはロマンだし、チーズフォンデュは鉄板だ。その上チーズケーキも美味しそうで、ティラミスなんて絶対私を誘ってる。


 メニューを見てウンウン唸っていれば、綱が呆れたように笑った。


「午後はカフェにも行きたいんでしょう? 食べ過ぎないでくださいね。歩けなくなりますよ」

「うう……でも、迷うわ」

「また来ればいいじゃないですか」


 驚いて綱を見れば当然だという顔をしていた。


「そうね。また来ればいいのよね」

「そうですよ」


 私はその言葉に納得する。また来ればいいのだ。

 私の迷ったメニューの中から二つ選んで、二人でシェアした。ご機嫌な気分でランチを食べながら、午後の予定を相談した。





 ランチで英気を養って、午後は気になっていた大型雑貨店へ行ってみる。

 専門的な商品が階ごとにわかれて陳列されていて面白かった。キッチングッズだけでワンフロアあり、それだけで胸が高鳴る。スキップしながらフロアを歩けば、綱が後ろから付いてきた。調理家電も色々あって、見ているだけで面白い。


 文房具や雑貨のコーナーには、可愛いアイテムがたくさんあった。いつものブランドショップとは比べ物にならないほど安くて驚く。同じ手帳でも桁が違うのに、こちらの方が可愛くて種類も豊富だ。


 これだったら色々買えてしまう! シールとかカードとか、マスキングテープも! お友達に気軽にプレゼントできそうだわ!!


 嬉しく思って綱を見れば、穏やかな顔をして私を見ていた。

 気まずくなって、思わず目をそらす。


「綱、つまんないんじゃない?」

「いいえ?」

「だって、男子のものないわよ」

「そうですね」

「女子のグッズ楽しい?」


 そう言えば、髪を結ぶのも上手だ。そう言うものが好きなのだろうか。


「いえ、まったく」


 即答されて、ムッとする。


「だったら別のもの見てきていいわよ」

「でも、姫奈を見てるのは面白いです」

「別のものを見てらっしゃい!!」


 思わず叱りつけたら、店員さんに振り向かれた。

 綱は、ほらみろ、という顔して澄ましている。


「~~~! 一人でゆっくり見たいのよ」

「迷子になったら困ります」

「ならないわよ!」


 綱が信じられないという顔で私を見る。


「……だったら、だったら、30分後にあそこのベンチで待ち合わせ。それでいい? 私はこのフロアから出ない。約束するわ」


 階段の踊り場にあるベンチを指さして言えば、綱は渋々頷いた。


「では、私は向こうの文具コーナーにいますね。くれぐれもフロアから出ないように」

「わかってるわよ!!」


 綱を追い払ってじっくりと雑貨を見る。今日の記念にパスケースを買おうと思ったのだ。帰りには絶対に綱の持ってるペンギンのカードを買って帰ると決めたからだ。

 

 沢山あるパスケースの中から、これぞというもの選んだ。可愛い板チョコ柄のパスケース。同じ板チョコを基盤にしたデザインだが、チョコの包装紙の色が違う。赤はミルクチョコで、黒はビターチョコだ。

 私はそれを購入し、綱との約束のベンチへ向かった。

 綱はすでにベンチに腰かけている。


「買い物はできましたか?」

「ええ!」

「では、3Dラテアートなんてどうですか?」

「素敵!」

「有名なお店があるんです」


 それから綱と3Dラテアートを飲んだ。こんもりと盛られたクリームが猫の形になっていて、唇に泡が付いて二人で笑った。


 それからプラネタリウムへ行く。こんな雑踏の中で、満天の星に包まれるなんて不思議だ。

 天に向かってリクライニングする柔らかいシート。穏やかな音声と、深い闇は心地よい温度で私を包む。東京の空では輝かない星たちが、私たちの上で煌めいている。


 こんな風に好きな人と、草原で寝転んで星を見れたら幸せ。


 立派な指環とか要らない。チヤホヤしてくれる心のわからない友達もいらないし、豪華なパーティーだって必要ない。

 ただ、こうやって、一緒に寝転んでくれる人がいればいい。


 そう思って、なぜかその未来図の隣にいたのが綱で、苦笑いする。たぶん、今一緒にいるからに違いない。

 光毅さまだったら、なんて考えてみる。


 確かに光毅さまには似合わないかもね。

 光毅さまなら草原よりも、高層階マンションで夜景って感じがするもの。ワイングラスとか揺らしちゃったりして。


 心地よいリクライニングに包まれて、私は狭い空の中に妄想を泳がせた。




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