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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@天才魔導師の悪妻26/2/14発売
中等部二年

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91.中等部二年 ひな祭り 2


「姫奈子お姉さん。ご挨拶に来ました」


 声の方へ顔を向ければ、ご機嫌な修吾くんと不機嫌な彰仁、そしてその後ろに新一年生らしい女の子たちがいた。


 私は席を立つ。


「あら、修吾くん! わざわざありがとう」


 相変わらずの可愛らしい様子に勝手に頬が綻んでしまう。


「こちらは沼田紫さん、私の親友よ」


 紫ちゃんを紹介する。


「こちらは島津修吾くん。それとこっちが、彰仁。何度か家で見かけたことはあるかしら?」

「ええ。何か困ったことがあったら声をかけてね」


 紫ちゃんは嫋やかに微笑んで見せた。流石、葵先輩の妹と思わせる優雅な微笑み。まるで良家のお嬢様みたいだ。いや、そうだった。

 コンプレックスに押し潰されない本来の紫ちゃんはこうなのだ。


 修吾くんと彰仁の後ろにいた女の子たちが、ほう、とため息をつく。


「で、こいつらが、姉貴を見たいってうるさくて」


 彰仁がブスッ面して言ってくる。私は上級生の余裕をもって、ニッコリと笑った。

 

「彰仁の姉の姫奈子です。よろしくね」


 キャー! と女の子達が顔を赤らめる。今度の一年生達も元気らしい。良いことだ。


「姫奈ちゃん、女の子たぶらかさない」


 八坂くんがやって来るから、女の子達は顔が真っ赤になった。

 彰仁も驚いて目を見張る。


「八坂くんではあるまいし」


 呆れてフンと鼻を鳴らせば、八坂くんは得意の王子様スマイルで微笑む。女の子達は目をハートに輝かせた。


「あ、あの、八坂先輩、あ、握手をいいですか? ファンなんです!」

「いいよ。いつも応援ありがとう」


 八坂くんがサービス精神旺盛に答えていく。これが学院内での混乱の元になるのだが、八坂くんには断れないだろう。

 全員に握手を終えた瞬間、八坂くんとバチリと目があった。少し困ったように笑う。


 うん、釘を指しておこう。


「でも、こういう行為は学院内では控えてね。八坂くんも普通の生徒なの。素の八坂くんを見られるのは芙蓉生だけの特権なのだから、その場を守るのもファンの努めと思ってね?」


 私は、パフォーミングパートナー仕込みの微笑みを湛えて、女の子達を見回した。

 ため息と共に頷かれて、私も頷き返した。


「姫奈ちゃんのそういうところ、僕好きだな」


 八坂くんがニッコリ笑うから、小さな歓声が上がる。

 私は軽く睨んだ。


 一昨年のひな祭りでも同じこと言ったよね? あの時は動揺したけれど、もうそういうわけにはいかないんだからね!


「そういうのは別に要りませんから」

「だよね」


 なぜ、楽しげに笑う?


「姫奈子お姉さんと八坂先輩は仲が良いのですか?」


 修吾くんが不思議そうに聞く。


「仲良いよ」


 八坂くんがモデルの笑顔で即答した。

 私は瞬時に否定する。


「普通です」

「あー、傷つく。それ、傷つくんだよね」

「嘘ばっかり、止めてください」

「嘘じゃないよ、悲しいよ」


 本当に悲しそうに、濡れそぼった捨て犬のような目で見られて、ウッと怯んだ。


「……ごめんなさい」


 思わず謝ってしまう。


「お詫びにケーキ選んでくれる?」


 ウルウルした瞳で見つめられては、断れるわけない。


「わかりました」

「じゃ、行こう!」


 満面の笑みで手を引かれて、やっぱり演技だったと気がついた。だからといって、振りほどくのも面倒だ。


「姫奈子お姉さん!」

 

 修吾くんが声をあげる。振り向けば、彰仁が驚いたように修吾くんを見た。


「また、会いに行きます!」

「ぜひ! いつでも遊びに来てね!」


 答えれば、八坂くんに強引に腕を引かれた。


「ちょっと、八坂くん?」


 同時に答えたら、ついてきた紫ちゃんが小さく笑った。

 

「紫!」


 声がした方へ顔を向ければ、葵先輩だ。後ろには淡島先輩。何気に、淡島先輩のタイと葵先輩のリボンがリンクしている。


 ラブラブかよ!


 二人は三月末には中等部を卒業してしまう。高等部は敷地が違うので、気軽には会えなくなってしまうのだ。そう考えると少し寂しいと思った。


「葵先輩!」


 私は八坂くんの手を払って、葵先輩の元へ駆け寄る。葵先輩は呆れたように笑った。


「もう新一年生に囲まれていたわね?」

「弟のお友達です」

「そうなの」


 八坂くんは不機嫌な顔に戻っている。


「で、あの修吾って奴は何なの?」


 八坂くんよ、吐き捨てるように言うな。美形の怒り顔怖いんだからな!


「島津修吾くん。SBテレビ社長のご子息です。弟と仲が良くて、家にも遊びに来るんですよ」

「ああ、お兄さんの光毅さんとも仲が良いんだっけ?」


 淡島先輩が眼鏡を光らせて、口元だけで微笑んだ。


 うん、これ、情報収集するつもりだな? だんだんわかって来たんだから!


「はい。弟大好き同盟なんです!」


 淡島先輩に答えれば、何とも微妙な顔をした。


「それっていったいなんなの?」

「お互い弟の情報交換してるんです。修吾くんが家に遊びに来た時の写真を送ったり、逆に彰仁の写真を送ってもらったり」

「……ブラコンなのね?」


 葵先輩が苦笑する。


「でも、下の子って可愛いですよね?」

「そうね。可愛いわ」


 葵先輩が当たり前のように答えたら、隣で話を聞いていた紫ちゃんが赤面した。


「良かったな、紫」


 淡島先輩が言えば、嬉しそうに頷いた。


「なによ。知らなかったの?」


 葵先輩が照れたように拗ねる。


「ううん……知ってた……」


 真っ赤な顔で紫ちゃんが答え、それを見て葵先輩が満足したように頷いた。


 あーあー、いいな。私もお姉さまが欲しい。弟じゃこうはいかない。羨ましい。


「羨ましそうだね?」


 淡島先輩がニヤニヤして言う。


「羨ましいです。弟も可愛いけれど、お姉さまが欲しかったわ」

「あら、お姉さまと呼んでもよろしくってよ」


 葵先輩が言えば、紫ちゃんがちょっとだけ眉をしかめた。


「いえ。ゆかちゃんに怒られそうです」

「ひ、ひなちゃん……!」


 紫ちゃんが赤面した顔をもっと赤面させる。


 ああ、くそ、可愛いな? やっぱり下の子って可愛いな? お姉さまも欲しいけど妹もいいかもしれない。

 でもあんまりイヂメるといけないよね? 葵先輩の顔までほんのり赤みをさしていて、淡島先輩がいいもの見たって感じでニヤついてるもん。


「あ、先輩方もデザートまだですか? 今から八坂くんのデザートをプロデュースするんです。良かったら一緒にいかがですか?」

「じゃあ、そうしようか。葵」


 私はデザートコーナーへ向かった。視界の端に綱と桝さんが見えた。チクリと何かが刺さった気がして、慌ててデザートへ意識を向ける。


 デザートを選ばなくっちゃ。


 ひな祭りらしいパステルカラーのデザートたち。春色のお菓子たちが眩しくて、私はため息をついた。





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