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【5巻電子書籍&POD化】神様のドS!!~試練だらけのやり直しライフは今日もお嬢様に手厳しい~  作者: 藍上イオタ@完全無欠の悪女です2月下旬発売
中等部一年

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25.テスト明け 1


 テストが終わった! 無事かはわからないけれど、とりあえず終わった。


 ルンルンとした気持ちで帰り支度をしていれば、詩歌ちゃんがクラスにやって来た。


「姫奈子ちゃん、芙蓉館で打ち上げしましょう! 生駒君も」


 初等部では定期テストはない。中等部での初めての定期テスト明けということで、芙蓉会の先輩メンバーからお誘いがあったそうなのだ。伝統的な風習らしい。

 私は喜んで頷いた。芙蓉館のスイーツは美味しい。


 あの林間学校の件から、少し反省して芙蓉館へ顔を出すことは控えていたのだ。同じクラスの明香(さや)ちゃんもその辺りは承知してくれていた。

 だから久々の芙蓉館は嬉しいし、詩歌ちゃんが誘ってくれたのはもっと嬉しかった。

 綱は無表情だけど、喜んでいなさそうだなということはわかる。まぁ、無視するけどね。


 芙蓉館のカフェには、いつもはないホールのショートケーキが鎮座している。真っ白いクリームが滑らかに光り、苺がキラキラと赤さを誇っている。

 今日は給仕も来ているようで、エプロンを付けたギャルソンがケーキを切り分けている。

 さすが芙蓉会だ。ギャルソンのレベルも高い。イケメンたちがそつなくこなす姿は、それはそれは麗しい。


「わぁぁぁ!」


 詩歌ちゃんと二人で目を輝かせた。

 淡島先輩がそれを見て笑う。


「他にもいろいろあるみたいだよ」


 カウンターの奥を見れば、アイスクリームを掬っている様子が見えた。 


「アイスもあるんですね」


 思わず喜んで尋ねれば、淡島先輩は優しく頷いた。


「ついでにボクへおススメよろしく」

「わかりました」


 私は詩歌ちゃんの手を取ってカウンターへ引っ張る。


「ねぇ、見に行きましょう?」

「ええ!」


 詩歌ちゃんがにっこり笑い、その後ろから綱もついてくる。


「アフォガートってできますか?」


 長身のギャルソンに尋ねてみる。黒いエプロンが働く男でカッコイイ。

 見目麗しいギャルソンは柔らかく笑った。営業スマイルだとわかっていても嬉しくなる。さすが接客のプロだ。


「できますが、なにでお作りしましょう?」

「エスプレッソ以外もあるんですか?」

「今日でしたら、チョコレート、紅茶、抹茶があります。後はマスカルポーネを加えてティラミス風なんてこともできますよ」

「ええ? そんなことができるんですか? だったら、抹茶ティラミス風とかもできるんですか?」

「ああ、ちょっと作ったことはなかったけれど面白い発想ですね。……そうですね、できますね」

「お勧めは?」

「ショートケーキと一緒なら、やはりエスプレッソでしょうか。和菓子もありますので、そちらと合わせるのであれば、抹茶ティラミスも面白いかもしれませんね」


 丁寧なギャルソンの答えに悩んでしまう。ショートケーキも抹茶ティラミス風も食べてみたい。


「私は抹茶ティラミス風を」


 後ろから綱が言った。

 思わず振り向く。


「なんですか」


 憮然とした表情で綱が私を見る。


「意外に思っただけよ」

「少し興味があったので。残りは姫奈にあげますよ」


 綱の答えを聞いて、すっぱりと胸が晴れる。


「えっと、では私はショートケーキとエスプレッソのアフォガートをお願いします。あと淡島先輩分に……、抹茶があるんですよね?」

「はい、ございます」

「抹茶と栗きんとんを」

「かしこまりました」


 詩歌ちゃんはショートケーキと紅茶にしたようだ。うう、アフォガートは欲張りだっただろうか。


 淡島先輩の席に合流する。しばらくして、テーブルにスイーツが運ばれてきた。目の前でアイスクリームにエスプレッソをかけてくれて、気分が上がってくる。


「いい香り」


 詩歌ちゃんが笑った。私も大満足だ。


「生駒はまた珍しいものを食べてるね」


 淡島先輩が面白がって覗き込む。


「抹茶ティラミス風アフォガートです」

「メニューにあった?」

「いいえ、姫奈メニューです」

「白山さんの?」


 淡島先輩が私を見た。


「ええ。バニラアイスがあったのでアフォガートができるか聞いてみたんです。そうしたら色々提案してくれたので、抹茶ティラミス風にしたらどうかなって」

「生駒は実験体?」


 淡島先輩がクスリと笑う。綱は何も答えない。


 えええ……、そこはフォローしてよ。


 綱は、静かにスプーンでアイスを掬って口に運んだ。

 そして満足げにほほ笑む。


「……ふーん……」


 淡島先輩はそう言って私に水を向けた。


「今日は和菓子のチョイスなんだね」

「はい。ここに抹茶があるのが珍しかったもので。エスプレッソを飲まれているから、抹茶なら平気かなと思ったんですが、苦手でしたか?」

「ううん。栗も好きだよ。秋らしいね」

「ここの栗きんとんは栗の甘さだけなので、しつこくないんですよ」

「そうなんだ」


 淡島先輩がにっこり笑って安心した。チョイス間違えてなかった。



 詩歌ちゃんは幸せそうにショートケーキを頬張る。私もつられるようにして頬張った。

 コクがあるのにしつこくない生クリームに、甘酸っぱい夏の苺がピッタリだ。ふんわりとした生地は軽くて、正直もう一つでも食べてしまえそうだ。

 ヤバい。


「美味しい~!」


 フォークを握りしめて思わずつぶやけば、詩歌ちゃんが頷いた。


「本当においしい!」

「ね! ほんとね!」


 二人で笑いあう。


「これならもう一個食べれちゃう」


 私が言えば、ウンウンと詩歌ちゃんも同意する。


「そんなにおいしいんですか?」


 綱が尋ねるから、私はショートケーキのお皿を綱に寄せた。


「一口良いわよ、代わりにその抹茶ティラミス風も一口ちょうだい?」

「どうぞ」


 綱の抹茶ティラミス風アフォガートと交換して味見をする。

 想像していたよりも抹茶が利いていて美味しい。ただやっぱり、チーズが重いからケーキと食べるには罪悪感がある。


「間違ってなかった、けど、ちょっと罪深い味ね?」

「美味しいですが、ケーキと合わせたらデブへ進みそうですね」


 綱が真顔で答えて私を見た。


 え……、私太ってきてる?


「つ、綱、私太ってきてたら、遠慮なく言いなさいよ?」

「はい」

「今、危ないかしら?」

「大丈夫ですよ」


 綱が笑う。


「女の子は少しぽっちゃりしてたくらいのほうが可愛いよ」 


 淡島先輩が笑った。

 出た! 悪魔のささやきだ! 真に受けてはいけない。


 私は思わずギロリと淡島先輩を見た。


「甘い言葉には騙されませんからね。ね。詩歌ちゃん!」


 詩歌ちゃんは突然話を振られてびっくりしたようだったが、ニッコリと穏やかに笑う。


「私も姫奈子ちゃんは少しふっくらしても可愛いと思うわ。うさぎ上用みたいで」


 先ほどガラスケースに並んでいた、和菓子のうさぎ上用をたとえに出されて脱力する。


「酷い」

「あら、可愛らしくて食べちゃいたいわ」


 詩歌ちゃんがにっこり笑って、私の膨らんだほっぺたを突っついた。


「……一ついただいたら? ちなみに餡は栗餡だと思うわ」


 性格悪い私は、詩歌ちゃんをデブの道に引きずり込んでやれと、意地悪く言ってみた。


「そうなの?」

「多分、瓦屋のうさぎだと思うから」


 お稲荷さんを買う店の隣にある和菓子店の、うさぎ上用に顔がよく似ていたのだ。


「だったらもう一ついただきます!」


 詩歌ちゃんは嬉しそうに席を立った。


「教えてくれてありがとう! 姫奈子ちゃん」


 そんなふうにされたら毒気を抜かれてしまう。天然タラシだと思うよ、詩歌ちゃん……。


 ニコニコと笑う淡島先輩と目が合って、なんだか気まずく思う。


「詩歌ちゃんには敵いません」


 取り繕って、そうため息交じりに言ってみる。

 淡島先輩はそれを聞いて吹き出した。


「うん、姉妹みたいで微笑ましい」


 思わず赤くなる。詩歌ちゃんと姉妹とか嬉しすぎるんですけど。


「本当に白山さんは食べ物に詳しいね」


 そうだろうか?


「姫奈は食いしん坊ですから、食べ物に関する記憶だけはすごいんです」


 シレっと綱が答える。


「ちょっと!」

「だから、姫奈が選ぶものは間違いないと思っています」


 綱が平然と続けて思わず、ブワリと鳥肌が立つ。

 どんな飾った言葉よりも、当たり前のことの様に言ってくれるのが嬉しい。そんなふうに思っててくれたんだ。


 でも。


「なんだか恥ずかしいわね?」

「そうですか?」


 テレのみじんもない顔で返されて、思わす視線をそらした。





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