しずかなる
「そこで永久に迷ってろ!」
投げ捨てられた言葉の主はモレの友達だ。
ツンデレを地でいくモレの友達、略してモレ友はいつもモレに会うと奇声を上げて驚く。あまりに驚くので最近覚えたLINEで「今からいくよ」「もうすぐつくよ」「部屋の前なう」などを載せるも無反応を貫く可愛さだ。読んでると思われたくないのか既読なんてついたことない周到ぶり。しかしモレのタイプではないのでその恋は実らないだろう。罪作りなモレ。互いの妥協点として友達関係を続けていくのが暗黙の了解となっているが、こうやってモレの気を引くところを見るにまだ諦めていない様子。ヤレヤレ。出会った時に浮かぶ憎々しげな表情が愛情の裏返しというならその想いも相当なもの。やだ怖い。しかし仮にも親友。モレもサービスして電話が繋がらない時はテレパシーなど飛ばしてモレの肉声をダイレクトアタック。効果は抜群だ。そんな親友は日に日にやつれていく程のハードワークに身を晒しているらしく憔悴。モレの顔を見れば元気になるだろうとなるべく時間を作って会いにいくモレに親友も嬉しさをこらえるように目端をピクピク。更に心優しいモレは休日の気分転換を提案。親友も最初は嫌がっていたというのに休日に想いを馳せたのか急に笑顔でオケ返。ツンデレさん。狩る者の目になっていた親友に貞操の危機を感じるも流れにライドするのが陸ボーダー。行きたい場所があると異様なくらいハシャぐ親友に運転はするからと車のドアを開けてもらい助手席に乗り込んだ筈が、上も下も横もない極彩色の空間にイン。投げかけられる言葉。
いまここ。
どこここ?
恐らくあらゆる空間の狭間にある場所と見て間違いない。端的に言えば野比家の引き出し。
どんな間違いでモレをここに送り込んだのやら……うっかりさんめ。
ドジっこ属性をつけてのモレ籠絡を狙っていると見られる。ヤンデレ進化というやつか。
ともあれここを出よう。
スイムスイムと平泳ぎ。前に進んでいるのかどうかは分からないが、まあ匙加減。だいたいここら辺。
ガッと空間に貫手をぶち込み横に広げる。ただいまー。
開いた先の空間には――――
豚の顔を持った人が可愛らしい系の美少女を囲んでいた。美少女の服は破かれ目尻に涙。両手を抑えつけられ興奮した豚人が覆い被さっていた。
「た、たす」
「間違えました」
ペコリと頭を下げたにも関わらず棍棒を持った豚人が豚声を上げながら襲いかかってきたので空間を閉める。
ふう、危なかった。棍棒で襲いかかってくるなんてなんてデンジャー。
もう少し右の空間だったかな?
少し右にズレて貫手を突き刺す。
再び開いた空間の先には――――
飛び込んでくるイケ・メーン。
裂帛の気合いと共にリングメイルを纏い光り輝く大剣を振り下ろしてくる爽やか系。額から流れる一筋の血にイラッ。その驚愕の表情に向こうも驚いているのだろうが勢いがついているのか止まらない刃物。
「どけぇええええ!!」
刃物振り回してどけとかちょっと意味が分からない。
相互理解の為、話し合う場を設けるためにと大剣を受け止めると、にゅっとモレの脇から突き出される青い手。病気?
「好機!」
今日び言わないとどこかの主人公のような考えがよぎるも束の間、手か出る黒い光線。グラビティなブラスト。
極太な黒い光が通過した後には何も残らなかったところを見るに……イケメンは逃げたと思われる。ヤリ逃げはイケメンのスキル。
危険なイケメン。危ない世界。
飛び火したら堪らないとばかりに空間を閉める。
それからも、バイクに話しかける危ない少女や筒のようなシルエットの黒い女男などの世界に繋がったが、どこも親友の気配はなし。
私は何度も繰り返すの精神でトライ。家庭教育。
貫手が影響しているのか空間がピシピシ鳴っているがモレには分かっている。
家鳴り、だろ?
博識なモレに抜かりはない。構わず強めに貫手を繰り出す。
再び空間を開く。そこには――――
シャワー中だったのかやや褐色が入った素肌の上を水滴が曲線を描きつつ落ちていく。アップにした髪を解き整った顔立ちに驚いた表情の親友。大当たりだぜ。
ヤン
「きゃあああああああああああ!」
モレ
「ぶぶぶぶぶぶぶぶ」
代償がビンタだと?得しかない!




