語り手でない者
連載にしないこともないこともないこともないようでないような
やあ、こんにちは!
ここに来る人は珍しいからね! 誰でも大歓迎だよ! 千客万来ってやつだね! お客様は君で三人目だけど。
さて、ここに来た理由なんだけど……ちょっと待った! 言わなくてもいいよ! 僕にはお見通しさ! 隣の家のお姉さん、そうだろ? 気になって気になって……え? あ、そう。うん。ま、偶にはね。間違えることもあるよ。だって神でもあるまいし!
じゃあ、えーと……え? なに? そんなことが気になってるの? 君って変わってるねえ。そんなことないよ! 君には負けるさ!
おっと暴力はよくない。人間なんだもの。話せばこじれ勘違いする。だから距離を取らせて貰おう! ヘイ! 分かった分かった! 手を下げてくれたまえ!
ふう。それで、なんだっけ? ……な、なーんてね! 勿論話すとも! 凄く話したいな!
それじゃあ代価なんだけど……ん? 『手を下げてやった』って? わーお。それは強盗が危害は加えなかったって言ってる、あ、うんうんオッケー! 『手を下げる』でいいです! だから下ろして下ろしてー、それが代価だから!
さあ! じゃあ……まだなにか? んん!? 呼び名! 確かにそれは重要だ。互いが互いを認識するのに、これ程の物はない。
うんうん。じゃあ僕のことは――それだけは止めて欲しいかな?
謳い手、弾き手、担い手、どんな呼び方でも割と文句を言わない僕だけど――『語り手』だけは止めて欲しい。
んー、そうだね! こだわりさ! プロの? いや、僕の、かな?
それで? どんな風に僕を……わーお。確かに割と文句は言わないって言ったけど……僕にしては非常に珍しく撤回したいよ。
うん、でも、ま、いいよ……うん。
では、気を取り直してお客様! あなたが知りたがっていることをお教えしよう!
これは教授であり契約であり対価であり選択である。耳にするも善し。塞ぐも善し。
ただ人間は稀に真理を突いたことを言う。
ああそうだ。
好奇心は猫をも殺すってね。
じゃあ耳を貸してくれ! え? 普通に話せば聞こえるって? やだなーお客様。形式美っていうのも重要なんだよ?
悪魔は人に、囁くものだろ?
ない!




