犯罪です
モレはオタクである。
モレはライトノベルが大好きだ。漫画が大好きだ。本を読むのを愛している。
モレは本を読む時に左手だけしか使わない。片手でペラペラやるのは別にポリシーではない。
それが効率的だからだ。
左手しか使わないのであれば右手が空く。ならば右手で何かが出来る。下がつくネタ的な話ではない。
効率の話だ。
モレは専ら(もっぱら)本を読む時に何か食べながら読む。
ながら食いと呼ばれる行為だ。
賛否両論あるこの行為だが、モレは言いたい。
右手は右手で左手は左手で別々の行動をしているから汚れたりはしないって。ポテトチップの油がついたりしないって。だからその指紋は俺じゃないんだ姉ちゃん。
え? ラーメン? 餃子のタレが云々? 今、中華の話はしていない。ながら食いの話だ。
ともあれモレは今日も本を読む。
本を左手に開き、右側にテーブルをスタンバイ。座椅子に座る前に冷蔵庫を開けたら気づいた。
空だ。
別に異世界の空に繋がっているとかじゃない。零、エンプティ、在庫が無いという訳だ。
モレは動揺した。
モレはどうしても本が読みたい。しかし貢ぎ物がない。
読めない。
モレは酷く動揺した。
モレはどーーーしてもっ本が読みたい今読みたい直ぐ読みたい。しかしお菓子とジュースが無い。ピザも無い。
読めない。
モレは血走った目を普段は気にもとめない時間を刻むアレに向ける。
午前二時。
踏み切りに望遠鏡を持っていく時間だが、ピザの宅配はやっていない。
読めない。
普段からカーテンを締め切っている弊害が出てしまった。まさかさっき起きたばかりなのに夜だなんて……。
しかしモレは諦める気は無い。それは試合終了だと学んでいるからだ。
大切なことは全て本から学んだ。
モレが新しい本を読むために……そう! これは神が与えたもうた試練! 受けよう! この『知識への苦難』!
モレはTシャツにパンツという紳士的な格好から、ジーパンを装着する、現代的な格好にスタイルアップした。現代日本では紳士的な装いが受け入れられていないので仕方ない。
三種の神器を装備する。財布、携帯、家の鍵だ。
そしてモレは家を出た。
モレは人気の無い道を走った。モレは早く本を読みたかった。
「いらっ……しゃいませ」
ゼッ、ハア。どうやら店員さんも驚嘆したらしい。まあ真夜中だからね。こんな時間にお客さんが来るなんて珍しいだろうからね?
モレは空気が読める男だから、素早く買い物を済ますことにした。モレは早く本を読みたかった。
買い物カゴを二つ掴む。同じ過ちをしないために、モレはしっかり買い込む事にした。
まずソフトドリンクコーナーに行き、『生命を守る』が商品名の緑の水を、あるだけ。
ガラガラガラ
カゴが一つ埋まった。
「…………」
店員さんの注目がモレに。当然だろう。モレしかお客さんがいないから何となく目がいくよね?
お菓子コーナーに行き、チョコなやつと芋なやつとイカな奴を、あるだけ。
ガラガラガラ
カゴが一つ埋まった。
「…………あ、いらっしゃ」
「金だせ!!」
どうやら他のお客さんらしい。招かれざる系。
このまま待っていたもモレは買い物を済ませられるだろう。新規の客はモレに気付いていない。
しかしモレは早く本を読みたかった。
そっと、店員さんに注目する新規の客の後ろに近づき首に手をやる。
ゴギッ
対応はこんな感じでいいはず。モレは時代劇で学んでいる。悪・なんとか・斬、だっけ?
「……え?」
「これお願いします」
ピクピクと痙攣している命が風前の灯火客に目がいっていた店員さんの前にカゴをドンと置く。
ハリーハリー。
魔法使いじゃない。いやモレは魔法使いだけども。
「――い、15682円になります」
「はい」
最近めっきり寒くなったせいか微妙に震えている店員さんに丁度の金額を財布から取り出す。
「釣りはいらない」
モレは逃げ出すように走った。モレは早く本を読みたかった。
モレ
「という夢を」
友?
「あ、お巡りさーん。ここでーす」
モレ
「ん?」




