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誰か、俺のこと知りませんか?  作者: かまぼっこ
5/7

クロとティア

「とりあえず、ありがとう」


女は少年に言う。


「それと、服はなかったかしら?さすがにこの格好は恥ずかしいのだけど……」


女は裸だ。


「これのことか?」


少年は箱から服を取り出す。


「そう、それよ。でも、それは男もの服ね。多分、アイツは私の分の服も積んでいたと思うのだけど……ん、これね」


女は自分で箱を漁り、見つける。

見つけた服を身につける。


「あなたもその服を着てくれないかしら?」


「何故だ?」


「あなたの……その……腰に付いているものをみせつけられるのはちょっとね……」


少年は、手に持っていた服を着る。

が、かなりぶかぶかであった。


「ごめんなさい。あの豚の服だとぶかぶかよね……少し待って」


女は箱に入っている別の服を取り出して、折ったり、紐で結び長さを変える。

一方少年の形をした何かは「豚?」と首を傾げている。


「これで、いいかしらね。着てみてもらえないかしら?」


女は少年に出来た服を手渡す。

その服を少年は身につける。


「うん。ぴったりね!」


女は自分の作った物の出来に満足げにうなずく。

少年は不思議そうに首をかしげる。


「服を着るのは常識なのか?」


「…………そうよ」


女は内心で呆れながらうなずく。


「えっと身なり自体は整ったことだし……

そうね。自己紹介でもしないかしら?

ま、あなたは自分のことが分からないらしいから、名前だけでも教えてくれないかしら?」


「名前?名前って何だ?」


「ちょ……名前の意味が分からないの?」


「そうだが」


「そ、そう。えっと名前はあなたが何て呼ばれているかよ」


「呼べれているか……お前は俺を何て呼ぶんだ?」


「え?私?何で?」


「何でってお前が俺を何て呼ぶかで名前が決まるからだが?」


「はぁ!?ちょっと何を言っているのか分からないのだけど……

も、もしかして自分の名前も分からないの?」


女は驚き尋ねる。


「ん?そうだが」


少年はさも当然のことのように言う。


「そ、そう。」


「で……お前は俺を何て呼ぶんだ?」


「つまりは、私があなたの名前を決めろということかしら?」


女は少し呆れ気味に聞いた。


「そうだ」


そして、帰ってくる答えも半分分かっていたものであった。


「私が本当に決めていいの?そんなセンスみたいなものはないわよ」


「かまわないぞ」


「そう……少し待って頂戴」


女は少しの間考える。

そして、


「決めたわ、あなたの名前はクロよ」


「クロ?分かった。これからはクロと名乗ればいいのだな」


「そうね。あと私の名前はティアよ。私のことはそう呼んで頂戴」


「分かった」


「それで、これからどうすればいい?常識とやらを教えてくれるのか?」


「それは教えるけれど、

そうね、とりあえずは町に行きましょう」


「町?町って何だ?」


「はぁー。あなたには教えなきゃいけないことが多そうね。」


ティアは大きなため息とともに、これからの苦労を考え渋い顔をした。

クロは常識以外にも色々なことを知らないようだ。














馬車を進めながらティアは尋ねる。

尋ねたのは、クロの質問攻めから逃れるためであった。


「あなた、食べ物が何処にあるか知らないかしら?」


「食べ物?干し肉とかククアの実のことか?」


「そ、そうよ」


さっきから質問攻めを受けていたティアはクロが「干し肉」や「ククアの実」について知っていたことに驚く。


「それなら、お前が気絶している間に食った」


「は、はぁ!?食った?一週間分はあったわよ!」


ティアはさらに驚くことになった。


「全部じゃないぞ、残してある」


「そ、そう。どこ?」


残してあると聞き、安堵したティア。

だけど……


「ここだ」


食べ物の入った箱をティアは受け取る。

そして


「って、何が残してるよ!二日分もないじゃない!」


ティアの絶叫が草原に響き渡る。


「ん?まずかったか?」


「まずいわよ!当たり前じゃない!町まで馬車があるとはいえ、一週間はかかるわよ!」


「そうか」


「そうか、じゃないわよ!あなた分かってる?このままじゃ餓死するのよ?常識あるの?」


「無い」


「そ、そうよねー。そうだったわー。ってそうじゃないわよ!ああ、どうしようかしら」


ティアは自分で自分にツッコミを入れる。


「食料をとってくればいいのか?」


クロは当然のように聞いた。


「その食料は何処にあるのよ?」


ティアは呆れながら言う。


「あそこだ」


クロは遠く彼方を指す。


「何処よ?ないじゃない!」


ティアは半狂乱になっている。


「まあいい、少し待ってろ」


クロはそう言い駈け出した。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


ティアは叫んでみたが、クロの姿はいつの間にか遠く彼方にあった。


「はぁーアイツ本当に何者よ……」


ティアは今日何度目かのため息をついた。







数分後、クロは大きな血まみれの狼の首を掴みながら馬車へと戻ってきた。

不思議なことにクロには血の一滴も着いていない。


「これでいいか?」


「え?」


いつの間にか馬車に戻ってきたクロに、また血の一滴もつかずに狼を狩ってきたことに、ティアは呆れ気味に驚く。

また、ティアは少し安堵していた。


「いつの間に戻ってきたのよ……っていうかなによその狼」


血まみれの狼を指しながらティアは尋ねる。


「ん?食料だが」


「狼ね……食べれるのかしら……」


ティアは呆れたが、食糧問題は何とかなりそうなので少し安心する。

クロは狼を馬車に乗せ、ティアの質問攻めを開始する。


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